【ユーカリ紹介-35】
ユーカリ・マイデニー (Eucalyptus globulus ssp. maidenii)続きまして第35回目はglobulusの中では特徴的で
少し変わった外観を持つ亜種ユーカリ・マイデニーです。
◎ユーカリ・マイデニー
【学名:Eucalyptus globulus ssp. maidenii】
【英名:Maiden's Gum】
日本ではお馴染みのglobulusですが、
その中でもこのmaideniiは、
明治時代から日本でお馴染みの
ssp. bicostataやssp. globulusとは
少し異なる外観と経緯を持つユーカリです。
学名はEucalyptus globulus ssp. maideniiですが、
現地で一般的にはEucalyptus maideniiと呼ばれています。
globulusには4種の亜種と1種の矮性種が存在します。
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●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus var. compacta
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus
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これらは全てが非常に良く類似していて、
小さな苗や数m程度の苗木の間の識別はほぼ不可能です。
一番の識別方法は大きく育ってからできる
蕾や実の大きさや形状を比較するのが一番です。
>>>詳しい識別についてはこちらの記事をご覧ください。
今回ご紹介するmaideniiは、
あまり日本では見かけることのないglobulusです。
maideniiは、オーストラリアの各所に生息するglobulusの中では、
オーストラリア南東部海岸沿いの一部の地域にのみ自生する
少々マニアックなglobulusなのです。
上記にもあるように、
幼苗の間にはほとんど識別が不可能なglobulusですが、
maideniiは、その中では少し変わった外観をしているので
globulusを多数育てている方なら、
ある程度の見分けがつくこともあるでしょう。
私も最初はあまり見分けがつきませんでしたが、
育て続けている間に、このmaideniiだけは
何とか見分けがつくようになってきました。
その違いを敢えて挙げるならば、
幼苗の間は極端に細長い葉になるか、
逆に丸みを帯びた葉が生じやすい傾向にあり、
細長い葉では、葉にカーブが生じることがあります。
また、最も葉の白色が強くなりやすく、
茎のザラザラはほぼありません。
ただ、この特徴を個体差が上回ることも十分にあり得ます。
私もmaideniiを育てていて
確かに白色が強いなあという印象を持っています。
そして、葉の丸いmaideniiと葉の細いmaideniiが
確かに存在していると感じています。
ちなみにこの記事で紹介している写真は
どちらかというと葉に丸みのあるmaideniiのものです。
最近意識的に観察していると、
実はそれほど葉全体の白色が、
強いわけではないことが分かってきました。
maideniiの葉の表面は比較的緑色が強く、
寧ろ他の亜種よりも深い緑色をしていることが多いのですが、
葉の裏面や茎の色が際立って白いように思います。
その結果、葉表面の緑色と、
葉裏や茎の白色との強いコントラストで、
白色が強いという印象につながっていました。
亜種間での比較の対象になる実のサイズは、
横幅が0.6~1cm、長さは0.5~1.1cmと
他よりもかなり小さく、少し縦長の形をしています。
また、蕾や実はあまり白く粉を吹いていないことも特徴です。
そしてさらに大きな特徴として、
蕾は下の写真のように7個セットで生じます。
globulusの中では中規模のサイズで、
大きなものでは50m前後の大木へと育ちます。
根の張りはssp. globulusよりは控えめですが、
それでもユーカリ中ではトップクラスに盛んな方です。
露地植えにする場合にはそれなりの覚悟が必要です。
育ててみると、ssp. bicostataよりもさらにデリケートです。
特に暑さに弱い性質が強く、梅雨時期~夏場にかけて、
高温多湿になる環境では、激しく葉が傷むことがあります。
また夏場の過湿による、根の蒸れにも少し注意が必要になります。
風通しが良く、涼しい場所で管理すると良いでしょう。
それでもユーカリ中ではかなり強健!育て方も非常に簡単で、
何よりもその成長の早さには相当ビックリさせられます。
露地植えにするとあっという間に人間の背丈を超えてしまいます。
植木鉢であっても、太陽にたくさん当てることで、
一年以内に背丈を超えるほどに成長します。
鉢植えで育てる場合には
ssp. globulusよりも少し控え目な分、
育てやすい品種といえるかもしれません。
globulusは古くから日本で親しまれてきただけあって、
日本の環境には非常に合っています。
ユーカリの中ではかなり水を好む方で、
小さな鉢ではあっという間に水切れを起こします。
水分管理も考えて、小まめな摘芯を心がけてください。
とりあえず一般的な観葉植物並みの管理で問題ありません。
ただ、室内や日陰で管理を行うと徒長し貧弱に育ちます。
なるべく、屋外の日光が良くあたる場所で管理してください。
maideniiの耐寒性は-9℃程度と言われており、
ssp. globulusよりも少しだけ耐寒性は強くなっています。
余程の寒地でもない限り、野外越冬は問題ないと思います。
冬は余り水を吸わなくなるので、少し乾燥気味に管理してください。
maideniiは青々とした葉が特徴的な品種ですが、
その新葉は明らかに美しい銀葉で冬季には真っ白へと変わります。
この白銀色の新葉と育った葉の
濃い緑色のハーモニーは中々に美しいです。
また、茎が見てわかるほどの四角形をしています。
globulusの中では茎の表面のザラザラはほぼなく、
どちらかというとツルっとしている傾向があります。
ssp. globulusやssp. bicostataは精油やユーカリ茶で有名ですが、
maideniiは精油の成分や実際の香りが少し異なっています。
柑橘系の香りや甘さの強いssp. globulusなどに比べると、
どちらかというとシネオールが際立っているような香りです。
cinereaやcordata、bridgesianaなどに近い香りといえます。
またglobulusの中では香りは弱い方ですが、
それでも他のユーカリよりも香りは強めではあります。
ssp. globulusなどの方が爽快で強く良い香りですが、
maideniiも十分に香りを楽しむハーブとして利用できます。
親愛なるこあら師匠のブログ「ユーカリクリニック」によると、
このユーカリをコアラに与えると、
不妊症になるとかいうとんでもない偏見があり、
日本の動物園でコアラには決して与えないそうです。
コアラが食べていそうなユーカリのイメージなんですがねぇ>3<
私は見た目で育てるならば
間違いなくこのmaideniiを選ぶと思います。
逆に香りや効能で選ぶのならば
ssp. globulusやssp. bicostataを選びます。
見た目の美しさでglobulusを育てたい方には特にオススメです。
ただし、なかなか売っていることはないと思うので
育ててみたい方には素晴らしい農場をご紹介します。
とはいってもmaideniiはglobulusです。
成長力は馬鹿にならないので注意が必要ですが、
是非皆さんにも育ててほしいユーカリです!
なかなか綺麗な外観にびっくりしますよ。
あなたはどのglobulusを選びますか!?
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<栽培難易度:B>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★★
成長力:★★★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2011-08-22 20:01 | ユーカリ紹介
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