【ユーカリ紹介-69】
ユーカリ・デレガテンシス・タスマニエンシス
(Eucalyptus delegatensis ssp. tasmaniensis)続きまして第69回目は
純白の樹皮が予想以上にとても美しく
水滴が垂れたような形のブルーグレイの葉が特徴、
冷涼地でこそ本領を発揮するタスマニア島固有種
ユーカリ・デレガテンシス・タスマニエンシスです。
◎ユーカリ・デレガテンシス・タスマニエンシス
【学名:Eucalyptus delegatensis ssp. tasmaniensis】
【英名:Blue Leaf / White Top / Gum-topped Stringybark】
このdelegatensis ssp. tasmaniensisは、
現地では比較的メジャーで本土の高山地帯に生息している
delegatensis ssp. delegatensisのタスマニア生息種です。
実はこのssp. tasmaniensisと
原種のssp. delegatensisは
当初、全く育てる予定のないユーカリでした。
当時の私は銀葉で丸葉のユーカリが好きで
そのようなユーカリを中心にセレクトしていましたので、
どちらかというと長細い葉をしているdelegatensisには
ほとんど興味がありませんでした。
近日中に紹介できるかと思いますが、
丸葉ユーカリにdarlympleanaというユーカリがあります。
そのdarlympleanaのタネを注文するときに
ちょっと頭がボケていたようで、
同じdから始まるdelegatensisを注文してしまいました。
注文間違いに気がついたのはタネが届いた後で、
しばらくはショックで、興味がなかったこともあって、
特にタネを播くこともなく、冷蔵庫に眠らせていました。
それからしばらく丸葉ユーカリを育て続けて、
その他の様々なユーカリに興味を持ち始めてから、
delegatensis ssp. tasmaniensisの
とても美しい写真を見ることがありました。
そして、その美しさに魅せられて、
delegatensis ssp. tasmaniensisのタネを
新たに注文するとともに、
冷蔵庫に眠らせていたssp. delegatensisのタネも
一緒に播くという機会をやっと得ることができました。
詳しくは後述しますが、delegatensisというユーカリは、
原種、亜種共に、際立って暑さに弱い性質があり、
夏の日差しを少しでも浴びるとヘロヘロになります。
ただ、性質自体はとても強健で頑丈なようで、
ヘロヘロになってもあまり枯れる気はしません。
そのため、特に強健な原種のssp. delegatensisは、
非常に日照の悪い場所に置いていたため、
成長状態があまり芳しくありません。
一方、亜種のssp. tasmaniensisは、
少しだけ原種よりデリケートな性質もあって、、
日照などのそれなりに良い場所に置いていたため、
結果として、成長状態が格段に良くなってしまい、
原種よりも先に紹介することになっています。
原種のssp. delegatensisも
次の春以降にご紹介できる予定です。
多くのユーカリには
いくつかの亜種や変種を持つものが多いですが、
大概の品種では、原種と亜種それぞれが、
見分けもつかない程に良く似ているものです。
ところがこのdelegatensisについては、
原種のssp. delegatensisと、
亜種のssp. tasmaniensisで、
一目見て違いがわかる程度の差があります。
詳しい比較は原種の紹介のときに行う予定です。
まず、このdelegatensis ssp. tasmaniensisは、
非常に美しい純白の樹皮を持っています。
この純白の樹皮は驚くほどに美しく、
当初、興味を持っていなかった自分が
馬鹿らしくなるほどに魅力的な外観を演出してくれます。
正直、この美しい樹皮が醸し出す
際立った全体像を見た時に
育てて良かったなあと心から思いました。
ユーカリには樹皮が白くなるものは多いのですが、
大概の品種では、相応に大きくなってからの話になります。
ところがこのdelegatensis ssp. tasmaniensisでは、
40cm程度の樹高のときから、
その美しい樹皮を生成してくれます。
この写真のdelegatensis ssp. tasmaniensisは
現在、140cm程度の樹高がありますが、
新芽部分以外の下3/4程度の幹は真っ白です。
写真を撮っている時に
ちょうど面白い写真を撮ることができました。
下の写真は幹の白い部分とそうでない部分の
ちょうど境目になります。
そこから上の比較的新しい幹の部分は、
