ユーカリ栽培で厳禁なコト その3(水分管理)
毎月たくさんのお問い合わせをいただきます。
その多くは栽培知識に関することであったり、
調子の悪いユーカリの改善策についてです。
ユーカリは栽培の難しい植物と言われることがあります。
確かに日本とは大きく気候の異なる
オーストラリアの植物なので、
若干癖のある部分もあると思います。
ただ大きく分けて3つのポイントにさえ気を付ければ、
特に難しい植物ではなく、その他の在来の植物でも
もっと難しいものはたくさんあると思います。
ただこの3つのポイントを抑えていないと、
なかなかうまくいかないことが多いです。
これからユーカリの栽培を始める方や、
ユーカリの栽培に苦戦している方は
この3つのポイントをチェックしてみてください。
3. 水分管理
--------------------------------------------------------
水遣りの問題というのは非常に難しい問題です。
実際に良くお問い合わせをいただくのは
ほとんどが水遣りに関連するお話ですが、
これはなかなか言葉や文章ではうまくお伝えできません。
私も初心者の頃、様々な先人にアドバイスをいただきましたが、
正直実際に水遣りを経験して、何度も失敗して、
それでも挫けずに何度も日課として水遣りを続けた結果、
近年やっと感じが掴めてきた感じです。
「水遣り三年」
という言葉があります。
水遣りは実際に三年程度の経験を積まないと
わからないというものです。
実際に水遣りの頻度や量というものは、
お育てになっている環境や
鉢・用土など全ての要素が絡み合って、
そこに気候が関わってきて、
初めてベストな状態が決まるものです。
例えばこのユーカリは
大体三日に1回の水遣りをしてくださいと言っても、
その通りきっちりと三日に1回水遣りをしていたら、
恐らく水切れか過湿で近いうちに枯れてしまうでしょう。
どれだけの日照があるのか?
風通しはどのくらい良いのか?
用土の質と量はどのようになっているか?
鉢の構造や材質はどうなっているか?
育てている場所の気候はどうなっているか?
そして今年の気候の特徴はどうなっているか?
雨は降ったか?降っていないか?天候はどうか?
最低でもこれだけの要素が関わってくるわけです。
例えば今週は三日で水を与えたけれど、
翌週は長雨が続いたので、
七日空けて水遣りをしたということもありますし、
昨年は非常に雨が少なかったので、
この季節の水遣りは大まかに三日に1回だったけれど、
今年は非常に雨が多いので、
五日に1回程度の水遣りが多かったということも起きます。
また全く同じ季節に同じ樹高・鉢・用土量の品種を
二つの異なる場所で育てた場合、
片方は一日1回の水遣りを要するのに対して、
もう一方では五日に1回ということもありえます。
結論として最適な水遣り頻度という部分では
アドバイスできることはほとんどありません。
今回の内容は主に水分管理の難易度を下げて、
効率良く水遣り方法を習得できるポイントになります。
まず1の「日照と風通し」、2の「用土・鉢」。
これを最善の状態に近づけることで
水分管理は格段に楽になっていきます。
とくに1の日照と風通しが最も重要です。
ユーカリの水分管理を考える上で
ユーカリの性質を知ることはとても大切です。
ユーカリの生息地は多岐にわたり、
日本より雨量の多い亜熱帯地域のユーカリもありますが、
日本で見かけるような外観の美しいユーカリは
乾燥した地域のユーカリがほとんどになります。
日本の2/3程度の雨量の地域や
凄いものでは日本の1/7程度の雨量の地域もあります。
ユーカリは在来の植物に比べると
一様に乾燥に強い植物ですが、
さすがに多肉植物のように水分を貯めこむ機構はないので、
ここまで少ない雨量の地域では
雨水だけで生存することはできません。
ユーカリの故郷であるオーストラリアの多くの地域では
このような乾燥した気候から慢性的な水不足にありますが、
少ない雨量とは逆に豊富な地下水を有しています。
このような乾燥地域のユーカリは
雨水ではなく、この豊富な地下水を吸って生きています。
ユーカリはとても根張りが強靭で、
根を真っ直ぐ下に伸ばす性質が強いものが多いですが
これはこの地下水を効率的に探して吸うためです。
雨水ではなく地下水を吸っているということは、
根の大部分は常に乾いた土壌内にあり、
地下水に到達した根の先端部分だけが
水分と接している状態ということになります。
この結果
ユーカリの多くは
根が長時間湿っていることを嫌います。
ユーカリの水分管理を考える上では、
どのくらいの頻度で水遣りをするのか?ということよりも、
どうすれば用土が早く乾く環境を作れるか?
