【ユーカリ紹介-59】
ユーカリ・テトラプテラ (Eucalyptus tetraptera)続きまして第59回目は
ユーカリ中で最大の大葉と
四角形の非常に変わった花を咲かせる
西AZ出身の低木ユーカリ、
ユーカリ・テトラプテラです。
◎ユーカリ・テトラプテラ
【学名:Eucalyptus tetraptera】
【英名:Square-fruited Mallee】
このtetrapteraは、とても大きな2つの特徴を持ち、
日本では、知る人ぞ知るマイナーなユーカリですが、
海外の栽培者には、幅広く人気のあるメジャーなユーカリです。
そのため、海外のタネ屋を覘いてみると、
必ずといってよいほど、タネの在庫があります。
まず、tetrapteraの一番大きな特徴は、
そのとても変わった形状の花でしょう。
見ていただくと、その異様な形状に
びっくりされるのではないでしょうか?
厳密には大きな赤い角ばったものは
花梗(花の付いている部分)で、
実際の花は先の毛のようなピンクの部分です。
tetrapteraは、赤い角ばった花梗から、
ピンクの花を咲かせるユーカリ
ということになります。
もちろん、tetrapteraという学名も
その花の形状が元になっており、
4つのウイングという意味になります。
tetrapteraのもう一つの大きな特徴は、
ユーカリ中で最も大きな葉を持つというところです。
我が家のtetrapteraは、
まだ2年目で樹高50cm程度といったところですが、
それでもとても大きな葉を付けています。
試しにその葉の長さを計ってみると
何と20cmもあることがわかります。
tetrapteraの葉では20cmなんてまだまだ序の口で、
さらに大きくなることがわかっています。
最大のサイズは29cm程度ということなので、
最終的には30cm近い葉を付けることになります。
この葉はとても分厚く、しっかりとしています。
また、散った葉も硬く、長くその形状を保ちます。
そのため、現地の子供はtetrapteraの葉を、
なんと! 本のしおり代わりに使うそうです。
試しにしおり代わりにしてみました。
確かにこれならしおりとして
問題なく使用できると実感しました。
そんな大きな葉を支えているわけですから、
先端の方でも、その茎はとても丈夫です。
簡単に手で折れるような硬さではありません。
先の方の茎は少し突起がありザラザラしています。
これはかなり先端の方ですが、
かなりの太さであることがわかります。
これが段々と下の方になるにしたがって、
突起はなくなり、ツルっとした質感になります。
このあたりになってくると、
支柱の竹と同じくらいの太さになっており、
強風でもびくともしない硬さをもっています。
ただし鉢植え栽培の場合は、
この硬さと葉の大きさが仇となり、
転倒につながることもあるので、
十分に注意が必要です。
また我が家では、早いうちから支柱で強制して、
真っ直ぐに伸びるようにしていますが、
そのまま支柱なしで育てると、
なかなか真っ直ぐには伸びてくれません。
またとても太陽が好きな性質を持っているため、
しきりに太陽の方を向いて曲がります。
次に新芽の部分を見てみましょう。
とても立派な新芽です。
その他のユーカリと比べると、
新芽も硬くしっかりとしています。
後でも述べますが、
tetrapteraはとても湿気を嫌います。
新芽の先が茶色くなっているのは、過湿だったり、
空中湿度が高すぎたりすると、起こる症状です。
我が家では、どうしても、湿度の高い季節には、
こういった症状が発生しますが、
暑い真夏などの成長期には、全くなくなります。
tetrapteraの生息地ですが、
最も我儘なユーカリが数多く生息している、
オーストラリア南西の沿岸部で、
エスペランスの近郊です。
lehmannii/tetragona/forrestianaなどが
生息している地域とほぼ同じになります。
tetrapteraはユーカリの中でも、
かなり小型の部類になります。
地下水が豊富で、温暖な場所であれば、
4m程度の樹高にまで育つようですが、
大概は2m前後までの樹高で、
ブッシュ状に横に広がることが多いようです。
低木ユーカリのため、1m程度の樹高でも開花が見込めます。
