【ユーカリ紹介-71】
ユーカリ・スードグロブルス
(Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus)続きまして第71回目はglobulusの中では
最もマイナーでレア度が高く、新芽の緑色が鮮やかに際立つ、
globulusの亜種ユーカリ・スードグロブルスです。
◎ユーカリ・スードグロブルス
【学名:Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus】
【英名:Pseudoglobulus / Victorian Eurabbie】
日本ではお馴染みのglobulusですが、
その中でもこのpseudoglobulusは、
最もレア度の高い亜種となっています。
厳密には現在この亜種の
タネを取り扱っているタネ屋はありません。
私は現地のSeedbankにかけ合って、
何とか少量分けてもらったものを育てています。
pseudoglobulusという学名ですが
そのままglobulusに似ているという意味になります。
ところが実際にその性質の多くは、
ssp. globulusよりも強健で万能な
ssp. bicostataに良く似ています。
globulusには4種の亜種と1種の矮性種が存在します。
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●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus var. compacta
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus
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これらは全てが非常に良く類似していて、
小さな苗や数m程度の苗木の間の識別はほぼ不可能です。
一番の識別方法は大きく育ってからできる
蕾や実の大きさや形状を比較するのが一番です。
>>>詳しい識別についてはこちらの記事をご覧ください。
今回ご紹介するpseudoglobulusは、
先述した通り、日本で見かけることまず不可能、
現地のタネ屋でも取り扱いが皆無な程にレアです。
ただ後述する性質を考えると、
globulusの中では最も地味になるので、
局所的な生息種であることに加えて、
需要があまりないので、
結果的にレアになっていると思われます。
生息地はビクトリア州の南東の端で、
あまり広範囲とはいえず、
どちらかというと局地的な生息種と言えます。
globulusというと他の亜種については、
新芽の白銀色と下葉の濃い青緑色の
コントラストが非常に美しいユーカリになります。
その他にも精油や香りの強さなど魅力は満載ですが、
この外観のコントラストが
globulusの視覚的な一番の特徴と言えます。
ところがこのpseudoglobulusには
その視覚的な特徴がありません。
pseudoglobulusでは多くの場合、
新芽はほとんど白銀色になることはなく、
寧ろ鮮やかな程のグリーンで強く光沢があります。
下の写真は新芽部分のアップです。
最も白みが強くなる新芽部分でも、
かなり緑色が強いことがわかります。
そのため、パッと見は白みが強いglobulusの中では、
pseudoglobulusはひと際、緑色の生える外観になります。
ただglobulusは全般的に、葉裏が白っぽく、
pseudoglobulusの茎は非常に白みが強いため、
そのコントラストは寧ろ他の亜種よりも映えます。
ユーカリに魅力を感じる人の多くは、
純白の葉色や白と緑のコントラストを好むため、
pseudoglobulusはglobulusの中では、
人気を得ることは少し難しいかもしれません。
このような性質に加えて、タネ自体もレアなので、
余計に手に入りにくい現状につながっていると考えられます。
敢えて違いを挙げるならば、
幼苗の間はssp. bicostataと同じく
葉が若干コンパクトで細長くなりやすいですが、
新芽を含めて、葉が白みを帯びることはほとんどなく、
茎のザラザラ感はかなり強くなるというところでしょうか。
ただ、この特徴を個体差が上回ることも十分にあり得ます。
pseudoglobulusを育てていて、他のglobulusに比べると、
明らかに緑色の範囲が広いという印象を持ちます。
個体差によっては、ある程度の白みも出るようですが、
我が家の株は目立って白みがありません。
亜種間での比較の対象になる実のサイズは、
横幅が0.9~1.3cm、長さは0.6~0.8cmと
他よりもかなり小さく、少し縦長の形をしています。
また、蕾や実は新芽同様に
ほとんど白く粉を吹くことはありません。
そしてさらに大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。
総合的にssp. bicostataと被る部分がありますが、
明らかに蕾と実の形状と色が異なっています。
globulusの中では中規模のサイズで、
大きなものでは45m前後の大木へと育ちます。
根の張りはssp. globulusよりは控えめですが、
それでもユーカリ中ではトップクラスに盛んな方です。
露地植えにする場合にはそれなりの覚悟が必要です。
育ててみると、ssp. bicostataと同様に、
globulusの中では最も強健で万能な性質を持っています。
ssp. globulusや特にssp. maideniiでは、
その生息地上、少し暑さに弱いところがありますが、
pseudoglobulusは暑さにも強く、夏場の葉痛みもほとんどありません。
育て方も非常に簡単で、何よりも
その成長の早さには相当ビックリさせられます。
