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【ユーカリ紹介-23】
ユーカリ・レーマニー (Eucalyptus lehmannii)

第23回目は西オーストラリア軍団の一員で、
非常に変わった形状の蕾から
特徴的なライムグリーンの花を咲かせる、
かなり際物のユーカリ・レーマニーです。

◎ユーカリ・レーマニー
【学名:Eucalyptus lehmannii】
【英名:Bushy Yate / Lehmann's Mallee / Snake Gum】

fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像1

fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像2

このlehmanniiはその奇妙なバナナのような形の蕾、
fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像3

そこから咲く、チアリーダーのポンポンや
フラダンスの腰蓑のような薄いライムグリーンの花、
fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像4

トゲの生えた鉄球のような少し厳つい形の実と
fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像5

非常に面白い特徴を持っています。

大きな木になるユーカリが多い中、
lehmanniiは最小の部類で、
3m程度のブッシュ(茂み)状に育ちます。
私はまだ花を咲かせるには至っていませんが、
このサイズを考えると、鉢植えでかなり低い樹高でも
この特徴的な花を咲かせることができると考えています。

fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像6

写真のように葉の形はかなり細長い部類に入ります。
ブッシュ状に育つその性質からか、
細かい脇芽を縦横無尽にクネクネ出しまくるため、
まるで炎が燃えているかのような樹形に育ちます。
親愛なるこあら師匠は、このlehmanniiの樹形を
不動明王の背面にある炎に例えていらっしゃいました。

また新芽は非常に細い線のような形で生じてきます。

fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像7

この炎のようにも見えるクネクネ茂った樹形と細い新芽が、
蛇に見えるということでSnake Gumとも呼ばれているようです。
Snakeというと不気味なイメージがしますが、
どちらかというと少し豪快で神秘的な雰囲気があります。
とにかく家のベランダのような多種のユーカリが密集する場所でも、
一際異彩を放っていることは間違いありません。

lehmanniiの生息地は最も厄介なユーカリが多く生息している、
オーストラリア南西部の沿岸部です。
この地域は暑くもなく寒くもなく、雨も適度に降るので、
ここに生息しているユーカリ達はかなり気難しい傾向が強いです。
そんな厄介なユーカリ達の中では、
lehmanniiは、比較的育てやすいユーカリです。

日光はかなり大好きで、乾燥気味に管理するといった、
西オーストラリア軍団の代表的な育て方をします。
ところが、macrocarpa/orbifoliaなどの
内陸部の砂漠地帯に生息している品種とは大きく異なり、
かなり水が好きで、水切れにも注意する必要があります。

非常に乾燥力の強い用土と鉢で育て、
頻繁に乾いて水を与えるといったような環境がベストです。
私は瓦礫のような用土で育て、肥料分もほとんど与えていませんが、
そのような環境でこそ、調子良く育ってくれています。
とにかく水が好きな癖に、
過湿は嫌うという性質にだけは気をつけてください。

もうひとつ注意するポイントとしては、
lehmanniiは精油成分が少なく、香りも非常に弱いため、
病害虫の被害を受けやすいというところです。
ユーカリでは珍しくアブラムシの被害にあったり、
Osakano_Jieさんのお宅では、
ハキリバチ尺取虫の被害にあったりするようです。
また、うどんこ病にも罹りやすい品種です。

またかなりのアルカリ耐性を兼ね備えているようで、
多肥で用土がアルカリ寄りに傾いても、
多くの西AZのユーカリのように
鉄分欠乏症の症状が出ることはありません。

ただ普通に育てる上では、
pHは特に気にすることなく、弱酸性で問題ありません。

成長力は平均的ですが、決して遅い方ではありません。
高い気温の中、たくさんの日光を受けて、
素早く乾いて水をたっぷり与えられるような環境下では、
少し見ないうちに葉がたくさん増えていてびっくりするほどです。

この生息地のユーカリは余り寒さに強くないのですが、
耐寒性ではlehmanniiは思ったよりも頑張るようです。
今年の-5℃近くまで下がった大阪の冬を難なく乗り越えています。
ただ、葉が細く柔らかいため、寒風には非常に弱く、
新しい葉に大きなダメージを受けることがあります。

