剪定の基本
ユーカリだけでなく、
植物の剪定と言うのはとても難しいものです。
私のように趣味で育てているのであれば、
あちゃー失敗した、、、で済みますが、
販売用として栽培されている方には
商品の品質に関わる大問題です。
最近、良く剪定に関するご質問があります。
ただ私もそんなに多くを知っているわけではなく、
もっと、多くの知識をお持ちの方もいると思います。
最初は良く失敗していましたが、
最近は何故か感覚で切っていると
それなりに樹形が整うようになってきました。
それでも、植物は生き物ですから、
どうしても言うことを聞いてくれない株もありますし、
真っ直ぐにしか伸びてくれない株もあります。
あくまでも、、、ですが、
下記のとっても基本の情報だけお伝えしておきます。
ただ、本当にこのようにうまくいかないこともありますので、
あくまでも基本情報として心に留めておいてください。
良く初心者の方は、剪定=枝を減らすこと
と思っていらっしゃる方が多いようです。
ところが枝を落としてしまうと、
もうそこからは新芽が生えてこずに、
先端の方に成長点が移ってしまうことが多いです。
良くプロの方は、剪定=葉を減らすことだと言います。
枝ごと落とすのでなければ、基本は切った手前の葉元から、
二股に分かれて成長することが多いです。
これを考えて切れば、より枝数を増やし、
こんもりとした樹形に育てられることと思います。
良く、街路樹などで剪定されているものが、
上の画像の良い例のようになっていると思います。
切った直後はかなり不格好になってしまいますが、
あくまでも次への布石であると考えてください。
街路樹などで丸刈りにされている木を見かけますが、
ユーカリは丸刈りは避けた方が良いようです。
ユーカリは確かに、丸刈りでも、切株でも、
復活する可能性の高い植物ですが、
その際は枯れてしまうという覚悟も必要です。
強剪定をする場合も、なるべく葉は残すようにして、
あまり盛夏の強剪定は避けた方が良いでしょう。
ただ、ユーカリは多種多様、
上に伸びる力が強いもの、脇芽を良く出すものと様々です。
よく、緑の手とか、植物と話ができるなんて言いますが、
何となく、毎日何時間もユーカリと触れ合っていると、
ユーカリの声が聞こえるわけではありませんが、
ユーカリが何を望んでいるか、少しわかるようになるときがあります。
とにかく、たくさん触れ合って仲良くなることこそが、
言うことを聞かせるための最も大きなポイントかもしれませんね。
とっても基本情報ですが、
ご参考までによろしくお願いします。- # by eucalyptus_k | 2012-09-07 11:50 | ユーカリ(栽培知識)
【ユーカリ紹介-50】
ユーカリ・パキロマ (Eucalyptus pachyloma)記念すべき第50回目は、
スイートセンテッドの名称で呼ばれ
現地ではクリスマス・ツリーやリースとしても人気の
ユーカリ・パキロマです。
◎ユーカリ・パキロマ
【学名:Eucalyptus pachyloma】
【英名:Kalgan Plains Mallee】
このpachylomaは日本やその他各国では
とてもマイナーなユーカリです。
私も当初は全くのノーチェックで、
親愛なるこあら師匠が見つけ出してこられたのを
ご紹介いただいたことがきっかけで育て始めました。
オーストラリア以外では全く知られていないpachylomaですが、
生息地の西オーストラリアでは、スイートセンテッドの名で親しまれ、
クリスマス・ツリーやリースなどに人気のユーカリです。
オーストラリアのクリスマスは真夏ですし、
このpachylomaの花期も12月~1月の真夏となっています。
このpachylomaは小さなクリーム色の花をたくさん咲かせるので、
花が咲いて、甘い香りのするクリスマス・ツリーやリースとして
とても重宝されているようです。
パッと見は一般的な細長い葉のユーカリですが、
とにかく、たくさん脇芽を出す性質を持っています。
また、良く太陽に当てた葉は、鮮やかなエメラルドグリーンで、
じっと見ていると、なかなかに美しいユーカリだと感じます。
育苗初期には、少し光沢のある柔らかい深緑の葉が出てきますが、
そこから、十分な日光に当てて育てていると、
比較的、硬い、鮮やかな色の葉に変わってきます。
逆に、あまり日光に当てずに、半日陰などで育てていると、
葉の色はかなり緑色の濃い葉へと成長します。
pachylomaは大きく育っても、4m程度の低木Malleeです。
