【ユーカリ紹介-71】
ユーカリ・スードグロブルス
(Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus)続きまして第71回目はglobulusの中では
最もマイナーでレア度が高く、新芽の緑色が鮮やかに際立つ、
globulusの亜種ユーカリ・スードグロブルスです。
◎ユーカリ・スードグロブルス
【学名:Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus】
【英名:Pseudoglobulus / Victorian Eurabbie】
日本ではお馴染みのglobulusですが、
その中でもこのpseudoglobulusは、
最もレア度の高い亜種となっています。
厳密には現在この亜種の
タネを取り扱っているタネ屋はありません。
私は現地のSeedbankにかけ合って、
何とか少量分けてもらったものを育てています。
pseudoglobulusという学名ですが
そのままglobulusに似ているという意味になります。
ところが実際にその性質の多くは、
ssp. globulusよりも強健で万能な
ssp. bicostataに良く似ています。
globulusには4種の亜種と1種の矮性種が存在します。
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●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus var. compacta
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus
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これらは全てが非常に良く類似していて、
小さな苗や数m程度の苗木の間の識別はほぼ不可能です。
一番の識別方法は大きく育ってからできる
蕾や実の大きさや形状を比較するのが一番です。
>>>詳しい識別についてはこちらの記事をご覧ください。
今回ご紹介するpseudoglobulusは、
先述した通り、日本で見かけることまず不可能、
現地のタネ屋でも取り扱いが皆無な程にレアです。
ただ後述する性質を考えると、
globulusの中では最も地味になるので、
局所的な生息種であることに加えて、
需要があまりないので、
結果的にレアになっていると思われます。
生息地はビクトリア州の南東の端で、
あまり広範囲とはいえず、
どちらかというと局地的な生息種と言えます。
globulusというと他の亜種については、
新芽の白銀色と下葉の濃い青緑色の
コントラストが非常に美しいユーカリになります。
その他にも精油や香りの強さなど魅力は満載ですが、
この外観のコントラストが
globulusの視覚的な一番の特徴と言えます。
ところがこのpseudoglobulusには
その視覚的な特徴がありません。
pseudoglobulusでは多くの場合、
新芽はほとんど白銀色になることはなく、
寧ろ鮮やかな程のグリーンで強く光沢があります。
下の写真は新芽部分のアップです。
最も白みが強くなる新芽部分でも、
かなり緑色が強いことがわかります。
そのため、パッと見は白みが強いglobulusの中では、
pseudoglobulusはひと際、緑色の生える外観になります。
ただglobulusは全般的に、葉裏が白っぽく、
pseudoglobulusの茎は非常に白みが強いため、
そのコントラストは寧ろ他の亜種よりも映えます。
ユーカリに魅力を感じる人の多くは、
純白の葉色や白と緑のコントラストを好むため、
pseudoglobulusはglobulusの中では、
人気を得ることは少し難しいかもしれません。
このような性質に加えて、タネ自体もレアなので、
余計に手に入りにくい現状につながっていると考えられます。
敢えて違いを挙げるならば、
幼苗の間はssp. bicostataと同じく
葉が若干コンパクトで細長くなりやすいですが、
新芽を含めて、葉が白みを帯びることはほとんどなく、
茎のザラザラ感はかなり強くなるというところでしょうか。
ただ、この特徴を個体差が上回ることも十分にあり得ます。
pseudoglobulusを育てていて、他のglobulusに比べると、
明らかに緑色の範囲が広いという印象を持ちます。
個体差によっては、ある程度の白みも出るようですが、
我が家の株は目立って白みがありません。
亜種間での比較の対象になる実のサイズは、
横幅が0.9~1.3cm、長さは0.6~0.8cmと
他よりもかなり小さく、少し縦長の形をしています。
また、蕾や実は新芽同様に
ほとんど白く粉を吹くことはありません。
そしてさらに大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。
総合的にssp. bicostataと被る部分がありますが、
明らかに蕾と実の形状と色が異なっています。
