樹高の伸びと下葉がなくなる問題
梅雨も終わりに差し掛かり、
大阪では軽く30℃を超える日がやってきました。
晴れの日には高温乾燥が好きな
西AZのユーカリを中心に
やっと面倒な梅雨が明けたかとばかりに
新芽の展開を進め始めています。
一部の湿地帯生息種で且つ高温が好きな品種以外は
基本的にユーカリは梅雨時期が苦手で、
多くの品種では葉が傷んだり、
冬の間の傷んだ葉を散らせたりします。
春に次いでこれから
ますます成長を進めていくわけですが、
30m~80mになるような大型品種の場合、
鉢植えでも放置すれば、
ほんの数年で数mになるものがあります。
我が家のベランダでも、
camaldulensis...3m
globulus ssp. globulus...3m
citriodora...3m
risdonii...3m
melliodora...3m
leucoxylon ssp. pruinosa...2.5m
viminalis ssp. viminalis...2.5m
globulus ssp. bicostata...2.5m
coolabah...2.5m
sideroxylon...2m
staigeriana...2m
smithii...2m
rudis...2m
cypellocarpa...2m
morrisbyi...2m
robusta...2m
subcrenulata...2m
maculata...1.7m
bridgesiana...1.8m
と軒並み2mオーバーのオンパレードで、
ほとんどが1.5mオーバー、
1m以内のものは数える程しかないという状況です。
ちょうどこちらの写真に写っている
物干し用の竿が2m弱くらいの高さになります。
先年、足場板で土台を組んで、
全体的な日照を向上させたのが良かったようです。
また毎年猛威を振るっていた、
うどんこ病やハダニの被害も
今年はほぼ皆無という状況で、
これも激しい成長に拍車をかけているようです。
さらに一部の2mオーバー級では、
末葉に変わるものまで出だしています。
末葉に変わりだしたsmithii
鉢は全てが6号スリット鉢で、
一部のものでは5号のものまであります。
通常であれば、鉢のサイズだけで見ると、
完全に根詰まり状態のはずなのですが、
スリット鉢の効果でしょうか。
もちろんそれなりに根はパンパンですが、
根詰まりで急を要するような株はありません。
ただこの大きさになってくると、
下葉はどんどんと落ちていき、
特に2.5~3m級のものでは、
上部1/3程度にしか葉がありません。
物干し竿から下はほとんど葉がないものが多い
ただどれも健康状態自体は悪くはなく、
3mというと完全に天井に頭を打つのですが、
頭を打って削られた頂点の成長はストップして、
その少し下くらいから脇芽を盛んに出しています。
天井に擦られて横から芽を出したcamaldulensis
私は鉢植え管理の宿命と割り切って、
あまり下葉の減少を気にしていませんが、
これは多くのユーカリを美しく育てたい方には、
大きな問題になっているようです。
これの打開策はプロでも悩むところと聞き及びますし、
私にも今のところ、良い案は浮かんでいません。
安全策を取るのであれば、
ある程度葉を残して、切ることですが、
そもそもかなり上部にしか葉がないわけなので、
所詮、妥協策でしかなく、年々下葉は減り続けます。
また上をいくら切り続けても、
下の方はどんどん木化が進んでいき、
下から枝が出るという成果には全く貢献できません。
ただ比較的風通しの良い場所にある、
melliodoraでは、半分以上も葉が残っていたりするので、
下部の風通しの改善などは若干効果があるかもしれません。
melliodoraの幹の下の方
それでも最終的には、限界を迎えて、
一か八かで、かなり下の葉のない部分で
バッサリ切ってしまうのもありなのでしょうが、
その方法で生き残るかどうかは本当に博打感覚です。
実は私はその方法を実行して、
今まで一度も枯らせたことはありませんが、
やはり相応の覚悟が必要になりますし、
時期を間違えるとダメになってしまうこともあります。
やはり先日の記事で書いたように、
「ユーカリは樹木である」という事実がある限り、
ある程度は仕方のないことなのかもしれません。
下の方の幹に傷を付けて、
そこから新芽を出させるという高等テクもありますが、
私は一度もうまくいったことはありません。
上の方の新芽部分をしつこく傷つけていると、
株元から芽が出るという実例もあるのですが、
これも本当にその株次第で絶対というわけではありません。
結局、全く解決策の提示ができないのですが、
もしユーカリが好きなら、
そんなユーカリの姿も受け入れて
楽しく育ててみるのはどうでしょうか?