ただMallee(灌木型)の中では、横に広がる性質が強く、
さらに樹高の低い、ブッシュ状になることも多いようです。
また低木で収まる品種ですから、
鉢植えでも管理しやすく、早期の開花が見込める品種です。
pachylomaという学名は、硬い実の縁という意味です。
私はまだ花を見ていないので何とも言えませんが、
実の縁がとても硬いことが特徴のようです。
その特徴に関係しているのかもしれませんが、
pachylomaのタネはとても変わっています。
かなり大ぶりで角があり、とても硬い殻を持っています。
そのため、pachylomaは発芽が非常に困難で、
なかなか発芽がうまくいかなかったり、
発芽までにとても時間がかかったりなど、
タネ播き~発芽の間ににとても気を使うユーカリです。
pachylomaをタネから育てる場合には、
発芽さえクリアすれば、
しばらくは安心して育てられるでしょう。
その英名の通りにKalgan Plainという、
Kalgan川に面した草原地帯の
非常に限られた地域に生息しているため、
日本などではタネを手に入れるのも少し苦労しますが、
現地では栽培品種として人気があるため、
生息地が狭い割には、タネは比較的流通しているようです。
Kalgan Plain付近はとても穏やかな気候帯で、
西AZの中では比較的湿潤な環境のため、
pachylomaは少しの過湿耐性となかなかの耐陰性を持っており、
日本でもかなり育てやすいユーカリだといえます。
基本的には、一般的な西AZのユーカリと同じように、
十分な直射日光に当てて、乾燥気味に管理するのがベストです。
ただし、吸水量はなかなかのもので、
暑くなってからの水切れには少し注意が必要です。
また、穏やかで、暑すぎず、寒すぎない環境に生息しているため、
あまり暑すぎると、葉痛みが発生することもあり、
夏場は少し遮光をするか、半日陰強くらいの
涼しい環境で管理する方が調子は良くなります。
このpachylomaは菌類系の病気に
とても弱いという弱点があります。
色々と育てていてわかってきたのですが、
とにかく、ジメジメしているような
空中湿度の高い環境をとても苦手としています。
耐陰性があるからといって、
あまり暗く風通しの悪い場所で育てると、
他のユーカリには全く見られないような、
サビ病のような症状がかなりの確率で発生します。
あまりに暑すぎると、少し葉痛みが出ることもありますが、
終日直射日光の当たる場所で育ててているpachylomaには、
ほとんど病気の症状が出ることはありません。
とても管理しやすいpachylomaですが、
空中湿度の管理が悪いと、高確率で発生する
サビ病だけが大きなネックになってきます。
この病気はとても伝染力が強いので、
感染した葉はなるべく早く殺菌剤で消毒し、
酷く症状の出た葉は取り除いてしまった方が良いです。
ただし、この症状で一気に枯れるようなことはないので、
pachylomaを育てていて、この症状が出る場合は、
少し環境が好ましくないよというサインだと思ってください。
pachylomaの成長速度ですが、
私の育てている西AZのユーカリの中でも
トップクラスに遅い部類になります。
さらに環境が良ければ、もっと成長するのかもしれませんが、
我が家で最もベストな株が、1年で20cm成長するかどうかです。
ただし、先述したように、脇芽はとても激しく出ますので、
上に伸びるよりも、枝数を増やし、
葉の隙間をとにかく詰めていくという性質が強いです。
穏やかな気候帯に生息するユーカリの例に漏れず、
pachylomaはあまり耐寒性の強いユーカリとは言えません。
それでも40cmを超えるくらいまで育てば、
-5℃程なら問題なく屋外越冬可能です。
ただ小さな苗の間はある程度の防寒対策が必要かもしれません。
寒風さえ防ぐことができれば、全然大丈夫で、
一昨年の冬に、わずか数センチの幼苗が、簡易温室内で、
-5℃の環境下でも葉痛みなしで越冬できています。
逆に冬季に屋外の雨ざらしの場所で管理すると、
小さな株は結構枯れてしまったという話を聞いているので、
幼苗時には寒風を完全に防げるような、簡易温室の使用を推奨します。
次にスイートセンテッドとまで呼ばれている
気になるpachylomaの香りですが、
驚くほどにまで強く甘い香りというわけではありません。
ベースはシネオールベースですが、
確かに少し甘みが強く、柑橘系の香りも加わった
