寒さが好きなユーカリ!?
ユーカリをたくさん育てていると
日々色々なことがわかります。
一番びっくりするのは、品種により、
本当に様々な性質を持っていることです。
北はワニが生息するような熱帯地域で、
北東部は沖縄のような亜熱帯地域。
かと思えば、南東部は東北のような冷涼地で、
南部や西部の沿岸部は地中性の穏やかな気候。
そして内陸部にはステップや砂漠が広がっている。
という風にとても様々な気候の地域があることを考えると、
ユーカリの多種多様さにも納得がいきます。
今日はとても寒さに強い、というか
寒さが好きなユーカリに焦点を当ててみます。
Eucalyptus cocciferaというユーカリがあります。
英名はTasmanian snow gumで、
名前からも寒いところが大好きなことがわかります。
見た目は深緑の楕円形の葉が生える
典型的なミント系ユーカリです。
高山生息種のため、6m程度の低木で収まり、
樹皮の白い、明らかに高山植物っぽい樹木になります。
このcocciferaは、我が家では、
西AZのユーカリの難しさとはまた違った難しさがあり、
とても育てるのが厄介なユーカリです。
また発芽にも長期間の冷却処理が必要になり、
発芽率も悪く、育苗難易度も高めです。
まず梅雨時期~真夏は、高温障害の症状に加えて、
葉に規則的な褐斑がたくさんでき、
毎年、葉がボロボロになります。
また、5月の終わり頃から10月の初頭までは、
ほとんど成長することもなく、
夏場はただ葉が傷むにまかせるしかありません。
また、かなり乾燥を好む性質を持っており、
夏場でもほとんど水を吸わず、
過湿は即命取りになるほどデリケートです。
ところが、寒い季節にはめっぽう元気です!
まだ最低気温が1ケタ台の早春や
特に今頃の11月半ばから12月までの
もうコートを着なければいけないような季節に、
成長が進んで、新芽をたくさん出したりします。
今年の夏も我が家のcocciferaは激しく痛みました。
ところが今日そのcocciferaを見てみたら、
この1週間くらいの間に、
たくさんの新芽を出していました。
ちなみに、冷涼を好む品種として
Eucalyptus niphophilaも
cocciferaと似たような性質を持っています。
どちらも真夏や成長期の寒い季節も、
西AZのユーカリ並みかそれ以上に乾燥を好みます。
この2種は耐寒性はかなりのものを持っていますので、
東北や北海道の暖地などで育てると、
とても育てやすいユーカリになるかもしれません。
本当にユーカリには色々あって
びっくりさせられますね- # by eucalyptus_k | 2012-12-04 17:59 | ユーカリ(品種知識)
ブログURL(アドレス)変更のお知らせ
急なお知らせとなりましたが、この度、
ブログ「ユーカリの薫るベランダで」の
URL(アドレス)が変更となりました。
新しいURLは下記の通りです。
http://www.eucalyptus.jp/
大変お手数をおかけしますが、
お気に入りやリンク先の変更をお願いいたします。
なお、現在、旧URLの全てのページは
新しいURLのページに自動転送されます。
これは近い将来になくなる可能性があります。
コンテンツ内容やコメント内容等
ブログのデータには一切変更はありません。
あくまでもURLの変更のみとなります。
万が一不具合を発見された場合には
恐れ入りますがこちらより、
お問い合わせをお願いいたします。
今後とも、
ブログ「ユーカリの薫るベランダで」を
どうぞよろしくお願いいたします!- # by eucalyptus_k | 2012-12-01 21:07 | その他
【ユーカリ紹介-55】
ユーカリ・メリオドラ (Eucalyptus melliodora)続きまして第55回目は
現地ではとてもありふれたユーカリで
街路樹などの定番品種としても有名。
とても香りの良い花と豊富な蜂蜜が特徴の
ユーカリ・メリオドラです。
◎ユーカリ・メリオドラ
【学名:Eucalyptus melliodora】
【英名:Yellow Box / Honey Box / Yellow Ironbox】
このmelliodoraは
日本ではまず見かけることはありませんが、
現地では非常に幅広い地域に自生しており、
とてもありふれた親しみのあるユーカリです。
melliodoraの花自体はアイボリーの良くある花ですが、
とてもたくさん花を咲かせることが特徴です。
また、その花がとても甘く良い香りがすること、
そして、その花にはとても蜂蜜が豊富で、
蜂蜜の収穫用にも利用されていることから、
現地ではハニーユーカリなどと呼ばれることがあります。
学名のmelliodoraもその特徴から名づけられたもので、
蜂蜜と花の甘い香りという意味になります。
とても魅力的な特徴ですが、少し残念なのは、
melliodoraは、ユーカリでは比較的大型の
30m級の立派な樹木に成長するというところです。
恐らく、melliodoraの魅力的な花を咲かせるには、
最高樹高30mというところを考えると、
鉢植えでは難しく、広い場所での地植えが必要になるでしょう。
ただ、花自体は数も多く、とても咲きやすい品種なので、
とても広い庭のある方ならば、大型シンボルツリーとして
面白い特徴を持ったユーカリになると思います。
基本的にユーカリの花は蜂蜜を多く含むものが多く、
melliodoraは特にその量が豊富ということですので、