主に黄緑色で赤っぽい部分もあります。
このまだ白く染まっていない部分も
これから樹高を伸ばすにつれて、
どんどん白くなってくることと思います。
ちなみにこの幹の白い部分は、
幹そのものが白い色をしているのではなく、
おしろいのような白い粉がびっしりと付いています。
そのため、幹の白い部分を指で強く擦ると、
その白い粉が取れてしまい、緑色の幹が見えてきます。
delegatensis ssp. tasmaniensisの葉は、
白みの強いブルーグレイの葉色をしています。
写真の葉色は夏を越した直後のもので
少し緑色が強くなっていますが、
涼しい季節の葉は、水色に近いような
非常に美しい色になります。
一方原種のssp. delegatensisでは、
見てわかる程に緑色が強くなります。
こんな美しい銀葉を持つ
delegatensis ssp. tasmaniensisですが、
出たばかりの新芽は、全く粉を吹いておらず、
葉色は濃い緑色で激しく光沢があります。
この写真の左上の方には
その光沢のある新芽が映っていますが、
下の方に行くほど、幹も葉も
白みが強くなっているのがわかると思います。
delegatensis ssp. tasmaniensisの葉型は、
槍型というには、少し無理がある程に
全体的に強く丸みがあります。
例えるなら涙型(ティアドロップ型)をしています。
中には小判のようにかなり丸みの強い葉もあります。
一方原種のssp. delegatensisは、
葉に丸みがなく、細長く尖っており、
大きさも長さもかなり大きなものになります。
delegatensis ssp. tasmaniensisの葉は
どれも下にぶら下がるように生えています。
そして葉は幹の方向に向けて軽くカーブしており、
左右対称の形をしているものは存在しません。
そしてこの写真がわかりやすいかと思いますが、
私が指で持っている葉の葉柄の部分を見てください。
葉柄と葉の接点の部分に少しズレがあります。
葉のカーブの内側になる方が必ず葉側へズレています。
このような特徴の葉を持つユーカリは
他にもいくつか存在していますが、
この葉柄部分の特徴をobliqueと言います。
このoblique(不等辺)がとても激しく、
その学名にまでなっている
Eucalyptus obliquaというユーカリもあります。
丸みのあるブルーグレイの葉を持ち、
純白の樹皮を含めて、全体的に白みの強い
delegatensis ssp. tasmaniensisは、
海外では、polyanthemosと同じくらい人気があり、
切枝などに使用されることも多いようです。
ただし、日本では、
まず見かけることのないユーカリです。
こんな面白い特徴を持つ
delegatensis ssp. tasmaniensisですが
原種と共に屈指の大木に育つユーカリです。
その樹高は50m以上で大きなものでは90mにもなり、
ユーカリの中でも特に大型で
Tree型の立派な樹木へと育ちます。
またこのdelegatensis ssp. tasmaniensisは、
ユーカリの大きな特徴である
Lignotuber(地際の瘤)を生成しません。
苗木の段階では、非常に美しい純白の樹皮が特徴ですが、
大きく育ってからの樹皮は、意外にもStringybarkで
非常にゴツゴツして毛羽立った形状をしています。
大きくなってからの葉型ですが、
viminalisなどのように非常に細長い鎌形の葉にはなりませんが、
小さな間のような白銀で丸みのある葉は失われて、
緑色で光沢のある幅広の槍の先のような葉へと変化します。
delegatensis ssp. tasmaniensisの生息地は
タスマニア島の準高山地帯です。
原種はAZ本土の1500m近い高山地帯に生息していますが、
ssp. tasmaniensisは、それよりも少し低い場所に生息しているため、
原種に比べると耐寒性は若干劣るようです。
delegatensis ssp. tasmaniensisの育て方についてですが、
前述した通り、極めて暑さに弱い性質を持っています。
日本の夏の激しい直射日光に当てると、
正午を過ぎた頃に、葉全体が
ヘロヘロになることがしばしばあります。
ところがそのような状態になっても、
そのまま枯れが出て枯死するということはありません。
強健な原種では、ヘロヘロになりながらも
高温障害の症状が出ることはほとんどありません。
ところが、高温に多湿が加わったような環境の場合、
delegatensis ssp. tasmaniensisでは、
酷く高温障害の症状が出ることもあります。