なかなかに良い香りを感じることができます。
また、香りの強さは弱くもなく、強くもないという感じで、
葉を強く指でこするか、葉をクラッシュすると良く香ります。
花を咲かせてみないとわかりませんが、
もしかすると、その花がとても甘い香りで、
スイートセンテッドという名称は、
花が咲いたpachylomaから付けられた名前なのかもしれません。
非常にマイナーで知る人ぞ知るpachylomaですが、
葉の茂り具合と、葉の鮮やかなエメラルドグリーンは
なかなかに美しく、育ててみて損はありません。
もし育ててみたい方がいらっしゃったら、
現在、在庫があるかはわかりませんが、
親愛なるこあら師匠の農場でも
少数を育てていらっしゃるはずです。
枝数が多く、間が詰まっていますし、
良い香りもするのでリースなどにも最適です。
また、成長力はとても控え目で、
小さな鉢植えでも管理しやすいユーカリです。
魅力的なスイートセンテッドpachylomaを
ぜひ一度育ててみてください!
------------------------------
<栽培難易度:C>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★
要水分:★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★
耐病虫:★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-09-04 16:27 | ユーカリ紹介
【ユーカリ紹介-49】
ユーカリ・エクストリカ (Eucalyptus extrica)続きまして第49回目は、
先日紹介したpleurocarpaの亜種で
テトラゴナ・グリーンこと
ユーカリ・エクストリカです。
◎ユーカリ・エクストリカ
【学名:Eucalyptus extrica】
【英名:Eastern Tallerack】
以前はpleurocarpaと同種で
Eucalyptus tetragonaという学名でしたが、
近年、その異なる特徴が発見されたために、
Eucalyptus extricaという学名に分割されています。
新しい学名が付けられた今日でも
tetragonaという名称は未だに根強く残っており、
緑色の強いextricaはテトラゴナ・グリーンとも呼ばれます。
日本でも切枝としてメジャーなpleurocarpaとは異なり、
知る人ぞ知る、とてもマイナーなユーカリです。
あまりにもマイナーなため、
日本の切枝に混ざっていることは恐らくあり得ないでしょう。
現在、このextricaのタネを販売しているタネ屋は
オーストラリアにただ一つしか見つかっていません。
やはり、extricaの何よりもの魅力は、
エメラルドグリーンの葉と茎でしょう。
pleurocarpaには及びませんが、
それでも他のユーカリと比べると、
白銀色はとても素晴らしく美しいです。
実は、このextricaもpleurocarpaと同様に、
発芽してからしばらくの間は、
緑色の葉をしており、たくさん毛が生えています。
上の写真の株とその他の写真の株は
全く同じ株になります。
最初育て始めたときには、
別のユーカリ?とさえ思ってしまいます。
この時点でextricaとpleurocarpaを
見分けることはほぼ不可能です。
そのまま成長していき、50cmを超えるくらいから、
急に全ての毛が抜けていき、毛のない葉が生え出します。
葉や茎の白銀色もそのあたりから強くなり出します。
そして、どんどん成長していくに従って、
葉や茎の白みはどんどん増していきます。
extricaとpleurocarpaの違いは
グリーン/シルバーの通りまずその色です。
確かにextricaの方が葉色がエメラルドグリーンになり、
pleurocarpaの方が葉色が白くなる傾向にあります。
ところが実際は、葉色にはあまり差がなく、
個体差で十分に入れ替わってしまいます。
ところが茎の色にだけははっきりとした違いがあります。
グリーン/シルバーという違いは、葉色ではなく、
その茎の色の違いから来ているようです。
少し写真ではわかりにくいところがありますが、
extricaの方が明らかに緑色が強くなっています。
また、茎の形状が、
強いウイング型をしているpleurocarpaに比べて、
extricaはそこまで激しいウイング型ではなく、
通常の四角形に近くなる傾向が強いです。
