ユーカリ栽培で厳禁なコト その2(用土・鉢・肥料)
毎月たくさんのお問い合わせをいただきます。
その多くは栽培知識に関することであったり、
調子の悪いユーカリの改善策についてです。
ユーカリは栽培の難しい植物と言われることがあります。
確かに日本とは大きく気候の異なる
オーストラリアの植物なので、
若干癖のある部分もあると思います。
ただ大きく分けて3つのポイントにさえ気を付ければ、
特に難しい植物ではなく、その他の在来の植物でも
もっと難しいものはたくさんあると思います。
ただこの3つのポイントを抑えていないと、
なかなかうまくいかないことが多いです。
これからユーカリの栽培を始める方や、
ユーカリの栽培に苦戦している方は
この3つのポイントをチェックしてみてください。
2. 用土・鉢・肥料
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この中で特に用土・鉢という部分は
品種によって問うもの問わないものがあります。
例えばcamphora/robustaといったような
湿地帯に生息している品種、
rudis/grandisといったような
完全に水没した土壌でも生息可能な品種、
nitens/cypellocarpaといったような
日本よりも雨量の多い地域に生息する品種では、
特に用土も鉢も問わずに栽培が可能です。
ところが主に西オーストラリアのユーカリや
半砂漠地帯などの乾燥した環境のユーカリでは、
用土や鉢というのはとても重要な要素になります。
ただ前回の記事の「日照と風通し」が
十分に満たされている場合には、
用土や鉢が多少合わなくても、
比較的楽にに育てることができる場合もあります。
●用土
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まず用土ですが、多くの品種では
花と野菜の土の使用は厳禁
通常の観葉植物用土では保水性が高すぎる
という結果が出ています。
ただ用土をオリジナルでブレンドするには
ある程度の知識が必要になりますので、
良く分からない方には
観葉植物用の粒状培養土をオススメしています。
この粒状培養土はベストではありませんが、
ヘタなブレンドを行うよりは遥かにベターです。
用土と言うものは環境にも左右されますので
何をブレンドすれば良いかは一概には言えませんが、
参考までに私のブレンド用土を公開させていただきます。
硬質赤玉土(中粒):3割
手で潰せない固さのものを使用します。
通常の赤玉土はすぐに崩れて微塵になり、
保水性が上がってしまうので、
使用する場合は少量に留めた方が良いです。
砂漠品種の場合は大粒でも良い実績があります。
この部分を先日ご紹介いただいた
赤ボラ石などで代用するのもありでしょう。
人によっては焼赤玉土や
セラミスを使用している方もいらっしゃいます。
硬質鹿沼土(中粒~大粒):2割
手で潰せない固さのものを使用します。
この部分を日向土や軽石、先日ご紹介いただいた
赤ボラ石などで代用するのもありでしょう。
桐生砂:1~2割
鉄分豊富な桐生砂を選択しています。
この部分を川砂などで代用しても良いでしょうし、
上記の鹿沼土の部分でカバーしても良いと思います。
ゼオライト:2割
良く100均などで見かけるモルデナイトではなく、
ミネラル質豊富なクリノプチロライトを使用しています。
この部分は私的な拘りもありますので、
通常のゼオライトやパーライトで代用しても
省いてしまってもOKでしょう。
くん炭:1割
根腐れ防止効果やその他の利点を踏まえて
微量を配合することにしています。
この辺りは個人的な拘りの範囲です。
ピートモス:1割
これはユーカリの性質によって、
多量に配合する場合、全く配合しない場合があります。
保水性を調整する部分であると考えてください。
好みで腐葉土を配合するのもありでしょうが、
私はマンションなのでコバエの発生等を抑えるため、
腐葉土、堆肥は一切使用しないことにしています。
ちなみにこの用土は非常に乾きやすい用土です。
実家の庭のような終日直射日光の当たる場所では
真夏は確実に1日で用土がカラカラになり、
春秋でも暖かい日には1日で乾いてしまいます。
ただそのような環境でも
macrocarpaやkruseanaでは上々の結果が出ています。
gunniiやcinereaを育てる場合には
ピートモスの部分をもっと増やした方が良いでしょう。
ただし半日陰の環境で育てる場合には、
gunniiなどのユーカリでも非常に良い結果が出ています。
理想は真夏は2日以上、春秋冬は1週間以上、
水分を残さない用土がベストだと思っています。
ご自身の栽培環境に合わせて、
適切な用土を使用してください。
市販されているものでは、
粒状培養土の他にオリーブの土なども実績があります。
ただし先述した通り、亜熱帯のユーカリや
湿地帯生息種ではほとんど用土は問いません。
ただしあまりに過湿過ぎると
暑い夏場に根が蒸し状態になってしまいますので、
過湿に強い品種であっても、
夏場の暑い時間の水遣りは避けた方が良いです。
これはユーカリだけでなく、