何か良い方法がある場合、教えていただければ、
株数はありますので、色々と実験も可能です。
それでも、綺麗な樹形でなければ嫌だ!という方は、
とにかく低樹高の内から小まめな摘芯や剪定を心がけるか、
そもそも低樹高で収まる品種や脇芽を吹きやすい品種を
選択して育てるのが良いと思います。
我が家でも、脇芽の吹きやすいcrenulataや、
albida/moon lagoonなどでは、
100~180cm程度になっても、
割と綺麗な樹形を保つことができています。
crenulata(樹高150cm)
albida(樹高100cm)
moon lagoon(樹高130cm)
大型樹木を鉢植えで美しく育てる。
これは趣味の栽培者の永遠の課題ですね。- # by eucalyptus_k | 2014-07-02 16:25 | ユーカリ(栽培知識)
ディシペンス・アデスモフロイア
(decipiens ssp. adesmophloia)の蕾我が家には樹高1mを超える
decipiens ssp. adesmophloiaがあります。
ssp. adesmophloiaはdecipiensの中でも、
葉があまりハート型になることがなく、
葉色も深い青緑色になる亜種です。
ところがこの株は非常に調子が悪いです。
見ていただくと分かりますが、
中間部分にほとんど葉がありません。
また変な葉枯れの症状にも悩まされています。
実際には鉢が膨張するくらいに、根がパンパンなので、
そろそろ鉢増しも行おうと思っていますが、
そんなdecipiens ssp. adesmophloiaに
蕾ができているのを発見しました。
この蕾はlehmanniiの蕾のように
まるで悪魔の爪のような形状で複数の蕾が付き、
開花後の果実はトゲの付いた鉄球のような
かなり特異な形になります。
そのため今の時点ですでに
赤ん坊の手のような形をしています。
蕾ができてくれたのはとても嬉しいのですが、
無事に開花できるかは全くの未知数です。
本当にこの株は色々と調子が悪いのです。
変な病気に罹っているように思います。
葉を照明に透かして見ると、
色が抜けて見える部分があると思います。
このような箇所はしばらくすると、
下の写真のように茶色い斑点に変わります。
この病気はdecipiens系全般で非常に良く発生します。
decipiens系は良く枯れることもあるので、
しばしばタネを播いて育苗することがありますが、
先日もこの病気で立派なssp. chalaraを枯らせています。
消毒をしてもあまり大きな効果はないのですが、
栽培環境の改善を行っていくと、
症状がかなりマシになる傾向があります。
もしかすると生涯保有菌のようなもので、
調子が悪くなると症状が出てくるのかもしれません。
gilliiやpleurocarpa、extricaなどには、
前年と同じく、既に蕾が付いていますが、
先日開花したtorwoodのように、病気がちな株ほど、
新たに蕾を付ける可能性が高いように思います。
良く言われる、生存の危機を感じて、
蕾を付けて子孫を増やそうとするという説は、
やっぱり正しいのでは?と思わされます。- # by eucalyptus_k | 2014-06-23 12:16 | ユーカリ(花と蕾)
ユーカリという樹木
最近お問い合わせが多くなってきたので、
ユーカリという樹木について、
簡単に書いてみたいと思います。
恐らく多くの方が育てているのは、
ラベンダーやミントなどのハーブ類、
屋内の観葉植物などがメインで、
ユーカリもその一環として
育てようと思われることが多いようです。
ただここで忘れてはいけないことは、
ユーカリは樹木であるということです。
最も低木なものでも2m~4m。
ただしこのクラスはマイナーな品種が多いので、
多くの方が良く育てているユーカリのほとんどは、
15~25mクラスの品種になります。
これは多くの草木や観葉植物とは完全に異なり、
小さくてもヤマボウシやハナミズキやツバキ、
ありふれたものでは、サクラやケヤキを
鉢植えで育てるイメージになります。
もう一つ、ユーカリは完全な陽樹のため、
室内で通常の観葉植物の鉢植えとして
育てることは残念ながらできません。
ユーカリを育て始めてから、
まずびっくりしてお問い合わせがあるのが、
冬を超えてから、葉が変色して散り始めたり、
葉に軽く班が出たり、葉の一部に枯れが出たり、
下葉がなくなりだしたりという症状についてです。
結論として、これはある種、生理現象です。