他には、extricaの方が葉先が尖り、葉が長細くなり、
脇芽をたくさん出して、横に広がる性質が強いです。
一方のpleurocarpaは、葉が丸みを帯びており、
比較的真っ直ぐに上に伸びる性質が強いです。
下の写真でもわかるように、
すでにたくさんの脇芽を出しています。
それでも、葉の形状や樹形、茎の色だけでは、
なかなか素人目には見分けがつかないこともあります。
亜種として分けられる要因にもなった決定的な違いは、
その蕾・実の形状と色です。
角があり、四角形のpleurocarpaの実と比べると、
extricaの実はほとんど角が存在せず、
全くもしくは少ししか粉を吹いていません。
この実こそが決定的な識別のポイントですが、
何株もextricaとpleurocarpaを育てていると、
最終的には、パッと見でわかるようになります。
ちなみにextricaという学名には
抜け出たという意味があり、tetragonaから抜け出した、
特殊な特徴をもったユーカリということになります。
その生息地は、オーストラリア南西部の沿岸地域、
エスペランス東のオーストラリアでも有名な
美しい海岸が広がっている地域です。
extricaは、pleurocarpaの生息地よりも、
さらに東部の狭い範囲の地域に生息しているため、
Eastern Tallerackと呼ばれています。
この辺りは、たくさんの珍しいユーカリが生息する地域で、
沿岸部出身なので、どれも耐塩性がかなり強いようです。
そのため、extricaは、海の傍であっても、
容易に栽培することが可能なようです。
extricaは低木のMallee(灌木型)です。
最高樹高はpleurocarpaよりもさらに低く4m程度で、
より横に広がりやすい性質を持っているようです。
そのため、サイズ的には鉢植えでも管理しやすく、
何よりも数十センチの樹高で開花が見込めます。
以前の記事でも紹介しましたが、
我が家での開花第一号はこのextricaでした。
開花した株は、わずか樹高50cm弱と低いながらも、
とても美しく、繊細で小さな花を咲かせてくれました。
下の写真は最も満開の時の写真です。
こんな魅力満点のextricaですが、
栽培に関しては少し我儘なところがあります。
まず、他の西AZのユーカリの例にもれず、
直射日光に良く当てて、乾燥力の強い用土で、
乾燥気味に育てることが大切です。
水分管理にはかなりうるさいようで、
好む環境が作れていないと、
全くと言っていいほど成長してくれません。
extricaはpleurocarpaよりも
さらに少しだけデリケートな面を持っています。
私は当初、水分管理がうまくできずに、
一年で5cmしか成長しなかったことがあります。
あまりにも成長が緩慢だったので、
マイペースというあだ名を付けていたほどです。
ところが、ひとたび好む環境を構築できれば、
成長力はalbidaなどよりも遥かに激しくなります。
またひとたび成長力に火がつくと、
夏季の吸水量は半端なくなります。
夏季限定でgunniiなどの吸水量は顔負けになります。
また、激しく粉を吹いているので、
macrocarpaなどと同様に、激しい西日を浴びても
全く葉焼けするようなこともありません。
とにかく、乾燥力の強い用土で、
終日直射日光に当てることが、栽培のポイントです。
真夏は成長が控え目になる植物が多い中、
extricaは真夏でも激しく成長します。
注意するところは、先述した激しい吸水量です。
水が切れると、結構早い段階で葉先に枯れが出ます。
吸水量が激しく、水切れにも弱いくせに、
水分管理にうるさく、過湿を嫌うというのが、
このextrica栽培の最も難しいポイントです。
このextricaを上手く育てるポイントとしては、
育苗初期には少し小さめの鉢で育て、
成長力に火が付いたら、一気に大きな鉢に植え替えるというのが
個人的には良いように思っています。
何はともあれ、早く乾く土で頻繁に乾いて水を与えるという、
栽培では最も手のかかるサイクルを好むユーカリの代表格です。
また、もう一つの成長のポイントとしては、
高い気温のようです。
親愛なるこあら師匠の農場でも、
夏季に40℃を超えるようなビニルハウス内で
ひと際元気に育っていると伺っています。
他のユーカリと比べると少し我儘なextricaですが、
私は西AZのユーカリの入門編に最適だと思っています。
育て方がハッキリしていてわかりやすく、
