【ユーカリ紹介-55】
ユーカリ・メリオドラ (Eucalyptus melliodora)続きまして第55回目は
現地ではとてもありふれたユーカリで
街路樹などの定番品種としても有名。
とても香りの良い花と豊富な蜂蜜が特徴の
ユーカリ・メリオドラです。
◎ユーカリ・メリオドラ
【学名:Eucalyptus melliodora】
【英名:Yellow Box / Honey Box / Yellow Ironbox】
このmelliodoraは
日本ではまず見かけることはありませんが、
現地では非常に幅広い地域に自生しており、
とてもありふれた親しみのあるユーカリです。
melliodoraの花自体はアイボリーの良くある花ですが、
とてもたくさん花を咲かせることが特徴です。
また、その花がとても甘く良い香りがすること、
そして、その花にはとても蜂蜜が豊富で、
蜂蜜の収穫用にも利用されていることから、
現地ではハニーユーカリなどと呼ばれることがあります。
学名のmelliodoraもその特徴から名づけられたもので、
蜂蜜と花の甘い香りという意味になります。
とても魅力的な特徴ですが、少し残念なのは、
melliodoraは、ユーカリでは比較的大型の
30m級の立派な樹木に成長するというところです。
恐らく、melliodoraの魅力的な花を咲かせるには、
最高樹高30mというところを考えると、
鉢植えでは難しく、広い場所での地植えが必要になるでしょう。
ただ、花自体は数も多く、とても咲きやすい品種なので、
とても広い庭のある方ならば、大型シンボルツリーとして
面白い特徴を持ったユーカリになると思います。
基本的にユーカリの花は蜂蜜を多く含むものが多く、
melliodoraは特にその量が豊富ということですので、
ミツバチや時にはスズメバチが多く飛来します。
地植えする場合には少し注意が必要かもしれません。
そんな魅力満点のmelliodoraですが、
見た目は比較的特徴のない、
良くあるユーカリの外観をしています。
葉は比較的幅があり、丸みのある、
槍の先のような形をしています。
また葉の葉脈に特徴があり、
葉の周囲を縁取ったような葉脈が目立ち、
茎は基本的に四角形の角ばった形をしています。
あまり日光の当たらない場所で育てると
冒頭の写真のように緑色の強い葉になりますが、
良く日光に当てて育てた葉は、
下の写真のように、エメラルド色が強くなり、
比較的美しい銀葉に育ちます。
melliodoraは非常に良く剪定に反応するユーカリです。
そのまま切らずに育てると、大型品種ですから、
真っ直ぐに樹高を伸ばすことに集中します。
ところが早いうちから適宜剪定を行っていると、
脇芽をたくさん出して、こんもりとした樹形になります。
大型樹木のユーカリは、
樹高を伸ばすことだけに必死の品種が多いのですが、
melliodoraは脇芽をたくさん出す性質を持っています。
そのため、鉢植えで美しい樹形に仕立てながら
育てていくユーカリとしても最適です。
そんなmelliodoraの育て方ですが、
性質は非常に強健で成長も激しく、
cinereaなどのメジャーなユーカリと
同じような管理で問題なく育てることができます。
個人的にはgunniiやcinereaなどよりも
melliodoraはさらに強健で、
栽培は容易であると感じています。
gunniiなどのユーカリは、
夏の高温多湿に少し弱いという特徴がありますが、
melliodoraは暑さにもとても強く、
高温障害の症状が出たことは一度もありません。
そのmelliodoraの強健な性質に信頼を置いて、
今年の夏は、我が家で最も過酷な場所である、
クーラー室外機のななめ前に置いていました。
我が家のmelliodoraは既に180cm近い樹高があるため、
クーラー室外機の熱風をガンガンに浴びていましたが、
特に目立った傷みはありませんでした。
melliodoraのメインの成長時期は、
真夏はそこまで大きな動きはありませんが、
polyanthemosなどと同じように、
比較的高い気温の季節をメインに成長します。
またmelliodoraの生息地の降雨量は、
日本の少し雨の少ない場所と同じ程度なので、
cinereaなどよりもさらに過湿に強く、
暖かい季節はかなりの水食いになるので、
水切れには注意が必要になります。
耐陰性もかなりのものがあり、
半日陰以下でも育てることはできますが、
その場合は徒長しやすく、
葉の白銀色が出ずに濃い緑色の薄い葉になります。
また、そのような貧弱な葉には
うどんこ病の被害が出ることもあります。
とはいえ、精油にミント系の成分が含まれているため、
病害虫にはかなり強い方です。
ただ一つ、我が家ではハダニによる被害が
比較的激しいユーカリになっています。
ただし、melliodoraの成長自体はとても激しく、
ハダニ被害が出るのは、
日光のあまり当たらない下の方の貧弱な葉だけです。
上の方の日光に良く当たった丈夫で分厚い葉には、
ほとんど被害が出ることはないので、
毎年そこまで大きな心配はしていません。
melliodoraの耐寒性ですが、
東AZの中ではそこまで高い方ではありませんが、
それでも地植えの成樹で-9℃程度までは大丈夫です。
polyanthemosが育てられる場所であれば、
