【ユーカリ紹介-25】
ユーカリ・クルキス (Eucalyptus crucis ssp. crucis)続きまして第25回目は
西オーストラリア軍団の一員で、
日本では全く知られていないユーカリですが、
kruseanaに次いでコバルトブルーの銀葉が美しい、
サザンクロス・シルバー・マリーこと、
ユーカリ・クルキスです。
◎ユーカリ・クルキス
【学名:Eucalyptus crucis ssp. crucis】
【英名:Southern Cross Silver Mallee】
crucisは日本では本当に全く知られていないユーカリです。
苗が売っているどころか、日本語の資料さえ見つかりません。
また園芸用植物としてユーカリが注目されている欧米においても、
ほとんどデータを発見することができないほどにマイナーです。
オーストラリア本土では、
銀葉の美しい園芸用品種として細々と栽培されています。
そのため、西オーストラリアのタネ屋を中心に、
何とかタネの在庫を見つけることができました。
crucisは私も当初は全く知らなかったようなユーカリですが、
たまたま銀葉の美しい品種を探しているときに、
オーストラリアの個人栽培者のブログから見つけました。
サザンクロス(南十字星)という名称が非常に印象的で、
ついつい突っ込んで調べたために良く知ることができました。
ちなみに学名のcrucisもCross(十字架)の意味です。
このサザンクロスという名称の由来ですが、
オーストラリア南西部のSouthern Crossという
町の周辺にのみ自生しているユーカリだからです。
カッコイイ英名の由来はその生息地名というわけです。
地図で見てみるとわかりますが、
このSouthern Crossという町は、
kruseanaの生息地であるKalgoorlieの比較的近くです。
そのため、その性質もkruseanaに良く似ています。
たまたま、欧米の栽培者に目を付けられたことで、
比較的メジャーになったkruseanaですが、
このcrucisも何かの拍子に注目を集めることができれば、
kruseanaに次いでメジャーになれること間違いなし!
それほどまでに美しい銀葉が特徴です。
艶消しでザラザラしているkruseanaの葉とは異なり、
crucisの葉は肉厚で少し透明感があり、
pulverulentaの葉のようです。
茎や葉の白色はかなり強く、kruseanaと同じように、
強力な日焼け止めをもっているため、
強い直射日光の元で育てる必要があります。
何よりも特徴的なのは、その逆ハート型の葉形です。
どちらかというと葉の長さよりも幅の方が大きくなるため、
より可愛らしいハート型を演出してくれています。
また、茎を挟んだ左右の葉が強く密接しているために、
新芽の部分はインコのクチバシのようにも見えます。
この可愛らしい外観と強く粉を吹いたような葉色は、
誰もが心を奪われるような美しさを持っています。
樹木としては15m程度とユーカリでは低めの灌木状に育ちます。
また、このcrucisはminnirichiという特徴的な樹皮をしています。
派手な赤色基調の樹皮が細かく剥けて
黄色い筋模様を形作っています。
激しく剥けたminnirichiは
まるで赤い虹のように見えることもあります。
またcrucisは比較的低い樹高で開花を目指すことのできる品種です。
1m程度の鉢植えで開花したという情報もあります。
花自体はクリーム色の一般的なユーカリの花ですが、
その蕾が純白で非常に美しく、花材としても利用できそうです。
丈夫に育てるためには、とにかく強い直射日光が必要です。
一日中、直射日光がガンガンに降り注ぐような環境が推奨です。
その他では、乾燥気味に管理するといった、
西オーストラリア軍団の代表的な育て方をします。
crucisは過湿に非常に弱い西オーストラリア軍団の中では、
少しだけ過湿耐性を持っているため、育てやすい方です。
例えばkruseanaと比べると明らかに育てやすいです。
また、葉が肉厚のため、病害虫の影響も受けにくい方です。
実際はあまり水を必要としない部類のユーカリですから、
乾燥気味に管理し、用土が完全に乾くタイミングで
たっぷり水遣りをするのが最も良い管理方法といえます。
また少しの過湿耐性を持っているとは言っても、
高い空中湿度をとても嫌う性質があります。
そのため梅雨時期~夏場にかけて、
風通しが悪く、湿気の籠りやすい悪い場所で管理すると、
葉痛みが出たり、うどんこ病の被害が出ることがあります。
耐寒性については-7℃程度までは頑張るようで、
西オーストラリア軍団の中ではかなり強い方です。
今年の大阪の冬では葉が痛むことさえありませんでした。
冬は特に水を吸わなくなるので、より乾燥気味に管理してください。
強い寒風を避けることで、葉の痛みを防ぎ、
美しい葉を一年中維持できることと思います。
気になるcrucisの香りですが、
典型的なシネオール系の香りがスッと突き抜けて、
少しだけ柑橘系の香りが感じられます。
cinereaやcordataなどに良く似た香りです。
香りの強さはcinereaなどと同じで、
葉を軽く指で擦ると良く香ってきます。
香りを楽しむハーブとしても十分利用できます。
crucisは非常にマイナーなユーカリで、
育てたい方はタネから育てるしかないところでしたが、
この度、親愛なるこあら師匠にご紹介させていただいたため、
現在は定番商品としていくつか在庫をお持ちのことと思います。
育ててみたい方にはご紹介させていただきます。
乾燥気味に管理し、強い直射日光に当てることで、
その葉の白さがどんどん増していきます。
一番白いときの新芽はまさに純白そのものです。
銀葉のユーカリが好きな人はcrucisの虜になること間違いなし!