西AZのユーカリの特徴を掴むのに最適だからです。
また、育苗難易度も立ち枯れしにくく、
西AZのユーカリの中では簡単な部類になります。
ただし、pleurocarpaに比べると、空中湿度に敏感で、
湿度の高い梅雨時期などには、葉に枯れが出たり、
褐班ができることが多くなっています。
毎年、我が家のextricaは、全ての株が、
梅雨時期に何らかしかの葉痛みが発生します。
そのため、pleurocarpaよりも風通しを重視し、
空中湿度をあまり上げないようにする工夫が
必要になってくるかと思います。
気になるextricaの耐寒性ですが、
実はこの耐寒性がextricaのネックになります。
そこそこの樹高にまで育ち、
毛がなくなり、硬い葉に育ったextricaは
-5℃程度までは問題なく耐えられます。
ところが毛の生えている間の小さな株は
0℃以上で管理することが推奨となります。
また霜にもとても弱く、激しく葉痛みを起こします。
60cmを超えるような株であれば、
関西や関東の暖地では容易に野外越冬が可能ですが、
小さな間は無加温の簡易温室内で越冬する方が無難です。
無加温であっても、簡易温室内で寒風を防げるならば、
-5℃の環境で、発芽したての苗の越冬実績があります。
この耐寒性の弱さは、extricaの生息地が
ほとんど0℃を下回ることのない地域であることに起因しています。
extricaはとにかく、あまり寒さには強くないユーカリなので、
どうしても葉痛みを避けたい場合には、
寒い夜には簡易温室内に退避すると良いでしょう。
一つ注意するポイントですが、
冬になれば、確かに吸水量は激減しますが、
毛の生えているユーカリは、余り寒い冬を知らないためか、
冬になっても、他のユーカリと比べると水を欲する傾向があります。
とはいえ、1週間に一回程度のペースですが、
安心していると水切れを起こすので少し注意してください。
pleurocarpaと比べると若干乾燥を好むようです。
次に気になるextricaの香りですが、
残念なことに、pleurocarpaと全く同じ香りで、
万人受けする良い香りとは言えません。
現地では、レモンの香りと言う人もいるようですが、
レモンと言うよりは、レモンの皮を砕いたときの生臭い香りに、
シネオールが加わったような、少し渋い香りです。
また、ユーデスモールという漢方成分も含まれているため、
少しスパイシーな薬草っぽい香りにも感じます。
香り自体は決して弱い方ではなく、
指で葉を軽く撫でると香るほどですが、
香りを楽しむユーカリとしては少しキツイかもしれません。
薬草系の香りが好きなマニアの方には
もしかすると喜ばれる香りかもしれません。
香りはともかくとして、
シルバーのpleurocarpaに対して、
エメラルドグリーンの美しいextricaも
明らかに見るものを魅了することのできるユーカリです。
また西AZのユーカリのスタンダードとしても最適で、
ユーカリファンの人にはぜひ一株育ててほしい品種です。
とはいえ、pleurocarpa以上にマイナーで、
タネを手に入れることさえ困難なユーカリです。
ところが、、、このextricaも!
親愛なるこあら師匠の農場では主力商品です。
この美しいextricaを育ててみたい方には
素晴らしい農場を紹介します!
extricaとpleurocarpaを一緒に育てて、
その違いを見比べてみるのも一興ですよ!
------------------------------
<栽培難易度:C>
香良さ:★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★
耐過湿:★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-08-31 09:26 | ユーカリ紹介
【ユーカリ紹介-48】
ユーカリ・プレウロカルパ (Eucalyptus pleurocarpa)続きまして第48回目は、
日本では切枝用としても人気があり、
白銀の葉と茎がひときわ眩しい、
テトラゴナ・シルバーこと
ユーカリ・プレウロカルパです。
◎ユーカリ・プレウロカルパ
【学名:Eucalyptus pleurocarpa】
【英名:Tallerack / Mealy Gum / Silver Marlock / White Marlock】
とても人気のあるpleurocarpaですが
やっとこちらで紹介することができました!