できることなら、風の当たりにくい軒下などでの越冬を推奨します。
家のベランダでは寒風を凌げる場所に置いていましたが、
葉の痛みもほとんどなく、非常に元気に越冬できました。

気になる香りについては、rudisに少し似ています。
シネオールをベースにスパイシーでウッディーな香りが漂います。
アロマティックというよりは少し渋めの香りです。
また、精油が少なく、葉を指ですりつぶしてやっと香るほどですから、
香りを楽しむユーカリとしてはおすすめできません。
やはり花を咲かせるために育てるユーカリといえます。

このlehmannii、本当はかなりマニアックなユーカリのはずですが、
その特徴的な蕾と花と実が魅力的だからでしょうか。
海外の園芸店やタネ屋ではかなり良く見かけるユーカリです。
ところが日本では全くといっていいほど見かけることはありません。

fancyboxレーマニー(Eucalyptus lehmannii)の画像8

cinereaなどの東オーストラリアのユーカリに比べると、
少し気難しい性質ではありますが、
西オーストラリアのユーカリ入門編にはぴったりだと思います。
とにかく用土の排水性をしっかりすれば、、
そんなに栽培難易度の高いユーカリではありません。

ユーカリの開花を目指して鉢植えで育てるのに最適。
日照の良い庭の庭木としても非常に面白いと思います。
是非、一度、チャレンジして、
西オーストラリアのユーカリを体感してみてください!
育ててみたい方には、素晴らしい農場をご紹介します。

------------------------------
<栽培難易度:C>
香良さ:★★
香強さ:★
成長力:★★★

要水分:★★★
耐過湿:★★
耐水切:★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★
耐病虫:★★

------------------------------
※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい

 
# by eucalyptus_k | 2011-02-25 01:21 | ユーカリ紹介
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識別しにくいユーカリ(3)~Eucalyptus globulus~

続いて今回はglobulusの亜種間の識別についてです。
始めに、globulusの苗木時点での
確実な識別のポイントはほぼ皆無です。
また、葉や茎の形状にも大きな差はありません。
Gunnii以上に見た目による識別は不可能といえます。

ここで、いきなり結論になってしまいますが、
蕾と実の形状、サイズを比較することで、
ほぼ確実な識別が可能になります。


ただ、かなり大きな樹木になるglobulus
蕾や実ができるまで育てるとなると、
それ相応の大きさにまで育て上げる必要があります。
これは一般のご家庭では非常に困難なことです。

まず、globulusで学術的に認められている亜種は下記の4種です。
---------------------------------------------------------
●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus

---------------------------------------------------------
これとは別に var. compactaという変種が存在しますが、
これはssp. globulusの小型種で、
最終的な樹高がssp. globulusより小さくなるというだけで、
その他はssp. globulusと全く変わらないため今回は割愛します。

この中で敢えて一番外観で差があるとすれば
ssp. maideniiでしょうか。あくまでも"敢えて"ですが。。。

ssp. maideniiは他の品種に比べると、
少し葉の幅が広く、丸みを帯びる傾向があります。
下の写真はssp. globulusですが葉は平均的に細長いです。

fancybox記事134の画像1

そして下の写真がssp. maideniiです。
少し葉が幅広く丸みを帯びているのがわかるでしょうか。

fancybox記事134の画像2

この他にもカーブのある細長い葉が生じることもあります。
ただしこれらはあくまでも傾向であって、
個体差がこれを上回ることもあり得ます。
たくさんglobulusを見てきた人ならば、
自信を持って識別できるかもしれません。

ssp. maidenii以外の3種は見た目が非常に良く似ています。
いくつかの傾向はありますが、
これだけでパッとみて識別することは困難でしょう。

それではまずglobulus各亜種の写真を見てみます。
ssp. globulus
fancybox記事134の画像3

ssp. bicostata
fancybox記事134の画像4

ssp. maidenii
fancybox記事134の画像5

ssp. pseudoglobulus
fancybox記事134の画像6

写真からその差は全くわかりません。
実際に私も全種育てていますが、
見た目の差はほとんどわかりません。

それでは次にglobulus各亜種の特徴を並べてみます。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の緑色が濃くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは弱い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である


ssp. bicostata
1. 4種の中では最も小さめの葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではかなりssp. globulusと良く似ている
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉は比較的幅が狭く細長く育つ傾向が強い


ssp. maidenii
1. 極端に細長い葉と丸みを帯びた葉が生じる傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の白色が強くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラはほぼない
4. 極端に細長い葉では葉のカーブが生じることがある


ssp. pseudoglobulus
1. 4種の中ではssp. globulusに次いで大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではssp. globulusとほとんど大差がない
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である