ということを考えるのが最も重要です。
率直に湿潤を好むユーカリでも、
乾燥を好む砂漠地帯のユーカリでも、
盛夏には一日1回の水遣りを要する
という育て方が最もベストな状態と言えます。
実際に適切な環境で育てている場合は
盛夏にはほぼ一日1回の水遣りが必要になる
ということは覚えておいてください。
盛夏にも関わらず、用土が何日も湿っているようでは、
根本的に日照や風通し、
用土の質や量がマズイということになります。
実際に現地オーストラリアなどでは、
ユーカリの栽培には鉢底から吸水させる
底面吸水で栽培を行うことがほとんどです。
ただ湿潤を好む在来の植物では
底面吸水という方法はほとんど取られないため、
日本で底面吸水を効果的に行うためには
ある程度の器具や施設が必要になります。
実際にできる範囲としては、
鉢底をバケツの水に漬けるといった方法や
スリット鉢などの鉢を使用して、
鉢底のスリットから水を与えるという方法があります。
この方法は主に冬季などの吸水量の少ない季節の水遣りや
逆に一日1回以上の水遣りを要する際の補てんに効果的です。
ユーカリは乾燥を好む植物と言われます。
これは決して
「水を吸わない植物」であるということではありません。
どちらかというとユーカリの多くは
比較的良く水を吸います。
真実は
「ユーカリは用土が良く乾燥する環境を好む」
ということになります。
用土の表面がカラカラに乾いているからといって、
用土の内部まで乾いているとは限りません。
最初はこの感覚が非常に掴みにくいので、
用土の端の方を数センチ程度指などで掘ってみて
内部まで乾いているかをチェックする方法をオススメしています。
スコップなどであまり深く掘ってしまうと
根を痛めてしまうことにもなりますので、
あくまでも指や棒などで軽く掘って調べます。
これだけでもかなり鉢の内部の状態がわかります。
他には鉢の端に割り箸を刺して湿り具合をチェックする方法や
スリット鉢などを使用して、
鉢底のスリットから見える土の乾燥具合を見る方法もあります。
この方法だとチェックは比較的簡単です。
鉢底のスリットから見える土がある程度乾いていたら
水遣りをしても大丈夫という目安になります。
gunniiやcinereaなどの比較的難易度が低く
湿潤を好むというユーカリは、
この用土が長く湿っているという状態に
耐えることができるという力が強いということで、
macrocarpaやkruseanaなどの
難易度が高く過湿を嫌うというユーカリは、
この状態に耐える力が弱いということになります。
ユーカリの栽培が難しいと思うかどうかには、
純粋にその方の植物栽培のルーツも大きく関係しています。
例えば私のように植物のルーツが野菜という人間では、
植物=たくさんの水と肥料という固定概念があるので、
ユーカリ栽培に馴染むまでにはとても時間がかかりました。
一方では主にオージープランツを好んで栽培されている方の場合、
macrocarpaなどの比較的難易度の高いユーカリであっても、
対して困難だと思うことなく育てることができるでしょう。
結論として、
水分管理はご自身で経験して習得するしかありません。
そのためには何度か失敗することもあるでしょうし、
時には手塩をかけて育てた立派なユーカリが
いとも簡単に枯れてしまって悲しい思いをすることもあります。
それでも必ず続けていれば、日に日に感覚は研ぎ澄まされ、
まるでユーカリと話ができるかのように
水分管理のテクニックも向上していきます。
このテクニックを向上させるために、
下記の3つを気にとめていただければ、
少しお役に立つことと思います。
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ユーカリは水を吸わない植物ではなく、
用土が長い間湿っていることを嫌う植物である。
そのためにどうすれば用土が早く乾く環境を
作ることができるかを考える。
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鉢の中がどのようになっているか?に関心を持つ。
鉢の内部まで見ることはできないけれど、
出来る限りの簡易チェックを行い、
鉢の中の水分を何となくイメージできるように努める。
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気候や天気に関心を持つ。
人間の感覚は気温の変化に非常に鈍感。
朝の内寒くても昼が暑ければ暑い日であると認識する。
その日の気候や天気をチェックして、
その都度ユーカリの状態に目を向ける。
-------------------------------------------------------------------------
決してガチガチに考えないでください。
この部分に少し気を留めていただくだけで、
水分管理の習得がとても早く進むと思います。
最初は少し大変なこともあるかもしれません。
特に拘る人には手間になるかもしれません。
でもユーカリはそこまで難しい植物ではありません。
