識別しにくいユーカリ(3)~Eucalyptus globulus~
続いて今回はglobulusの亜種間の識別についてです。
始めに、globulusの苗木時点での
確実な識別のポイントはほぼ皆無です。
また、葉や茎の形状にも大きな差はありません。
Gunnii以上に見た目による識別は不可能といえます。
ここで、いきなり結論になってしまいますが、
蕾と実の形状、サイズを比較することで、
ほぼ確実な識別が可能になります。
ただ、かなり大きな樹木になるglobulusを
蕾や実ができるまで育てるとなると、
それ相応の大きさにまで育て上げる必要があります。
これは一般のご家庭では非常に困難なことです。
まず、globulusで学術的に認められている亜種は下記の4種です。
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●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus
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これとは別に var. compactaという変種が存在しますが、
これはssp. globulusの小型種で、
最終的な樹高がssp. globulusより小さくなるというだけで、
その他はssp. globulusと全く変わらないため今回は割愛します。
この中で敢えて一番外観で差があるとすれば
ssp. maideniiでしょうか。あくまでも"敢えて"ですが。。。
ssp. maideniiは他の品種に比べると、
少し葉の幅が広く、丸みを帯びる傾向があります。
下の写真はssp. globulusですが葉は平均的に細長いです。
そして下の写真がssp. maideniiです。
少し葉が幅広く丸みを帯びているのがわかるでしょうか。
この他にもカーブのある細長い葉が生じることもあります。
ただしこれらはあくまでも傾向であって、
個体差がこれを上回ることもあり得ます。
たくさんglobulusを見てきた人ならば、
自信を持って識別できるかもしれません。
ssp. maidenii以外の3種は見た目が非常に良く似ています。
いくつかの傾向はありますが、
これだけでパッとみて識別することは困難でしょう。
それではまずglobulus各亜種の写真を見てみます。
ssp. globulus
ssp. bicostata
ssp. maidenii
ssp. pseudoglobulus
写真からその差は全くわかりません。
実際に私も全種育てていますが、
見た目の差はほとんどわかりません。
それでは次にglobulus各亜種の特徴を並べてみます。
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-苗時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の緑色が濃くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは弱い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である
ssp. bicostata
1. 4種の中では最も小さめの葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではかなりssp. globulusと良く似ている
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉は比較的幅が狭く細長く育つ傾向が強い
ssp. maidenii
1. 極端に細長い葉と丸みを帯びた葉が生じる傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の白色が強くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラはほぼない
4. 極端に細長い葉では葉のカーブが生じることがある
ssp. pseudoglobulus
1. 4種の中ではssp. globulusに次いで大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではssp. globulusとほとんど大差がない
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である
これを見ていただくと、
本当に決定的な差のないことが良くわかると思います。
次に樹木時点での特徴を並べてみます。
決定的な識別のポイントである蕾と実については、
ここでは省いて、詳しくは後述します。
-樹木時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大木に育つ(70m以上)
2. 4種の中では最も小さな葉に育つ傾向が強い
3. タスマニア島に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける
ssp. bicostata
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では圧倒的な大葉に育つ傾向が強い
3. ビクトリア州東部を中心に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける
ssp. maidenii
1. 50m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ニューサウスウェールズ州南部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある
ssp. pseudoglobulus
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ビクトリア州南東部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある
ここでもほぼ明確な識別は不可能ですね。
ただ、成長後のサイズや
生息地には大きな差があることがわかります。
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それでは最も有力な識別のポイントとなる、
蕾や実についてのデータを見ていきます。
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見所は下記の4ポイントです。
こちらに着目して見ていきましょう。
1. 蕾と実の大きさ
2. 蕾と実の表面が白く粉を吹いているかどうか
3. 蕾と枝を結ぶ部分のサイズ
4. 蕾は何個セットで生じるか
ssp. globulus
実の幅は1.4~2.7cm、長さは1~1.5cmと最も大きいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように単独で生じます。
ssp. bicostata
実の幅は1~2cm、長さは0.7~1cmと明らかに小さいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。
ssp. maidenii
実の幅は0.6~1cm、長さは0.5~1.1cmと小さく少し縦長です。
また、あまり白く粉を吹いていないことも特徴です。
写真ではわかりにくいですが、
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように7個セットで生じます。
ssp. pseudoglobulus
実の幅は0.9~1.3cm、長さは0.6~0.8cmとかなり小さいです。
また、ほとんど白く粉を吹くことはありません。
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。
総合的にssp. bicostataと被る部分がありますが、
明らかに蕾と実の形状と色が異なっていると思います。
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このデータを元にして蕾と実の比較を行えば、
比較的容易に識別ができると思います。
実際、プロもglobulusの識別は必ず蕾と実で行います。
でも、初めに書いたように、
globulusを実がなるまでに大きく育て上げるのは、
日本の一般のご家庭では非常に困難なことです。
もし、globulusをしっかりと品種で管理したいのであれば、
タネの時点から識別されたものを購入して育てるか、
亜種で管理しているところから苗を購入するしかありません。
まあ、苗木時点ではどれも良く似ていますから、
鉢植えで管理する場合には、
あまり気にする必要はないのかもしれませんね。
個人的には香りや精油重視ならssp. globulus。
コンパクトで育てやすいならssp. bicostata。
外観の美しさ重視ならssp. maideniiをオススメします。
ssp. pseudoglobulusはかなりマイナーなので、
タネを見つけることさえ大変なほどです。
現状タネを手に入れる手段はほとんどありません。
それでは最後にglobulusの名前の由来と、
各亜種の名前の由来で締めくくりたいと思います。
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学名globulusはBall(球)に由来しています。
その実の形状がBallに似ているからです。
Bicostataは二つのうね・脈の意味です。
実に二本の段(脈)があるためです。
Maideniiは本種を発見したMaiden氏に由来しています。
pseudoglobulusはglobulusに似ているの意味です。
ssp. globulusに良く似ていますが、
蕾と実が決定的に異なるため、別種であるということです。
---------------------------------------------------- # by eucalyptus_k | 2011-02-22 01:20 | ユーカリ(品種知識)
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