これを見ていただくと、
本当に決定的な差のないことが良くわかると思います。

次に樹木時点での特徴を並べてみます。
決定的な識別のポイントである蕾と実については、
ここでは省いて、詳しくは後述します。

-樹木時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大木に育つ(70m以上)
2. 4種の中では最も小さな葉に育つ傾向が強い
3. タスマニア島に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける


ssp. bicostata
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では圧倒的な大葉に育つ傾向が強い
3. ビクトリア州東部を中心に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける


ssp. maidenii
1. 50m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ニューサウスウェールズ州南部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある


ssp. pseudoglobulus
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ビクトリア州南東部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある


ここでもほぼ明確な識別は不可能ですね。
ただ、成長後のサイズや
生息地には大きな差があることがわかります。
-------------------------------------------------------------

それでは最も有力な識別のポイントとなる、
蕾や実についてのデータを見ていきます。
-------------------------------------------------------------
見所は下記の4ポイントです。
こちらに着目して見ていきましょう。
1. 蕾と実の大きさ
2. 蕾と実の表面が白く粉を吹いているかどうか
3. 蕾と枝を結ぶ部分のサイズ

fancybox記事134の画像7
4. 蕾は何個セットで生じるか

ssp. globulus
実の幅は1.4~2.7cm、長さは1~1.5cmと最も大きいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。
fancybox記事134の画像8

fancybox記事134の画像9

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように単独で生じます。

fancybox記事134の画像10

ssp. bicostata
実の幅は1~2cm、長さは0.7~1cmと明らかに小さいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。

fancybox記事134の画像11

fancybox記事134の画像12

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。

fancybox記事134の画像13

ssp. maidenii
実の幅は0.6~1cm、長さは0.5~1.1cmと小さく少し縦長です。
また、あまり白く粉を吹いていないことも特徴です。
写真ではわかりにくいですが、
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。

fancybox記事134の画像14

fancybox記事134の画像15

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように7個セットで生じます。

fancybox記事134の画像16

ssp. pseudoglobulus
実の幅は0.9~1.3cm、長さは0.6~0.8cmとかなり小さいです。
また、ほとんど白く粉を吹くことはありません
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。

fancybox記事134の画像17

fancybox記事134の画像18

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。

fancybox記事134の画像19

総合的にssp. bicostataと被る部分がありますが、
明らかに蕾と実の形状と色が異なっていると思います。
-------------------------------------------------------------

このデータを元にして蕾と実の比較を行えば、
比較的容易に識別ができると思います。
実際、プロもglobulusの識別は必ず蕾と実で行います。

でも、初めに書いたように、
globulusを実がなるまでに大きく育て上げるのは、
日本の一般のご家庭では非常に困難なことです。
もし、globulusをしっかりと品種で管理したいのであれば、
タネの時点から識別されたものを購入して育てるか、
亜種で管理しているところから苗を購入するしかありません。

まあ、苗木時点ではどれも良く似ていますから、
鉢植えで管理する場合には、
あまり気にする必要はないのかもしれませんね。

個人的には香りや精油重視ならssp. globulus
コンパクトで育てやすいならssp. bicostata
外観の美しさ重視ならssp. maideniiをオススメします。

ssp. pseudoglobulusはかなりマイナーなので、
タネを見つけることさえ大変なほどです。
現状タネを手に入れる手段はほとんどありません。

それでは最後にglobulusの名前の由来と、
各亜種の名前の由来で締めくくりたいと思います。

---------------------------------------------------
学名globulusはBall(球)に由来しています。
その実の形状がBallに似ているからです。