ただtetrapteraはとても成長の遅いユーカリなので、
1m程度の樹高で開花ともなると、
最低でも3年はかかるものと思われます。
こんな特徴的なtetrapteraの育て方についてですが、
激しい直射日光と強乾燥力の用土で育てるという
西AZのユーカリの典型的な育て方をします。
また、その中でも、過湿や高い空中湿度に弱く、
海外でメジャーなユーカリであるわりには、
なかなかに難易度の高いユーカリです。
このように葉の大きなユーカリは、
非常に水をたくさん欲する傾向が強いのですが、
tetrapteraは他の西AZのユーカリと比べても、
吸水量はかなり少なめで、
ユーカリ中でも最も水を必要としないユーカリ
の一つに数えられるでしょう。
非常に乾燥を好む西AZのユーカリであっても、
過湿にうるさいmacrocarpaであったとしても、
鉢植え栽培で、真夏に終日直射日光を当てている場合には、
ほぼ間違いなく、毎日1回の水遣りが必要になるものです。
ところが、tetrapteraはギリギリですが、
2日に1回の水遣りでも耐えられるレベルです。
また、冬になると、ほぼ断水に近い管理になります。
我が家のtetrapteraは日照量を優先する代わりに、
土砂降りの場合には、少し雨のしぶきがかかる場所に置いています。
とはいっても、屋根がかなりせり出していますし、
雨が直でかかることは全くあり得ない場所です。
その場所で、実は、まだ12月になってから、
一度も水を与えていません。
それでも、スリット鉢の底から見える土は
常に湿っているような状態で、
たまに降る雨の湿気やしぶきだけで、
ほぼ2ヶ月、全く水を与えずに生きています。
同じ場所には、macrocarpaやrhodanthaもありますが、
さすがにこれらのユーカリであっても、
雨の湿気だけで2ヶ月はちょっと無理です。
これらの結果から、特に冬季は、
どれほど水の要らないユーカリであるかがわかります。
まさに、多肉植物並みと言っても過言ではありません。
ポイントとしては、まず日光です。
必要な日光レベルは最高レベルです。
色々と実験をしてみましたが、
半日陰程度の場所では、非常に生育が悪くなり、
いつまでも小さな葉のままで徒長して、
激しいうどんこ病の被害に悩まされます。
そして次には、最高レベルの乾燥力の
用土を使用して育てた方が良いでしょう。
tetrapteraの、特に冬季に水を吸わない性質を考えると、
余程乾燥力のある用土で育てていない限りは、
冬季に雨ざらしの場所で育てるのは難しいかもしれません。
macrocarpaなどが元気に育っている、
雨の当たる実家の庭でも、冬季の長雨で、
tetrapteraが枯れてしまいました。
ただ、梅雨時期には、
kruseana程のデリケートさはないので、
恐らく、気温の高さと湿度のバランスが
大きなポイントとなっているように思います。
とにかく、日本で普通の植物のように育てるには
少々厄介なユーカリであると言えるかもしれません。
低木Malleeの例に漏れず、
tetrapteraの成長はとても緩慢です。
環境が余程合う場合は別なのかもしれませんが、
良くても、大体1年で30~40cmくらいの成長速度です。
また成長は、春の暖かい季節にも進みますが、
梅雨明け後の最も暑くなる季節がメインになります。
しっかりと日光に当てた株には
うどんこ病やハダニの被害が出ることはありませんが、
tetrapteraは精油分のとても少ないユーカリなので、
ハキリバチが葉を頻繁に千切っていったり、
尺取虫などの食害に合うこともあるようです。
気になるtetrapteraの耐寒性ですが、
残念ながらあまり強い方ではありません。
大体-5℃程度までと言われていますが、
小さな苗の間は、簡易温室を使用するなど、
防寒対策が必要になってきます。
ただ、冬季は特に過湿を嫌う品種ですから、
間違っても室内管理は行わないでください。
我が家の50cmを超えて、
大きな葉を付けたtetrapteraでも、
例年は、激しく霜焼けの症状が出るので、
念のため簡易温室に退避しています。
ところが今年は、敢えて、
寒風吹きさらしの場所に放置してみました。
断水に近い管理をしていることが良いのでしょうか、
葉は赤紫色に紅葉していますが、