とにかく、日本ではテトラゴナ名で切枝としても有名!
ユーカリの中でも、ずば抜けた美しさを持っています。
このユーカリ、元々はEucalyptus tetragonaという学名でした。
ところが、近年、大きな違いを持った亜種が見つかったため、
Eucalyptus pleurocarpaという学名に分割されています。
その大きな違いを持った亜種は、後日紹介しますが、
先日開花をした、Eucalyptus extricaです。
新しい学名が付けられた今日でも
tetragonaという名称は未だに根強く残っており、
白みの強いpleurocarpaはテトラゴナ・シルバーとも呼ばれます。
また一方、緑色の強いextricaについては、
テトラゴナ・グリーンと呼ばれています。
基本的には、このシルバーのpleurocarpaの方が主流で、
日本で見かけるテトラゴナの切枝は、
ほぼ間違いなく、このpleurocarpaのものです。
pleurocarpaの何よりもの魅力は、
切枝でも評価されているその純白の葉と茎です。
葉も茎も非常に強く粉を吹いています。
またその新芽はとても美しく純白そのものです。
実は、このpleurocarpa、
発芽してからしばらくの間は、
緑色の葉をしており、たくさん毛が生えています。
上の写真の株とその他の写真の株は
全く同じ株になります。
最初育て始めたときには、
別のユーカリ?とさえ思ってしまいます。
そのまま成長していき、50cmを超えるくらいから、
急に全ての毛が抜けていき、毛のない葉が生え出します。
葉や茎の白銀色もそのあたりから強くなり出します。
そして、どんどん成長していくに従って、
葉や茎の白みはどんどん増していきます。
最終的に立派な木になった株は
下の写真のような美しい純白の外観になります。
他にも我が家で大きく育ったpleurocarpaの写真があります。
詳しくはこちらの記事の写真をご覧ください。
pleurocarpaとextricaの違いは
シルバー/グリーンの通りまずその色です。
確かにpleurocarpaの方が葉色が白くなり、
extricaの方が葉色が緑がかる傾向にあります。
ところが実際は、葉色にはあまり差がなく、
個体差で十分に入れ替わってしまいます。
ところが茎の色にだけははっきりとした違いがあります。
シルバー/グリーンという違いは、葉色ではなく、
その茎の色の違いから来ているようです。
また、茎の形状はウイング型という尖った四角形をしています。
茎の断面が忍者の手裏剣のような形になります。
これがextricaですとそこまで激しいウイング型ではなく、
通常の四角形に近くなる傾向が強いです。
他には、pleurocarpaの方が葉が丸みを帯びており、
比較的真っ直ぐに上に伸びる性質が強いです。
一方のextricaは、葉先が尖り、葉が長細くなり、
脇芽をたくさん出して、横に広がる性質が強いです。
それでも、葉の形状や樹形、茎の色だけでは、
なかなか素人目には見分けがつかないこともあります。
亜種として分けられる要因にもなった決定的な違いは、
その蕾・実の形状と色です。
実の形状は角があり、四角形をしています。
実はpleurocarpaという学名も
その実の形状から名づけられました。
pleuroはribという意味でうねや盛り上がりという意味です。
carpaは実ですから、角のある実という意味ですね。
また、その実が白く粉を吹いていることも特徴です。
後日また詳しく紹介しますが、extricaでは、
実に角がなく、ほとんど粉を吹いていません。
この実こそが決定的な識別のポイントですが、
何株もpleurocarpaとextricaを育てていると、
最終的には、パッと見でわかるようになります。
pleurocarpaは現地ではその学名よりも
Tallerackというアボリジニ名で親しまれています。
その生息地は、オーストラリア南西部の沿岸地域、
エスペランス東のオーストラリアでも有名な
美しい海岸が広がっている地域です。
この辺りは、たくさんの珍しいユーカリが生息する地域で、
沿岸部出身なので、どれも耐塩性がかなり強いようです。
そのため、pleurocarpaは、海の傍であっても、
容易に栽培することが可能なようです。
pleurocarpaは低木のMallee(灌木型)です。
上に伸びれば、最高5mくらいにはなるようですが、
大体は横に広がって、2~3mくらいのブッシュ状になるようです。
そのため、サイズ的には鉢植えでも管理しやすく、
何よりも数十センチの樹高で開花が見込めます。
下の写真は我が家のベランダの
pleurocarpaの開花写真です!