Bicostataは二つのうね・脈の意味です。
実に二本の段(脈)があるためです。

Maideniiは本種を発見したMaiden氏に由来しています。

pseudoglobulusglobulusに似ているの意味です。
ssp. globulusに良く似ていますが、
蕾と実が決定的に異なるため、別種であるということです。
---------------------------------------------------

# by eucalyptus_k | 2011-02-22 01:20 | ユーカリ(品種知識)
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識別しにくいユーカリ(2)~Eucalyptus gunnii~

第一回の~はじめに~を何気なく書いて、
そこからすぐに「止めようか?」という壁にぶち当たりました。
何故かというと、このgunniiの識別は、
おそらく全ユーカリ中で最も困難になると思われたからです。

今回は当ブログを書いている中で
最も時間と労力を費やしました。
読んだ資料は10点を超え(全て英語です。。。)、
問い合わせた現地の栽培者や研究者は5名以上。
それでも確固たる結論は出ていませんが、
とりあえず今の時点で分かったことを書いていきます。

今後も引き続き、研究は続けていきます。
そして分かったことは必ずこちらに書いていきたいと思います。

まず、gunniiで学術的に認められている亜種は下記の3種です。
---------------------------------------------
Eucalyptus gunnii ssp. gunnii
Eucalyptus gunnii ssp. archeri
Eucalyptus gunnii ssp. divaricata
---------------------------------------------
この中のssp. divaricataですが、
これは英語のDivaricate(分岐する)から来ており、
ssp. gunniiから分岐して
新しく分類された品種という意味です。

ここで一つとても厄介なことがあります。
学説によってはこのssp. divaricata
ssp. gunniiと完全に同種とみなすこともあるのです。

まあそれだけ良く似ているということで、
資料や情報も格段に少なくなってしまいます。
もちろん、今回はssp. divaricata
完全に別種として考えていきます。

このssp. divaricataは絶滅危惧種に指定されており、
恐ろしく狭い、超限られた地域にのみ自生しています。
もし、興味があったらGoogle Mapで調べてみてください。

タスマニア島のMienaという町付近に
Shannon Lagoonという周囲7km程度の小さな湖があります。
ssp. divaricataはこの湖の周囲にのみ
わずかな数だけ自生しています。

周囲7kmというと富士五湖の中で
最小の精進湖と同じくらいの湖です。
ということはssp. divaricataは、例えばヒノキに例えるならば、
精進湖の周囲にのみわずかに生息しているヒノキのみを
別種として認定しているのに等しいということになります。

通常であれば、このような限定された品種を
私がタネを入手して育てたり、
苗をホームセンター等で購入することなどあり得ないことです。

でも、そこらへんのホームセンターで売っているんです!
タネも現地の種屋であればどこでも扱っています。
アメリカやヨーロッパでgunniiといえば、
十中八九はこのssp. divaricataのことです。

なぜここまで、このssp. divaricata
メジャーになったのでしょうか?
それは、フラワーアレンジなどに向く品種だと目をつけた
ヨーロッパの栽培者が現地でタネを手に入れて持ち帰ったそうです。
そして、その美しい外観と強健でコンパクトに育つ性質が人気で、
またたく間に世界中でgunniiの園芸品種として広まったようです。

こんなに簡単に広がる品種が何故絶滅の危機にあるのか?
それはこの強健なssp. divaricataには、
水切れにだけは非常に弱いという弱点があるためです。
1990年頃から生息地の雨量が減少し、干ばつが続いた結果、
多くのssp. divaricataが枯死してその数を減らしました。

まずはssp. divaricataに関する
これらの情報を押さえた上で識別へと進みたいと思います。

gunniiの識別は単純に3種を比較することは不可能です。
まずは第一段階の比較として、
ssp. divaricataか?それ以外の2種か?という識別を行います。

早速ssp. divaricataの写真を見ていきましょう。
fancybox記事133の画像1

fancybox記事133の画像2

fancybox記事133の画像3

以下の写真は私のところで育てているものです。
まずは比較的幼い苗の写真です。

fancybox記事133の画像4

そして次はかなり調子良く成長した苗です。

fancybox記事133の画像5

遺伝子的にはgunniiUrnigeraの間に位置するようなので、
葉がかなり綺麗な白銀水色をしていて、
色だけで見るとCinerea(銀丸葉ユーカリ)のようです。