屋外越冬は問題なく、さらに安心してできると思います。
大阪の冬くらいでは、葉の周囲が少し赤くなる程度で、
大きな葉痛みが起こったりするようなことはありません。
冬には新芽の部分が真っ赤に紅葉するので、
エメラルドの葉と新芽の赤がとても美しく見えます。
melliodoraはほとんど弱点のないユーカリですので、
あまり枯れる気のしない、とても育てやすいユーカリです。
気になるmelliodoraの香りですが、
シネオール系の香りをベースに、
ミント系の少し甘みのある香りが強くします。
総合的には甘みのある爽快なユーカリの香りです。
gunniiの香りをさらに心地よく甘くしたような感じです。
香り自体はそこまで強くはありませんが、
とても魅力的で、現地では香りを楽しむ切枝として、
それなりに高い評価を得ているようです。
香りはとても良く、香りの強さ的にはギリギリで
香りを楽しむユーカリとしても活用できそうです。
melliodoraはパッと見はあまり特徴がなく、
外観だけでは、少しPRのしにくいユーカリです。
ところが、とても強健で育てやすいところや、
脇芽を出す性質が強く、樹形を調整しやすいところ、
たくさんの甘い香りのする花と豊富な蜂蜜など、
隠された魅力がとても多いユーカリでもあります。
日本ではまず見かけることはないmelliodoraですが、
現地ではとてもメジャーなユーカリですから、
タネを手に入れるのは容易で比較的安価でもあります。
育苗難易度も低く、育苗初心者にも最適です。
実はこの写真のmelliodoraは、冬季の室内でタネを播き、
そのまま、冬季の室内で越冬して、
翌年の春に大きく成長を進めた株です。
そのように、あらゆる管理にも対応できるほど、
育苗初期から育てやすいユーカリです。
もし興味のある方がいらっしゃったら、
タネの販売先をご紹介しますよ♪
隠された魅力満載のmelliodora!
興味があったら育ててみませんか?
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-11-29 10:44 | ユーカリ紹介
ユーカリのpHと鉄分欠乏症について
今朝何気なく、現地の栽培ガイドを見ていたところ、
ユーカリは比較的pHに敏感なところがあり、
それを起因とした鉄分欠乏症になりやすいという情報がありました。
これは品種により様々で、
中にはアルカリ寄りのpHを好むユーカリも存在しますが、
細かく分析するのは厄介なので、
基本的には下記のpHで統一して栽培するのがベターだそうです。
弱酸性:pH 5.5 - 6.4
これはアルカリ寄りを好むユーカリであっても、
酸性寄りのpH耐性を必ず持っており、
酸性寄りの用土で育てたとしても、
特に大きな障害は出ないためだそうです。
このpHであれば、通常の日本で有り触れた用土で
特に操作は不要ということになりますね。
我が家では今は一律全てのユーカリのpHが
少し高めになっている可能性があります。
その中で激しく鉄分欠乏症になっている品種も多数あり、
今後は良い意味で、あまり過保護になりすぎず、
触り過ぎないように心がけていこうと思っています。
今のところアルカリ寄りのpHを好むと
わかっている品種はMoon Lagoonのみ。
ある程度アルカリでも育つものとしては、
rudisやerythrocorysなどがわかっていますが、
これらも別に通常の用土で問題なく育てられます。
また、化成肥料の与えすぎでも
pHが上がってしまうことがあるので、
無用な多肥にも気をつけてみてください。
次年度は鉄分欠乏症の品種については
決して調子は悪くないので、一度全てに植え替えを行い、
用土をリセットしたいと考えています。
肥料もpHも自然が一番ですね。。。
●鉄分欠乏症の症状例- # by eucalyptus_k | 2012-11-28 10:38 | ユーカリ(栽培知識)
ポット苗での長期間管理について
普通のお宅でユーカリを数苗買って
育てている人にはあまり縁のないお話ですが、
私のようにタネを播いて多数育てていると、
置き場所の問題から、多数余剰苗が発生し、
いつまでもポットのままで管理するということがあります。
そのような場合に、
最近危険なポイントを発見しました。
ポットというと、
一般的なポリポットを思い浮かべると思います。
我が家でもコストの面で優秀なので、
長らく、通常のポリポットを長らく使用していました。
ところが、このポリポットで育てていると、
もちろんのことながら根のサークリングが起きます。
大抵の場合は、根がサークリングして、
ポットの底に溜ることになります。
すると、根のある底部分の用土は良く乾くのに、
根のない中部から上部の用土が
いつまでも湿っているという状態になります。
この場合、根のある部分の用土は乾燥しているため、
株には水切れの症状が出るのですが、
用土の上部の大半はまだ湿っています。
この状態で長らく育てていると、
用土が乾きにくく、雨の多い季節になると、
用土の部分過湿で根腐れが起きます。
これで我が家の、ポリポットで放置して
40cmを超えるような苗はほぼ全滅しました。
底面吸水という抜け道もありますが、
素人では施設も設備もありませんし、何よりも面倒です。
そこで、優秀なのがスリットポットです!