私一押しのそれはそれは美しいユーカリですよ^^
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<栽培難易度:C>
香良さ:★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2011-03-21 01:12 | ユーカリ紹介
ユーカリ紹介改訂のご連絡
今、色々と過去のユーカリ紹介の記事に
訂正や追加、改訂を行っています。
現在、下記の記事が改訂済みになっています。
viminalisの記事では2種の亜種を紹介しています。
perrinianaの記事では2種の型について紹介しています。
興味があったら読んでくださいね。
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01. ユーカリ・シルバーダラー
02. 銀世界ユーカリ
03. 銀丸葉ユーカリ
04. ユーカリ・グニー
05. ユーカリ・プルベルレンタ
06. ユーカリ・ベイビーブルー
07. ツキヌキユーカリ
08. ユーカリ・ビミナリス
09. ユーカリ・オービフォリア
10. ユーカリ・アップルボックス
11. ユーカリ・コルダータ
12. ユーカリ・グロブルス
13. ユーカリ・グランディス
14. ユーカリ・ウェブステリアナ
15. ユーカリ・ゴニオカリックス
16. ユーカリ・アロマフロイア
17. ユーカリ・クルセアナ
18. ユーカリ・ロブスタ
19. ユーカリ・ルディス
※その他の記事は現在改訂中です。
------------------------------------------ # by eucalyptus_k | 2011-03-12 19:58 | ユーカリ(その他)
【ユーカリ紹介-24】
ユーカリ・ポポラス
(Eucalyptus polyanthemos ssp. polyanthemos)続きまして第24回目は
ポポラス(ポポラスベリー)として、
生け花やフラワーアレンジで有名。
その可愛いハートリーフの葉型が女性に人気の
ユーカリ・ポリアンセモスです。
◎ユーカリ・ポリアンセモス
【学名:Eucalyptus polyanthemos ssp. polyanthemos】
【英名:Red Box】
生花やフラワーアレンジの世界では、
葉と蕾や実のセットで
ポポラスベリーと呼ばれて重宝されています。
※大きく育つと写真のように涙型の葉になります。
実はこのpolyanthemosという学名は、
Many Flowers(たくさんの花)の意味で、
その名の通り、たくさんの花を咲かすユーカリなのです。
このたくさんの花=蕾がポポラスベリーを形作っています。
polyanthemosは、日本では何故か
Silver Doller Gumと呼ばれることがあり、
cinereaの英名であるSilver Doller Gumと全く同じなので
呼び名や販売名では少々ややこしいところがあります。
とにかく日本ではハートリーフユーカリ=ポポラスと思われるほど、
メジャー&人気のあるユーカリで園芸店でもたまに見かけられます。
非常に良く見かけるgunniiなどの丸葉ユーカリとは、
一風変わったハートリーフが可愛いと女性に人気があります。
上の写真はまだ比較的樹高の低いうちの葉ですが、
この原種のssp. polyanthemosでは、
ある程度の樹高になってくると、
葉が横広になってくるという特徴があります。
もちろん個体差で変わることもありますが、
葉柄(葉と幹をつなぐ部分)から
葉が90°に近い程の横方向に広がるというのが
ssp. polyanthemosの大きな特徴です。
またpolyanthemosには、
ssp. vestitaという亜種が存在します。
その紹介と比較はこちらに掲載していますので、
興味があったらご覧ください。
polyanthemosは、
ハートリーフユーカリとして販売されていることも多く、
同じハートリーフ名で販売されるorbifoliaとも良く混同されます。
