【ユーカリ紹介-61】
ユーカリ・ポポラス・ベスティタ
(Eucalyptus polyanthemos ssp. vestita)続きまして第61回目は
人気のあるユーカリ・ポポラスの亜種で
より丸みのある葉と白みの強さが魅力の
ユーカリ・ポリアンセモス・ベスティタです。
◎ユーカリ・ポリアンセモス・ベスティタ
【学名:Eucalyptus polyanthemos ssp. vestita】
【英名:Red Box】
生花やフラワーアレンジの世界では、
葉と蕾や実のセットで
ポポラスベリーと呼ばれて重宝されているpolyanthemos。
巷で見かけるポポラスは、
十中八九が原種のssp. polyanthemosです。
その亜種であるこのssp. vestitaは、
時折、そんな中に混ざっていることがあるかもしれません。
実はこのpolyanthemosという学名は、
Many Flowers(たくさんの花)の意味で、
その名の通り、たくさんの花を咲かすユーカリなのです。
このたくさんの花=蕾がポポラスベリーを形作っています。
polyanthemosは、日本では何故か
Silver Doller Gumと呼ばれることがあり、
cinereaの英名であるSilver Doller Gumと全く同じなので
呼び名や販売名では少々ややこしいところがあります。
とにかく日本ではハートリーフユーカリ=ポポラスと思われるほど、
メジャー&人気のあるユーカリで、園芸店でもたまに見かけられます。
非常に良く見かけるgunniiなどの丸葉ユーカリとは、
一風変わったハートリーフが可愛いと女性に人気があります。
ssp. vestitaは、原種のssp. polyanthemosと同様に、
ハートリーフユーカリとして販売されていることもあり、
同じハートリーフ名で販売されるorbifoliaとも良く混同されます。
polyanthemosはorbifoliaに比べると
葉の葉脈がハッキリしています。
またorbifoliaは横広の葉になるようなこと絶対にありません。
※polyanthemosとorbifoliaの識別についてはこちらで詳しく紹介しています。
このssp. vestitaと、原種のssp. polyanthemosは、
苗木の間の大きな差はほとんどなく、
全てが個体差で補われてしまう程度の差なので、
私にも完璧な識別はできないほどに良く似ています。
もし、誰かが、
「これはssp. polyanthemosですか?ssp. vestitaですか?」
と苗を実際に持ってこられたとします。
私も恐らくプロの方でも、
「恐らくこれはこちらの可能性が高いです。」
という程度の判断しかできないでしょう。
それでも敢えて、苗木の間に、
ssp. vestitaとssp. polyanthemosを比較するならば、
ある程度成長してからの葉の形状で判断します。
まず下の写真はssp. polyanthemosの葉の写真です。
ssp. polyanthemosでは、
ある程度の樹高になってくると、
葉が特に横広になってくるという特徴があります。
また、葉柄(葉と幹をつなぐ部分)から
葉が90°に近い程の横方向に広がるというのが
ssp. polyanthemosの大きな特徴です。
その他では、かなり大葉になる傾向も強いです。
次にssp. vestitaの葉の写真です。
ssp. vestitaでは、葉が横に広がる際に、
原種のように、葉柄から90°に広がるのではなく、
斜めに広がっていく傾向があります。
そのため、葉は全体的に丸みを帯びており、
よりハートリーフに近い形状に見えます。
またサイズが若干小ぶりになることも多いようです。
その他では、葉や茎が原種よりも
白く粉を吹く性質が強くなっているようです。
ただし、これは個体差で変わってくる程度の差で、
この特徴だけで完璧な識別はできません。
この2種を識別する際に
最も大きな差が出るのは、その樹皮です。
まずssp. polyanthemosの樹皮です。
毛羽立った樹皮が今にも剥けそうです。
そして、木の上部になるほど、
徐々に樹皮が剥けていき、
白く美しい木肌が現れています。
次にssp. vestitaの樹皮です。
ssp. polyanthemosに比べると
幾分スムーズで落ち着いています。
ssp. polyanthemosのように激しく剥けることはなく、
木の上部までしっかりと樹皮に覆われています。
このように樹皮で見分けるのが
最も良い識別方法となっています。
ssp. vestitaは、ssp. polyanthemosと同じように、
20m程度の中規模の樹木に育ちます。
地植えをしたいという方も多くいらっしゃいますが、
広い庭があるならば不可能ではないという感じです。
かなり小まめに剪定を行ってサイズを調整しないと、