鉢ではなく、あくまでもポットです。
スリットポットを使用すると根のサークリングがなく、
根が底部だけでなく、ポットの中部~上部にも
ふんだんに行きわたるため、
根の部分過湿を防止することができます。
コスト的には少し痛いところですが、
今後、全てのポット苗に
スリットポットを使用することにしています。
その場合、60cm程度になっても、
傷むことなく、蕾を付けるような
ポット苗も出てきている次第です。
本当はしっかりと鉢に植え付けたいのですが、
どうしても場所がないための苦肉の策です。。。
普通はポット苗で放置ということは、あまりないかと思いますが、
タネから多数の苗を育てている人はぜひ参考にしてください。
ちなみに、環境が良く、高温乾燥を確立できるような、
プロの栽培現場には、あまり関係がないかもしれません。- # by eucalyptus_k | 2012-11-22 12:48 | ユーカリ(栽培知識)
【ユーカリ紹介-54】
ユーカリ・エリスロコリス (Eucalyptus erythrocorys)続きまして第54回目は
面白い花の咲くユーカリとして
アメリカやヨーロッパなどで人気があり、
現地では街路樹の定番品種、
ユーカリ・エリスロコリスです。
◎ユーカリ・エリスロコリス
【学名:Eucalyptus erythrocorys】
【英名:Illyarrie】
このerythrocorysは日本ではあまり知られていませんが、
海外では花を咲かせるユーカリとしてとてもメジャーです。
アメリカやヨーロッパの花卉のタネを販売している
タネ屋さんには必ずといっていいほど
ラインナップされているユーカリです。
また、このerythrocorysは特定の英名を持ちません。
現地では原住民アボリジニーの言葉で
イリアリ(Illyarrie)と呼ばれて親しまれているようです。
このerythrocorysの一番の魅力は、もちろんその花です!
蕾が真紅で花は眩しいほどの黄色をしているため、
赤と黄のコントラストがとても美しいです。
erythrocorysという学名もこの赤い蕾を表しており、
Red Helmet(赤いヘルメット)の意味があります。
とても魅力的で且つメジャーなユーカリなので、
ユーカリ好きは必ず押さえておきたいユーカリ!
ということで私も3年前から育て始めています。
冒頭の写真の株の先端や、上の花の写真の葉は、
細長く光沢のある葉をしていることがわかります。
ところがこのerythrocorysは、
育て始めは、毛の生えた葉と茎を持ち、
全く異なった外観をしています。
下の写真はタネ播きから二年目で、
去年の秋の写真です。
葉や茎には細かい毛が
たくさん生えていることがわかると思います。
また新芽部分も激しく毛に覆われています。
そんな全てが毛むくじゃらのerythrocorysですが、
育て始めて、3年経った今年、樹高が120cmを超えるあたりから、
細長く光沢のある葉が出始めました。
そして光沢のある葉が出た箇所の茎も
同様に全く毛がなくなってツルっとしています。
もちろん新芽部分も全く毛はなく、
パッと見は、全く異なる品種のユーカリのようです。
現在、光沢のある葉が出ているのは、
先端の30cmくらいの部分と、
株の上の方から出てきた脇芽の先端部分のみです。
このerythrocorysは、ユーカリの中では
かなり低木の部類になりますが、
それでも8m程度の樹高へと成長します。
主にはMallee型(灌木型)になるようですが、
稀にTree型(木立型)になることもあるようです。
丁度、日本の典型的な街路樹サイズです。
地植えをしてしまうと、相応の大きさになりますが、
鉢植えでも十分に開花が見込めるようです。
この株は現在150cm程度の樹高にまで成長しました。
鉢植え管理ではもちろん大きさに制限はありますが、
今後、成長していくに従って、
光沢のある細葉が増えていくことと思います。
現在は下の写真のように、先端部は細葉ですが
株元から三分の二くらいの場所には、
まだまだ毛の生えた葉がたくさん残っています。
毛の生えている間の葉は
そこまで大きくなることはありませんが、
光沢のある葉はとても大きなサイズになります。
試しに計ってみたところ、
一番大きな葉は18cm近くもあり、ビックリしました!