polyanthemosはorbifoliaに比べると
葉の葉脈がハッキリしています。
またorbifoliaは上の写真のような
横広の葉になるようなこと絶対にありません。
※polyanthemosとorbifoliaの識別についてはこちらで詳しく紹介しています。
polyanthemosは20m程度の中規模の樹木に育ちます。
地植えをしたいという方も多くいらっしゃいますが、
広い庭があるならば不可能ではないという感じです。
かなり小まめに剪定を行ってサイズを調整しないと、
簡単に家の2階を超えてしまうことになります。
またこのssp. polyanthemosでは、
ほぼ全ての株が立派なTree(木立型)の樹木になります。
また比較的涼しい季節に成長するgunniiなどと比べると、
かなり気温の高くなる季節に大きく成長する品種です。
環境さえ合えば、成長力は旺盛な方ですから、
小まめな摘芯を心がけてください。
もしポポラスベリーのために開花を目指す場合には、
最低でも2m以上の樹高にまで育てる必要があると思います。
生息地はcinereaやpulverulentaなどの
日本でメジャーなユーカリとほぼ同じ地域なので、
比較的日本でも育てやすいユーカリの代表格です。
ただ砂利土の多い土壌を好んで生息するため、
cinereaなどに比べると、より排水性の高い用土を好みます。
水はけの悪い用土や過湿には少し弱いところがあり、
根腐れには注意が必要な品種です。
川砂や軽石などを配合した乾燥力の高い用土を使用しましょう。
また、西AZのユーカリ程ではありませんが、
東AZのユーカリの中では、中々の水切れ耐性を持っています。
ユーカリの中でも特に日光の好きな品種で、
日光に当てれば当てる程、どんどんと元気に成長します。
分厚く元気に育った葉は、
真夏の直射日光でも葉焼けするようなことはありません。
ただ、このssp. polyanthemosについては、
そこそこの耐陰性も兼ね備えているようで、
他のユーカリに比べると、半日陰くらいの環境でも、
そこそこ元気に育ってくれます。
耐寒性については、cinereaやpulverulentaなどの
同じ地域に生息するユーカリに比べると高い方ではありませんが、
それでも-7℃程度までは耐えることができます。
英名のRed Boxが表しているように、
新しい茎は赤みを帯びた色に成長することが多く、
非常に寒さの厳しい環境では、
冬に真っ赤なモミジのような色に紅葉します。
この紅葉もpolyanthemosの冬の醍醐味といえます。
我が家では、毎年寒さが足らずに全く紅葉することはありません。
おそらく、置き場所の都合で寒風を防げるためかもしれません。
polyanthemosの葉は、
苗のうちは緑色の強い葉色をしていますが、
大きくなるに従って白銀色が強くなり、
ブルーグレイの葉色になっていきます。
気になるpolyanthemosの香りですが、
シネオール系の香りをベースに、
少しミント様の甘く爽快な香りを感じます。
シネオールがガツンとくるcinereaなどよりも、
かなり親しみやすく、魅力的な良い香りです。
ところが、葉が肉厚でしっかりしているため、
葉を強く指でこすったり、
葉を千切ったときにほのかに香る程度です。
比較的、良い香りではありますが、
あまり香りを楽しむユーカリとはいえません。
polyanthemosは人気があり、良く知られているユーカリです。
近所のオシャレなケーキ屋さんの入口にも置いてありました。
ところがgunniiなどと比べると、
売っているところはあまり多くありません。
ユーカリに興味がある方に育ててほしいユーカリの代表格です。
手に入れたい方には素晴らしい農場をご紹介します。
特にオススメです。是非、育ててみてくださいね^^
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★
香強さ:★★
成長力:★★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2011-03-03 02:15 | ユーカリ紹介