簡単に家の2階を超えてしまうことになります。
ほぼ全てがTree(木立型)になる原種に対して、
ssp. vestitaは、Mallee(灌木型)に成長する個体が多いようです。
その性質から、ssp. vestitaは、原種よりも遥かに、
脇芽を出しやすい性質を強く持っています。
比較的涼しい季節に成長するgunniiなどと比べると、
かなり温度の高くなる季節に大きく成長する品種です。
環境さえ合えば、成長力は旺盛な方ですから、
小まめな摘芯を心がけてください。
もしポポラスベリーのために開花を目指す場合には、
最低でも2m以上の樹高にまで育てる必要があると思います。
ssp. vestitaの生息地は、原種のssp. polyanthemosよりも、
さらに南、Victoria州のほぼ全域となっており、
globulus ssp. bicostataなどと同じ地域なので、
比較的日本でも育てやすいユーカリの代表格です。
ただ砂利土の多い土壌を好んで生息するため、
cinereaなどに比べると、より排水性の高い用土を好みます。
水はけの悪い用土や過湿には少し弱いところがあり、
根腐れには注意が必要な品種です。
川砂や軽石などを配合した乾燥力の高い用土を使用しましょう。
また、西AZのユーカリ程ではありませんが、
東AZのユーカリの中では、中々の水切れ耐性を持っています。
ユーカリの中でも特に日光の好きな品種で、
日光に当てれば当てる程、どんどんと元気に成長します。
分厚く元気に育った葉は、
真夏の直射日光でも葉焼けするようなことはありません。
ssp. vestitaは、
半日陰でもそこそこ育つ原種と比べると、
若干、耐陰性が弱く、日照が足りないと、
貧弱な葉ばかりを生成します。
このような葉はすぐに
うどんこ病などの被害にあうことになります。
また、高い空中湿度もあまり得意ではないらしく、
風通しの悪い場所や湿気のこもった場所で育てると、
褐斑病の症状が出ることもあります。
ssp. vestitaは、原種と比べると、
少しデリケートな性質を持っているといえます。
耐寒性については、cinereaやpulverulentaなどの
同じ地域に生息するユーカリに比べると高い方ではありませんが、
それでも-7℃程度までは耐えることができます。
英名のRed Boxが表しているように、
非常に寒さの厳しい環境では、
冬に真っ赤なモミジのような色に紅葉します。
この紅葉もpolyanthemosの冬の醍醐味といえます。
我が家では、毎年寒さが足らずに全く紅葉することはありません。
おそらく、置き場所の都合で寒風を防げるためかもしれません。
polyanthemosの葉は、
苗のうちは緑色の強い葉色をしていますが、
大きくなるに従って白銀色が強くなり、
ブルーグレイの葉色になっていきます。
特にこのssp. vestitaは、
葉の白銀色が強くなる性質を持っているため、
その葉はとても美しく魅力的です。
気になるpolyanthemosの香りですが、
ssp. vestitaと原種での香りの違いはありません。
シネオール系の香りをベースに、
少しミント様の甘く爽快な香りを感じます。
シネオールがガツンとくるcinereaなどよりも、
かなり親しみやすく、魅力的な良い香りです。
ところが、葉が肉厚でしっかりしているため、
葉を強く指でこすったり、
葉を千切ったときにほのかに香る程度です。
比較的、良い香りではありますが、
あまり香りを楽しむユーカリとはいえません。
polyanthemosは人気があり、良く知られているユーカリです。
近所のオシャレなケーキ屋さんの入口にも置いてありました。
ところがgunniiなどと比べると、
売っているところはあまり多くありません。
特に、原種ではなく、このssp. vestita指定となると、
タネからしっかりと品種管理をしているような
コアなショップから購入するしかありません。
※ssp. vestitaのタネは入手が中々困難なのです。
ポポラスで、どうしてもssp. vestitaが欲しい!
という方には素晴らしい農場をご紹介します。
特にオススメです。是非、育ててみてくださいね^^
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<栽培難易度:B>
香良さ:★★★
香強さ:★★
成長力:★★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-02-21 14:48 | ユーカリ紹介
ユーカリ育成ブログです。タネを輸入して150種以上のユーカリを育てています。 By eucalyptus_k
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