ミツバチや時にはスズメバチが多く飛来します。
地植えする場合には少し注意が必要かもしれません。
そんな魅力満点のmelliodoraですが、
見た目は比較的特徴のない、
良くあるユーカリの外観をしています。
葉は比較的幅があり、丸みのある、
槍の先のような形をしています。
また葉の葉脈に特徴があり、
葉の周囲を縁取ったような葉脈が目立ち、
茎は基本的に四角形の角ばった形をしています。
あまり日光の当たらない場所で育てると
冒頭の写真のように緑色の強い葉になりますが、
良く日光に当てて育てた葉は、
下の写真のように、エメラルド色が強くなり、
比較的美しい銀葉に育ちます。
melliodoraは非常に良く剪定に反応するユーカリです。
そのまま切らずに育てると、大型品種ですから、
真っ直ぐに樹高を伸ばすことに集中します。
ところが早いうちから適宜剪定を行っていると、
脇芽をたくさん出して、こんもりとした樹形になります。
大型樹木のユーカリは、
樹高を伸ばすことだけに必死の品種が多いのですが、
melliodoraは脇芽をたくさん出す性質を持っています。
そのため、鉢植えで美しい樹形に仕立てながら
育てていくユーカリとしても最適です。
そんなmelliodoraの育て方ですが、
性質は非常に強健で成長も激しく、
cinereaなどのメジャーなユーカリと
同じような管理で問題なく育てることができます。
個人的にはgunniiやcinereaなどよりも
melliodoraはさらに強健で、
栽培は容易であると感じています。
gunniiなどのユーカリは、
夏の高温多湿に少し弱いという特徴がありますが、
melliodoraは暑さにもとても強く、
高温障害の症状が出たことは一度もありません。
そのmelliodoraの強健な性質に信頼を置いて、
今年の夏は、我が家で最も過酷な場所である、
クーラー室外機のななめ前に置いていました。
我が家のmelliodoraは既に180cm近い樹高があるため、
クーラー室外機の熱風をガンガンに浴びていましたが、
特に目立った傷みはありませんでした。
melliodoraのメインの成長時期は、
真夏はそこまで大きな動きはありませんが、
polyanthemosなどと同じように、
比較的高い気温の季節をメインに成長します。
またmelliodoraの生息地の降雨量は、
日本の少し雨の少ない場所と同じ程度なので、
cinereaなどよりもさらに過湿に強く、
暖かい季節はかなりの水食いになるので、
水切れには注意が必要になります。
耐陰性もかなりのものがあり、
半日陰以下でも育てることはできますが、
その場合は徒長しやすく、
葉の白銀色が出ずに濃い緑色の薄い葉になります。
また、そのような貧弱な葉には
うどんこ病の被害が出ることもあります。
とはいえ、精油にミント系の成分が含まれているため、
病害虫にはかなり強い方です。
ただ一つ、我が家ではハダニによる被害が
比較的激しいユーカリになっています。
ただし、melliodoraの成長自体はとても激しく、
ハダニ被害が出るのは、
日光のあまり当たらない下の方の貧弱な葉だけです。
上の方の日光に良く当たった丈夫で分厚い葉には、
ほとんど被害が出ることはないので、
毎年そこまで大きな心配はしていません。
melliodoraの耐寒性ですが、
東AZの中ではそこまで高い方ではありませんが、
それでも地植えの成樹で-9℃程度までは大丈夫です。
polyanthemosが育てられる場所であれば、
屋外越冬は問題なく、さらに安心してできると思います。
大阪の冬くらいでは、葉の周囲が少し赤くなる程度で、
大きな葉痛みが起こったりするようなことはありません。
冬には新芽の部分が真っ赤に紅葉するので、
エメラルドの葉と新芽の赤がとても美しく見えます。
melliodoraはほとんど弱点のないユーカリですので、
あまり枯れる気のしない、とても育てやすいユーカリです。
気になるmelliodoraの香りですが、
シネオール系の香りをベースに、
ミント系の少し甘みのある香りが強くします。
総合的には甘みのある爽快なユーカリの香りです。
gunniiの香りをさらに心地よく甘くしたような感じです。
香り自体はそこまで強くはありませんが、
とても魅力的で、現地では香りを楽しむ切枝として、
それなりに高い評価を得ているようです。
香りはとても良く、香りの強さ的にはギリギリで
香りを楽しむユーカリとしても活用できそうです。
melliodoraはパッと見はあまり特徴がなく、
外観だけでは、少しPRのしにくいユーカリです。
ところが、とても強健で育てやすいところや、
脇芽を出す性質が強く、樹形を調整しやすいところ、
たくさんの甘い香りのする花と豊富な蜂蜜など、
隠された魅力がとても多いユーカリでもあります。
日本ではまず見かけることはないmelliodoraですが、
現地ではとてもメジャーなユーカリですから、
タネを手に入れるのは容易で比較的安価でもあります。
育苗難易度も低く、育苗初心者にも最適です。
実はこの写真のmelliodoraは、冬季の室内でタネを播き、
そのまま、冬季の室内で越冬して、
翌年の春に大きく成長を進めた株です。
そのように、あらゆる管理にも対応できるほど、
育苗初期から育てやすいユーカリです。
もし興味のある方がいらっしゃったら、
タネの販売先をご紹介しますよ♪
隠された魅力満載のmelliodora!
