【ユーカリ紹介-67】
ユーカリ・セファロカルパ (Eucalyptus cephalocarpa)続きまして第67回目は
銀丸葉(cinerea)や銀世界(pulverulenta)の兄弟分で
少し厚めの白銀丸葉がとても美しく
現地でもほぼ入手困難で超級レアな
ユーカリ・セファロカルパです。
◎ユーカリ・セファロカルパ
【学名:Eucalyptus cephalocarpa】
【英名:Silver Stringybark / Mealy Stringybark】
日本でとても人気があり、良く見かけるユーカリに
銀丸葉ユーカリ(cinerea)があります。
それと良く似た銀丸葉系のユーカリで
銀世界ユーカリ(pulverulenta)があります。
実はこのcinereaは、
一部ではpulverulentaの変種扱いされることもあり、
pulverulenta var. lanceolata
という変種名を持っています。
このようにこれらの銀丸葉ユーカリたちは、
学術上、とても密接に関係し合っているようです。
そしてもう一つ、これらに良く似た銀丸葉系のユーカリで
cinerea var. multifloraという
cinereaの変種名を持つユーカリがあります。
それが今回ご紹介するcephalocarpaです。
当時、cinereaが大好きで銀葉マニアだった私は、
是非ともこのcinereaの兄弟分である
cephalocarpaを育ててみたくなり、
タネを探し始めることにしました。
ところがこのcephalocarpaは、
現地でも手に入れることが非常に困難で
超級にレアな品種だったため、
大手のタネ屋全てに匙を投げられました。
それでもとにかく諦めずに
小さなタネ屋も含めて各国にアプローチしました。
結局そのアプローチの中でも
cephalocarpaのタネは見つかりませんでしたが、
この機会が多くのタネ屋と
コネクションを持つきっかけにもなりました。
最終的に海外向けにホームページを持ち、
販売方法も確率されているようなタネ屋は
ほぼ当たりつくしたと思います。
その数は軽く50店は超えていたでしょう。
それでもcephalocarpaのタネは、
全く見つけることができませんでした。
そして今度はタネ屋ではなく、オーストラリアの
SeedBankに直接当たることにしました。
SeedBankとはタネを扱う地元の機関で
小さなものでは、田舎の農協のようなものですので、
ホームページなどがほとんど存在せず、
メールアドレスのみ公開といったところばかりでした。
そのようなところでも、挫けずに
唐突にメールを送ってコンタクトをとりました。
cephalocarpaはVictoria州南部の沿岸部の
比較的狭い地域に自生しているユーカリなので、
もちろんその生息地のSeedBankを中心に当たりました。
そして探し始めて1年以上が経過した頃、
やっとのことでタネを見つけることができました。
※その時の詳細はこちらの記事をご覧ください。
そしていざ育ててみたcephalocarpaは、
樹形やパッと見の形状はcinereaに似て、
葉の分厚さと質感はpulverulentaに似て、
葉の大きなところはgoniocalyxに似てと、
それぞれの中間のような外観でした。
葉の白みは残念ながらcinereaや
pulverulentaには及びませんが、
それでもなかなかに美しい銀葉を持っています。
実際の質感としては、少し光沢のある葉に、
スモークをかけたように粉を吹いている感じで、
少し離れてみると美しい銀葉に、
近くで見ると鮮やかなエメラルド色に見えます。
最も葉の質感が良く似ているのは
gamophyllaやmelanophloiaです。
cephalocarpaは、とにかく小さな内からかなりの大葉で、
新芽部分も含めて非常に肉厚な葉が特徴です。
goniocalyxに似て、葉の丸みもかなり強くなります。
茎についてはcinereaと同様に
激しく粉を吹いており
突起がありザラザラしています。
このcephalocarpaは20m程度の
Tree型(木立型)の立派な樹木に成長します。
大体cinereaと同程度の大きさです。
英名にStringybark(筋張った樹皮)とありますが、
樹皮は下の写真のような外観で、
その繊維がトゲや糸のように剥ける
非常にゴツゴツして毛羽立った形状をしています。
何だか木のすい針が指に刺さりそうな感じです。