globulusの中では中規模のサイズで、
大きなものでは45m前後の大木へと育ちます。
根の張りはssp. globulusよりは控えめですが、
それでもユーカリ中ではトップクラスに盛んな方です。
露地植えにする場合にはそれなりの覚悟が必要です。
育ててみると、ssp. bicostataと同様に、
globulusの中では最も強健で万能な性質を持っています。
ssp. globulusや特にssp. maideniiでは、
その生息地上、少し暑さに弱いところがありますが、
pseudoglobulusは暑さにも強く、夏場の葉痛みもほとんどありません。
育て方も非常に簡単で、何よりも
その成長の早さには相当ビックリさせられます。
露地植えにするとあっという間に人間の背丈を超えてしまいます。
植木鉢であっても、太陽にたくさん当てることで、
一年以内に背丈を超えるほどに成長します。
鉢植えで育てる場合には
ssp. globulusよりも少し控え目な分、
育てやすい品種といえるかもしれません。
globulusは古くから日本で親しまれてきただけあって、
日本の環境には非常に合っています。
ユーカリの中ではかなり水を好む方で、
小さな鉢ではあっという間に水切れを起こします。
水分管理も考えて、小まめな摘芯を心がけてください。
とりあえず一般的な観葉植物並みの管理で問題ありません。
ただ、室内や日陰で管理を行うと徒長し貧弱に育ちます。
なるべく、屋外の日光が良くあたる場所で管理してください。
耐寒性は-10℃程度と言われており、
ssp. globulusよりも耐寒性は強くなっています。
余程の寒地でもない限り、野外越冬は問題ないと思います。
冬は余り水を吸わなくなるので、少し乾燥気味に管理してください。
pseudoglobulusはほとんど白く粉を吹かずに
全体的に濃い緑色の外観が際立ちます。
ユーカリの中でも鮮やかな緑色が好きな人であれば、
最も魅力的なglobulusになることでしょうが、
残念ながらpseudoglobulusを手に入れる手段がありません。
茎は他の亜種同様に見てわかるほどの四角形をしています。
厳密にはpseudoglobulusは茎の四角が激しく尖っており、
手裏剣のように角が飛び出たウイング型という形状をしています。
茎の表面はザラザラしており、
globulusの中ではザラザラがかなり強い方です。
ssp. globulusやssp. bicostataは精油やユーカリ茶で有名ですが、
pseudoglobulusもほぼssp. bicostataと
ほぼ同程度の強さの香りを持っています。
マイナーな亜種のため、利用例はありませんが、
ssp. bicostataなどと同様に様々な利用が期待できます。
平均的なglobulusのため、香りの強さもユーカリ中ピカイチ!
葉や茎を軽く指で撫でただけで強く香ります。
香りはssp. bicostataと全く同じ香りで、
メンターム様の切れの良いスッとしたシネオールの香りの後に、
非常に爽やかな柑橘系の香りが色どりを添えています。
スタンダードなユーカリの香りと思われがちですが、
実際、かなり柑橘系の香りが強い、爽やか系の香りといえます。
とにかく、スッと香ってスッキリ突き抜ける強い爽快感があります。
花粉症に苦しむ私には非常に快適な香りです。
とにかくかなりマイナーなglobulusであり、
ユーカリ全体でもかなりレアな部類になりますので、
今後も色々と観察しながらレポートしていきたいと思います。
globulusの中では一番シックなpseudoglobulusですが、
マイナーなため、栽培の際に選択できないのが残念ですね。。。
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★★★
香強さ:★★★★★
成長力:★★★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2015-08-03 17:09 | ユーカリ紹介
今度こそ!ウッドワーディー(woodwardii)の蕾
今までwoodwardiiには何度も蕾ができており、
その度にご紹介をさせていただいています。
ところが管理に問題があるのか、
それとも気候が合わないのか、
元々折れやすく軟いwoodwardiiだからか、
多くの場合、マンション高層階特有の暴風で
開花までに蕾が落ちてしまっていました。
開花までに時間がかかりすぎの傾向があったので、
元々開花には至らない蕾が落ちただけなのかもしれません。
今回もまたwoodwardiiに蕾が付きました。
以前までとは比べ物にならない程のたくさんの蕾です。
今回は蕾ができてから育っていく速度がとても早いです。
今までにできて落ちてしまった蕾は
大概が夏~秋にできて、
冬を超えられずに落ちてしまうか、
春一番の強風で落ちてしまっていました。
文献によるとwoodwardiiの開花は
主に秋口になるようなので、
今年の秋までに間に合うでしょうか?