興味があったら育ててみませんか?
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-11-29 10:44 | ユーカリ紹介
ユーカリのpHと鉄分欠乏症について
今朝何気なく、現地の栽培ガイドを見ていたところ、
ユーカリは比較的pHに敏感なところがあり、
それを起因とした鉄分欠乏症になりやすいという情報がありました。
これは品種により様々で、
中にはアルカリ寄りのpHを好むユーカリも存在しますが、
細かく分析するのは厄介なので、
基本的には下記のpHで統一して栽培するのがベターだそうです。
弱酸性:pH 5.5 - 6.4
これはアルカリ寄りを好むユーカリであっても、
酸性寄りのpH耐性を必ず持っており、
酸性寄りの用土で育てたとしても、
特に大きな障害は出ないためだそうです。
このpHであれば、通常の日本で有り触れた用土で
特に操作は不要ということになりますね。
我が家では今は一律全てのユーカリのpHが
少し高めになっている可能性があります。
その中で激しく鉄分欠乏症になっている品種も多数あり、
今後は良い意味で、あまり過保護になりすぎず、
触り過ぎないように心がけていこうと思っています。
今のところアルカリ寄りのpHを好むと
わかっている品種はMoon Lagoonのみ。
ある程度アルカリでも育つものとしては、
rudisやerythrocorysなどがわかっていますが、
これらも別に通常の用土で問題なく育てられます。
また、化成肥料の与えすぎでも
pHが上がってしまうことがあるので、
無用な多肥にも気をつけてみてください。
次年度は鉄分欠乏症の品種については
決して調子は悪くないので、一度全てに植え替えを行い、
用土をリセットしたいと考えています。
肥料もpHも自然が一番ですね。。。
●鉄分欠乏症の症状例- # by eucalyptus_k | 2012-11-28 10:38 | ユーカリ(栽培知識)
ポット苗での長期間管理について
普通のお宅でユーカリを数苗買って
育てている人にはあまり縁のないお話ですが、
私のようにタネを播いて多数育てていると、
置き場所の問題から、多数余剰苗が発生し、
いつまでもポットのままで管理するということがあります。
そのような場合に、
最近危険なポイントを発見しました。
ポットというと、
一般的なポリポットを思い浮かべると思います。
我が家でもコストの面で優秀なので、
長らく、通常のポリポットを長らく使用していました。
ところが、このポリポットで育てていると、
もちろんのことながら根のサークリングが起きます。
大抵の場合は、根がサークリングして、
ポットの底に溜ることになります。
すると、根のある底部分の用土は良く乾くのに、
根のない中部から上部の用土が
いつまでも湿っているという状態になります。
この場合、根のある部分の用土は乾燥しているため、
株には水切れの症状が出るのですが、
用土の上部の大半はまだ湿っています。
この状態で長らく育てていると、
用土が乾きにくく、雨の多い季節になると、
用土の部分過湿で根腐れが起きます。
これで我が家の、ポリポットで放置して
40cmを超えるような苗はほぼ全滅しました。
底面吸水という抜け道もありますが、
素人では施設も設備もありませんし、何よりも面倒です。
そこで、優秀なのがスリットポットです!
鉢ではなく、あくまでもポットです。
スリットポットを使用すると根のサークリングがなく、
根が底部だけでなく、ポットの中部~上部にも
ふんだんに行きわたるため、
根の部分過湿を防止することができます。
コスト的には少し痛いところですが、
今後、全てのポット苗に
スリットポットを使用することにしています。
その場合、60cm程度になっても、
傷むことなく、蕾を付けるような
ポット苗も出てきている次第です。
本当はしっかりと鉢に植え付けたいのですが、
どうしても場所がないための苦肉の策です。。。
普通はポット苗で放置ということは、あまりないかと思いますが、
タネから多数の苗を育てている人はぜひ参考にしてください。
ちなみに、環境が良く、高温乾燥を確立できるような、
プロの栽培現場には、あまり関係がないかもしれません。- # by eucalyptus_k | 2012-11-22 12:48 | ユーカリ(栽培知識)