在来の植物でも同様に言えることではあります。
植物の栽培を行う人には
用土は拘るべきだという人と、
用土はコストを抑える部分だという人がいます。
私は現在は後者に位置するでしょうが、
本質的には無駄なコストは抑えたいと常々思っています。
当初、結構用土はケチっていたのですが、
ケチることで弊害が生じて、
高いコストをかけているユーカリのタネや苗を
無駄にしてしまうくらいなら、
用土などを含めてできる限りベストな環境を構築した方が
遥かに総合的なコストに無駄がないことが分かりました。
今はせっかく育てた苗が枯れてしまうことは
コストも時間も無駄にして、私的にも悲しいので、
無駄なくケチらないようにしています。
例えば硬質用土は比較的高価なので、
以前は通常の安価な用土をミックスしたり、
ポット等も安価なポリポットを使用していましたが、
今は硬質用土には一切妥協せずに、
安価な赤玉土等の使用は一切行わず、
苗育成にも全てスリットポットを使用するようにしています。
●鉢
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基本情報としては下記の通りです。
■ 幅のある鉢より高さのある長鉢の方が経過が良い
■ 素焼きや陶器よりもプラスチック製が好ましい
■ 多くの品種ではスリット鉢の使用を推奨
■ 乾燥を好む品種ではワンサイズ小さな鉢を使用
色々と実験を行いましたが、
ユーカリでは盆栽皿のような幅広の鉢よりも
高さのある長鉢の方が圧倒的に経過が良いです。
これはユーカリが直根性の植物で
根を真っ直ぐに伸ばす性質に合っているからです。
一部woodwardiiなどこの根を真っ直ぐに伸ばせる
鉢の選択にうるさい品種などもありますが、
多くの品種では特に高さの低いもの以外であれば、
通常の高さの鉢で問題ありません。
実際に長鉢は転倒しやすいというリスクもあります。
鉢の素材ですがプラスチックがベターです。
これは乾きやすく、清潔に保てるという利点があることと、
目立った欠点がないことが大きな利点になっています。
素焼き鉢は乾燥が進みやすいという利点がありますが、
鉢表面の小さな穴がカビなどの温床となり、
根腐れや病気を誘発しやすいという情報もあります。
実際に何度か使用したことがありますが、
逆に用土全体の乾燥が進み過ぎたこともあり、
あまり経過は良くありませんでした。
陶器の鉢は水分が籠りやすく、
過湿になりやすいという欠点があります。
またデザイン重視のものが多いので、
これも過湿になりやすい要因になります。
そこでオススメなのがスリット鉢です。
参考記事:
スリット鉢は素晴らしい!!! その1
スリット鉢は素晴らしい!!! その2
スリット鉢は非常に乾燥が進みやすいため、
湿潤を好む品種などで賛否両論がありますが、
やはり大型樹木のユーカリでは、
根のサークリングを防止できるという効果が大きいです。
何年も育てていると良く分かりますが、
ユーカリの根張りは激しく、
通常の鉢では、短期間の内に根が飽和状態となります。
またユーカリの多くは
根を真っ直ぐに長く伸ばす性質があるので、
非常にサークリングが起こりやすいです。
サークリングの大きな弊害として、
根が鉢底部でサークリングを起こして、
吸水用の細根が底部に集中します。
すると鉢の底部は水切れを起こしているのに、
鉢の上部はまだ湿っているということが起き、
水切れを起こしているにも関わらず、
同時に根腐れを起こすということが起こります。
これはポリポットなどで
長期間苗を育てることでも良く起こります。
正直この症状は鉢を替えること以外に対処法が無く、
長期間の栽培の大きな障害となるため、
スリット鉢の使用はとても良い結果につながります。
またサークリングを防止することで
根が中心部に集まって正常に生育していくので、
根の飽和が起こりにくく、幹も太りやすくなります。
実際に我が家では、わずかスリット5号で150cm以上、
スリットの6号で3mにまで成長が進んでも、
根の飽和が限界に達することはありません。
ただしこのような場合、わずか6号の鉢に
2m以上の樹高の株が植わっているので転倒は必至です。
転倒に対しての対策が必要になるでしょう。
ワンサイズ小さな鉢で育てるという方法は
非常に水分管理にうるさい半砂漠地帯の品種や
水分管理にあまり自信のない初心者の方にオススメな方法です。
これは実際に鉢サイズ云々が重要なのではなく、
用土量を少なめで栽培することができるため、
過湿を避けて、健全な根の育成が可能になる部分が重要になります。
鉢をワンサイズ小さくすることで、
日照や風通し、用土の水分管理の難しさを
大幅に軽減できることになります。
globulusやgrandisといったような
湿潤を好み、大型で根張りの激しい品種では
ワンサイズ小さめの鉢で育てる利点は全くありません。
このワンサイズ小さめの鉢で育てる方法は
主に西AZのユーカリの低樹高時の栽培に効果的です。
どうしても用土の選択がうまくいかず、
水分管理が上手にできない初心者の方で
ユーカリを何度も枯らせてしまう人には