こちらの記事に詳しく載せていますが、
woodwardiiなどの特に乾燥を好み
過湿を嫌うユーカリについて、
今まで少し水が少なすぎた可能性がありました。
もしかするとそれが原因で、
蕾が開花に至らなかった可能性も考えられます。
今年は過湿にならないギリギリのラインで、
macrocarpaなどと同様に
woodwardiiでも潅水量を増やしています。
現在、macrocarpaやrhodanthaなどの
潅水量を増やしたユーカリについて、
成長の進み具合と調子はびっくりする程に上々です。
果たしてこの結果が吉と出るでしょうか?
秋までに間に合えば、
今度こそ開花してくれるかもしれません。- # by eucalyptus_k | 2015-07-29 00:27 | ユーカリ(花と蕾)
ユーカリ苗って高価なの!?
最近、お問い合わせをいただく人によっては、
「ユーカリ苗ってなぜあんなに高価なんですか?」
と聞かれることがあります。
私は正直、最近の植物全てについて
値段が安すぎると思っているほどなので、
ユーカリが高価だと思ったことは一度もありません。
元々野菜の苗以外の植物というものは
昔はそれなりの値段がしたものでした。
ところが昨今は大手ホームセンターなどの進出で
大量生産による価格の下落が起こり、
僅か数百円で観葉植物などが手に入るようになりました。
ある程度の仕立てのパキラやシェフレラなんて、
今はホームセンターで500円程度で買えてしまいます。
でも昔は1,500円~5,000円とかしたものです。
まずユーカリが高価だと思われる方は、
「ユーカリ=ハーブ草木」
という認識を捨ててください。
ユーカリはあくまでも樹木であり、
ユーカリの鉢植えは樹木の苗木です。
サクラやケヤキの苗木を探してみてください。
もう廃棄前の劣悪な苗木以外は、
数千円以上の値段がするはずです。
樹木はハーブ草木等に比べると
大きく育つ植物になりますので、
それだけ途中で脱落していく苗も多くなります。
また、日本ではまだレアな海外の植物です。
タネの輸入などにも思ったよりコストがかかります。
おまけに樹木なので草木のように発芽率も高くはありません。
また多くのハーブ草木は大量生産向きのものが多く、
挿し芽も自由自在、タネを播けばたくさんの苗が得られます。
タネ播き機器などによるオートメーション化も可能です。
先程、大量生産による価格の下落と言いましたが、
率直にユーカリは大量生産には向かない植物です。
まず事実上、挿し芽は不可能であるということ、
それから一度でもタネを購入された方ならわかると思いますが、
ユーカリのタネは必ずタネのカスと一緒に売られていますので、
タネの袋の中には、タネだけが入っているわけではありません。
黒い粒がタネで大量にある赤茶色の粉はカス
大概の場合、タネ:カス=3:7くらいの割合。
そのため機器によるオートメーション化も不可能です。
一部、gunniiやcinereaなど、
超メジャーなユーカリではピュアシードという
カスを取り除いたタネが売られていますが、
これは人手で取り除いたものになりますので、
とても高価なものになります。
またそこまで大量のロットでは売られていません。
昨今gunniiなどではある程度の大量生産に
対応できてきているのかもしれませんが、
私の知っているユーカリ栽培者のほとんどは、
一つ一つの苗をしっかりと手動で定植して管理されています。
メジャーなユーカリであれば、
良質のピュアシードを大量ロットで
安価に購入することもでるでしょうが、
ほとんどが海外からの輸入になりますので、
植物検疫証明書(phytosanitary certificate)
の添付が義務づけられてきます。
輸入元国にもよりますが
この発行手数料は30,000円~50,000円にもなります。
わずかなタネを購入するだけでも、
この30,000円程度が乗ってくるわけです。
ここからさらにマイナーなユーカリになると、
どんどんとタネの入手自体も困難になり、
価格もどんどん上がっていきます。
一度ある方に、ハーブや多肉植物などと比べて
高すぎると不満をぶつけられたことがあるのですが、
正直一緒にするな!と心の中で思いました。
試しに全く販売経験のない私が値段を付けるなら、