どちらかというとご自身がユーカリの栽培方法に
慣れていないだけであることがほとんどです。
私が枯らせたユーカリの数は数知れず、
今でも枯らせることは多々あります。
それでもユーカリが好きなら、
何があっても挫けずにトライしてみてください。
きっと三年後には、ユーカリの栽培マスターに
なっていらっしゃることと思います。- # by eucalyptus_k | 2015-10-26 18:11 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリ栽培で厳禁なコト その2(用土・鉢・肥料)
毎月たくさんのお問い合わせをいただきます。
その多くは栽培知識に関することであったり、
調子の悪いユーカリの改善策についてです。
ユーカリは栽培の難しい植物と言われることがあります。
確かに日本とは大きく気候の異なる
オーストラリアの植物なので、
若干癖のある部分もあると思います。
ただ大きく分けて3つのポイントにさえ気を付ければ、
特に難しい植物ではなく、その他の在来の植物でも
もっと難しいものはたくさんあると思います。
ただこの3つのポイントを抑えていないと、
なかなかうまくいかないことが多いです。
これからユーカリの栽培を始める方や、
ユーカリの栽培に苦戦している方は
この3つのポイントをチェックしてみてください。
2. 用土・鉢・肥料
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この中で特に用土・鉢という部分は
品種によって問うもの問わないものがあります。
例えばcamphora/robustaといったような
湿地帯に生息している品種、
rudis/grandisといったような
完全に水没した土壌でも生息可能な品種、
nitens/cypellocarpaといったような
日本よりも雨量の多い地域に生息する品種では、
特に用土も鉢も問わずに栽培が可能です。
ところが主に西オーストラリアのユーカリや
半砂漠地帯などの乾燥した環境のユーカリでは、
用土や鉢というのはとても重要な要素になります。
ただ前回の記事の「日照と風通し」が
十分に満たされている場合には、
用土や鉢が多少合わなくても、
比較的楽にに育てることができる場合もあります。
●用土
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まず用土ですが、多くの品種では
花と野菜の土の使用は厳禁
通常の観葉植物用土では保水性が高すぎる
という結果が出ています。
ただ用土をオリジナルでブレンドするには
ある程度の知識が必要になりますので、
良く分からない方には
観葉植物用の粒状培養土をオススメしています。
この粒状培養土はベストではありませんが、
ヘタなブレンドを行うよりは遥かにベターです。
用土と言うものは環境にも左右されますので
何をブレンドすれば良いかは一概には言えませんが、
参考までに私のブレンド用土を公開させていただきます。
硬質赤玉土(中粒):3割
手で潰せない固さのものを使用します。
通常の赤玉土はすぐに崩れて微塵になり、
保水性が上がってしまうので、
使用する場合は少量に留めた方が良いです。
砂漠品種の場合は大粒でも良い実績があります。
この部分を先日ご紹介いただいた
赤ボラ石などで代用するのもありでしょう。
人によっては焼赤玉土や
セラミスを使用している方もいらっしゃいます。
硬質鹿沼土(中粒~大粒):2割
手で潰せない固さのものを使用します。
この部分を日向土や軽石、先日ご紹介いただいた
赤ボラ石などで代用するのもありでしょう。
桐生砂:1~2割
鉄分豊富な桐生砂を選択しています。
この部分を川砂などで代用しても良いでしょうし、
上記の鹿沼土の部分でカバーしても良いと思います。
ゼオライト:2割
良く100均などで見かけるモルデナイトではなく、
ミネラル質豊富なクリノプチロライトを使用しています。
この部分は私的な拘りもありますので、
通常のゼオライトやパーライトで代用しても
省いてしまってもOKでしょう。
くん炭:1割
根腐れ防止効果やその他の利点を踏まえて
微量を配合することにしています。
この辺りは個人的な拘りの範囲です。
ピートモス:1割
これはユーカリの性質によって、
多量に配合する場合、全く配合しない場合があります。
保水性を調整する部分であると考えてください。
好みで腐葉土を配合するのもありでしょうが、
私はマンションなのでコバエの発生等を抑えるため、
腐葉土、堆肥は一切使用しないことにしています。
ちなみにこの用土は非常に乾きやすい用土です。
実家の庭のような終日直射日光の当たる場所では
真夏は確実に1日で用土がカラカラになり、
春秋でも暖かい日には1日で乾いてしまいます。
ただそのような環境でも
macrocarpaやkruseanaでは上々の結果が出ています。
gunniiやcinereaを育てる場合には
ピートモスの部分をもっと増やした方が良いでしょう。
ただし半日陰の環境で育てる場合には、
