【ユーカリ紹介-50】
ユーカリ・パキロマ (Eucalyptus pachyloma)記念すべき第50回目は、
スイートセンテッドの名称で呼ばれ
現地ではクリスマス・ツリーやリースとしても人気の
ユーカリ・パキロマです。
◎ユーカリ・パキロマ
【学名:Eucalyptus pachyloma】
【英名:Kalgan Plains Mallee】
このpachylomaは日本やその他各国では
とてもマイナーなユーカリです。
私も当初は全くのノーチェックで、
親愛なるこあら師匠が見つけ出してこられたのを
ご紹介いただいたことがきっかけで育て始めました。
オーストラリア以外では全く知られていないpachylomaですが、
生息地の西オーストラリアでは、スイートセンテッドの名で親しまれ、
クリスマス・ツリーやリースなどに人気のユーカリです。
オーストラリアのクリスマスは真夏ですし、
このpachylomaの花期も12月~1月の真夏となっています。
このpachylomaは小さなクリーム色の花をたくさん咲かせるので、
花が咲いて、甘い香りのするクリスマス・ツリーやリースとして
とても重宝されているようです。
パッと見は一般的な細長い葉のユーカリですが、
とにかく、たくさん脇芽を出す性質を持っています。
また、良く太陽に当てた葉は、鮮やかなエメラルドグリーンで、
じっと見ていると、なかなかに美しいユーカリだと感じます。
育苗初期には、少し光沢のある柔らかい深緑の葉が出てきますが、
そこから、十分な日光に当てて育てていると、
比較的、硬い、鮮やかな色の葉に変わってきます。
逆に、あまり日光に当てずに、半日陰などで育てていると、
葉の色はかなり緑色の濃い葉へと成長します。
pachylomaは大きく育っても、4m程度の低木Malleeです。
ただMallee(灌木型)の中では、横に広がる性質が強く、
さらに樹高の低い、ブッシュ状になることも多いようです。
また低木で収まる品種ですから、
鉢植えでも管理しやすく、早期の開花が見込める品種です。
pachylomaという学名は、硬い実の縁という意味です。
私はまだ花を見ていないので何とも言えませんが、
実の縁がとても硬いことが特徴のようです。
その特徴に関係しているのかもしれませんが、
pachylomaのタネはとても変わっています。
かなり大ぶりで角があり、とても硬い殻を持っています。
そのため、pachylomaは発芽が非常に困難で、
なかなか発芽がうまくいかなかったり、
発芽までにとても時間がかかったりなど、
タネ播き~発芽の間ににとても気を使うユーカリです。
pachylomaをタネから育てる場合には、
発芽さえクリアすれば、
しばらくは安心して育てられるでしょう。
その英名の通りにKalgan Plainという、
Kalgan川に面した草原地帯の
非常に限られた地域に生息しているため、
日本などではタネを手に入れるのも少し苦労しますが、
現地では栽培品種として人気があるため、
生息地が狭い割には、タネは比較的流通しているようです。
Kalgan Plain付近はとても穏やかな気候帯で、
西AZの中では比較的湿潤な環境のため、
pachylomaは少しの過湿耐性となかなかの耐陰性を持っており、
日本でもかなり育てやすいユーカリだといえます。
基本的には、一般的な西AZのユーカリと同じように、
十分な直射日光に当てて、乾燥気味に管理するのがベストです。
ただし、吸水量はなかなかのもので、
暑くなってからの水切れには少し注意が必要です。
また、穏やかで、暑すぎず、寒すぎない環境に生息しているため、
あまり暑すぎると、葉痛みが発生することもあり、
夏場は少し遮光をするか、半日陰強くらいの
涼しい環境で管理する方が調子は良くなります。
このpachylomaは菌類系の病気に
とても弱いという弱点があります。
色々と育てていてわかってきたのですが、
とにかく、ジメジメしているような
空中湿度の高い環境をとても苦手としています。
耐陰性があるからといって、
あまり暗く風通しの悪い場所で育てると、
他のユーカリには全く見られないような、
サビ病のような症状がかなりの確率で発生します。
あまりに暑すぎると、少し葉痛みが出ることもありますが、
終日直射日光の当たる場所で育ててているpachylomaには、
ほとんど病気の症状が出ることはありません。
とても管理しやすいpachylomaですが、
空中湿度の管理が悪いと、高確率で発生する
サビ病だけが大きなネックになってきます。
この病気はとても伝染力が強いので、
感染した葉はなるべく早く殺菌剤で消毒し、
酷く症状の出た葉は取り除いてしまった方が良いです。
ただし、この症状で一気に枯れるようなことはないので、
pachylomaを育てていて、この症状が出る場合は、
少し環境が好ましくないよというサインだと思ってください。
pachylomaの成長速度ですが、
私の育てている西AZのユーカリの中でも
トップクラスに遅い部類になります。
さらに環境が良ければ、もっと成長するのかもしれませんが、
我が家で最もベストな株が、1年で20cm成長するかどうかです。
ただし、先述したように、脇芽はとても激しく出ますので、
上に伸びるよりも、枝数を増やし、
葉の隙間をとにかく詰めていくという性質が強いです。
穏やかな気候帯に生息するユーカリの例に漏れず、
pachylomaはあまり耐寒性の強いユーカリとは言えません。
それでも40cmを超えるくらいまで育てば、
-5℃程なら問題なく屋外越冬可能です。
ただ小さな苗の間はある程度の防寒対策が必要かもしれません。
寒風さえ防ぐことができれば、全然大丈夫で、
一昨年の冬に、わずか数センチの幼苗が、簡易温室内で、
-5℃の環境下でも葉痛みなしで越冬できています。
逆に冬季に屋外の雨ざらしの場所で管理すると、
小さな株は結構枯れてしまったという話を聞いているので、
幼苗時には寒風を完全に防げるような、簡易温室の使用を推奨します。
次にスイートセンテッドとまで呼ばれている
気になるpachylomaの香りですが、
驚くほどにまで強く甘い香りというわけではありません。
ベースはシネオールベースですが、
確かに少し甘みが強く、柑橘系の香りも加わった
なかなかに良い香りを感じることができます。
また、香りの強さは弱くもなく、強くもないという感じで、
葉を強く指でこするか、葉をクラッシュすると良く香ります。
花を咲かせてみないとわかりませんが、
もしかすると、その花がとても甘い香りで、
スイートセンテッドという名称は、
花が咲いたpachylomaから付けられた名前なのかもしれません。
非常にマイナーで知る人ぞ知るpachylomaですが、
葉の茂り具合と、葉の鮮やかなエメラルドグリーンは
なかなかに美しく、育ててみて損はありません。
もし育ててみたい方がいらっしゃったら、
現在、在庫があるかはわかりませんが、
親愛なるこあら師匠の農場でも
少数を育てていらっしゃるはずです。
枝数が多く、間が詰まっていますし、
良い香りもするのでリースなどにも最適です。
また、成長力はとても控え目で、
小さな鉢植えでも管理しやすいユーカリです。
魅力的なスイートセンテッドpachylomaを
ぜひ一度育ててみてください!
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<栽培難易度:C>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★
要水分:★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★
耐病虫:★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-09-04 16:27 | ユーカリ紹介
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