次にssp. divaricataの特徴です。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
1. 葉や茎は非常に強く粉を吹き、白銀水色になる
2. 葉が楕円よりもかなり丸くなる傾向が強い
3. 大きく育っても葉は比較的小さ目の傾向が強い
4. 茎のザラザラは成長後、早い段階で消えてなくなる。
5. 茎は四角型と丸型が等しく発生する
6. 葉先が尖らずに丸くなる傾向が強い
7. 対に付いた葉同士の茎との接点は重なりやすい
8. 非常に脇芽が出やすく、こんもり育つ


正直、非常に曖昧ではありますが、
これが苗時点での特に大きな識別のポイントです。
とにかくgunniiをたくさん見てください。
そうすれば、何とか識別が可能になると思います。
一番大きなポイントは1と2です。

-樹木時点-
1. 蕾・実は非常に白色が強くなる
fancybox記事133の画像6
2. 実の形はツボ型になる
3. 12m~15m程度の低木に育つ
4. 大きく成長してからの葉は白色が強い
5. 木立ち(Tree)型に育つ

fancybox記事133の画像7

-その他
1. 香りはシネオールを含まず、柑橘系が強い
2. 耐寒性は非常に強い(-18℃以上)
3. 水切れに弱い
4. Shannon Lagoon周辺の限られた地域にのみ生息


他の2種はここまで白い蕾をしていません。
これは大きな識別のポイントですね。
ちなみにssp. gunniiはもっと大きな木へと育ち、
ssp. archeriは灌木型(Mallee)に育ちます。
-------------------------------------------------------------

次に第二段階の比較として、
ssp. gunniiか?ssp. archeriか?という識別を行います。
結論ですが、この識別は葉や茎などからはほぼ不可能です。。。

まずはssp. gunniiの写真を見ていきましょう。
fancybox記事133の画像8

fancybox記事133の画像9

fancybox記事133の画像10

成長するごとに葉は白くなっていきます。
ssp. divaricataに比べると葉は大きく楕円形をしています。

次は私のところで育てている苗です。
少し寒さで痛んで赤くなっています。

fancybox記事133の画像11

fancybox記事133の画像12

ssp. gunniiの特徴です。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
1. 葉は新芽・下葉ともに白く粉を吹いたように成長する
2. 茎も比較的白く育つ傾向が強い
3. 茎のザラザラは成長後、早い段階で消えてなくなる。
4. 茎は四角型の場合もあるが、丸型になる傾向が強い
5. 葉先が尖らずに丸くなる傾向が強い
6. 対に付いた葉同士の茎との接点は重なりやすい


-樹木時点-
1. 蕾は少しだけ白くなる
fancybox記事133の画像13
2. 実は白く粉を吹いたようになる
3. 実の形はツボ形になる
fancybox記事133の画像14
4. 25m以上の大木に成長し、3種の中では最も大きくなる
5. 大きく成長してからの葉は白色が強い
6. 木立ち(Tree)型に育つ

fancybox記事133の画像15

-その他-
1. 香りはシネオールを微量に含み、ミント系が強い
2. 3種の中で耐寒性は最も弱く、葉が傷みやすい(-15℃)
3. 水切れに弱い
4. タスマニア島広域の湿地帯や湖・川の付近に生息

-------------------------------------------------------------

次にssp. archeriの写真を見ていきましょう。
fancybox記事133の画像16

fancybox記事133の画像17

fancybox記事133の画像18

次は私のところで育てている苗です。
少し寒さで痛んで赤くなっています。

fancybox記事133の画像19

ssp. archeriの特徴です。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
1. 葉は新芽が非常に白色が強く、下葉は緑色が強くなる
2. 茎は比較的緑色もしくは赤色に育つ傾向が強い
3. 茎のザラザラは成長後も長く残る
4. 茎は丸型の場合もあるが、四角型になる傾向が強い
5. 葉先が丸くならずに尖る傾向が強い
6. 対に付いた葉同士の茎との接点が重なりにくい


