【ユーカリ紹介-65】
ユーカリ・アーニゲラ (Eucalyptus urnigera)続きまして第65回目は
タスマニア島固有品種で
白銀色の丸葉が非常に美しい
gunniiとcinereaのアイノコのような
ユーカリ・アーニゲラです。
◎ユーカリ・アーニゲラ
【学名:Eucalyptus urnigera】
【英名:Urn Gum】
Glaucous
Normal
Glaucous
Normal
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まず初めに、
私は2種類の異なるurnigeraを育てています。
1つは通常の原種のurnigera。
もう1つはあるNurseryが独自に開発した
葉の丸みと白みの強い特殊なurnigeraです。
今回は1つの写真につき、
それぞれのurnigeraの写真を掲載していきます。
初めに掲載している「Glaucous」と記載のある写真が、
あるNursery限定の白みの強い特殊なurnigera、
二番目に掲載している「Normal」と記載のある写真が、
通常の原種のurnigeraになります。
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さてこのurnigeraですが、
日本ではまず知られていないマイナーなユーカリです。
そんな日本ではほとんど見られないurnigeraですが、
gunniiとcinereaの間のような感じの
とても美しい銀葉を持っており、
海外では栽培用として人気があります。
今回、写真を見て思ったのですが、
写真で見ると本当にgunniiと良く似ており、
ちょっと素人目には見分けがつきませんね。
厳密には、gunniiと比べると
葉が分厚くしっかりしており、
若干葉の質感や葉脈の具合などが異なります。
Glaucous
Normal
また、我が家の株では日照が不足しているため、
ちょっとわかりにくいのですが、
環境が良いと、gunniiよりもかなり大きな
cinereaやgoniocalyx並みの大葉を生じることがあります。
このユーカリの学名の由来は、
その実の形状がUrn(壺)に似ていることに起因します。
いかがでしょうか?
その学名の通り壺の形状そのままですね。
英名もそのままUrn Gumとなっています。
このurnigeraは見た目が似ているだけではなく、
その性質もgunniiと良く似ている部分が多いです。
まず、基本的には高山出身のユーカリのため、
東北や長野の準高地などの冷涼地が最も適しています。
gunniiよりも若干暑さには強いようで、
大阪の夏でも、特に大きな痛みや
高温障害の症状が出ることはほとんどありません。
ただし暑い夏場にはあまり成長は進まなくなります。
樹高では、一部の灌木型の亜種を除いて、
25m程度の大木に育つgunniiと比べると、
urnigeraはかなりコンパクトなユーカリです。
その樹高は最大で15m程度にはなりますが、
余程環境が合わないとそこまで大型にはならないようです。
一応Tree型(木立型)の樹木ではありますが、
Mallee的な性質も強く、樹高を伸ばすよりも、
脇芽をたくさん出して横に広がることが多いです。
そのため、鉢植え栽培だけでなく、
広い庭の庭木としても、
gunniiよりも様々な面で融通が効きます。
大きく育ってくると、
その他の多くのユーカリのように
葉の形状には変化が生じます。
この大きく育ってからのurnigera末葉は
柳型ではなく、槍の先のような形の銀葉となり、
この末葉の色や形状もgunniiと良く似ています。
その他では、gunniiと比べると、
かなり乾燥した環境を好み、
非常に強烈な直射日光を必要とする品種です。
それらはcinereaやpulverulenta以上です。
日照が半日陰以下でも、
そこまで貧弱にはならないgunniiと比べて、
urnigeraははっきりとわかる程に貧弱に育ちます。
ユーカリの管理に慣れている人なら
gunniiでもurnigeraでも問題なく育てられますが、
日照環境がイマイチだったり、
水分管理にあまり自信のない人であれば、
gunniiの方が格段に育てやすく感じると思います。
それではurnigeraの外観を
良く見ていきたいと思います。
まずその葉は水色に近い銀葉でとても美しいです。
またこの葉が冬には薄紫色に紅葉して、
その色の変化も非常に美しい見所です。
Glaucous
Normal
我が家の株ではわかりにくいのですが、
実家の庭のように非常に日照の強い環境では
goniocalyx級の大葉になることもあります。
下記が実家で撮ってきた
Max成長率の大葉のurnigeraです。
とても立派で美しくしっかりとした葉をしています。
次にurnigeraの新芽部分です。
その白銀の美しさはユーカリ中でも屈指です。
Glaucous
Normal
ここでは、Glaucous版の方と、
色や葉の形状で大きな差が出ています。
gunniiを育てている方なら
比べてみるとわかると思いますが、
新芽部分の葉は特にurnigeraの方がしっかりしています。
時には下の写真のように
真丸に近いような葉が生じることもあります。
基本的には原種の方が葉先が尖りやすく、
Glaucous版の方が丸い葉を生じやすいです。
Glaucous
Normal
次に茎を見てみましょう。
Glaucous
Normal
どちらにも激しく突起があり、
特にGlaucous版の方では、
強く粉を吹いていることが分かります。
gunniiは葉先の茎には突起を生じることがありますが、
基本的にはあまり突起がなく、
ツルっとしていることが多いものです。
ところがurnigeraには満遍なく突起があります。
こうしてみてみると、
urnigeraには美しい魅力が満載ですね。
gunniiを育てている人であれば、
新たに育ててみるかどうかは少し微妙かもしれませんが、
銀葉好きには、押さえておきたい素晴らしいユーカリです。
こんなに美しく素晴らしいurnigeraの育て方についてですが、