樹皮の感じは少しcinereaにも似ていますが、
Mealyの英名にもあるように、
樹皮はパサパサ、モロモロしている感じで
赤茶色が強いcinereaの樹皮よりも
灰色が強く、さらにゴツゴツしています。
大きな樹木にまで育つと、銀葉ではありますが、
cephalocarpaも他のユーカリと同じように、
葉が槍の先のような細葉へと変化することになります。
Victoria州南部はかなり冷涼湿潤で、
日本で言うと東北や北海道の暖地のような感じです。
そのため、暑さには弱いですが、
過湿には比較的強く、夏の蒸れにさえ気をつければ、
日本でも比較的育てやすいユーカリが多く生息しています。
このcephalocarpaの性質ですが、
その例に漏れず、夏の暑さは余り得意ではありません。
今のところ色素が酷く抜けて、葉に枯れが出るといった
酷い高温障害の症状は発生していませんが、
夏場は全体的に白みが少なくなり、
葉色は薄い黄緑色に変化するという、
軽い高温障害の症状が出ることがあります。
基本的には涼しい季節メインで成長を進め、
最も激しい成長期には、cinereaと
同程度の激しさで成長を進めますが、
高温多湿な大阪などで育てると、
その成長の期間がかなり短いため、
年間で見るとcinereaよりも遥かに成長は遅くなります。
夏場は上記の軽い高温障害の症状もあって、
ほとんど成長を進めることはなくなります。
前評判の過湿耐性についてですが、
これは恐らくかなり強い方であると思います。
ただし、暑さに弱いという性質があるため、
夏場の過湿には少し注意が必要になります。
逆に涼しい季節や寒い季節の過湿については、
少しくらい水をやり過ぎても心配はいりません。
過湿耐性を兼ね備えたcephalocarpaですが、
実はそこまで水食いというわけではありません。
どちらかというとcinereaやpulverulentaよりも控え目で、
perrinianaやurnigeraと同程度の吸水量なので、
耐性があるとはいっても、乾燥気味に管理した方が良いでしょう。
兄弟分のcinereaやpulverulentaと大きく異なるのは、
非常に日光が好きで、日照が不足していると
著しくパフォーマンスが低下するというところです。
半日陰程度でも問題なく育てられるcinerea等に対して、
cephalocarpaは、半日陰程度では
びっくりするほどパフォーマンスが落ちます。
日照が足りないと貧弱な葉を生成する他の品種とは少し異なり、
cephalocarpaは、ほとんど成長が進まなくなります。
高温多湿が加わると、古い葉に枯れが出ることもあります。
また、激しいうどんこ病の被害が出ることもあります。
育て方として最も近いのはurnigeraで、
終日直射日光がふんだんに当たる場所がベストです。
夏場の休眠期には少し遮光をしたり、
涼しい場所に移動するのもありでしょうが、
酷い高温障害の症状が出ることもないので、
基本的には日光ガンガンの場所で育てた方が良いです。
cephalocarpaやurnigeraは、東AZのユーカリの中では、
びっくりするほど日光を必要とする品種なので、
我が家のような日照の悪いベランダでは、
なかなか厄介な存在です。
現在も西AZのユーカリに紛れて、
最も日照の良い場所に置いています。
ただ、cephalocarpaは決して難しいユーカリではなく、
日照の良い場所さえ確保できるのであれば、
成長が少し控え目なcinereaとして育てられます。
cephalocarpaの耐寒性についてですが、
かなり強い方で-10℃程度まで耐えられるようです。
これはVictoria州南部のユーカリでは比較的弱い方ですが、
それでも大阪の冬などものともしません。
冬場は薄紫色に紅葉して中々に美しいです。
葉が分厚くしっかりしているので、
寒風にもそこそこ耐えることができます。
また前述したように、かなりの過湿耐性を持つので、
冬場はcinereaよりもさらに安心して管理できます。
気になるcephalocarpaの香りについてですが、
シネオールベースで柑橘系の香りがかなり強いです。
最も良く似ているのは、morrisbyiで、
pulverulentaの香りをベースに
さらに柑橘系の香りを強くしたような
非常に爽快で誰もが好きになれる良い香りです。
精油成分にはリモネンという
レモンの皮に含まれる成分が多いため、
ミカン系よりもレモン系の香りが強くなっています。
香りはcinereaと同程度で、