ワンサイズさらにはツーサイズ小さな鉢で育てることで、
非常に良い結果が出ているとご報告をいただいています。
ただしこの方法は根のサークリングを防ぐ
スリット鉢で行う必要があります。
この方法を行うことで過湿は避けられても、
更なるサークリングを引き起こす可能性がありますので、
できる限りスリット鉢で行うことが推奨となります。
主な西AZの品種での目安ですが、
5号で樹高100~120cmまで、
6号で2mまでというのが理想でしょうか。
水分管理に慣れてきたら、
通常の鉢サイズでも問題なく育てられますし、
根が十分に張り切った株ではあまり心配はいらなくなります。
主には低樹高時の根の生育に
高い効果を上げることのできる方法といえます。
ワンサイズ小さな鉢で育てると
植え替えの回数が増加するのではという心配がありますが、
西AZの乾燥を好む品種は成長速度も遅く、
同時に根の成長速度も緩慢なので、
そこまで頻繁に植え替えを要することはありません。
結論として鉢の選択は
用土の選択と密接に関わっています。
用土の問題を鉢でカバーするという感じです。
●肥料とpH
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ハーブ草木や野菜を育てていると
肥料の問題は切っても切れない問題です。
ところがユーカリを育てていると
肥料の知識がちっとも育ちません。
極論としてユーカリの多くは
全く肥料を与えなくても栽培可能です。
肥料を与えたとしても
ハーブ草木のように目に見えた効果は出ませんが、
それでも全くないというわけではありません。
西AZのユーカリの多くは多肥を嫌うものが多く、
一部では特にリン酸分を嫌うものがあります。
ただそこまで養分にうるさいものは
日本では滅多に手に入らないレアな品種になります。
肥料を与える場合は成長期の液肥、
通年での化成肥料の置肥が有効です。
液肥については特に問いませんが
拘るのであれば窒素やカリの多い、
観葉植物用や野菜用が効果的です。
成熟期の成長促進には窒素系が、
生育初期の根の成長促進にはカリ系が有効です。
その他にオーストラリアの土壌には
鉄分・亜鉛・マグネシウムなどの微量要素が豊富なため、
このような微量要素の補給も有効です。
ただあまりに肥料に拘り過ぎると多肥となり、
肥料にはアルカリ性のものが多いため、
用土のpHを上げてしまうことになります。
pHが高くなりすぎてしまうと、
鉄分欠乏症の症状が出ることがあります。
間違った情報でネット上などに
ユーカリは高pHを好むとありますが
結論としてこれは間違いです!
ユーカリの多くは弱酸性~酸性よりの用土を好みます。
一部のユーカリではアルカリ耐性の高いものもあります。
主に南AZや西AZ沿岸部の石灰岩地帯に生息するユーカリは
比較的高いアルカリ耐性を有しています。
ただあくまでもアルカリ耐性があるというだけで、
アルカリ性の土壌を好むというわけではありません。
現在私の育てている範囲で
たった1種類だけ例外があります。
Eucalyptus moon lagoonというユーカリです。
moon lagoonのみアルカリ寄りの土壌を好み、
比較的多肥を好みます。
ただ所詮好むという程度なので、
特に無理にpHの操作は不要ですし、
他よりも少し肥料を多めに与える程度でOKです。
経験上、あまり多肥にし過ぎると
間延びして、開花が遅れるという結果が出ています。
moon lagoonは通常かなり成長の遅いユーカリですが、
多肥にすることでかなりその成長速度を上げることができます。
ユーカリの好む弱酸性~酸性とはどういう用土かというと、
通常の赤玉土や鹿沼石などがそのpHなので、
特に石灰などを加えずにそのまま用土を使用すればOKです。
私も数年間同じ用土で栽培を続けて、
何か調子悪そうだなあとふと思った時に
少し苦土石灰を加えることがある程度です。
結論として肥料の重要度は低いです。
効果は相応にありますが、
肥料に注目しすぎることによる
多肥の弊害の方が遥かに大きいです。
あまり肥料には固執せずに、
全く与えなくても栽培可能なことを覚えておいて、
たまのご褒美程度に与えるのが良いです。
用土・鉢・肥料という要素は
一般的にとても注目されやすい要素です。
ただあくまでも最も重要なのは日照と風通しです。
まずはこの部分で最善を尽くせるようにしてください。
正直日照と風通しがベストな栽培者は
皆ユーカリなんて簡単だ!
eucalyptus_kは拘り過ぎだと言います。
実際に日照と風通しはそれほど大きな要素です。
ところが私は住居の関係上、
日照と風通しをベストに完備することができなかったため、
この用土・鉢で工夫せざるを得なかったのです。
日照と風通しが十分ではない場所で栽培する際には
この用土・鉢・肥料の情報を
是非とも参考にしていただければと思います。- # by eucalyptus_k | 2015-10-08 19:28 | ユーカリ(栽培知識)
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