gunniiなどのユーカリでも非常に良い結果が出ています。
理想は真夏は2日以上、春秋冬は1週間以上、
水分を残さない用土がベストだと思っています。
ご自身の栽培環境に合わせて、
適切な用土を使用してください。
市販されているものでは、
粒状培養土の他にオリーブの土なども実績があります。
ただし先述した通り、亜熱帯のユーカリや
湿地帯生息種ではほとんど用土は問いません。
ただしあまりに過湿過ぎると
暑い夏場に根が蒸し状態になってしまいますので、
過湿に強い品種であっても、
夏場の暑い時間の水遣りは避けた方が良いです。
これはユーカリだけでなく、
在来の植物でも同様に言えることではあります。
植物の栽培を行う人には
用土は拘るべきだという人と、
用土はコストを抑える部分だという人がいます。
私は現在は後者に位置するでしょうが、
本質的には無駄なコストは抑えたいと常々思っています。
当初、結構用土はケチっていたのですが、
ケチることで弊害が生じて、
高いコストをかけているユーカリのタネや苗を
無駄にしてしまうくらいなら、
用土などを含めてできる限りベストな環境を構築した方が
遥かに総合的なコストに無駄がないことが分かりました。
今はせっかく育てた苗が枯れてしまうことは
コストも時間も無駄にして、私的にも悲しいので、
無駄なくケチらないようにしています。
例えば硬質用土は比較的高価なので、
以前は通常の安価な用土をミックスしたり、
ポット等も安価なポリポットを使用していましたが、
今は硬質用土には一切妥協せずに、
安価な赤玉土等の使用は一切行わず、
苗育成にも全てスリットポットを使用するようにしています。
●鉢
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基本情報としては下記の通りです。
■ 幅のある鉢より高さのある長鉢の方が経過が良い
■ 素焼きや陶器よりもプラスチック製が好ましい
■ 多くの品種ではスリット鉢の使用を推奨
■ 乾燥を好む品種ではワンサイズ小さな鉢を使用
色々と実験を行いましたが、
ユーカリでは盆栽皿のような幅広の鉢よりも
高さのある長鉢の方が圧倒的に経過が良いです。
これはユーカリが直根性の植物で
根を真っ直ぐに伸ばす性質に合っているからです。
一部woodwardiiなどこの根を真っ直ぐに伸ばせる
鉢の選択にうるさい品種などもありますが、
多くの品種では特に高さの低いもの以外であれば、
通常の高さの鉢で問題ありません。
実際に長鉢は転倒しやすいというリスクもあります。
鉢の素材ですがプラスチックがベターです。
これは乾きやすく、清潔に保てるという利点があることと、
目立った欠点がないことが大きな利点になっています。
素焼き鉢は乾燥が進みやすいという利点がありますが、
鉢表面の小さな穴がカビなどの温床となり、
根腐れや病気を誘発しやすいという情報もあります。
実際に何度か使用したことがありますが、
逆に用土全体の乾燥が進み過ぎたこともあり、
あまり経過は良くありませんでした。
陶器の鉢は水分が籠りやすく、
過湿になりやすいという欠点があります。
またデザイン重視のものが多いので、
これも過湿になりやすい要因になります。
そこでオススメなのがスリット鉢です。
参考記事:
スリット鉢は素晴らしい!!! その1
スリット鉢は素晴らしい!!! その2
スリット鉢は非常に乾燥が進みやすいため、
湿潤を好む品種などで賛否両論がありますが、
やはり大型樹木のユーカリでは、
根のサークリングを防止できるという効果が大きいです。
何年も育てていると良く分かりますが、
ユーカリの根張りは激しく、
通常の鉢では、短期間の内に根が飽和状態となります。
またユーカリの多くは
根を真っ直ぐに長く伸ばす性質があるので、
非常にサークリングが起こりやすいです。
サークリングの大きな弊害として、
根が鉢底部でサークリングを起こして、
吸水用の細根が底部に集中します。
すると鉢の底部は水切れを起こしているのに、
鉢の上部はまだ湿っているということが起き、
水切れを起こしているにも関わらず、
同時に根腐れを起こすということが起こります。
これはポリポットなどで
長期間苗を育てることでも良く起こります。
正直この症状は鉢を替えること以外に対処法が無く、
長期間の栽培の大きな障害となるため、
スリット鉢の使用はとても良い結果につながります。
またサークリングを防止することで
根が中心部に集まって正常に生育していくので、
根の飽和が起こりにくく、幹も太りやすくなります。
実際に我が家では、わずかスリット5号で150cm以上、
スリットの6号で3mにまで成長が進んでも、
根の飽和が限界に達することはありません。
ただしこのような場合、わずか6号の鉢に
2m以上の樹高の株が植わっているので転倒は必至です。
転倒に対しての対策が必要になるでしょう。
ワンサイズ小さな鉢で育てるという方法は
非常に水分管理にうるさい半砂漠地帯の品種や
水分管理にあまり自信のない初心者の方にオススメな方法です。
これは実際に鉢サイズ云々が重要なのではなく、
用土量を少なめで栽培することができるため、