さほど大きな葉痛みは発生していません。
ただ、30cm以下の小さな苗が、
冬に屋外放置で全滅した経緯もありますので、
慣れない方にはやはり防寒対策をオススメします。
一度簡易温室内で水を遣り過ぎて、
温室内でも、用土が軽く凍結したことがあるのですが、
そのときは、もうダメかと思うくらいに傷みました。
そもそも、用土が凍結するような
水分管理には問題があるということです。
tetrapteraは葉が分厚く大きいので、
水切れのサインがとてもわかりやすいです。
冬季管理に自信のない人は、
慣れるまで、毎日欠かさずチェックして、
葉が犬の耳のようにベロンと垂れてから、
鉢底を軽く水につけるというような
水遣りで対応するのが良いかもしれません。
tetrapteraの香りについてですが、
とても残念なことに、全くといっていいほど香りません。
今まで何度か散ってすぐの葉を砕いて香ってみましたが、
torquataなどと同じような薄い花の香り系だろう
ということだけはわかりましたが、詳しくは掴み切れていません。
それほどまでに香りのしないユーカリなのです。
もちろんながら、香りを楽しむという要素は皆無なので、
花を楽しむユーカリであるとご理解ください。
とっても変わった花と大きな葉を持つ、
特徴的なtetrapteraは、
海外の栽培者の目を引き続ける程に魅力的で、
皆さんにも是非とも育てて欲しいユーカリです。
ただ、ユーカリには相性というものがあり、
環境や栽培者の性格如何によっては、
とても難易度の高いユーカリになるかもしれません。
それでも、そんな難易度を承知してでも、
育ててみたいという魅力満載のユーカリです!
macrocarpaやkruseanaを育てている人には
問題なく育てられるユーカリです。
またtetragonaなどを元気に育てられている人も
入っていきやすいユーカリであると思います。
育てたい方には朗報です!
親愛なるこあら師匠の農場にて
在庫があるとの記事がアップされています。
ちょっと癖があり、我儘ではありますが、
それでも、非常に珍しいtetrapteraの花を
是非とも咲かせてみてください!
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<栽培難易度:D>
香良さ:★★?
香強さ:★
成長力:★
要水分:★
耐過湿:★★
耐水切:★★★★★
耐日陰:☆
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-01-28 16:58 | ユーカリ紹介
久々のユーカリ茶
久々に思い立ってユーカリ茶を飲んでみました。
今日のセレクションは
Eucalyptus camaldulensisをベースに
Eucalyptus grandisを加え、
ウコンを一つまみというブレンドです。
これが非常に美味しい!!!
同居人も私もビックリ。
ユーカリ茶は血液の流れを良くし、
血圧低下や糖尿病にも効果があるそうです。
何よりも飲んでみると、
利尿作用と便秘に対する効果は
激しく実感できます。
毒性に関しては心配ないことがわかったので、
機会があればぜひお試しください
※妊婦や子供は避けましょう。- # by eucalyptus_k | 2013-01-26 03:13 | ユーカリ(茶・酒)
【品種別栽培ガイド-10】
ユーカリ・アップルボックス (Eucalyptus bridgesiana)続きまして第10回目は
ユーカリ・ブリジシアナです。
◎ユーカリ・アップルボックス
【学名:Eucalyptus bridgesiana】
【英名:Apple Box / Apple Gum】
【品種情報】
最高樹高:20m前後
樹形:Tree(木立)型
親葉への変化:逆ハート型の丸葉~柳型の細葉へ変化
適合pH:弱酸性~中性(5.5-7.5)
【生息地情報】
地域:New South Wale東部全域、Victoria東部
夏季最高気温:最高値40℃、平均値28℃
夏季最低気温:最低値4℃、平均値14℃
冬季最高気温:最高値19℃、平均値11℃
冬季最低気温:最低値-9℃、平均値2℃
年間降水量:650~1000mm
(参考)東京-約1800mm、大阪-約1500mm