-樹木時点-
1. 蕾と実が白くなることはない
fancybox記事133の画像20
2. 実の形はカップ形になる
fancybox記事133の画像21
3. 10m以内の低木に育つ
4. 大きく成長してからの葉は緑色が強い
5. 灌木(Mallee)状に育つ

fancybox記事133の画像22

-その他-
1. 香りはシネオールが強く、わずかにミント系が香る
2. 耐寒性は非常に強い(-18℃以上)
3. 3種の中では最も水切れに強い
4. タスマニア島の標高1100m以上の高山に生息

-------------------------------------------------------------

いかがですか?
ハッキリいって写真では区別がつかないと思います。
苗時点では個体差が特徴を上回るため、
見た目による識別はほぼ不可能といえます。

苗を何本も見てきている現地の栽培者からも、
「苗時点では全く同じ」という回答をもらいました。

一番の識別のポイントは、
樹高、木立ちか灌木か、蕾・実の色とその形状の3つです。
ところが実際は現地の栽培者でも、
外観からの識別はほとんど行わず、
しっかりとタネから管理しているようです。。。

とにかく、苗時点でのssp. gunniissp. archeri
確実な識別方法は、今の時点では私にもわかりません。

そこでタネのルーツから考える識別です。

こんなに外観が似ているにも関わらず、
ssp. archeri「Eucalyptus Archeri」
完全に別種扱いされるほど、
gunniiから切り離されて分類されています。

よってssp. archeriのタネが
Eucalyptus gunniiとして販売されていることは
ほとんどあり得ないと考えられます。

逆にssp. gunniissp. divaricata
Eucalyptus gunniiとして
ごっちゃになっていることが多いでしょう。
寧ろヨーロッパやアメリカからgunniiのタネを買うと、
かなり高い確率でssp. divaricataのタネが来ることでしょう。

よほどマニアックでもない日本の栽培者は、
ほとんどがEucalyptus gunniiでタネを仕入れているはずですから、
ssp. archeriのタネが紛れ込む可能性は非常に低いことになります。
よって、日本で販売されているgunniiについては、
ssp. gunniiか?ssp. divaricataか?の
第一段階の識別でほぼ間に合うと考えられます。

最後に私の家にもあるvar. silverdropという園芸品種ですが、
上記全ての判別を行った結果、
ssp. gunniiでほぼ間違いないと思います。

var. silverdropという名のタネは
ヨーロッパでのみ販売されているものです。
ssp. divaricataが主流のヨーロッパでは
gunniiは完全な丸葉というのが当たり前。

逆に葉が楕円のssp. gunnii
SilverDrop(銀の雫)と特徴づけて呼んでいる。
あくまでも推測ですが、このように考えられますね。

ここまで長文を読んでいただいて
本当にありがとうございました。

一番最後は我が家自慢の
silverdropの写真で締めくくらせていただきます。

fancybox記事133の画像23

fancybox記事133の画像24

私の適職??
どんな適職診断でやっても
もちろん"学者"ですw

こんなにgunniiばっかり見ていたら、
凄くgunniiが好きになっちゃったなぁ♪

# by eucalyptus_k | 2011-02-09 05:43 | ユーカリ(品種知識)
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識別しにくいユーカリ(1)~はじめに~

ユーカリの品種識別は困難を極めます。
日本での情報が少なすぎることが一番大きな要因です。

品種間の識別であれば、
私のところではオーストラリアの学術資料を活用することで、
何とか詳しい識別ができるようになってきました。

ところが各品種には亜種・変種というものが存在します。
ユーカリの学名の後にssp.で続くのが亜種名、
var.で続くものが変種や園芸品種名です。

この亜種・変種レベルになってくると
その詳しい識別はかなり難しくなってきます。

多くの品種の場合、亜種間での特徴より
株の個体差がそれを上回ることが多いため、
100%断定できるような識別はほぼ不可能といえます。

日本では決して流通量が多くないユーカリだからこそ、
葉形や茎の形状といった見た目の特徴ではなく、
タネの入手経路等のルーツを想定した識別も
かなり有効な識別手段になってきます。