弱くもなく強くもないという感じですが、
葉が非常に分厚くしっかりしているため、
葉を軽くこする程度ではほとんど香ることはありません。
葉を千切ったり、クラッシュしたときに強く香ります。
白みはcinereaやpulverulentaよりも控え目ですが、
また違った粉の吹き方をしている
cephalocarpaの銀葉には独特の美しさがあります。
かなりのユーカリマニアでもない限り、
無理をして育てることはないのかもしれませんが、
超級にレアな品種のため、
この日本で育てているだけでも満足感があります。
このような超級レアなユーカリを
日本で手に入れる手段は通常ですと皆無ですが、
以前、cinereaのバージョン違いとして、
親愛なるこあら師匠にタネをプレゼントしました。
ということで、現在、親愛なるこあら師匠の農場では
いくつか在庫をお持ちのことと思いますので、
育ててみたい方にはご紹介することができます。
私のところには、まだたくさんタネが余っていますが、
次回のタネの入手は未知数で、
同じSeedBankでまた手に入るかはわかりません。
もしタネから育てたい方がいらっしゃったら
安価でタネをお分けすることもできます。
とにかく銀葉ユーカリが好きで、
cephalocarpaを育ててみたい方がいらっしゃったら、
今がそのチャンスになります!
cephalocarpaは、恐らく私がこのブログで
名前を出して紹介しているユーカリの中では、
vernicosa/olidaなどと並んで、
間違いなくトップクラスのレア度でしょう。
銀葉好きには是非とも育ててみて欲しいcephalocarpa。
その独特の銀葉に魅せられてみませんか?
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<栽培難易度:B>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★★★★
耐暑性:★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-09-30 15:49 | ユーカリ紹介
計算違いだった台風の結果
昨晩から今朝にかけて
近畿圏でも台風が近くを通りました。
大阪は直撃ではなかったものの、
かなり強烈な風が吹き荒れ、
近所の用水路の近くなどでは、
床上浸水などが発生して大変でした。
いつもこのくらい台風の影響がある場合には、
鉢を移動させたり、危ないものは室内に移動したりなど
ある程度の防護策を実行するのですが、
今回はたまたま何の防護策も行いませんでした。
というのも私の計算が大きく狂っていたからで、
近畿圏に最も台風が接近したのは、
9/16の朝方だったのですが、
9/15の昼ごろとかなり古い情報で認識していたためです。
9/15の昼は風こそ強かったものの、
ほとんど荒れることもなかったので、
台風は大きくそれたのかなと勝手に思っていました。
ところが当初の予定よりも大きく遅れていたようで、
気づいたのは9/16の夜中1時ごろでした。
もうこの頃にはかなりの暴風が吹き荒れ、
暗い中、鉢などを移動させるのは余計に危険なので、
一か八か新しい配置体制にかけることにしました。
というのも以前は、
かなり無理のある、株の配置をしていたので、
台風が近くを通るだけでもかなり厳戒態勢でしたが、
先日、様々な機材を購入して、
しっかりとした安全なレイアウトに改善していました。
一か八かこの新レイアウトにかけてみることにして、
ユーカリに「頑張ってくれ!」と一声かけて、
敢えてベランダを注視しないように床につきました。
それでも、以前台風がかなり直撃に近かったときには、
退避場所に置いていた二股のラベンダーが、
完全に二つに裂けていたりしたので、
それはそれは気が気ではありませんでした。
そして今朝、台風が通り過ぎて、
風も穏やかになった頃、恐る恐る様子を見てみると、、、
大きな2m級の鉢はいくつか倒れていましたが、
これは全て近くに寄り掛かるものがあるため、
完全に倒れることはなく、
30度くらいの角度で互いに寄りかかり合っている状態で
根もパンパンなので土がこぼれることもなし。
その他の心配な風の強い場所の鉢も、
少し回転しているものはありましたが、
しっかりとスクラムを組んでいるので転倒はゼロ。
いくつか支柱に括りつけたビニ帯が外れていて、
だらんとしているのがある程度でした。
一番心配だった蕾の付いている株も全く問題なし!