過湿を避けて、健全な根の育成が可能になる部分が重要になります。
鉢をワンサイズ小さくすることで、
日照や風通し、用土の水分管理の難しさを
大幅に軽減できることになります。
globulusやgrandisといったような
湿潤を好み、大型で根張りの激しい品種では
ワンサイズ小さめの鉢で育てる利点は全くありません。
このワンサイズ小さめの鉢で育てる方法は
主に西AZのユーカリの低樹高時の栽培に効果的です。
どうしても用土の選択がうまくいかず、
水分管理が上手にできない初心者の方で
ユーカリを何度も枯らせてしまう人には
ワンサイズさらにはツーサイズ小さな鉢で育てることで、
非常に良い結果が出ているとご報告をいただいています。
ただしこの方法は根のサークリングを防ぐ
スリット鉢で行う必要があります。
この方法を行うことで過湿は避けられても、
更なるサークリングを引き起こす可能性がありますので、
できる限りスリット鉢で行うことが推奨となります。
主な西AZの品種での目安ですが、
5号で樹高100~120cmまで、
6号で2mまでというのが理想でしょうか。
水分管理に慣れてきたら、
通常の鉢サイズでも問題なく育てられますし、
根が十分に張り切った株ではあまり心配はいらなくなります。
主には低樹高時の根の生育に
高い効果を上げることのできる方法といえます。
ワンサイズ小さな鉢で育てると
植え替えの回数が増加するのではという心配がありますが、
西AZの乾燥を好む品種は成長速度も遅く、
同時に根の成長速度も緩慢なので、
そこまで頻繁に植え替えを要することはありません。
結論として鉢の選択は
用土の選択と密接に関わっています。
用土の問題を鉢でカバーするという感じです。
●肥料とpH
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ハーブ草木や野菜を育てていると
肥料の問題は切っても切れない問題です。
ところがユーカリを育てていると
肥料の知識がちっとも育ちません。
極論としてユーカリの多くは
全く肥料を与えなくても栽培可能です。
肥料を与えたとしても
ハーブ草木のように目に見えた効果は出ませんが、
それでも全くないというわけではありません。
西AZのユーカリの多くは多肥を嫌うものが多く、
一部では特にリン酸分を嫌うものがあります。
ただそこまで養分にうるさいものは
日本では滅多に手に入らないレアな品種になります。
肥料を与える場合は成長期の液肥、
通年での化成肥料の置肥が有効です。
液肥については特に問いませんが
拘るのであれば窒素やカリの多い、
観葉植物用や野菜用が効果的です。
成熟期の成長促進には窒素系が、
生育初期の根の成長促進にはカリ系が有効です。
その他にオーストラリアの土壌には
鉄分・亜鉛・マグネシウムなどの微量要素が豊富なため、
このような微量要素の補給も有効です。
ただあまりに肥料に拘り過ぎると多肥となり、
肥料にはアルカリ性のものが多いため、
用土のpHを上げてしまうことになります。
pHが高くなりすぎてしまうと、
鉄分欠乏症の症状が出ることがあります。
間違った情報でネット上などに
ユーカリは高pHを好むとありますが
結論としてこれは間違いです!
ユーカリの多くは弱酸性~酸性よりの用土を好みます。
一部のユーカリではアルカリ耐性の高いものもあります。
主に南AZや西AZ沿岸部の石灰岩地帯に生息するユーカリは
比較的高いアルカリ耐性を有しています。
ただあくまでもアルカリ耐性があるというだけで、
アルカリ性の土壌を好むというわけではありません。
現在私の育てている範囲で
たった1種類だけ例外があります。
Eucalyptus moon lagoonというユーカリです。
moon lagoonのみアルカリ寄りの土壌を好み、
比較的多肥を好みます。
ただ所詮好むという程度なので、
特に無理にpHの操作は不要ですし、
他よりも少し肥料を多めに与える程度でOKです。
経験上、あまり多肥にし過ぎると
間延びして、開花が遅れるという結果が出ています。
moon lagoonは通常かなり成長の遅いユーカリですが、
多肥にすることでかなりその成長速度を上げることができます。
ユーカリの好む弱酸性~酸性とはどういう用土かというと、
通常の赤玉土や鹿沼石などがそのpHなので、
特に石灰などを加えずにそのまま用土を使用すればOKです。
私も数年間同じ用土で栽培を続けて、
何か調子悪そうだなあとふと思った時に
少し苦土石灰を加えることがある程度です。
結論として肥料の重要度は低いです。
効果は相応にありますが、
肥料に注目しすぎることによる
多肥の弊害の方が遥かに大きいです。
あまり肥料には固執せずに、
全く与えなくても栽培可能なことを覚えておいて、
たまのご褒美程度に与えるのが良いです。
用土・鉢・肥料という要素は
一般的にとても注目されやすい要素です。
ただあくまでも最も重要なのは日照と風通しです。
まずはこの部分で最善を尽くせるようにしてください。
正直日照と風通しがベストな栽培者は
皆ユーカリなんて簡単だ!