基本的には、非常に日光の好きな品種です。
風通しが良く、日照のとても良い、
乾燥した場所を確保できる場合には、
ヘロヘロになることをあまり気にせずに
その場所でガンガンに日光を当てた方が良いです。
ところが、風通しを確保できず、
湿気の籠りやすい場所で育てる場合には、
夏場限定で少し日照が悪くなったとしても、
涼しく風通しの良い、乾燥した場所に退避した方が良いでしょう。
その代わり、春と秋と冬には、
半日陰以上の日照を確保して、
日光にどんどん当てて成長を促進させてください。
成長のメインの時期は、
大阪や東京などの暖地の場合は、
初春や晩秋のかなり涼しい時期になります。
大阪などではあまり環境が合っていないため、
成長期に日照が不足している場合、
全くといって良いほど成長が進まないこともあります。
delegatensis ssp. tasmaniensisは、
超大型になる品種のため、
元来、非常に激しい成長力を持っています。
ところが大阪ではその成長期が短いため、
年間を通して見るとそこまで成長の激しさを
実感することはできません。
※それでもそれなりに成長は激しいです。
もし、長野県の純高山地帯や東北など
冷涼湿潤な環境で栽培した場合には、
globulusやcamaldulensis顔負けの
暴力的な成長力を発揮することと思います。
delegatensis ssp. tasmaniensisは
日本とあまり雨量の変わらない地域出身ですので、
ユーカリの中では抜群の吸水量を誇ります。
恐らく、他の外来の観葉植物を大きく越え、
在来の植物とほぼ変わらない水遣りで育てられます。
夏場の吸水はヘタをすると1日に1回を上回ります。
樹高があり、根張りがしっかりしている場合には
我が家でも冬場に2~4日に1回程度の水遣りを要します。
水切れに対する耐性はあまり持ち合わせていないため、
水切れには特に注意の必要な品種です。
春や秋、冬には、一般的な用土の表面が乾いたら水遣り、
夏場には用土の表面が少し乾いたら水遣りで対応できます。
delegatensis ssp. tasmaniensisは、
基本的に用土を選ばないユーカリであるといえます。
ただし、あまりにも水切れが早すぎる場合には、
少し用土の保水性を上げた方が良いかもしれません。
我が家では、管理しているユーカリの数が多いので、
delegatensis ssp. tasmaniensisは、水切れ防止のために
とにかく多めに水遣りをしている傾向がありますが、
それで傷んだということは全くなく、
恐らく過湿で枯らせることはほとんどないように思います。
ただし、水が好きといっても、高温多湿は苦手ですので、
夏場の暑い時間帯に用土をビタビタにすることで起こる
根の蒸れによる急性の根腐れには注意が必要です。
水はたくさん与えても、
湿気が籠らないように工夫をすると
より安心して管理ができると思います。
delegatensis ssp. tasmaniensisは、
divesやradiata等と同じ、ミント系ユーカリの仲間です。
そのため、病害虫による被害はほぼ皆無です。
たまにハキリバチが葉を切り取っていくことはあっても、
我が家や実家の庭でも病虫害が出たことは一度もありません。
結論として夏場の高温多湿と水切れにさえ気をつければ、
ほぼ在来の植物と変わらない管理で育てられます。
delegatensis ssp. tasmaniensisの耐寒性ですが、
原種より若干劣るとはいっても、
-12℃程度までは問題なく耐えられるようです。
これはcinereaとほぼ同じ耐寒性ですので、
日本の多くの場所で越冬が可能であると思います。
冬季の過湿にも強い耐性を持っていますが、
若干乾燥気味に育てた方が葉を綺麗に保つことができます。
基本的には冬場の管理で注意するポイントは
水切れ意外には見当たらない程に冬が楽なユーカリです。
気になるdelegatensis ssp. tasmaniensisの香りについてですが、
ミント系ユーカリの代表格のため、
ペパーミントとほぼ同じような香りがします。
一般的なユーカリのようなシネオールの香りはありません。
ところがその香りは非常に弱く、
指で葉を擦った程度では、まず香りません。
葉を千切ったり、クラッシュしたとしても、
余程鼻が良くないと、ほとんど香りを感じることができません。
頑張って何とか嗅いだ香り自体は悪くないのですが、
香りを楽しむ利用はまず不可能と言って良いです。
delegatensis ssp. tasmaniensisは原種と共に
ほとんど日本で知られていないユーカリのはずですが、
育ててみたいのだけれど、どこで手に入れたらよいか?