実はこのerythrocorysには、
既に何名か開花を実現させた先人がいます。
その方々の話では、我が家の株のように
丁度120cmを超えたあたりから、光沢のある細葉が出始めて、
大体、その翌年には花が咲き始めるとのことです。
花芽は必ず光沢のある葉の部分から出るようなので、
光沢のある葉が出だしたら、
もうすぐ開花するかもというサインになるようですね。
開花時期は、ミモザなどと同じ早春ということなので、
我が家の株も、無事に冬を超えることができたら、
来春には開花する可能性があるということになります。
150cmという樹高は我が家の狭いベランダでは
大きすぎて、管理がかなり困難になります
大体、1mを超えた株は剪定してしまうのですが、
erythrocorysは1mオーバーから花が咲くと聞いていたため、
敢えてここまで伸ばしていました。
その甲斐があったということで嬉しく思っています。
ユーカリは、花が咲くかどうかにはかなり個体差があり、
いつまで経っても、なかなか花の咲かない個体も多くあります。
erythrocorysを複数株を育てている先人に聞いた話では、
全ての株が同じようなペースで
毎年、必ず花を咲かせているそうなんです!
この先人からの情報によると、erythrocorysは、
かなり花の咲きやすいユーカリであると推測できます。
こんな魅力満載のerythrocorysの育て方ですが、
西AZのユーカリにしては、比較的湿潤を好み、
過湿にも強く、育てやすいユーカリです。
また、成長力もなかなか激しいユーカリです。
日照などがイマイチの我が家のベランダでも、
2年で80cmを超え、3年で150cmに達していますから、
かなり成長の激しいユーカリであることがわかります。
※置き場所は半日ほど直射の当たる場所に置いています。
湿潤を好むといっても、西AZのユーカリですから、
排水性の良い用土を使用することは基本です。
西AZのユーカリの中では、湿潤を好むためか、
かなり根張りの強烈なところがあるので、
夏季の水切れには十分注意が必要です。
また、弱酸性~酸性のpHを好むユーカリが多い中、
弱酸性~弱アルカリ性くらいの、
少し高めのpHを好む性質があります。
ただあまり慣れていない人がpHをいじると、
色々と失敗することの方が多いので、
pHはあまり気にせず、通常の用土で管理をし、
少しアルカリ寄りの耐性があると
認識する程度で良いと思います。
基本的にはあまり肥料を与えなくても大丈夫ですが、
どちらかというと、肥料の効き目が良い方で、
適量の肥料は、成長力を加速させます。
ただし、多肥はもちろんアウトですし、
リン酸分を好まないところは他種と同じです。
日本よりも遥かに乾燥した地域のユーカリですから、
あまり高い空中湿度は好みません。
そのため、梅雨時期などには新芽部分に枯れが出たり、
少し葉痛みが起こることもありますが、
通常はあまり心配はいりません。
どうしても不安な場合は、
他の西AZのユーカリと同じように
梅雨時期限定で軒下などで雨を避けると良いでしょう。
erythrocorysは少しの耐陰性を備えているようで、
半日陰の場所でも、比較的元気に成長します。
ただ、元来、かなり太陽が好きな品種ですので、
早期の開花を目指して、元気な株を育てたい場合には、
他の西AZのユーカリと同じように
たくさんの日光に当てて育てた方が良いです。
葉に毛が生えているためか、
少しミント様の成分を含んでいるためかわかりませんが、
病害虫の影響を受けることは皆無といえます。
我が家では毎年、うどんこ病やハダニが猛威を奮いますが、
erythrocorysはうどんこ病を全く発症せず、
ハダニの被害もほとんどありません。
成長のメインはGW後の春の暖かい時期と、
梅雨明け後の初夏から最も暑い季節で、
しっかりと早春から太陽に当てていた株は、
西日を浴びても葉焼けするようなことはありません。
ところが最高気温が20℃を切るようになると
途端にほとんど成長が進まなくなります。
erythrocorysの生息地は、
ウェストオーストラリア州の州都パースの
少し北の地域の石灰岩の多い沿岸部です。
このあたりの気候は非常に穏やかで、
冬は0℃を切ることはほとんどなく、
朝方には1℃程度まで下がることもありますが、
日中は15~20℃近くにもなり、
夏も30℃前後の日が多いというとても快適な環境です。
オーストラリアの中ではとても過ごしやすく、
誰もが快適になれる環境であると言われています。
そのような穏やかな気候の地域ですから、
これらの地域に生息するユーカリは、
我儘で寒さに弱い品種が多く存在しています。
erythrocorysは湿潤を好むため、
さほど我儘なユーカリではありませんが、