前述した通り、東AZのユーカリの中では、
かなり乾燥した環境を好みます。
実は私は一度urnigeraの栽培に失敗しています。。。
以前はcinereaなどと同じように、
あまり日照や水分管理に気を配らずに育てていたのですが、
どれも貧弱で激しいうどんこ病の被害にあい、
そのうちに全て枯れてしまいました。
そこで、かなり日照には気を使い、
水分管理も西AZのユーカリと同じくらい
乾燥寄りのシフトで行ってみたところ、
現在は非常に元気に育ってくれています。
macrocarpaの開花こそ実現できましたが、
gunniiやdelegatensisなど、冷涼湿潤を好むユーカリは、
軒並み枯れてしまった激暑の実家の庭でも、
urnigeraは非常に元気に育っています。
先日はgoniocalyxと間違えてしまう程に
見事な成長を遂げ、白銀大葉を生じていました。
この実家での例からもわかるように、
強烈な日光と乾燥した環境を好み、
大阪の夏の暑さに対する耐性も兼ね備えているようです。
結論として西AZのユーカリ程には気を使いませんが、
用土はかなり乾燥寄りを選択して、
多くの東AZのユーカリよりは、
少しだけ水分管理に気を使った方が良いかもしれません。
何よりも大切なのは、直射日光です。
基本的にはフルタイム直射日光が理想的で、
最低でも半日陰以上の日照が必要になります。
私が一度失敗した一番大きな要因は日照です。
基本的にはタスマニア島のユーカリは強健で、
過湿や若干の耐陰性も兼ね備えているものが多いので、
安心しきっていたのが失敗でした。
以前紹介したmorrisbyiもそうですが、
とても日光が重要なポイントになってきます。
urnigeraはかなりうどんこ病に弱いユーカリなので、
この弱点も日照で克服できるかと思います。
日光さえしっかりと押さえられていれば、
西AZのユーカリのような厄介なポイントはありません。
日照と風通しの良い環境が用意できるのであれば、
寧ろ暑さに気を使うgunniiよりも楽かもしれません。
成長については、比較的激しく脇芽を出し、
gunnii並みでそれなりに激しいです。
ただ、メインの成長時期である涼しい時期が
大阪や東京ではとても短いので、
激しすぎて困るようなことはありません。
気になるurnigeraの耐寒性についてですが、
これはgunniiには及ばないものの、
ユーカリ中最強クラスの-15℃程度です。
大阪の冬などものともせずに、
前述した通り、美しい薄紫色に紅葉し、
暖地であれば冬でも新芽を展開する程です。
Osakano Jieさんのお宅の実績では、
幼苗が大雪に埋もれてしまっても、
全く痛むこともなく、元気に生存していたそうです。
冬の管理には、超級な過湿以外には、
ほとんど気を使うこともなく、
ある種、冬はurnigeraの見ごろの時期とも言えます。
urnigeraの香りについてですが、
シネオールベースの良くあるユーカリの良い香りです。
柑橘系の香りが強いpulverulentaやmorrisbyiとは異なり、
cinereaに近いですが、そこまで生臭さや強烈な刺激はありません。
cinereaとgunniiの間のソフトな香りに、
少しだけ甘みを追加したようなスッとした良い香りです。
香りの強さはcinerea程は強くはなく、
gunniiよりは強いという感じで非常に平均的です。
葉を強く指でこすったり、葉をクラッシュすると良く香ります。
香りを楽しむハーブとしての利用も十分可能です。
それでは最後に原種のurnigeraと、
あるNursery限定のGlaucous版との比較で締めくくります。
原種のurnigeraはそれだけでも
美しい銀葉を持ったユーカリですが、
Glaucous版では、葉の丸みを強くして、
さらに白みを強化したものという前評判でした。
そしてその結果は全くその前評判通りでした。
それでは似たような写真で
それぞれを比較してみましょう。
Glaucous
Normal
Glaucous
Normal
Glaucous
Normal
urnigera原種でもかなり白みが強い方なのですが、
Glaucous版の方では、そこからさらに白みが強く、
gilliiやalbidaに迫る白さで、水色に近いような色にも見えます。
我が家では日照の不足が原因で葉は楕円気味ですが、
日照の良い環境では、特にGlaucous版の方は、
cinereaと同じくらいの真丸な葉になります。
もう一つ面白い違いとしては、
発芽後の双葉の幹の色です。
urnigera原種の方では、一般的な薄緑色の幹ですが、
Glaucous版は真っ赤な色の幹をしています。
寒さに強いユーカリで
赤めの幹が生じることがたまにありますが、
双葉まで少し赤く染まる程にここまで赤いのは
他では見かけたことはありません。
こうして2種のurnigeraを比較してみると、
一般的にはGlaucous版の方が魅力的でしょうか。
現在このurnigeraは、
親愛なるこあら師匠の農場で
人気定番品種として販売されています。
恐らく現在、在庫にあるのは、
このGlaucous版の方ではないかと思います。
Glaucous版を育ててみたい方は今がチャンスです!
銀葉好きには是非とも押さえておきたいurnigera。
興味のある方は是非とも育ててみてくださいね。
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<栽培難易度:B>
香良さ:★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★★
耐日陰:★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★★★
耐暑性:★★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-07-19 13:26 | ユーカリ紹介
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