私の計算違いで危機を迎えたユーカリたちは、
何とか全て無事に台風を乗り切ることができました。
今まで高層階特有の強風に
度々悩まされてきた私の小さな知恵ですが、
・風の強い場所ではしっかりと鉢同士でスクラムを組むこと
・ビニ帯は少し緩めに付けておくこと
・支柱はあまりガチガチに組まず上部には遊びを設けておくこと
これでかなり転倒を防ぐことができるはずです。
ただし、遊びがあるため、
葉同士がかなり激しくお互いをはたき合うので、
銀葉の綺麗な品種や蕾のある品種などは、
激しく傷んで、銀色が剥げたり、
蕾が取れてしまったりするので、
そのような株は素直に取り込んだ方が良いですね。
何はともあれ、かなり焦りましたが、、、
結果良好で何よりでした。- # by eucalyptus_k | 2013-09-16 14:31 | ユーカリ(栽培実績)
ユーカリ紹介を随時改訂中!
今まで書いたユーカリ紹介を読み返してみたのですが、
古い情報や、今では???という情報もありましたので、
内容を随時改訂したり、情報を追加したりしています。
写真もちょっと古かったり、
私が今よりも遥かに未熟だった時代の写真なので、
とても写真のユーカリが貧相だったりしています。
写真数の少ないユーカリには新たに写真を追加したり、
時間を見つけて、最新のものに変えていきたいと思っています。
また時間のあるときにでも見ていただけたら光栄です- # by eucalyptus_k | 2013-09-06 12:31 | その他
今年の夏は暑い!...
今年の夏は本当に暑いですね!
実は私も先日、脱水症でノックアウトしました。
急に強烈な寒気に襲われて、
熱を測ってみても平熱。。。
そこからしばらく休んでも寒気は治まらず、
次に熱を測ったら40℃近い高熱が出ていました。
意識が朦朧として、
徒歩5分の病院に行くのもやっと。。。
診断の結果は脱水症で点滴+半日入院。
もう少しで危ないところだったようです。
こんな危ない程に暑い夏ですから、
さすがのユーカリ達も少しまいっているようです。
初心者のうちは冬が怖いといいますが、
慣れてくると最も怖いのは夏です。
早速2品種もの枯死を出してしましました。
■Eucalyptus pauciflora ssp. niphophila
このユーカリは本当に難しいですね。。。
実はもう数回チャレンジしているのですが、
毎回夏に枯れてしまいます。
知人で購入して何度か育てていた人も
毎年夏になると枯れてしまうようです。
恐らく原因は、湿気と暑さのダブルパンチによる
根の蒸れによるダメージでしょう。
実はpauciflora系はそこそこ水好きなのですが、
原種以外は大そう夏に弱いようです。
そのため、用土は早急にカラカラになるような、
西AZ並みの乾燥力を心掛けないといけないですね。
とっとと乾燥させて、サッと水を与える。
蒸れる水分を残さぬようにして夏を乗り切るしかありません。
上の写真のssp. debeuzevilleiも夏には弱いようで、
全くと言って良いほど成長が進みませんが、
用土が硬質赤玉土と軽石しか入っていないような、
サボテン用土級のものを使用していますので、
こちらは枯れずに夏を乗り越えられそうです。
あとpauciflora系は異様に高pHを嫌う性質があり、
弱酸性でも高いpHだとすぐに鉄分欠乏症になり、
肥料あたりも結構激しいので、
酸性シフトの乾燥用土で肥料はほとんど要りません。
特に原種はすぐに水切れを起こしますが、
そんな荒れた土で育てることで最も良い結果が出ます。
こんな性質を掴むのに何年もかかりましたし、
発芽率も超級に悪いので、かなり厄介なユーカリです。
■Eucalyptus preissiana
こちらで最も小さなユーカリの一つとして
紹介したことのあるpreissianaですが、
これが枯れたのは正直かなりショックでした。