露地植えにするとあっという間に人間の背丈を超えてしまいます。
植木鉢であっても、太陽にたくさん当てることで、
一年以内に背丈を超えるほどに成長します。
鉢植えで育てる場合には
ssp. globulusよりも少し控え目な分、
育てやすい品種といえるかもしれません。
globulusは古くから日本で親しまれてきただけあって、
日本の環境には非常に合っています。
ユーカリの中ではかなり水を好む方で、
小さな鉢ではあっという間に水切れを起こします。
水分管理も考えて、小まめな摘芯を心がけてください。
とりあえず一般的な観葉植物並みの管理で問題ありません。
ただ、室内や日陰で管理を行うと徒長し貧弱に育ちます。
なるべく、屋外の日光が良くあたる場所で管理してください。
耐寒性は-10℃程度と言われており、
ssp. globulusよりも耐寒性は強くなっています。
余程の寒地でもない限り、野外越冬は問題ないと思います。
冬は余り水を吸わなくなるので、少し乾燥気味に管理してください。
pseudoglobulusはほとんど白く粉を吹かずに
全体的に濃い緑色の外観が際立ちます。
ユーカリの中でも鮮やかな緑色が好きな人であれば、
最も魅力的なglobulusになることでしょうが、
残念ながらpseudoglobulusを手に入れる手段がありません。
茎は他の亜種同様に見てわかるほどの四角形をしています。
厳密にはpseudoglobulusは茎の四角が激しく尖っており、
手裏剣のように角が飛び出たウイング型という形状をしています。
茎の表面はザラザラしており、
globulusの中ではザラザラがかなり強い方です。
ssp. globulusやssp. bicostataは精油やユーカリ茶で有名ですが、
pseudoglobulusもほぼssp. bicostataと
ほぼ同程度の強さの香りを持っています。
マイナーな亜種のため、利用例はありませんが、
ssp. bicostataなどと同様に様々な利用が期待できます。
平均的なglobulusのため、香りの強さもユーカリ中ピカイチ!
葉や茎を軽く指で撫でただけで強く香ります。
香りはssp. bicostataと全く同じ香りで、
メンターム様の切れの良いスッとしたシネオールの香りの後に、
非常に爽やかな柑橘系の香りが色どりを添えています。
スタンダードなユーカリの香りと思われがちですが、
実際、かなり柑橘系の香りが強い、爽やか系の香りといえます。
とにかく、スッと香ってスッキリ突き抜ける強い爽快感があります。
花粉症に苦しむ私には非常に快適な香りです。
とにかくかなりマイナーなglobulusであり、
ユーカリ全体でもかなりレアな部類になりますので、
今後も色々と観察しながらレポートしていきたいと思います。
globulusの中では一番シックなpseudoglobulusですが、
マイナーなため、栽培の際に選択できないのが残念ですね。。。
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★★★
香強さ:★★★★★
成長力:★★★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2015-08-03 17:09 | ユーカリ紹介
ユーカリ品種ひとくち栽培コメント その1
今日から私の育てている
全140種程のユーカリたちについて
ひとくち栽培コメントを書いていきたいと思います。
ただこれはあくまでも、
風通しや日照も悪い我が家のベランダで、
私のブレンド用土でスリット鉢で育てた場合の
私の個人的且つ直観的なコメントです。
他の栽培環境では良好なものもありますので、
あくまでも参考までにお願いします。
■ Eucalyptus globulus ssp. globulus(グロブルス)
水食いで強健だが、暑いのはあまり好きではない。
ただ高温障害の出る程までに弱くはない。
日照が足りないと極端に生育が悪くなる。
例えば、葉の一部だけに日光が当たっていると、
その周囲の葉だけがやたらと大きく立派になる程である。
鉢植え管理でも激しい剪定を必要とする程の
基本的に枯れる気のしないユーカリ。
【樹高:300cm / 鉢:スリット7号】
■ Eucalyptus globulus ssp. bicostata(ビコスタータ)
水食いで強健、私的にはグロブルスでは最も楽で育てやすい。
原種よりも暑さや日照不足に対する適応力が高い模様。
基本、水だけ毎日与えて放置でも全然問題ないが、
放置しすぎるとハダニが発生するのでたまに水をかける。
成長は激しいが原種程の暴力的な印象はない。
基本的に全く枯れる気のしないユーカリ。
【樹高:250cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus globulus ssp. maidenii(マイデニー)
寒い季節や涼しい季節は放置気味だが、
かなり高温多湿に弱いらしく、梅雨時期や夏などは、
少し気にかけて、水分管理に気を付けている。
原種やビコスタータのように適当に管理していて、
一度150cm級を枯らせたので、グロブルスでは最も鬼門。
真夏の日光の激射を浴びると葉先が少しヘタることもある。
夏場はしっかりと頭で考えて水分管理を心掛ける必要がある。
【樹高:120cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus(スードグロブルス)
置き場所が悪いので成長はあまり進んでいないが、
原種とビコスタータの間のような位置づけ。
暑さや空中湿度に対しては原種よりも強く、
ビコスタータ程は安心のできないレベル。
基本強健で放置でも問題ない。
ただししっかりと日光に当てないと成長は遅くなる。
葉色の緑が強く、あまり粉を吹かないのが特徴。