寒さにはとても弱いユーカリです。
良く寒さに弱いと言われる
レモンユーカリと同等かそれ以下で、
恐らく我が家では最も寒さに弱いユーカリでしょう。
数値では地植えの成樹で-5℃程度と言われていますが、
鉢植えの管理では頑張っても-3℃程度までで、
慣れない人には0℃以上の管理を推奨します。
先年は敢えて屋外越冬を試みましたが、
葉はボロボロになり、見るも無残な状態になりました。
また、最も寒い日に用土が凍結したことがありましたが、
その際には、株全体がクタクタになってしまい、
もう駄目かもしれないという程にまで傷みました。
近所の屋外で、ポットで数十センチの苗を
管理されていたOsakano Jieさんのところでは、
erythrocorysは全滅してしまったそうなので、
雨が当たり、寒風を防げない場所では、
関西や関東でも屋外越冬はかなり難しいかもしれません。
またerythrocorysは霜にも非常に弱く、
霜が葉に付くと、激しく霜焼けの症状が出ます。
恐らく他のユーカリと同じで、
葉に毛の生えている間は
特に耐寒性が弱くなるものと思われます。
ただ、無加温の簡易温室などを使用した場合は、
気温が-5℃程度まで下がったとしても
ほとんど葉が傷むことはありません。
冬場には、簡易温室などを使用するか、
寒い日の晩などは屋内に取り込むなどの
管理が必要になると思います。
また冬季は特に、軒下や温室内などで、
雨を避けた方が安心して越冬できます。
フルタイム室内で管理するのはオススメできません。
どうしても日照が不足してしまうことと、
用土の乾燥が進まないことで過湿になり、
徒長して貧弱な株になってしまう可能性が高いです。
また、いくら過湿に強いとは言っても、
水分管理が難しくなり、枯死する確率も高くなります。
それでも関東以東の寒地では、
少し加温された温室や屋内での管理も
止むを得ないこともあるかと思います、
ただ関東以西の暖地では、
日中に気温がマイナスになることはほとんどありません。
日中であれば、気温が多少0℃を切ったとしても
日光の暖かさがありますから、
夜間に温室や室内に取り込むだけでも十分対応可能です。
我が家でも今年は開花を楽しみにしているので、
無理に完全屋外越冬するのは止めておく予定です。
ただサイズ的に簡易温室には入りきらないので、
寒い日の夜間のみ屋内取り入れで対応しようと考えています。
erythrocorys越冬時のポイントは下記の通りです。
・雨を避け、水分は控えめに管理すること
・潅水時間に気を付けて用土凍結を防ぐこと
・寒い日の夜間は無理をせず温室や玄関内などに取り込むこと
多くの毛の生えたユーカリというのは、
あまり0℃を下回らない環境に生息しているものが多く、
冬になっても、冬季休眠モードに入りきれないものが多いです。
そのため、冬季でも比較的水を欲するところがあります。
他の西AZのユーカリは、冬場はほとんど水を吸わず、
断水に近いくらいの管理を行うものが多いですが、
erythrocorysは、寒さに強いgunniiなどと
あまり変わらないくらい水を吸うことがあるので、
冬場でも安心しすぎると、水切れを起こす場合があります。
erythrocorysは、冬場の管理にさえ気をつければ、
西AZの中ではトップクラスに育てやすいユーカリです。
気になるerythrocorysの香りですが、
私にはシネオール系の香りにも感じられますが、
実際はシネオールはほとんど含まれておらず、
メンソール系の成分がメインになっているようです。
香りはあまり強い方ではなく、
葉を指でさっと撫でると微かに香る程度です、
シネオール特有の少し生臭い香りは全くせず、
スッとする典型的なハッカの香りがします。
葉に毛の生えている間は比較的良く香りますが、
光沢の出た細葉になるとほとんど香らなくなります。
香りは爽快で決して悪くはありませんが、
香りを楽しむには少し弱く、
花を楽しむユーカリのオマケのような感じです。
erythrocorysは寒さに弱いことさえ除けば、
圧倒的に育てやすく、魅力的なユーカリです。
赤と黄色のコントラストが大好きで、
暖地で広い庭があるお宅であれば、
シンボルツリーにするのもありでしょう。
鉢植え管理でも、1mオーバーで十分に開花が見込めるため、
花を楽しむことのできるユーカリの中では、
海外の人気が示すように、トップクラスに良いユーカリです。
育ててみたい方には
素晴らしい農場をご紹介します♪
現在、erythrocorysが手に入るのは
親愛なるこあら師匠の農場だけかと思います。
興味のある方はタネから育てるのもありです。
タネ播き~育苗の難易度もとても低く、
タネから育てるユーカリの入門編にも最適です。
ユーカリ好きには抑えておきたいerythrocorys!