実際、日本からのタネの入手経路はかなり限られています。
例えばAという品種のタネは△と□でしか入手できないので、
△のタネの出所と□のタネの出所を詳しく調べることで
日本に流通しているA品種の詳細を知ることができるのです。

ところがよく見かけたり、よく流通している品種ほど、
亜種や変種が多く存在する傾向があり、少々厄介でもあります。

日本ではかなりメジャーなユーカリに下記の4種があります。
Eucalyptus gunnii
Eucalyptus globulus
Eucalyptus leucoxylon
Eucalyptus camaldulensis

4種ともホームセンター等で販売されていたり、
公園などでも見かけることのできる品種です。

これら4種には多くの亜種・変種が存在します。
特にcamaldulensisに至っては、
オーストラリアの各所に生息しており、
その生息地によって、種類が分けられているほどです。

今回は全4回でgunnii/globulus/leucoxylonの3種について、
その識別に関する考察を行ってみたいと思います。

camaldulensisについては、
現在識別を行うための各株を栽培するスペースや
その他の余裕がありません。
いつか可能になったときには必ず行うつもりでいます。
何卒ご理解をお願いします。

その他ではradiata/camphora/decipiensなどでも
いくつかの亜種が存在しています。
これらもいずれ必ず挑戦していくつもりでいます。

# by eucalyptus_k | 2011-02-05 18:55 | ユーカリ(品種知識)
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【ユーカリ紹介-22】
ユーカリ・リズドニー (Eucalyptus risdonii)

第22回目はタスマニア出身のミント系ユーカリ。
海外では美しい銀葉やツキヌキ状の葉形が
フラワーアレンジ等でも人気のユーカリ・リズドニーです。

◎ユーカリ・リズドニー
【学名:Eucalyptus risdonii】
【英名:Risdon Peppermint】

fancyboxリズドニー(Eucalyptus risdonii)の画像1

fancyboxリズドニー(Eucalyptus risdonii)の画像2

前回のtenuiramisに引き続いて、
このrisdoniiもミント系ユーカリの代表格です。
ミント系ユーカリには数百m級の非常に大きく育つ品種と、
中規模から比較的低木の品種があります。
このrisdoniiは後者の中でも特に低木の部類で
8mくらいまでの小さな樹木に成長します。

risdoniiという学名は、
英名にあるRisdonという生息地名に由来しています。

大きく育つと柳のような細葉に変わってしまうユーカリが多い中、
risdoniiは末葉の細葉まで成長することは稀で、
最も美しいツキヌキ状の銀葉を維持することが多いようです。
また低木樹のため、比較的早い段階で花を楽しむこともできます。

葉はtenuiramisと同じく新芽が白銀色で、
特に冬季に成長する新芽が抜群に美しいです。

fancyboxリズドニー(Eucalyptus risdonii)の画像3

これもニュージーランドの栽培者から
銀葉の美しい品種としてtenuiramisと共に薦められたものです。
美しい新芽はしばらく経つと他の葉とこすれあって、
青緑色の丈夫な葉に変わっていきます。

ちなみに夏場はあまり成長が進まなくなるので、
青緑色の葉ばかりになりますが、
涼しい成長期には白銀の葉が多くなります。

外観は今の時点ではtenuiramisと非常に良く似ています。
大きな違いはtenuiramisは葉先が尖っているのに対し、
risdoniigunniiなどのように葉先が丸みを帯びています。

このrisdoniiも、
perriniana(ツキヌキユーカリ)のような
ツキヌキ状の葉形に育ちます。

fancyboxリズドニー(Eucalyptus risdonii)の画像4

育っていくに従ってtenuiramisは葉が細長いツキヌキ状に、
risdoniiperrinianaに近い丸葉のツキヌキ状になります。
大きく育つことでよりツキヌキがハッキリしていきます。

risdoniitenuiramisgunniiなどと同じく、
完全にタスマニア島固有の品種です。
tenuiramisはオーストラリア本土の種屋では、
余り見かけることがないほどマイナーでしたが、
risdoniiはフラワーアレンジ等でも人気があるためでしょうか。
各所でタネが販売されているのを見かけます。
その他ではヨーロッパやアメリカでも良く知られているようです。