【樹高:100cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus cinerea(シネレア)
一般の御宅で屋外管理すると基本的には生育良好。
我が家では生育こそ良好で強健ではあるが、
置き場所が悪いので、夏場は葉が傷みやすい。
どちらかというと涼しい季節に良く日光に当てると良い感じ。
家では強健が故に辛い環境で育てられて見栄えはイマイチ。
葉を綺麗に保ちたい場合は、程良い日照と風通しの良さが大切。
水は思ったより吸わないなという印象。
今は枯れる気のしないユーカリの一つになっている。
【樹高:120cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus cinerea var. pendula(シネレア・ペンデュラ)
タネが希少なこともあって
少し気にかけているので、見栄えは悪くない。
基本定期的に水を与えるだけの管理で問題ない。
原種同様に過湿、日照不足にも強いので非常に楽な部類。
ただ原種に比べると過保護な管理をしている割には成長が遅い印象。
【樹高:60cm / 鉢:スリット5号ロング】
■ Eucalyptus pulverulenta ssp. pulverulenta(プルベルレンタ)
一般の御宅では生育が良好なことを考えると
我が家ではあまり良い状態とは言えない。
特に我が家の風通しの悪い高温多湿な環境が嫌いな模様。
手をかけて場所を改善すればもっと良くなると思われる。
用土や鉢、日照はそこそこ高いレベルを要求するので、
シネレアのように放置でOKとはまだいかない。
思い通りの樹形に育てるには恐ろしく難易度が高い。
【樹高:100cm / 鉢:スリット5号ロング】
■ Eucalyptus pulverulenta ssp. babyblue(ベイビーブルー)
以前は日照の悪いクーラー室外機の近くに置いており、
年中葉はボロボロで枯死寸前までいったので、
西AZのユーカリ並みの良い場所に移して手をかけたところ、
一気に葉が綺麗になって樹形も良くなってきた。
日照は半日陰程度でも良いので、
涼しく風通しの良い環境が最も大切。
環境さえ良くて少し手をかけてやればまだ楽な部類。
【樹高:60cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus polyanthemos ssp. polyanthemos(ポリアンセモス)
これもかなり強健な部類なので、
可愛そうな程、劣悪な場所に置いていて、
葉の状態はとても綺麗とは言えない。
ただ放置で全然育てられるレベル。
上の方の一部の葉には少し日光が当たるのだが、
その場所の葉は驚く程に立派で美しくなる。
用土の選別さえ間違わなければ、
ある程度の日照環境で放置でも問題ない。
暑さにはとても強いようで、
少し暑くなってからの方が成長が進む。
【樹高:160cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus polyanthemos ssp. vestita(ポリアンセモス・ベスティタ)
こちらは原種とは異なって、ある程度の環境に置いて
ある程度手をかけてあげないと一気に痛む。
また原種に比べると色々と病気にも弱い模様。
相応の場所で少しだけ水分管理に気を使ってあげれば、
特に問題なく、美しい樹形を維持できる。
少し我儘とは言えども他に比べると遥かに楽な部類。
高温障害の症状は出ないが、原種よりは暑さを嫌う。
【樹高:160cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus camphora(カンフォラ)
巷では生育良好で楽なユーカリというイメージだが、
かなり「純粋な暑さ」を嫌うイメージ。
春先の涼しい季節の生育は良好だが、
夏場は葉が汚くなって、成長が進まない。
耐陰性などの前評判はそこそこだったが、
我が家では少しは手をかけてあげないとしんどいレベル。
冬場以外の水遣りは表面が乾いたらの超級水食い。
水分管理はスルーで日照と風通しの工夫が少しだけ必要。
東北で育てている人は非常に生育良好との情報有り。
【樹高:50cm / 鉢:スリット6号】
■ Corymbia maculata(マキュラータ)
成長も早く、一般的なユーカリの管理でOK。
暑さや空中湿度、過湿に対する耐性は高いが、
寒さにはそこまで強くない(-5℃程度)。
クーラー室外機の側でも全然放置でOKだが、
ある程度の日照がないと成長が進まなくなる。
水切れにだけ少し気を付ければ非常に楽なユーカリ。
【樹高:170cm / 鉢:プラスチック6号】
■ Corymbia citriodora(レモンユーカリ)
クーラー室外機の間横でも生育は良好。
暑さや過湿に対する耐性はぴか一。
その代わり毛の生えている葉は冬場に激しく傷む。
日光はとても好きなようで、
これも日光の当たっている葉だけが大きく立派になる。
定期的に水さえ与えていれば完全放置でOKのユーカリ。
【樹高:300cm / 鉢:プラスチック7号】
■ Corymbia peltata(ペルタータ)
小型品種のためか成長は少し控え目。
ある程度の日光さえ確保できればとても楽なユーカリ。
これも日光が当たる場所の葉だけが極端に大きくなる。
レモンユーカリ程ではないが寒さは得意ではない模様。
樹高の割には水切れが激しいので、相当水食いのイメージ。
【樹高:45cm / 鉢:スリット5号ロング】
■ Eucalyptus staigeriana(スタイゲリアナ)
空中湿度や暑さには我が家では全く問題ないレベル。
ただし日照だけは少し大切で、日照が不足すると、
へなちょこな葉ばかりでうどんこ病が発生する。
以前は劣悪な環境に置いていたが、
最近は少しは日光の当たる場所に置いているので、