下記の値段以上じゃないと全く売る気がしないです。
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Eucalyptus gunnii(20-45cm)...2,500円
Eucalyptus gunnii(80-100cm)...8,000円
Eucalyptus cinerea(20-45cm)...3,500円
Eucalyptus cinerea(80-100cm)...10,000円
Eucalyptus leucoxylon(20-45cm)...3,000円
Eucalyptus leucoxylon(100-150cm)...18,000円
Eucalyptus albida(20-45cm)...4,000円
Eucalyptus albida(100cm~)...25,000円
Eucalyptus macrocarpa(20-45cm)...7,000円
Eucalyptus macrocarpa(100cm~)...40,000円
Eucalyptus macrocarpa(150cm~開花)...50,000円以上
Eucalyptus vernicosa(30cm)...20,000円
※ある程度の仕立てあり
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良くユーカリを販売されないのですか?
と聞かれることがあります。
上の価格を見て正直結構高い!!
と思われませんか?
でも、このくらいで売れないのであれば、
販売しようとはとても思えないです- # by eucalyptus_k | 2015-07-24 19:42 | ユーカリ(その他)
恒例のプレウロカルパ(pleurocarpa)の開花
今年もpleurocarpaが開花しました。
本来の開花時期は6月中旬から7月初旬と
もう少し早いものですが、
日照が控え目な我が家のベランダでは少し遅くなります。
毎年少量ではありますが、
この時期の開花が恒例となっています。
白色とユーカリ中ではスタンダード色ですが、
花弁の先のしべが薄い黄色でなかなか華やかです。
一つの花が4つの区画に分かれているのが
pleurocarpaの花の特徴です。
このpleurocarpaの花は
数あるユーカリの花の中でも
かなり美しい花の一つになると思います。
この株はわずか65cm程度の株なので、
pleurocarpaは本当に花の咲きやすいユーカリです。
手軽に美しい花が観られるので、
オススメのユーカリです。- # by eucalyptus_k | 2015-07-21 17:13 | ユーカリ(花と蕾)
ユーカリ・アーナ(urna)の蕾
またまた非常に珍しいユーカリに
蕾が付いているのを発見しました。
こちらで紹介している
レアなユーカリurnaです。
花自体はスタンダードなユーカリの花になると思いますが、
urnaの花ももしかすると日本初!?と言えるかもしれません。
文献によると、初夏~秋まで幅広く咲くようなので、
早ければ秋口には咲くかもしれません。
urnaは最高樹高16mクラスの中型ユーカリですが、
蕾の付いた株はわずか120cm程度の株になります。
実はこのurnaもここ2年程はかなり調子が悪かったです。
葉に変な枯れが出るという症状が発生していたので、
菌類か何かの病気かと思っていました。
確かに病気による影響もあるでしょうが、
主な原因は水切れと日焼けだったようです。
今年から半日陰程度の涼しい場所に移して、
水をたっぷり与えるようになってから、
ほとんど痛みが生じなくなっていました。
今春までは見るも無残な姿でしたが、
春以降にかなり美しい樹形を
取り戻してきた矢先の蕾になりました。
urnaも西AZのユーカリで
そこそこデリケートな品種ですから、
開花までまだまだ安心はできませんが、
是非とも珍しい品種の開花を実現したいところです。
ふとurnaの間横にあるpleurocarpaに目をやると
その蕾が開花し始めていました。
次の記事はpleurocarpaの開花
になるでしょうか?- # by eucalyptus_k | 2015-07-15 17:36 | ユーカリ(花と蕾)