【一般栽培情報】
・日照
終日直射日光が推奨。
半日直射程度でも何とか育てられますが、
日照が悪いといつまでも小さな葉のままで貧弱になります。
また葉の緑色が濃くなり、美しい白銀色がうまく出ません。
屋内管理は完全不可。
・水遣り
表面が乾いたらたっぷりというタイミングでは、
夏以外の季節は少し多すぎます。(用土による)
他の植物に比べると、遥かに乾燥を好みますが、
ユーカリに慣れている人にはかなり水好きな方です。
・用土
日照と風通しが良ければ、通常の観葉植物用土でも栽培可ですが、
パーライトや軽石、川砂などを混ぜ込んだ方がより良いです。
粒状培養土など乾燥力のあるものの方が育てやすいです。
・鉢
あまり問いませんが、縦長の方がパフォーマンスは出ます。
他のユーカリに比べると、横広の鉢でも
パフォーマンスの低下があまりありません。
・肥料
あまり効き目はないですが、成長期などの液肥や、
リン酸分の少ない化成の置肥などは多少は効果あり。
全く与えなくても、十分に育てることは可能。
・植え替え
植え替えに対しての耐性は強い方ですが、
初心者はできる限り根鉢を崩さない方が無難です。
また、真夏・真冬の植え替えは傷みやすいので避けます。
・寄せ植え
後々の植え分けがとても困難になるため、
できる限り寄せ植えは避けた方が無難です。
また、吸水力が激しいので、寄せ植えした花草を
早い段階で枯らせたり、生命力を奪うことがあります。
・病虫害
日照不足や生育不良により、
うどんこ病の被害が激しく出ることがあります。
雨のかからない場所では、ハダニ被害の激しい品種です。
葉のシネオール分が少ないためか、
新芽を中心にアブラムシが発生したり、
尺取虫や蓑虫などの食害が出ることもあります。
・地植え
地植えすると本来のパフォーマンスが出て、
かなり激しい成長力を発揮します。
普通に育てると、簡単に家の二階を超えます。
・耐寒性
地植えの成樹で-10℃と言われています。
関西や関東の暖地では余裕で屋外越冬可能。
鉢植えの場合は、東北や北海道の寒地では
屋外越冬は難しいかもしれません。
・成長力
鉢植えであれば、最高で年40~60cm以上。
かなり成長の激しいユーカリです。
地植えすると1年で1mを簡単に超えるでしょう。
地植えの場合は、思ったより成長が激しいので
ある程度の覚悟と注意が必要です。
・開花
日本では開花したという情報を聞いたことがありません。
恐らく、数メートル以上という相応の樹高が必要かと思います。
花は、白に近いクリーム色の花が咲きます。
蕾や実は全く粉を吹かないのが特徴です。
・枯死の要因
ほとんどが植え替えの失敗、過湿による根腐れ、
夏場の根の蒸れによる急性根腐れ。
【季節の管理】
・春秋
最も良く成長するメインの時期。
良く日光に当てて、成長を促しましょう。
日照が悪いと、葉の周囲が、ヨレヨレになることがあります。
また、そのような葉は緑色が強くなってしまいます。
そのような葉には、うどんこ病が発生することもあります。
丈夫で白みの強い葉にするためには良く日光に当ててください。
・夏
最も枯らせることが多い時期。
決して弱くはないですが、日本の高温多湿な夏は、
どちらかというと苦手なので、
過湿による根の蒸れに十分に注意します。
春の間から良く日光に当てていた株は
真夏の西日でも葉焼けすることはありません。
夏場は少し成長が控え目になります。
・冬
用土が全乾きするタイミングで水遣り。
後はひたすら放置するでOKです。
寒地では葉が赤紫色に紅葉することもあります。
この時期に過湿にしてしまうと、
春になって一気にダメージが出ることがあります。
【特記栽培情報】
日光にさえ良く当てていれば、
勝手にどんどん育ってくれるという楽なユーカリ。
日光が控え目の場合には、葉の緑色が強くなり、
ヨレヨレの貧弱な葉になってしまいますが、
それでもそれなりに成長を続けてくれます。
あまり枯れる気のしないユーカリの一つです。
個人的には、gunniiよりも
さらに日本に合っている印象なので、
成長はとても激しく感じられると思います。
春・秋の暖かい時期には良く水を吸いますが、
夏場は成長がかなり控えめになり、
思ったより水を吸わなくなることがあります。