生育も良く、基本放置でOKなユーカリ。
日照以外では我が家の環境に適応していると言える。
樹高の大きさもあるが、水切れが非常に早いので、
旅行に行かせてくれないユーカリの一つ。
【樹高:200cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus muelleriana(ミューレリアナ)
暑さ、空中湿度、過湿に対して非常に強く、
寒さにも弱くないと弱点の見つからないユーカリ。
日照が良いと成長が激しすぎるので、
クーラー室外機の風をもろに浴びるような
劣悪な場所に置いているにも関わらず、
それでも成長は激しく、全く痛み知らず。
水切れが激しく我が家では間違いなくトップの水食い。
恐らく炎天下で育てるなら、一日何度も水がいるかもしれない。
現在予定はないが、鉢増しの際には、
かなり保水性の高い用土を使うつもりでいる。
【樹高:160cm / 鉢:スリット6号】
もし興味のある品種がありましたら、
ご連絡をいただければアップさせていただきます。
それでは、その2に続きます。- # by eucalyptus_k | 2014-08-22 14:24 | ユーカリ(栽培知識)
識別しにくいユーカリ(3)~Eucalyptus globulus~
続いて今回はglobulusの亜種間の識別についてです。
始めに、globulusの苗木時点での
確実な識別のポイントはほぼ皆無です。
また、葉や茎の形状にも大きな差はありません。
Gunnii以上に見た目による識別は不可能といえます。
ここで、いきなり結論になってしまいますが、
蕾と実の形状、サイズを比較することで、
ほぼ確実な識別が可能になります。
ただ、かなり大きな樹木になるglobulusを
蕾や実ができるまで育てるとなると、
それ相応の大きさにまで育て上げる必要があります。
これは一般のご家庭では非常に困難なことです。
まず、globulusで学術的に認められている亜種は下記の4種です。
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●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus
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これとは別に var. compactaという変種が存在しますが、
これはssp. globulusの小型種で、
最終的な樹高がssp. globulusより小さくなるというだけで、
その他はssp. globulusと全く変わらないため今回は割愛します。
この中で敢えて一番外観で差があるとすれば
ssp. maideniiでしょうか。あくまでも"敢えて"ですが。。。
ssp. maideniiは他の品種に比べると、
少し葉の幅が広く、丸みを帯びる傾向があります。
下の写真はssp. globulusですが葉は平均的に細長いです。
そして下の写真がssp. maideniiです。
少し葉が幅広く丸みを帯びているのがわかるでしょうか。
この他にもカーブのある細長い葉が生じることもあります。
ただしこれらはあくまでも傾向であって、
個体差がこれを上回ることもあり得ます。
たくさんglobulusを見てきた人ならば、
自信を持って識別できるかもしれません。
ssp. maidenii以外の3種は見た目が非常に良く似ています。
いくつかの傾向はありますが、
これだけでパッとみて識別することは困難でしょう。
それではまずglobulus各亜種の写真を見てみます。
ssp. globulus
ssp. bicostata
ssp. maidenii
ssp. pseudoglobulus
写真からその差は全くわかりません。
実際に私も全種育てていますが、
見た目の差はほとんどわかりません。
それでは次にglobulus各亜種の特徴を並べてみます。
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-苗時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の緑色が濃くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは弱い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である
ssp. bicostata
1. 4種の中では最も小さめの葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではかなりssp. globulusと良く似ている
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉は比較的幅が狭く細長く育つ傾向が強い
ssp. maidenii
1. 極端に細長い葉と丸みを帯びた葉が生じる傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の白色が強くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラはほぼない
4. 極端に細長い葉では葉のカーブが生じることがある
ssp. pseudoglobulus
1. 4種の中ではssp. globulusに次いで大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではssp. globulusとほとんど大差がない
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である
これを見ていただくと、