eucalyptus_kは拘り過ぎだと言います。
実際に日照と風通しはそれほど大きな要素です。
ところが私は住居の関係上、
日照と風通しをベストに完備することができなかったため、
この用土・鉢で工夫せざるを得なかったのです。
日照と風通しが十分ではない場所で栽培する際には
この用土・鉢・肥料の情報を
是非とも参考にしていただければと思います。- # by eucalyptus_k | 2015-10-08 19:28 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリ栽培で厳禁なコト その1(日照と風通し)
毎月たくさんのお問い合わせをいただきます。
その多くは栽培知識に関することであったり、
調子の悪いユーカリの改善策についてです。
ユーカリは栽培の難しい植物と言われることがあります。
確かに日本とは大きく気候の異なる
オーストラリアの植物なので、
若干癖のある部分もあると思います。
ただ大きく分けて3つのポイントにさえ気を付ければ、
特に難しい植物ではなく、その他の在来の植物でも
もっと難しいものはたくさんあると思います。
ただこの3つのポイントを抑えていないと、
なかなかうまくいかないことが多いです。
これからユーカリの栽培を始める方や、
ユーカリの栽培に苦戦している方は
この3つのポイントをチェックしてみてください。
1. 日照と風通し
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ユーカリ栽培に失敗される方の多くは、
ユーカリを観葉植物やハーブ草木だと思って、
育てている人が多いです。
率直に
ユーカリは観葉植物でも
ハーブ草木でもありません。
ユーカリは大型樹木になります。
樹高が最も小さなものでは、
1~2mというものもありますが、
これは砂漠地帯に生息する非常に希少な種です。
まず日本で手に入れることはできません。
実際に手に入れることができる品種としては、
最も小さなものでも2~4m程度の樹高があります。
これはかんきつ類の樹木やツバキなどに相当します。
ただこの超小型の品種は決してメジャーではなく、
日本で手に入れやすいユーカリの多くは、
最低でも20m程度の大型樹木になるものばかりです。
これはケヤキやクスノキなどに相当します。
gunniiやglobulus、レモンユーカリやポポラス、
銀丸葉ユーカリなども全てが20mオーバーで
要するにケヤキの苗木を盆栽ばりの鉢植えで
育てていることに等しくなります。
そしてユーカリはこれらのクスノキなどと同じく、
森林の最も高い位置で繁栄している陽樹になります。
そのため、基本的には、終日の直射日光が必要になり、
最低でも半日陰以上の日照が必要です。
また乾燥した国の植物ですので、
周囲に他の植物のない、風通しの良い環境を好み、
用土が長く湿っていることを嫌います。
これらの性質を踏まえて、
多くの観葉植物のように、
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室内管理は不可能です。
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これは実際にやってみるとわかりますが、
色々実験してみて、
室内栽培は不可能であると言い切ります。
人間の目は光を感じる能力が高いので、
屋外と室内の明るさの差が良く分かりませんが、
実際に照度計で計測してみるとびっくりするほどの差があります。
正直明るい室内の窓辺よりも、暗い屋外の日陰の方が
遥かに明るいということがわかります。
また室内というのは、
びっくりするほどに風の動きがありません。
特に昨今の機密性の高い住居ではなおさらです。
実際に何も植えていない2つの鉢と土を容易し、
室内の明るい窓辺と暗い屋外の日陰にそれぞれ置いて、
どちらが早く全乾燥するのかテストしてみると、
圧倒的に後者の方が早いことが分かります。
ヘタをすると少し日当たりの悪い室内の場合、
いつまで経っても土の内部が乾かずに
いつしかカビが生えてしまうこともあります。
私は虫を飼っていますので、
これでもその差を実感しています。
虫の飼育容器を室内に置いた場合、
いつまで経っても用土が乾かず、
排泄物はカビだらけで酷い臭いを出します。
これは乾燥器や空気清浄機を置いても効果なしです。
虫の場合は暗い日陰に置く必要があるので、
屋外のかなり暗い場所に置いたものでも、
すぐに用土は乾き、カビも臭いもほとんどありません。
このように室内と屋外では、
実際にテストを行ってみないとわからない、
天と地ほどの環境の差があるのです。
この日照と風通しというのは、