葉の精油含有量が少ないため、
ユーカリには珍しく、虫害に合いやすいところがありますが、
深刻になることはなく、成長力で十分カバーできます。
とにかく成長が激しく、簡単に育てられるユーカリです。
良く日光に当てた葉は厚みが出てきて、
美しく魅力的な銀葉へと育っていきます。
美しく育った銀葉は花材にも利用されています。
過湿に対する耐性はかなりのものなので、
このユーカリを根腐れさせた経験がある場合、
ユーカリ栽培の水分管理を根本的に見直した方が良いでしょう。
※情報は適宜追加・変更します。- # by eucalyptus_k | 2013-01-22 13:20 | 品種別栽培ガイド
【ユーカリ紹介-58】
ユーカリ・ガモフィラ (Eucalyptus gamophylla)続きまして第58回目は
ステップや半砂漠地帯に生息し、
ブルーグレイのツキヌキ葉が非常に美しい
「砂漠のツキヌキユーカリ」こと
ユーカリ・ガモフィラです。
◎ユーカリ・ガモフィラ
【学名:Eucalyptus gamophylla】
【英名:Warilu / Blue-leaved Mallee】
このgamophyllaは、その他のユーカリとは異なり、
エアーズロックで有名なアリススプリングスの近郊から、
ノーザンテリトリーの北部の広い地域と、
西オーストラリア州の北西部、クイーンズランド州東部の
一部のかなり暑い地域に自生しています。
Wariluというアボリジニー名も持ち、
現地ではそれなりに名の通ったユーカリですが、
日本では知る人もいないのではという程にマイナーです。
このgamophyllaの生息している地域の多くは、
半砂漠地帯かステップ地帯で、
降雨量はほぼあってないような状態です。
そのような地域に生息するユーカリは、
どれも低木Malleeかブッシュ状の個体が多く、
このgamophyllaもその例にもれず、
かなり低木で横に広がることが好きなユーカリです。
ユーカリ検索に掲載している
gamophyllaの樹高は8m以内となっており、
一般的にはそのように言われています。
実際に豊富に水分のあるような場所や
定期的に水を与えてもらえるような栽培時には
8m程度の樹高にまで育つ性質を発揮するようです。
ところが、大部分が半砂漠地帯で、
ほとんど雨の降らない場所に生息している
野生の個体では、ほとんどが4m以内のブッシュ状で、
樹高を伸ばすことは滅多にないようです。
他のユーカリと同じように、大きく育つと
細葉に変化するという性質も持っているのですが、
上記の要因により、野生の個体では、
細葉に変化するようなことは滅多になく、
ほとんどがツキヌキ状の葉を終始キープするようです。
gamophyllaの大きな特徴は、
何と言ってもそのツキヌキ状の葉です。
gamophyllaという学名も、接合した葉という意味で
そのツキヌキ葉を表しています。
元祖ツキヌキユーカリのperrinianaとは異なり、
ツルっとした葉に白く粉を吹いていて、
その葉は、少し離れて見ると、
とても綺麗なブルーグレイに見えます。
英名は、Blue-leaved Malleeですが、
以前に紹介したpolybracteaも
Blue-leaved Malleeという英名を持っています。
一般的にはpolybracteaは
Blue Malleeと呼ばれることが多く、
Blue-leaved Malleeというと
このgamophyllaを差すことが多いようです。
その生息地を元に、perrinianaと分けて、
私はこのgamophyllaを
「砂漠のツキヌキユーカリ」と呼んでいます。
ところが、ほとんどの個体がツキヌキ状の葉になる
perrinianaとは大きく異なり、gamophyllaでは幾分、
ツキヌキ状の葉が生じにくくなっています。
現地の文献を調べたり、現地の栽培者の話を聞く限りでは、
豊富な日光を浴びて、健康に育った株であることと、
ある程度の樹高に育つことで、
ツキヌキ状の葉が生じやすくなるようです。
我が家のgamophyllaにも
一部ツキヌキ状の葉が生じています。
ところが今のところ、大部分の葉は、
ツキヌキ状にはなっていません。
一方、実家の庭で育てているgamophyllaは