もうユーカリ紹介の写真ネタも確保済みで、
樹高は1m弱もあったので、
そろそろ開花かなと思っていた矢先の枯死でした。
実は我が家には、preissianaが2株あり、
1つは実家の庭にでも地植えしようかなと
確保していた株だったのですが、
この2株がほぼ同時に枯れ出しました。。。
1つが枯れたなら単純に水遣りのミスかな?と思うのですが、
置き場所も良い2株が同時に枯れ出したのは、
恐らく根本的に環境がまずかったということになるでしょう。
preissianaはれっきとした西AZのユーカリですから、
そこまで暑さに弱いはずがないと考えていました。
また育苗時にも際立って過湿に強い部類だったのですが、
意外にも、蒸し暑い大阪の夏は辛かったようです。
この経験を踏まえて、さらに乾燥力の強い用土で
仕切り直しということになります。
■Eucalyptus vernicosa
これも成長は遅いし、タネは高いしで
非常にショックな品種です。
昨年はそこまで暑さに対する
弊害を感じなかったのですが、
さすがに今年の夏は暑すぎたようです。
これも湿気と暑さのダブルパンチによる
根の蒸れによるダメージでしょう。
次回からはもう少し用土を工夫して、
夏は少し乾燥気味に管理することにします。
これらの3種については
既にタネ播きを完了しています。
とはいっても、preissiana以外は
とても暑さを嫌う性質のため、
夏の間の発芽はイマイチになるでしょう。
メインは寒くなる秋口か翌年になることと思います。
枯死はとても辛い経験ですが、
これも何とか身にしていきたいと思います。
そして最後に嬉しいお話です。
決して調子の良くない、わずか樹高60cm程度の
Eucalyptus torwoodに蕾がたくさんついていました。
このtorwoodは正式なユーカリ品種ではなく、
torquataとwoodwardiiのハイブリッド品種です。
ピンク色の花を咲かせるtorquataと
黄色の花を咲かせるwoodwardiiの交配種なので、
ちょうどその間のオレンジ色の花が咲きます。
これはとてもレアなユーカリなので、
うまく花が咲いてくれるととても嬉しいです。
最後に、皆さんも暑い夏には十分に気を付けて、
水分を十分に取るようにしてくださいね。- # by eucalyptus_k | 2013-08-22 16:10 | ユーカリ(栽培実績)
【ユーカリ紹介-66】
ユーカリ・プルイノサ (Eucalyptus pruinosa)続きまして第66回目は
初の北オーストラリアに生息する品種で
亜熱帯のサバンナ地帯に生息しており、
ワックスを塗ったような白銀ハートリーフが眩しい
ユーカリ・プルイノサです。
◎ユーカリ・プルイノサ
【学名:Eucalyptus pruinosa】
【英名:Silver Box / Silverleaf Box】
私は主に東~西まで、
オーストラリア南部のユーカリを中心に育てています。
それは何故かというと、
北オーストラリアのユーカリは
どれもあまり見栄えのパッとしないものが多く、
耐寒性にかなり難のあるものがほとんどだからです。
ユーカリの魅力は様々ですが、
やはり多くの人がユーカリに求めるものは、
美しい銀葉だったり、珍しい花だったり、
有効な精油とその香りだったりすると思います。
北オーストラリアのユーカリは、
花こそ多彩な品種はいくつか存在しますが、
大概は多くの人がユーカリに求める魅力が少なく、
パッと見はあまり在来の樹木と変わらないものが多いです。
また雨量が多く、気温も高めのため、
とても大型になるものが多いのも難点です。
私はユーカリを150種類程育てていますが、
このpruinosaはたった1つだけ
生粋の北オーストラリア、
ノーザンテリトリー(NT)出身のユーカリです。
※gamophyllaも一部ですがNTにも生息しています。
実はこのpruinosaはかなり初期にタネを手に入れたもので、