ユーカリ栽培にとって最も重要なポイントといえます。
正直これさえ押さえておけば、
それだけでユーカリ栽培は簡単と言える程です。
また逆にこのポイントを押さえていないと、
ユーカリは非常に栽培が困難な植物と思えるでしょう。
少々用土や鉢が悪くても、水分管理がまずくても、
日照と風通しさえ良ければ、何とかなるものです。
他では多くのユーカリの耐寒性は
多くの方が思っているよりも遥かに高いです。
日本で見かける多くのユーカリでは、
レモンユーカリを除いて、
最低でも-8℃以上を耐えることができます。
レモンユーカリも幼い間は、
-3℃程度で管理することが望ましいですが
成長して葉の毛が無くなった後は
-8℃程度でもほとんど葉痛みが生じなくなります。
冬場の管理は過湿を避けることで、
耐寒性をさらに上げることが可能になります。
逆に過湿は大きく耐寒性を下げることにもなります。
耐寒性-20℃のユーカリであっても、
厳冬期に毎日用土がビタビタでは、
枯れずとも激しく葉痛みが起こってしまいます。
良くユーカリを販売している店舗の説明に、
●室内で育てられます。
●冬場は0℃以上の管理が必要です。
●冬場は室内で管理しましょう。
と書かれているのを見かけますが、
これら全ては大ウソです!
■ユーカリは室内では育てられません。
■0℃ごときを耐えられないユーカリは日本にありません。
■冬場もできる限り屋外で管理しましょう。
これが正解です。
寒地で耐寒性の厳しいユーカリを育てる場合には、
下記のような方法が有効です。
1. 簡易温室を使用する
----------------------------------
ホームセンターなどで2,000円程度で売られている、
無加温の簡易温室を使用することでかなり耐えられます。
実際に-3℃程度での管理が推奨のユーカリでも、
-8℃以上の環境で葉痛みなしという実績があります。
ただし、寒さの和らぐ昼間には、
温室の窓は完全に開け放っておいてください。
これ以上に寒さの厳しい地域では
簡単な加温温室を使用すると良いでしょう。
2. 夜間のみ室内で管理する
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昼間は完全に屋外で管理します。
そして夜間のみ玄関などに取り入れて管理します。
例えば朝出かける際に外に出して良く日光と風に当て、
夜帰宅時に玄関内に取り込むといった感じです。
やたらと寒さの厳しくなるような日は
終日玄関内に取り込んでいても、
数日程度であれば調子を崩すことはないでしょう。
しつこいようですが、
ユーカリの室内管理は不可能です。
是非ともこの失敗だけは犯さないように気をつけて、
ユーカリは観葉植物ではなく樹木であることを
忘れないで栽培に臨んでください。- # by eucalyptus_k | 2015-09-02 18:59 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリの名前について
ユーカリに限らずですが、
学名・英名・和名・商品名など様々な呼び名があります。
特にユーカリの場合、
日本にはほとんど存在しない品種が多いので、
英名がそのまま和名になっているものや、
和名がそもそも存在しないものもあります。
例えば、Eucalyptus cinereaの場合、
[学名] cinerea
[英名] Silver Doller Gum / Argyle Apple / Mealy Stringybark
[和名] ギンマルバユーカリ
[商品名] シルバーダラーユーカリ etc.
といった感じになります
英名はともかくとして、和名は非常に曖昧です。
そのため、本ブログではあまり使用しないか、
「銀丸葉ユーカリことcinerea」と言ったりしています。
試しに近くのホームセンターや園芸店で
「銀丸葉ユーカリ」と注文してみてください。
恐らく十中八九、gunniiやpulverulentaが届くでしょう。
このようにユーカリの場合、
和名なんてあってないようなものです。
一部、レモンユーカリとユーカリノキだけは、
比較的日本に根付いた和名と言えます。
色々な名前が交錯すると
私でもややこしいと思う程なので、
基本当ブログでは学名を使用するようにしています。
また学名の読み方には、極力cinerea/macrocarpa等の
アルファベット表記を使用するようにしています。
この学名というのは、
ラテン語やギリシャ語を元に付けられています。
そのため、macrocarpaを
マクロカーパと読むのは間違いで、
正しくはマクロカルパという読みになります。
ただその販売者が、
これはマクロカーパという商品名なんだ!