タスマニアの気候はオーストラリア本土とは少し変わっています。
一日の寒暖差が大きく、四季の差があまりない本土とは異なり、
タスマニアは一日の寒暖差が穏やか、
四季の差もはっきりしており、降雨量も多めで安定しています。
この気候は比較的日本の気候に近いと言われています。
日本で育てやすいといわれているgunniiglobulusなども
実はタスマニア固有の生息種なのです。
(globulusはssp. globulusのみタスマニア生息種です。)

というわけで、このrisdoniiは、
日本では比較的育てやすいユーカリといえます。

特にミント系のユーカリ全般に言えることですが、
ハダニうどんこ病、その他の病虫害を
ほとんど受けることがありません。
これは日本の狭い栽培環境では、
とても育てやすいポイントになります。

管理方法は日本でありふれたユーカリ、
特にgunniiと同じような管理で大丈夫です。
ユーカリの中ではかなり水を好む方で、
水切れには少し注意が必要です。
gunnii程ではありませんが耐寒性は-8℃程度です。
大阪の冬なんてものともせずにどんどん成長していきます。

また暑い夏が大好きな多くのユーカリとは異なり、
かなり涼しい季節に良く成長する品種です。
この写真の株は初夏にタネを播いたものですが、
10~11月、特に11月に入ってからの方が良く成長しました。
逆に夏の間はほとんど動きませんでした。

比較的育てやすいrisdoniiですが、
一つ弱点があるとすると、
私の育てている大阪などでは、
夏場は少し暑すぎるというところです。

上記にあるように夏場はかなり成長が緩慢になり、
大阪では、高温障害の症状が出たり、
高温多湿で湿気が籠るような場所では、
葉が枯れたり、葉痛みが起こることがあります。

夏場限定で葉が黄変して、褐斑が出るのは、
典型的な高温障害の症状です。

ただ、秋も進んでかなり涼しくなる頃には、
新芽を出して復活してきますので、
余程のことがない限り枯死することはないでしょうが、
夏場は少し涼しい場所で管理した方が良いでしょう。

良く似たtenuiramisに比べると
幾分かマシですが、gunniiよりは暑さに弱いです。

夏場は蒸れを防ぐために、
乾燥気味に管理したいところですが、
risdoniiはかなり水が好きなユーカリですので、
水切れと乾燥のバランスが少し難しく、
夏場の管理がrisdoniiの唯一の鬼門になります。

気になる香りについてはtenuiramisと良く似ていますが
よりミント系の香りと若干のシネオールを感じます。
少しスッとした非常に爽快でハーバルな香りです。
ただし香り自体はそこまで強くないのが少し残念です。

fancyboxリズドニー(Eucalyptus risdonii)の画像5

このrisdoniiは、白銀色が魅力の美しいツキヌキ状の葉、
早期開花の白い小さな花、爽やかなミントの香り、
おまけに鉢植え等でコンパクトに育てられるときて、
本当に至れり尽くせりのユーカリです!

ところがなぜか日本では全く見かけることができません。
もしかすると日本でタネを播いたのは私だけ?
なんて思ってしまうほどマニアックなユーカリなのです。

fancyboxリズドニー(Eucalyptus risdonii)の画像6

日本で広まって欲しいユーカリとしてはトップクラス!
寧ろ何で広まらないのか疑問なほど素晴らしいユーカリです。
タネを購入したい場合は販売店をご紹介します。
もしタネから育ててみたいという場合には、
発芽させるまでに少しクセがありますので、
発芽しないという場合には一度ご相談ください。

ユーカリが大好き!と思われる方なら、
頑張ってタネを手に入れて、
無理をしてタネからでも育ててほしい><;
そんなオススメしまくりのrisdoniiです。

------------------------------
<栽培難易度:B>
香良さ:★★★★
香強さ:★★
成長力:★★

要水分:★★★★
耐過湿:★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★★
耐暑性:★
耐病虫:★★★★★

------------------------------
※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい

 
# by eucalyptus_k | 2011-02-02 02:15 | ユーカリ紹介
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