というお問い合わせが意外に多いユーカリの一つです。
以前も一度、ユーカリプレゼントで
1苗プレゼントしたことがありますが、
非常に喜んでいただけたのを覚えています。
確かに私も当初は全く興味を持っていませんでしたが、
その純白の樹皮とブルーグレイの葉色は
ビックリするほどに美しく、
cinerea等とはまた違った良さがあると思います。
残念ながら、現在日本で
delegatensis ssp. tasmaniensisの苗を
手に入れる方法はありません。
もし育ててみたい方がいらっしゃったら、
タネの販売先をご紹介します。
発芽時に若干の癖がありますが、
芽さえ出てしまえば、後はとても楽に育てられますので、
ユーカリをタネから育てる入門編にも最適です。
特に冷涼地にお住まいの方には、
少し恐ろしいほど?のパフォーマンスを
発揮してくれること間違いなしです。
是非ともdelegatensis ssp. tasmaniensisを育ててみて、
その美しさに酔いしれてみてください。
------------------------------
<栽培難易度:A+>
香良さ:★★★
香強さ:★
成長力:★★★★
要水分:★★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★
耐日陰:★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★★★★★
耐暑性:★
耐病虫:★★★★★
------------------------------
※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2014-01-10 18:11 | ユーカリ紹介
新年のご挨拶
少し遅れましたが...
あけましておめでとうございます!!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
急に最低気温8℃と以上に暖かくなったり、
普通に氷点下を記録してみたりと、
非常に気温の変動の激しい年末年始でした。
私は本当に、
毎年毎年水を与える量が減っていき、
そしてそれに比例するように
ユーカリの越冬状況も良くなっていきます。
今春は特に花の綺麗な
woodwardiiやtorwoodの蕾がありますので、
その開花の実現が楽しみになっています。
あと2ケ月ほどは、ユーカリにもあまり動きがなく、
ユーカリ管理では少し穏やかな時期が続きますが、
一年で最も寒い時期が訪れます。
今冬、私は体調を崩しまくりになっていますが、
皆さまは体調管理に気をつけて、
ユーカリとともにこの冬を乗り越えて、
暖かい春を迎えてくださいませ!
【謹】
既に氷点下を経験したあとのレモンユーカリ。
年々耐寒性は強くなっているのでしょうか。
今のところ大した痛みもありません。
樹高が3m近いので上を見上げての撮影です。
【賀】
我が家で最も赤く染まっているmelanophloiaです。
毎年毎年全ての葉が真紅に染まりますが、
それでもとても元気で良く水を吸います。
春にはすぐにブルーグレイの葉が茂ります。
【新】
年越し時点でのpleurocarpaです。
こちらもほとんど水を与えないようになってから、
冬も大して痛みが出ないようになりました。
ついこの前まで展開されていた柔らかい新芽です。
【年】
既に枯れてしまってはいますが、
最も美しい時点でのlehmanniiの花です。
今年も当ブログをどうぞよろしくお願いします!- # by eucalyptus_k | 2014-01-03 15:35 | その他