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我が家のベランダでpleurocarpaが開花!
※更に詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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こんな魅力満点のpleurocarpaですが、
栽培に関しては少し我儘なところがあります。
まず、他の西AZのユーカリの例にもれず、
直射日光に良く当てて、乾燥力の強い用土で、
乾燥気味に育てることが大切です。
水分管理にはかなりうるさいようで、
好む環境が作れていないと、
全くと言っていいほど成長してくれません。
私は当初、水分管理がうまくできずに、
一年で5cmしか成長しなかったことがあります。
あまりにも成長が緩慢だったので、
マイペースというあだ名を付けていたほどです。
ところが、ひとたび好む環境を構築できれば、
成長力はalbidaなどよりも遥かに激しくなります。
またひとたび成長力に火がつくと、
夏季の吸水量は半端なくなります。
夏季限定でgunniiなどの吸水量は顔負けになります。
また、激しく粉を吹いているので、
macrocarpaなどと同様に、激しい西日を浴びても
全く葉焼けするようなこともありません。
とにかく、乾燥力の強い用土で、
終日直射日光に当てることが、栽培のポイントです。
真夏は成長が控え目になる植物が多い中、
pleurocarpaは真夏でも激しく成長します。
注意するところは、先述した激しい吸水量です。
水が切れると、結構早い段階で葉先に枯れが出ます。
吸水量が激しく、水切れにも弱いくせに、
水分管理にうるさく、過湿を嫌うというのが、
このpleurocarpa栽培の最も難しいポイントです。
このpleurocarpaを上手く育てるポイントとしては、
育苗初期には少し小さめの鉢で育て、
成長力に火が付いたら、一気に大きな鉢に植え替えるというのが
個人的には良いように思っています。
何はともあれ、早く乾く土で頻繁に乾いて水を与えるという、
栽培では最も手のかかるサイクルを好むユーカリの代表格です。
また、もう一つの成長のポイントとしては、高い気温のようです。
親愛なるこあら師匠の農場でも、
夏季に40℃を超えるようなビニルハウス内で
ひと際元気に育っていると伺っています。
他のユーカリと比べると少し我儘なpleurocarpaですが、
私は西AZのユーカリの入門編に最適だと思っています。
病虫害にも比較的強く、
育て方がハッキリしていてわかりやすく、
西AZのユーカリの特徴を掴むのに最適だからです。
また、育苗難易度も立ち枯れしにくく、
西AZのユーカリの中では簡単な部類になります。
このpleurocarpaを上手く育てることができるなら、
他の西AZのユーカリも問題なく育てることができますし、
このpleurocarpaの育て方をベースにするととても良いです。
気になるpleurocarpaの耐寒性ですが、
実はこの耐寒性がpleurocarpaのネックになります。
そこそこの樹高にまで育ち、
毛がなくなり、硬い葉に育ったpleurocarpaは
-5℃程度までは問題なく耐えられます。
ところが毛の生えている間の小さな株は
0℃以上で管理することが推奨となります。
また霜にもとても弱く、激しく葉痛みを起こします。
60cmを超えるような株であれば、
関西や関東の暖地では容易に野外越冬が可能ですが、
小さな間は無加温の簡易温室内で越冬する方が無難です。
無加温であっても、簡易温室内で寒風を防げるならば、
-5℃の環境で、発芽したての苗の越冬実績があります。
この耐寒性の弱さは、pleurocarpaの生息地が
ほとんど0℃を下回ることのない地域であることに起因しています。
pleurocarpaは現地オーストラリアでも栽培用として人気があります。
ところが多くの地域ではpleurocarpaの生息地よりも寒くなるので、
激しい葉痛みが起こりますが、現地の栽培者も親愛なるこあら師匠も、
冬にはある程度は傷むものだと割り切って育てているようです。
pleurocarpaはとにかく、あまり寒さには強くないユーカリなので、
どうしても葉痛みを避けたい場合には、
寒い夜には簡易温室内に退避すると良いでしょう。
一つ注意するポイントですが、
冬になれば、確かに吸水量は激減しますが、