※越冬後の株、下の方の紫の葉の多くは春に散る
ここで比較の対象になる植物として、
まず花草やハーブ等があります。
これらの植物は苦手な季節(多くは冬か夏)を除いて、
全体的に綺麗な葉が茂っているイメージです。
なぜユーカリは当たり前のように
これらの植物のようにならないのかというと、
花草やハーブなどの樹高を考えてみてください。
恐らくその美しいハーブなどは、60cm~100cm程度の樹高で
一般的な最高樹高にほぼ到達していると思います。
ところがユーカリの最高樹高は、
10m~25mなわけですから、2m近くの樹高があったとしても、
ハーブ等に例えるならば、ほんの10cmの小苗になるわけです。
樹木であるユーカリは、最高樹高を目指して、
葉を増やすことよりも、背丈を伸ばすことを頑張ります。
樹高が伸びれば、下葉を落とし、その幹は木化して、
さらに土台をしっかりとさせて、また樹高を伸ばそうとします。
地植えの場合は問題ありませんが、
鉢植えの場合、ここで根張りのスペースにも限界が生じるので、
ある種、下葉がなくなって貧相になるというのは、
何らおかしなことではないわけです。
※放置すれば樹高ばかり伸びるのは自然
良く、ホームセンターなどで、
花草売場の奥に苗木コーナーがあると思いますが、
ここに並んでいる苗木たちは、どれもそのように下葉がなく、
少し貧相な苗木という形状になっていると思います。
もちろんここで、剪定のハイテクニックを駆使して、
低樹高で葉を茂らせるということも可能でしょうが、
それはある種、美しい盆栽を作るのにも似ていて、
プロでも日々苦心している部分ですから、
なかなか素人にはうまくはいきません。
例えば、広い庭に地植えをして、
そのユーカリの最高樹高近くにまで育てれば、
ある種、それらのハーブ草木などのように、
いつみても葉の茂った立派な樹木になるでしょう。
次に室内にあるシェフレラやベンジャミンなどの
観葉植物も比較の対象となる一つです。
良く言われるのが、室内の観葉植物は、
いつまでも綺麗な葉でいるのに、
ユーカリはどんどん葉が散ってしまうということです。
実は極論として、室内で植物を育てるというのは、
植物にとって非常に辛い状態にあります。
そのため、春などにはある程度成長が進みますが、
通年では、あまり大きく成長していないのです。
また室内にあるため、風雨や日光にも晒されませんし、
一部の害虫被害にも遭いにくいので、
葉が動かない=長期間葉が綺麗ということになります。
ユーカリは激しい直射日光を必要とし、
屋外でのみ育てることのできる植物です。
成長や新陳代謝の速度は、
室内の観葉植物の比ではありません。
先述した樹高を伸ばす性質に加えて、
必要のない枝葉や古い枝葉を
非常に早いサイクルで入れ替えていきます。
※湿気のこもる場所の葉は株を守るために傷んで散るがこれも生理現象
我が家の環境植物を例に取ってみると、
一年以上も前の葉がまだ残っていて、
比較的色も質感も綺麗なものが多々あります。
ところが屋外で激しい日光を浴びて、
より自然に近いサイクルで育つユーカリには、
一年前の葉などほとんど残っていません。
例え残っていたとしても、風雨にさらされて、
かなり汚くなっているか、
一部は枯れているものがほとんどです。
広いお庭をお持ちの方は大きな庭木を
お庭のない方は神社の森の樹木を
近くで良く観察してみてください。
葉の古い部分は枯れてボロボロになっていたり、
風通しの悪い部分は病気にかかって、
カビが生えていたり、萎縮している葉があったり、
所々が激しく虫に食われていたりすると思います。
それでもその樹木は枯れる気がしないくらい元気で、
春には青々とした新芽を吹きながら、
何十年もそこで変わりなく生きています。
ユーカリは現地オーストラリアでは、
野生動物くらいしかいない壮大な大平原や
大森林などの自然の厳しい場所に生息しています。
そのような場所出身で大型樹木のユーカリは、
屋外で普通に育てていれば、
上記の神社の木のような状態になります。
間違っても放置するだけで、ハーブ草木や花草、
観葉植物などと同じようにはいきません。
もちろんそこで人間の手が入るわけです。
汚く枯れた葉は人間の手で切って取り除き、
病気にかかった葉には薬剤を散布して対処し、
虫にも殺虫剤や手で取るなどの対処を行います。
この人間の手が増えれば増える程、
見栄えの良い植物になっていきます。
ただそれでも、人間が育てやすいように
品種改良された多くの花草などのようには
なかなかうまくはいかないものです。