ぜひとも育ててみて、
美しい赤と黄のコントラストに
魅せられてみてはいかがでしょうか。
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<栽培難易度:B+>
香良さ:★★★
香強さ:★★
成長力:★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★
耐寒性:☆
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-11-19 17:03 | ユーカリ紹介
【ユーカリ紹介-53】
レモンユーカリ (Corymbia citriodora)続きまして第53回目は
日本でも超有名なレモンユーカリ。
蚊の禁忌効果などハーブとしても重宝され、
渋めのレモンの皮の香りを強く香らせる
コリンビア・シトリオドラです。
◎レモンユーカリ
【学名:Corymbia citriodora】
【英名:Lemon-scented Gum / Spotted Gum】
ここに来てようやく、
このメジャーなユーカリを紹介することができました。
我が家でも年中調子の良いユーカリで、
現在のところ、6号鉢で2.3mを超える樹高がありますが、
実はメジャー過ぎて、紹介を忘れていました。。。
ユーカリのことなんてあまり知らないという方でも、
少し園芸をかじっている方なら、誰もが
レモンユーカリといえば知っているほどにメジャーで、
ホームセンターや園芸店などでも良く見かけます。
ユーカリと呼ばれる植物には3つの属が存在します。
最も良く知られているのがEucalyptus属ですね。
今までユーカリ紹介に登場した全てのユーカリは、
このEucalyptus属になります。
あと2つはCorymbia属とAngophora属です。
Corymbia属は主にEucalyptus属よりも暖かい地域に生息し、
タネや実がとても大きいという特徴があります。
また幼い間は葉が毛で覆われており、
成長するに従って、葉の毛がなくなり、
光沢が出てくるという品種が多いです。
またどれも柑橘系の香りがする品種ばかりです。
Angophora属はさらに暖かく、ほぼ熱帯に近い地域に生息し、
タネがCorymbia属よりもさらに大きいという特徴があります。
成樹の外観はCorymbia属と良く似ています。
このレモンユーカリは、そのCorymbia属に属するユーカリです。
柑橘系の香りがするCorymbia属の中でも
最もレモンの香りが強いのがレモンユーカリです。
学名のcitriodoraもそのままレモンの香りという意味です。
屋外用の観葉植物としてありふれたレモンユーカリですが、
実は50m級の立派な樹木に成長する超大型品種です。
良く地植えをされる方がいるようですが、
いつまで経ってもヒョロっとしており、
台風などの際に折れて倒れたという話を良く聞きます。
実はレモンユーカリは、オーストラリアでもとても暖かい、
亜熱帯地域であるゴールドコーストやケアンズ周辺に
生息しているユーカリです。
一つはかなりの大型樹木であるため、
数メートルの樹高があったとしても、
あくまでも苗木でしかないので、
幹が太りきっていないということもあります。
それに加え、本州の暖地では、
レモンユーカリが本来のパフォーマンスを出すには
少し気温が足らないということも考えられます。
レモンユーカリの生息地の気候は沖縄に良く似ています。
沖縄でレモンユーカリを地植えで育てている人を知っていますが、
そのレモンユーカリは樹高が数十メートルの立派な大木となり、
しっかりと毎年花を咲かせているそうです。
本州で地植えをするには、色々な意味で無理があるため、
やはり鉢植えでコンパクトに管理した方が良いでしょう。
とはいえ、さすが大型樹木!