ほとんどの葉が立派なツキヌキ状になっています。
ツキヌキ状の葉を生成するためには、
栽培環境の影響が大きそうですが、
個体差も大きく関係しているように思っています。
葉はかなり大葉で分厚く、写真で見ても、
Blue-leaved Malleeという英名が相応しく、
とても美しいブルーグレイの葉色をしています。
写真では少しわかりにくいのですが、
cinerea/glaucescens/albidaなどの銀葉とは
少し異なった質感の銀葉をしています。
これらの品種では、少しザラザラした葉に
むらなくふんだんに粉を吹いている感じです。
ところが、gamophyllaの葉では、
元々少し光沢のあるようなツルっとした葉に
まるで粉を意図的にふりかけたような質感なのです。
また葉は上記の品種よりも遥かに分厚く、
pulverulentaのように、葉を曲げると
パキッと折れてしまうほどに硬い葉をしています。
写真ではイマイチわかりにくいかと思いますが、
何となくイメージしていただけるでしょうか。
またその茎も葉と同様に
ツルっとしたところに粉をふりかけたような質感です。
その質感から、日光に当たると、
その他の銀葉の映えるユーカリよりも
さらに美しく輝くのが、
このgamophyllaの大きな魅力の一つです。
gamophyllaの育て方についてですが、
「砂漠のツキヌキユーカリ」という呼称の通り、
過湿を非常に嫌い、とても乾燥を好むユーカリです。
ところが、gamophyllaの生息している地域は
ほとんど雨が降らない代わりに、
非常に豊富な地下水を有しています。
そのため、とても乾燥を好むくせに
決して水を必要としないわけではないという性質を持っており、
そこが少し栽培難易度を上げているところです。
またgamophyllaの生息地の地下水には
幾分かの塩分が含まれているため、
ユーカリ中では比較的高い耐塩性を持っていることも
gamophyllaの特徴となっています。
とにかく、我々が普通に日本で育てるには、
少々厄介で癖のあるユーカリの代表格です。
地植えなら融通は効くのでしょうが、
鉢植えの場合は、ただちに乾燥する用土で、
頻繁に水を与えるのが最適という、
とても面倒な育て方が必要なユーカリです。
極端な話が、夏場は1日で用土が全乾燥し、
葉が犬の耳のように垂れてくるぐらいの環境で、
毎朝定期的に水遣りをするというのがベストです。
過湿にうるさいgamophyllaの栽培には、
最高レベルの乾燥力を持つ用土
を使用するのが良いでしょう。
また、もう一つのポイントは、
ユーカリの中ではmacrocarpaなどに匹敵するくらいに
激しい日光を欲する品種であるというところです。
昨年までは、半日陰以下の場所で、
gamophyllaをずっと育てていましたが、
2年経っても30cmを超えずにヒョロヒョロのままでした。
ポット苗の株ではヒョロヒョロのまま、
いつしか枯れてしまったものも多数ありました。
そこで、一転して、今年の春から、
ほぼ終日直射日光が当たり、
最も西日のきつい場所に移動してみたところ、
春~夏の間だけで、60cm以上も成長し、
葉の数もびっくりするほど増えました。
このようにgamophyllaを元気に育てるためには、
豊富な直射日光と高温が必須になります。
過湿に対しては、macrocarpa程デリケートではありませんが、
かなり嫌う方で、確実に成長力がなくなり、
葉数も少なくなり、どんどんと弱っていきます。
過湿が過ぎると大きな株がいきなり枯死することもあります。
他の砂漠地帯のユーカリと同じように、
冬場の吸水量はびっくりするほど激減します。
冬の水の吸わなさは、間違いなくユーカリ中でトップクラスです。
月に2回の水遣りでは少し多すぎるくらいで、
ほぼ断水に近いような管理が必要になります。
gamophyllaのメインの成長時期は、
梅雨明けの非常に暑くなってくる時期です。
もちろん春と秋の暖かい時期にも成長は進みますが、
やっぱり夏場の健やかさにはびっくりさせられます。
成長力はそこまで激しい方ではありませんが、
環境が合った場合には、caesiaに匹敵するほどの
比較的激しい成長力を発揮してくれます。
最後に、病害虫についてですが、
日光の足らない場所で育てた場合には、