毛の生えているユーカリは、余り寒い冬を知らないためか、
冬になっても、他のユーカリと比べると水を欲する傾向があります。
とはいえ、1週間に一回程度のペースですが、
安心していると水切れを起こすので少し注意してください。
次に気になるpleurocarpaの香りですが、
残念なことに、万人受けする良い香りとは言えません。
現地では、レモンの香りと言う人もいるようですが、
レモンと言うよりは、レモンの皮を砕いたときの生臭い香りに、
シネオールが加わったような、少し渋い香りです。
また、ユーデスモールという漢方成分も含まれているため、
少しスパイシーな薬草っぽい香りにも感じます。
香り自体は決して弱い方ではなく、
指で葉を軽く撫でると香るほどですが、
香りを楽しむユーカリとしては少しキツイかもしれません。
薬草系の香りが好きなマニアの方には
もしかすると喜ばれる香りかもしれません。
香りはともかくとして、
その美しい外観は明らかに見るものを魅了します。
また西AZのユーカリのスタンダードとしても最適で、
ユーカリファンの人にはぜひ一株育ててほしい品種です。
とはいえ、その辺に簡単に売っているような
超メジャーなユーカリではありませんが、
親愛なるこあら師匠の農場では主力商品です。
この美しいpleurocarpaを育ててみたい方には
素晴らしい農場を紹介します!
私も将来、広い庭を手に入れた暁には、
是非とも露地植えしたいと考えているユーカリです。
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<栽培難易度:C>
香良さ:★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★
耐水切:★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-08-30 09:13 | ユーカリ紹介
今年の夏!調子の良いユーカリ
プレウロカルパ/カエシア/ガモフィラ編先日、ご紹介しました、
今年の夏に調子の良いユーカリのうちから、
pleurocarpa/caesia ssp. magna/gamophylla
の三種をご紹介します。
左から順に
pleurocarpa/caesia ssp. magna/gamophyllaです。
まずpleurocarpaです。
これは我が家で今年一番調子が良いユーカリです。
このpleurocarpaは何と!
1日に二回もの水遣りを必要とします。
成長力も半端なく、葉もとても立派で大きいです。
今年はもっと状態の悪いextricaに先を越されましたが、
来年は開花が見込めるでしょうか? 楽しみです。
次にcaesia ssp. magnaです。
非常に強健なユーカリなので、
昨年までは日照の悪い場所に置いていましたが、
今年からは開花を目指して、フル日光の場所に出しました。
その途端、成長力に火がついて激しく成長し始めました。
このcaesia ssp. magnaも
およそ1.5日に一回の水遣りを必要とします。
また、水を切らすと、結構早く葉先に枯れが出るので、
水切れには特に注意が必要なユーカリです。
太陽をふんだんに浴びると
ウサギの団扇のように大きな葉に育ちます。
先程のpleurocarpaとこのcaesia ssp. magnaの
一升瓶との大きさ比較写真です。
そして、今日の最後は、Blue-leaved Malleeことgamophyllaです。
他の二種に比べると幾分か乾燥には強いようで、
1日一回の水遣りで、水切れは防げるようです。
このユーカリはperrinianaのように
ツキヌキ状になる品種なのですが、
今のところ、いくつかツキヌキ状の葉はありますが、
そんなに頻繁にツキヌキにはなっていないようです。
写真では、とても白いユーカリに見えるかと思います。
ところが、ほとんど粉はふいておらず、
純粋に葉色が白い感じになっています。
葉は粉をふくどころか、少し光沢がありツルツルしています。
このユーカリも低木Malleeだからでしょうか?
非常に癖が悪く、真っ直ぐに伸びてくれることはありません。
この三種全てが、比較的低木のMallee(灌木型)ですから、
我が家のベランダでも開花が見込めるかと思います。
このまま傷まずに順調に成長を続けて欲しいものですね。- # by eucalyptus_k | 2012-08-29 20:50 | ユーカリ(栽培実績)