本当に決定的な差のないことが良くわかると思います。
次に樹木時点での特徴を並べてみます。
決定的な識別のポイントである蕾と実については、
ここでは省いて、詳しくは後述します。
-樹木時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大木に育つ(70m以上)
2. 4種の中では最も小さな葉に育つ傾向が強い
3. タスマニア島に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける
ssp. bicostata
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では圧倒的な大葉に育つ傾向が強い
3. ビクトリア州東部を中心に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける
ssp. maidenii
1. 50m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ニューサウスウェールズ州南部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある
ssp. pseudoglobulus
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ビクトリア州南東部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある
ここでもほぼ明確な識別は不可能ですね。
ただ、成長後のサイズや
生息地には大きな差があることがわかります。
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それでは最も有力な識別のポイントとなる、
蕾や実についてのデータを見ていきます。
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見所は下記の4ポイントです。
こちらに着目して見ていきましょう。
1. 蕾と実の大きさ
2. 蕾と実の表面が白く粉を吹いているかどうか
3. 蕾と枝を結ぶ部分のサイズ
4. 蕾は何個セットで生じるか
ssp. globulus
実の幅は1.4~2.7cm、長さは1~1.5cmと最も大きいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように単独で生じます。
ssp. bicostata
実の幅は1~2cm、長さは0.7~1cmと明らかに小さいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。
ssp. maidenii
実の幅は0.6~1cm、長さは0.5~1.1cmと小さく少し縦長です。
また、あまり白く粉を吹いていないことも特徴です。
写真ではわかりにくいですが、
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように7個セットで生じます。
ssp. pseudoglobulus
実の幅は0.9~1.3cm、長さは0.6~0.8cmとかなり小さいです。
また、ほとんど白く粉を吹くことはありません。
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。
そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。
総合的にssp. bicostataと被る部分がありますが、
明らかに蕾と実の形状と色が異なっていると思います。
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このデータを元にして蕾と実の比較を行えば、
比較的容易に識別ができると思います。
実際、プロもglobulusの識別は必ず蕾と実で行います。
でも、初めに書いたように、
globulusを実がなるまでに大きく育て上げるのは、
日本の一般のご家庭では非常に困難なことです。
もし、globulusをしっかりと品種で管理したいのであれば、
タネの時点から識別されたものを購入して育てるか、
亜種で管理しているところから苗を購入するしかありません。
まあ、苗木時点ではどれも良く似ていますから、
鉢植えで管理する場合には、
あまり気にする必要はないのかもしれませんね。
個人的には香りや精油重視ならssp. globulus。
コンパクトで育てやすいならssp. bicostata。
外観の美しさ重視ならssp. maideniiをオススメします。
ssp. pseudoglobulusはかなりマイナーなので、
タネを見つけることさえ大変なほどです。
現状タネを手に入れる手段はほとんどありません。
それでは最後にglobulusの名前の由来と、
各亜種の名前の由来で締めくくりたいと思います。
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学名globulusはBall(球)に由来しています。
その実の形状がBallに似ているからです。
Bicostataは二つのうね・脈の意味です。
実に二本の段(脈)があるためです。
Maideniiは本種を発見したMaiden氏に由来しています。
pseudoglobulusはglobulusに似ているの意味です。
ssp. globulusに良く似ていますが、
蕾と実が決定的に異なるため、別種であるということです。
---------------------------------------------------- # by eucalyptus_k | 2011-02-22 01:20 | ユーカリ(品種知識)