とても美しいタネの広告画像に魅せられて、
まだ地域も何も考えていない頃に購入しました。
もしかすると今だったら無理に購入せず、
敬遠していた可能性もあります。
でも、今は、結果的に育ててみて
色々な意味でとても良かったと思っています。
そんなに初期に育て始めたのにも関わらず、
何故こんなに紹介が遅れたのかというと、
他のユーカリと環境の異なるNTに生息するpruinosaは
その他のユーカリと非常に異なった性質を持っているため、
今までその性質について良くわからないでいたからです。
pruinosaは北AZには珍しく、
比較的低木のMalleeで、とても銀葉の美しい品種です。
上の写真は青葉にワックスがかかったような感じですが、
pruinosaは成長が進むに従ってどんどん白みを増します。
たまに10m程度のTree(木立型)になることもあるようですが、
大概は4~6m程度までのMallee(灌木型)に育つようです。
また比較的低樹高でもたくさんの花を咲かせるようです。
大きく育ってからのpruinosaの銀葉はとても美しく、
樹木の少ないサバンナでひと際映えるようです。
pruinosaという単語は、
他のユーカリの亜種名などにも使われており、
植物には比較的良く使われていますが、
「ワックスを塗ったような」という意味になります。
我が家で育てているユーカリでは、
他にleucoxylon ssp. pruinosaというのもありますが、
元祖pruinosaなのはこのEucalyptus pruinosaです。
pruinosaの生息しているNTの環境というのは、
南部のエアーズロック近辺などの半砂漠地帯から、
中部の雨季と乾季を合わせもつサバンナ地帯、
北部のワニが生息する完全な熱帯域に分かれています。
このpruinosaは主に中部以北のサバンナから
ワニの生息する熱帯域にかけて幅広く生息していますが、
メインの生息地は比較的北部よりのサバンナ地帯になっています。
サバンナには前述の通り、雨季と乾季が存在しており、
乾季には何カ月もほとんど雨が降らないのに、
雨季にはとても大雨が続いたりして、
結果的な総雨量は日本の各地を大きく上回ります。
そのため、このpruinosaには
多くのユーカリに当てはまるような、
単純に乾燥を好むという性質が当てはまりません。
pruinosaは、率直にどのような性質なのかというと
詳しくは育て方のところで書きますが、
乾燥にも強く、過湿にも強いという
ある種オールマイティな性質を持っています。
ただ一つ在来の植物と大きく異なるのは
他の銀葉ユーカリと同じく、
とても激しい直射日光を必要とするというところです。
それではpruinosaの外観を見ていきたいと思います。
小さな間の葉は、比較的ハートリーフが多いですが、
少し成長が進むと、どちらかというと
シャモジのような葉型になっていきます。
さらに大きく育っていくと、
完全に先細りの卵型の葉へと変わっていきますが、
細い柳葉になることはなく、卵型でもかなり幅があります。
pruinosaを葉の形だけで見ると
camphoraにとても良く似ています。
日照が不足していると、
薄い緑色やくすんだ緑色の葉になり、
この葉色だと一見camphoraと区別がつきませんが、
良く日光に当てたpruinosaの葉はcamphoraの葉よりも
遥かに白みが増して、ブルーグレイに近くなります。
pruinosaはとても日照にうるさいユーカリです。
西AZのユーカリのように、日光が足りないと、
極端に生育が悪くなるということはありませんが、
その葉色と質感には大きな差が生じます。
まず良く日光に当てた葉は、白みが強くなり、
どちらかというとブルーグレイに近い葉色になっていきます。
また葉も硬くしっかりとしたものになります。
下の写真は上の写真と同様に、