気候が合わないとはいえ、成長力はかなりのものがあります。
またレモンユーカリの生息地の降雨量は
夏場には軽いスコールが降るようなところですから、
本州のあらゆる地域に比べてかなり多いです。
日本では少し湿潤すぎて
パフォーマンスがイマイチなユーカリが多い中、
レモンユーカリは、湿度や降雨量的には
日本にとても合っているユーカリです。
そのため、鉢植えであまり気を使わずに管理しても、
ワンシーズンで1m近く成長することもあります。
我が家でもかなり激しく切り戻して、
紅茶とミックスしてレモン風味の紅茶として使用したり、
お風呂に入れたりして活用してますが、
それでも毎年2mを超える樹高になっています。
我が家では都合が良いので、
下の写真のように物干しの柱を支柱としてくくりつけています。
6号鉢で2mオーバーということもあるでしょうが、
樹高や葉の大きさの割にはかなりヒョロっとしており、
支柱にくくりつけていないと、
上半分は完全に地面に垂れて着いてしまうほどです。
レモンユーカリの特徴は、とにかく激しく毛が生えており、
とても大きなサイズの葉をしているところです。
この葉に生えた毛には諸説ありますが、
暑い地域に生息しているユーカリのため、
葉の蒸散効率を上げているという説が有力です。
大きく育つとこの毛は全てなくなり、
ツルっとした光沢のある葉に変わります。
我が家では、まだ毛のない葉は生じていませんが、
生育環境や個体差により、
かなり早い段階で毛がなくなることもあります。
とても強く香るレモンユーカリですが、
毛のなくなった個体では、香りがかなり控えめになります。
ただし、毛がなくなると幾分か耐寒性が上がるようです。
葉に毛の生えている間は
茎にも同様に毛が激しく生えています。
この毛は思ったよりもしっかりしていて、
もちろん手に刺さる程の固さはありませんが、
固いところでは男性の髭くらいの固さがあり、
肌の柔らかいところで激しくこすると、
少し肌が痛くなるほどに強靭です。
面白い情報として、剪定したレモンユーカリの葉や茎を
ハーブ利用のために乾燥させるとき、
トレイに入れて日陰で干していると、
この毛が抜けて、トレイの下に粉のように大量にたまります。
生育状況が極めて良いということもありますが、
我が家ではトップクラスに葉の大きなユーカリです。
大きめの葉の長さを測ってみましたが、
20cmもあってびっくりしました!
ちなみに1m程度の樹高であっても、
このサイズの葉が何枚も出ていました。
レモンユーカリの育て方についてですが、
土の排水性が極端に悪くない場合は、
通常の観葉植物と同様に育てることができます。
水遣りも一般的な観葉植物と同じで、
夏季は表面が乾いたらたっぷり水遣りで大丈夫です。
恐らく、ある程度の樹高がある株は
真夏であれば毎日の水遣りが必要になるでしょう。
ただ湿潤を好み、かなりの水食いであっても、
用土の排水性が悪いベタ土は嫌います。
オリーブなどの乾燥を好む観葉植物と同じように
排水性の良い用土を使用した方が明らかに生育は良くなります。
精油が強烈なため、病虫害はほとんど皆無に等しいです。
たまにハキリバチや芋虫が付くそうですが、
決して深刻になるようなことはありません。
また新芽限定でアブラムシが付くこともあるようですが、
余程株が幼くない限り大した問題にはなりません。
その他では、我が家のようにイマイチな環境でも、
うどんこ病やハダニの被害が出ることは全くありません。
超初心者向けで、在来の植物とほぼ同じように
育てられる程に強健なレモンユーカリですが、
一つだけ厄介な弱点があります。
それは暖かい地域に生息しているため、
耐寒性が非常に弱いというところです。
日本で販売されている場合の説明書きには
万全を期して3℃以上と書かれています。
実際のレモンユーカリの耐寒性は
地植えの成樹で-6℃程度と言われています。
ユーカリの管理にあまり慣れていない人は、
0℃以上の管理を心掛ければ安心です。
その場合は、関西や関東の暖地でも、寒い日の夜には
屋内に取り込むなどの対処が必要です。
レモンユーカリはかなりの過湿耐性を兼ね備えているため、
冬季に室内管理をすることも不可能ではありません。
ただ、その場合はかなり明るい、
直射日光の当たる窓辺に置くことが必須です。
私的には、面倒でなければ、
夜だけ屋内に取り込むなどの管理を推奨します。
東北地方などの寒い場所では、
よほど冬季の管理がうまくない限りは
屋外越冬は難しいかもしれません。