最後に良くこんな状況を見ることがあります。
ある日、とても綺麗なお店の前で、
美しいグニーユーカリの鉢植えを見かけました。
ところが数か月後にそこを通って見てみると、
下葉はほとんどなくなり、上の方に葉が付いているだけで、
樹高もかなり大きくなって、美しい鉢とのバランスは最悪です。
そして一年も経つ頃、そこを通ってみると、
もうその鉢植えの姿はなくなっていました。
恐らくエクステリアとしては不格好となり、
破棄されたか、どこかにやられてしまったのでしょう。
少し哀しいお話かもしれませんが、
これがユーカリの自然の状態であると言えるのです。- # by eucalyptus_k | 2014-06-19 16:46 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリ・トルウッド(torwood)の開花
先日、蕾についてアップしたところですが、
早速、torwoodが開花していました。
根元の方はピンク色がかっていますが、
思っていたよりも黄色い花が咲きました。
花の正面から見ると、
ほとんど黄色に近いクリーム色の花ですが、
横から見てみると根元の方が
少しピンクがかっているのがわかります。
光の具合によっては、
オレンジ色の花にも見えることがあります。
花はあまり大きなものではありませんが、
存在感はかなりあります。
恐らくその個体差によって、
torquataの要素が強くなるとピンク色が増し、
woorwardiiの要素が強くなると、
黄色が増すのではないかと思います。
ネットでtorwoodの花を調べてみると、
ピンク色の強いもの、黄色の強いもの様々です。
差し詰め我が家のtorwoodは
woorwardiiが少し強い感じでしょうか。
今後も花の写真は撮り続けていきますが、
非常に希少な品種の開花を実現できました。
日本でこれが初!
なんてことも大いにありえます。
今日は多くは語らず、しつこいくらいに、
とにかく写真を載せていくことにします。- # by eucalyptus_k | 2014-06-02 17:25 | ユーカリ(花と蕾)
ユーカリ・トルウッド(torwood)の蕾
先日、torquataの開花をお伝えしましたが、
今度は我が家のベランダで、
そのハイブリッド品種であるtorwoodの蕾が
開きかけているのを発見しました。
このtorwoodという名前は、
正式な学名ではなく、この品種の通称です。
こちらの記事で紹介している
ピンク色の花を咲かせるtorquataと、
こちらの記事で紹介している
黄色の花を咲かせるwoodwardiiの
ハイブリッド(交配種)のため、
それぞれの頭のtorとwoodを組み合わせたものです。
パッと見はあまりwoodwardiiの外観は感じられず、
ほとんどtorquataに近い外観をしています。
また大まかな性質もtorquataに良く似ています。
ただ、その香りは非常に強いwoodwardiiのものを継承していて、
その蕾の形状もどちらかというとwoodwardiiに近いのですが、
純白色の蕾を持つwoodwardiiとは大きく異なり、
蕾が粉を吹かないところはtorquataの特徴を継承しています。
このように双方の特徴を複雑に合わせ持っています。
蕾から見え隠れする花の色は
主にはオレンジ色または薄ピンク色で、
これだけは完全に双方の間を取っている感じです。
蕾や横に映っている葉を見ていただくとわかりますが、
茶色い斑点がたくさん出ていると思います。
この株は葉枯れや葉の縮れが起こる、
変な病気にずっと悩まされています。
定期的に殺菌剤による消毒を行っていますが、
あまり大きな改善は見られていません。
この病気のために、花が無事に咲くか心配でしたが、
今見たところでは、花にはあまり影響はないようです。
ちなみにこの変な病気もtorquataが良くかかる症状で
woodwardiiには見られませんので、
生態的な特徴はtorquataに似ているのかもしれません。
性質は西AZの中では、この病気を除いては楽な方なので、
かなり我儘なwoodwardiiよりもかなりtorquataに近いです。
ここ数日雨の日が続いていましたが、
今日から晴れるようなので、
一気に花が開いていくかもしれません。
経験上、まだまだ油断はできませんが、
無事に開花するのを楽しみにしています。- # by eucalyptus_k | 2014-05-28 10:50 | ユーカリ(花と蕾)