比較的良く日光に当てて育てた葉です。
色はブルーグレイで質感もしっかりとしています。
そして下の写真が、少し日光の足りていない葉色です。
この場合は薄い緑色になっていますが、
さらに日照不足が重なると、ヨレヨレの
くすんだ深緑色の葉になってしまうこともあります。
とてもわかりやすい写真があります。
下の写真を見てください。
我が家ではユーカリの生育状況に合わせて、
置き場所をローテーションすることがありますが、
このpruinosaはイマイチ性質が掴めなかったこともあり、
それはそれは激しくローテーションされていました。
写真は見たままで、下の方の白く大きな葉が
とても日照の良い場所に置いていた時の葉で、
上の方のヨレヨレの緑色の葉が、
その後、日照の良くない場所に移動してからの葉です。
何年も育てて、やっとその性質も掴めてきたので、
現在はかなり日照の良い場所を定位置としています。
そのため、現在はこのような貧弱な葉は皆無で、
とても美しい葉色で立派に育ってくれています。
またその写真も近々アップしたいと思います。
次にその茎を見てみましょう。
この場合は少し日照不足で緑色が強く、
先の方の茎なので、ちょっと突起が多めですが、
基本的にはあまり突起がなくツルっとしており、
日照が良いと茎も同様に少し粉を吹くことがあります。
さて、長年研究を重ねてきた
pruinosaの育て方についてですが、
ポイントは率直に日光と高温と水です。
まず、フルタイム直射日光が推奨で、
難しい場合でも半日は直射日光が当たった方が良いでしょう。
日光が足らないと、上記のような貧弱な葉になり、
後述しますが、冬が明けた時に酷く葉が散ってしまいます。
とにかく、直射日光の良く当たる
暑い暑い場所で育てことさえできれば、
夏場はgunniiなどよりも遥かに楽なユーカリになります。
そして多くのユーカリで問題になる水分管理ですが、
これがとても面白い性質を持っています。
pruinosaは雨季と乾季の両方に対応しているため、
水切れにはかなり強いところがあります。
これは東AZの中ではかなり水切れに強い、
neglectaと同等の高いレベルで、
西AZのpleurocarpaなどよりも遥かに粘り、
環境によってはalbidaと同じくらいまで耐えられます。
ところが水を与えてみれば、それはそれは水食いです。
夏場の吸水量はcinereaやgunniiを遥かに上回り、
robustaやrudisに余裕で匹敵するレベルです。
これはどのくらいかというと、
非常に日照と風通しの良い場所であれば、
夏場は一日に2回水を与えてもOKというレベルです。
要するに雨季と乾季に耐えられる性質から、
水切れに強いくせに、水食いという変な特徴を持っています。
では結論として、水を与えまくった方がいいのか?
それとも乾燥気味が良いのか?それともバランスが重要か?
どれが最も良いか悩むところですが、
長年の研究の結果から、水をたくさん与えた方が、
元気に激しい成長力を発揮して育ってくれることがわかりました。
逆に考えれば、乾燥気味に管理すれば、
ある程度成長を抑えることができ、
そうすることでより脇芽が出やすいようにも思っています。
恐らく、水が豊富であれば樹高を伸ばしてTree型となり、
水が少ない場合には脇芽を出して
Mallee型になる傾向があるように思います。
成長自体は比較的激しい方ですが、
多くの東AZのユーカリのように手に余るほどではないので、
できることなら大きく育てたいところですね。
あと何故かこのpruinosaは病虫害にとても強いです。
軽いハダニの被害は出ることもありますが、
何故か貧弱な葉でも、うどんこ病の被害が出たことはありません。
精油はかなり少ない方なのですが、ちょっと不思議です。
さて、北AZのユーカリの多くが抱える問題の
耐寒性についてですが、pruinosaはどうでしょうか。
寒さに強いのか?弱いのか?