と言い張った場合にはそれで通ってしまうので、
あくまでも正式な学名の読みが
マクロカルパということしか言えないのです。
他にはcypellocarpaというユーカリがあります。
このユーカリは当初様々な読みが交錯していました。
私も最初はシペロカルパだと思っていましたが、
サイペロカルパではないか?と言われたこともあります。
それで調べてみた結果、
ギリシャ語のカップという意味の
キペロという単語が語源になっているので、
正しくはキペロカルパということがわかりました。
他にも正しいとわかっているものでは、
[albopurpurea]
アルボパープレア ×
アルボプルプレア○
[nitens]
ナイテンス ×
ニテンス ○
などがあります。
人名や地名が元になっている品種があります。
これは一体何語で読むのが正しいのか、
正直全くわかりません。
[archeri] アーチェリー氏発見
アーチェリ? アルチェリ?
[woodwardii] ウッドワード氏発見
ウッドワルディー? ウッドワーディー?
[kybeanensis] カイビーン付近に生息
キベアネンシス? カイビーネンシス?
[lane-poolei] レーンプール氏発見
ラネプーレイ? レーンプーレイ?
こんな感じで困惑しますので、とにかく
アルファベット表記をするようにしています。
学名の語源を調べる資料自体はあるので、
一度時間があったら、
再編集してみようかなとも考えています。
ぶっちゃけ私自身も日本語読みは
間違っているものがたくさんあると思います。。。
ピックアップしてみるだけで、
[urnigera]
アーニゲラ×
恐らくウルニゲラ
[urna]
アーナ
恐らくウルナ
[orbifolia]
オービフォリア×
恐らくオルビフォリア
[campaspe]
カンパスプ×
恐らくカンパスペ
[cladocalyx]
クレイドカリックス×
恐らくクラドカリックス
[sturgissiana]
スタージシアナ×
恐らくストゥルジシアナ
などなど...トホホ...- # by eucalyptus_k | 2015-08-06 19:04 | ユーカリ(品種知識)
やっぱりgunniiは美しい!
珍しいユーカリを多数育てている私ですが、
実は最もありふれたユーカリである、
gunniiの栽培があまり得意ではありません。
ユーカリを育て始めた初期から栽培している
立派なgunniiを一昨年に枯らせてしまい、
我が家にはマトモなgunniiは
一本もない状態が長らく続いていました。
ただタネは各亜種で管理していますので、
原種のgunnii ssp. gunnii、
亜種のgunnii ssp. divaricata、
別種になったarcheriと3種類しっかりあります。
すでに別種扱いなので、
gunniiと言って良いのかわかりませんが、
その中でもarcheriだけはガンガン成長していて、
150cmを越えようという勢いです。
ぶっちゃけ別種扱いになったくせに
イマイチその他のgunniiとの違いがわかりません。
上の写真のように左右対称ではない葉が出ることと、
新芽の白さの割に、下葉の青色が濃くなることなどが
archeriの特徴のようですが、
個体差と言い切ってしまえる程の差でしかありません。
我が家には学名にgunniiと付くマトモな株が一本もない、
そんな情けない状態でコツコツとgunniiを育ててきて、
やっとこさそれなりの株が揃ってきました。
気候自体があまり大阪に合っていないこともありますが、
我が家では、高温乾燥好きな
西AZのユーカリばかりを育てていることもあって、
総合的にgunniiに合った環境を完備できていません。
またどうしてもその強健な性質に甘えて、
劣悪な場所に置いたりするので、
いきなり枯れてしまったり、
慢性的に生育状況が良くなかったりしていました。
少し良好な場所に置いてあげたら、
やっとマトモに育ち始めてきた
gunnii ssp. divaricataです。
冬場の白く輝くような丸葉は、
albidaやgilliiの銀葉にも引けを取りません。
gunniiの中でも、このssp. divaricataは、
園芸品種として最も人気がありますので、
日本のgunniiの中にも良く混ざっています。
Silver Dropという名前が付いているものは、
このssp. divaricataであることが多いようです。
最も小丸葉が映えて、
銀葉の美しくなるgunniiですので、
栽培にはオススメの種になります。
次は私の手抜きのせいで、
最も栽培の遅れている原種のssp. gunniiです。
まだ15cm程度の小苗ですが、
今年の寒い冬をものともしません。
耐寒性最強クラスは伊達ではありません。
今のところあまり大きな違いはわかりませんが、
3種の中では最も楕円型の大きな葉になるようです。
こうしてしっかりと育ててみると、
改めてgunniiは綺麗だなと思わされます。
ユーカリマニアには、
少し面白みの欠けるユーカリなのかもしれませんが、
美しいgunniiをしっかりと育て上げることも、
ユーカリ栽培の醍醐味ではないかと思いました。
しばらくは、少し力を注いで栽培を行い、
gunniiについてもさらに勉強したいと思います。- # by eucalyptus_k | 2015-02-09 17:38 | ユーカリ(栽培実績)