酷いうどんこ病やハダニの被害が多発します。
うどんこ病の被害の程度で言うならば、
トップクラスに酷いユーカリの一つです。
ところがそのような場所でgamophyllaを育てた場合、
根本的にこの先、健康に育てることも難しいでしょう。
酷いうどんこ病の被害が出ている場合には、
病気の防除を考えるよりも、
根本的な置き場所の改善を考えた方が良いです。
豊富な日光を浴びて厚く硬い葉を持った個体には、
うどんこ病やハダニの被害が出ることはありません。
気になるgamophyllaの耐寒性ですが、
かなり暑い地域に生息しているユーカリのため、
あまり強い方ではありません。
最終的に60cmを超えるような株であれば、
-5℃くらいまでは特に問題ありませんが、
特に15cm以下の小さな苗の場合は、
0℃以上で越冬させるか、
簡易温室などで防寒対策を取った方が無難です。
また用土凍結や激しい霜にも、
あまり強いとは言えないところがあります。
一度野ざらしの10cm程度のポット苗群が、
-5℃の環境で全滅してしまったことがあります。
大きく育った株でも、0℃以下になるような場所では、
新芽を中心にピンク色~薄紫色へと激しく紅葉します。
この紅葉は中々美しく、冬場の寂しい庭を彩ってくれます。
gamophyllaの香りについてですが、
葉を激しくクラッシュしてようやく
微かに少し青臭いハーバルな香りがします。
このgamophyllaを激しく剪定したり、
支柱にギュッとくくりつける作業を行っても、
周囲に香りが漂うようなことは全くありません。
残念ながら香りを楽しむという要素は
全くないと言っても過言ではありません。
※この写真は最も実際の葉色に近い写真です。
一風変わった白銀ツキヌキ葉を持ち、
日光にひと際輝くgamophyllaは
樹高も低く、鉢植えでも管理しやすいので、
栽培用のユーカリとして特にオススメです。
また、pachyphyllaやmacrocarpaなど、
乾燥と吸水のバランスが難しい
砂漠地帯出身のユーカリ挑戦編としても最適です。
日本では、見かけることさえないgamophyllaですが、
以前、親愛なるこあら師匠が試験用に育てていらっしゃったので、
もしかするといくつか在庫をお持ちかもしれません。
興味のある方は、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか?
もう一つの魅力として、
gamophyllaは低木でも開花の見込めるユーカリです。
花は珍しい色をしているわけではありませんが、
非常にたくさんの花を咲かせるユーカリです。
魅力的な「砂漠のツキヌキユーカリ」gamophylla。
是非とも育ててみてはいかがでしょうか?
私も特にお気に入りのユーカリの一つです。
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<栽培難易度:D+>
香良さ:★★
香強さ:★
成長力:★★
要水分:★★
耐過湿:☆
耐水切:★★★★
耐日陰:☆
耐移植:★★
耐寒性:★★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-01-14 18:03 | ユーカリ紹介
ユーカリ品種検索を改良しました!
引き続きまして、
ユーカリ品種検索に更なる改良を加えました。
まず一つ目の改良内容としては、
新しい検索項目として、
「必要日照量」と「花の色」でも
新たに検索ができるようになりました。
次に二つ目の改良内容ですが、
今まで葉の形や色はそれぞれのユーカリで、
1つの形や色しか掲載されていませんでしたが、
現実には一つの形や色だけに限定することは不可能なため、
複数の形や色を掲載するように改良しています。
最後に三つ目の改良内容ですが、
幼葉と末葉のところにそれぞれ一口コメントを追加。
それぞれの品種リストの最後に、
総括として備考を追加しています。
見やすさや使いやすさなどは
更に改善を進めていきます。
また不具合などございましたら、
恐れ入りますがご報告をお願いいたします。
今後とも当ブログを
よろしくお願いいたします!- # by eucalyptus_k | 2013-01-10 00:58 | その他