これもはっきりとわかるまで3年を要しました。
結論として、寒さにはあまり強くないユーカリです。
データでは-3℃程度と言われていますが、
鉢植えの場合は、適切に管理しても、
-5℃程度が限界かなと思っています。
pruinosaを育て始めてから、冬の管理については
簡易温室で管理したり、寒風吹きさらしの場所に置いたり、
本当に色々と試してみました。
冬になるとpruinosaは激しく紅葉して、
濃い紫色の葉色へと変化します。
ところが、寒風吹きさらしの場所に置いて毎日観察しても、
あまり葉が傷んだり、枯れが出るという症状は見られませんでした。
これはもしかするとかなり耐寒性が強いのではと
期待して観察を続けていたのですが、
冬が明けてそろそろ春が近づいてくる頃になって、
急に紅葉した葉が激しく傷んで枯れ出してきたのです。
特に日照の足りなかった貧弱な葉については、
全て枯れてパラパラと散ってしまいました。
一度それで、早春を迎える頃に
ほとんどの葉がなくなってしまい、
これはちょっとヤバいと焦ったこともありました。
冬場の見た目ではわからなかったのですが、
実際は寒さでかなり傷んでいたのかもしれません。
結局、そのまま夏前には完全復活を遂げたので、
もしかすると、落葉樹的な性質があるのかもしれませんが、
無理に葉を傷めることもないと思うので、
冬場は少し寒さが控え目な場所で管理するか、
自信のない人は、簡易温室などを使用した方が良いかもしれません。
冬場の過湿にはとても強いので、
冬季室内管理も不可能ではないユーカリになります。
ちなみに暖かいところの植物は、
冬になっても吸水減少のスイッチが入らないものがありますが、
pruinosaもその例に漏れず、冬場も結構水を吸うので、
いくら乾燥に強いとは言っても、水切れには少し注意が必要です。
pruinosaの香りについてですが、
これは本当にユーカリなの?と思うほどに香りません。
香り自体は少しシネオールを含んだ、
ハーバルな青草の香りがするのですが、
少し鼻が詰まっていたりすると、
全く香りを認識することができないほどです。
葉を千切って指でぐちゃぐちゃに潰して
さらに少し絞って、初めてユーカリの香りを認識できます。
残念ながら香りを楽しむハーブとしての利用は難しいでしょう。
pruinosaは実際に初めて育てるNTのユーカリですが、
本当にその性質の違いには驚かされました。
本当にユーカリは多種多様ですね!
NTのユーカリのタネはあまり取引されることがなく、
ただでさえマイナーなところ、
そこからさらにマニアックなpruinosaですから、
日本で見つけることはほぼ100%不可能でしょう。
それでも育ててみたい方には
何カ所かタネの販売所を見つけていますので、
希望があればぜひご一報ください。
タネ播きからの初期の育苗はとても楽で、
かなり初心者向けと言えます。
私は何と冬季の室内でタネを播き、
そのまま室内で初期育苗を行いましたが、
それでもほとんど立ち枯れすることもなかったので、
相当育てやすいユーカリであると思います。
また、大きく育ってからも
前述の通り、日光さえ押さえることができれば、
用土も管理もかなりオールマイティーに対応してくれます。
私がpruinosaを育て始めた頃は、
まだまだ駆け出しの頃だったので、
育苗の用土も水分管理も何もかもめちゃくちゃで、
多くのユーカリ苗を立ち枯れさせたり、
酷く枯らせてしまったりしましたが、
pruinosaはそんな中を平然と生き延びているので、
とても頼もしく、安心して育てられると思います。
育てれば育てる程、銀葉が美しくなるようなので、
これからもとても楽しみですね。
超マイナーで美しいpruinosa!
興味があったら、
タネ播きからチャレンジしてみませんか。
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<栽培難易度:A+>
香良さ:★★
香強さ:★
成長力:★★★
要水分:★★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-08-05 17:38 | ユーカリ紹介