ユーカリの冬季管理に慣れている
親愛なるこあら師匠や私は、
-5℃程度まで下がる大阪の冬でも
レモンユーカリを完全屋外越冬させています。
コツは色々ありますが、
とにかく潅水を極限まで少なめにするということです。
下の写真は厳冬期のレモンユーカリです。
葉は真っ赤になり、
ところどころに霜焼けのような葉痛みが生じています。
このように屋外越冬させる場合は、
葉がボロボロになるという覚悟だけは必要です。
ただ、春が来るとともに、傷んだ葉はほとんど散り、
新しい葉がどんどん出てくるのでさほど問題にはなりません。
こちらの写真の株も、毎年屋外越冬ですが、
すでに冬の痛みの跡は全く見られません。
さらに寒い場所でレモンユーカリを屋外越冬させた場合、
全ての葉が傷んで散ってしまうこともあります。
それでも、枯れたと思って破棄しないでください。
根さえ生きていれば、葉が全てなくなっても、
レモンユーカリはかなりの確率で芽を吹きます。
どうしても室内管理が難しく、屋外で越冬させる場合は、
鉢の周りに防寒材を巻いたり、
発泡スチロールで鉢を防寒対策するだけでも、
かなり安全に屋外越冬させることができます。
どうしても心配な場合は、
葉もボロボロになりますので、
無理をせずに夜間だけ室内取り込みで問題ありません。
私がレモンユーカリを差し上げた知り合いに
ほとんど植物は放置という人がいます。
真冬には-7℃にもなる場所ですが、
冬も完全屋外放置で見るも無残な状態になります。
それでも毎年非常に元気に育っています。
この手のユーカリは、
あまり過保護にせず、放置くらいの方が
たくましく育ってくれるのかもしれません。
レモンユーカリの香りはそのまま名前の通りです。
以前に紹介したstaigerianaが
お菓子のレモン香料の香りなのに対して、
レモンユーカリはそのままレモンの皮の香りです。
この香りの主成分はシトロネラールという成分です。
実はこの香りは山椒の葉や実の香りと全く同じなので、
人によっては山椒の香りと言う人もいます。
また人によってはアゲハ蝶の幼虫の舌の香りと言います。
実はこれはある種正解と言えるのです。
アゲハ蝶の幼虫はミカン科の植物や山椒に付きます。
学術的な根拠はありませんが、
恐らく、これらの葉に含まれるシトロネラールを吸収して、
舌の香りに利用しているのではないかと考えています。
シトロネラールには蚊を含む、多くの虫に対して
禁忌効果があるとされており、
蚊除けリングなどにその成分が活用されています。
ただ、効果があるのはあくまでも精油です。
レモンユーカリを育てているだけで
蚊が寄ってこないなどということはありません。
精油を抽出して利用しないと、
効果はほとんど得られませんのでご注意ください。
このレモンユーカリの香りですが、
ユーカリの中でもトップクラスに強いです。
恐らく、globulusと並んでNo.1と言っても良いです。
それでも育てていて香ってくることはほとんどありません。
ただし、葉に手が軽く当たっただけでも、
手に強くレモンユーカリの香りが残ります。
我が家では物干しにくくりつけているので、
たまに洗濯物が擦れて、香りが付くことがあります。
私はハーブ利用で乾燥させる前に、
細かく葉を裁断するのですが、
そのような場合には部屋中が
レモンユーカリの香りでいっぱいになります。
レモンユーカリはとても育てやすいユーカリです。
あまりにも育てやすすぎて、
ユーカリであるということさえ忘れてしまう程です。
ただ巷では何故か良く枯らせるという話も聞きます。
一つ注意することは、ベタ土を嫌うというところです。
あまり用土は選びませんが、排水性が極端に悪いと、
在来の植物よりも根腐れする可能性は高くなります。
それでも少しでもユーカリをかじったことのある人には、
gunniiなどと比べても、ビックリするほど楽です。
この香り、少し好き嫌いがハッキリするところがありますが、
レモンユーカリのワイルドな香りが好きな方には
とてもオススメなユーカリです。
レモンユーカリ育ててみませんか?
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★★★
成長力:★★★★★
要水分:★★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:☆
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-11-09 10:11 | ユーカリ紹介