【ユーカリ紹介-57】
ユーカリ・ポリブラクテア (Eucalyptus polybractea)続きまして第57回目は
ブルーグレーの糸葉が美しく、
高級ユーカリ精油のCT1/CT2を産出する元となる
ユーカリ・ポリブラクテアです。
◎ユーカリ・ポリブラクテア
【学名:Eucalyptus polybractea】
【英名:Blue Mallee / Blue-leaved Mallee】
私には精油に関する知識はあまりありませんが、
このpolybracteaは、高価で貴重な精油である、
CT1/CT2という精油を産出できるユーカリとして有名です。
実は精油が有名だからということで、
育てようと思ったわけではなく、
ブルーグレーの糸葉が面白いなと思って、
育て始めることになっています。
育て始めてから、少しアロマを齧った知人から、
polybracteaは精油が有名だよという話を聞いて、
初めてその事実を知ったという次第になります。
精油はその手の人の間ではとても有名なようですが、
栽培するためのユーカリとしては、非常にマイナーで
日本で売っているのを見かけたことはありません。
上の写真で見るpolybracteaの葉は
深緑が映えて、青々とした葉色をしていますが、
ふんだんに日光に当てて育てることで、
パッと見は、美しい白銀色にも見えるような、
白みの強い、ブルーグレイの葉色になります。
糸葉といえる程に細い葉を持つpolybracteaですが、
糸葉で有名なviridisやnicholiiのような
均等に細長く伸びる糸葉ではなく、
camaldulensisなどの細長い槍型の葉を
さらにそのまま引き延ばしたような形をしています。
アロマ界では有名なpolybracteaですが、
その生息域は非常に限られた狭い地域になっています。
ニューサウスウェールズ州やビクトリア州の
内陸部の一部の地域にのみ自生しており、
内陸出身のユーカリのため、東AZのユーカリの中では、
比較的乾燥を好む品種であるといえます。
また、このpolybracteaは、
オーストラリアに入植が始まった初期に発見され、
それから、その精油の効能などが注目され続けているという
少し長い歴史を持つユーカリなのです。
ユーカリの中では、8m程度とかなり小型で、
Mallee(灌木型)としての性質がとても強いユーカリです。
そのため、栽培しているほとんどの株で、
非常に株元からたくさん脇芽を出しまくるという特徴が見られます。
家のようなスペースの限られたベランダでは、
常に株元から新芽を出し続けながら、
どんどんと幅を広げていくので、
とても置き場所に困るユーカリの一つです。
ところが、ブッシュ状に育つユーカリとは明らかに異なり、
しっかりと幹を伸ばしていくのもpolybracteaの特徴です。
真っ直ぐにしっかりと主幹を伸ばしていきつつも
株元のLigno-tuberからたくさんの脇芽を出すので、
他のユーカリとは一風変わった外観へと育ちます。
写真のpolybracteaは、
まだ育て始めて間もないときのものなので、
どんどんと幹を伸ばしている最中ですが、
今年は逆に幹の高さをほとんど伸ばすことがなく、
株元から非常にたくさんの脇芽を出して、
樹形はさながらダルマのような形になっています。
実は学名のpolybracteaの意味ですが、
たくさんの包葉という意味になります。
これは2つ上の写真を見ていただくとわかりますが、
polybracteaを初めとする細葉のユーカリの多くは、
新芽が包まれたような形状をしており、
polybracteaの、この非常にたくさん脇芽を出す性質から
名づけられたようです。
polybracteaの育て方についてですが、
東AZの中では、比較的乾燥を好む部類で、
葉形も生息地も近いviridisと良く似ています。
厳密には、比較的強健なviridisと比べると、
若干、過湿には弱く、デリケートだともいえます。
ただし、西AZのユーカリなどと比べると、
遥かに強健で育てやすく、
どちらかというと、あまり手をかけなくても、
勝手に育ってくれるようなユーカリです。
用土の排水性さえしっかりと確保できれば、
viminalisやsideroxylonなどと
ほぼ同じような管理で育てられると思います。
polybracteaの成長力もviridisと同じようなもので、
決して遅いというわけではありませんが、
激しすぎるというわけでもないという感じです。
とにかく、polybracteaは、
あらゆる育て方の特徴が非常に平均的で、
特に特記すべき栽培のポイントが見つかりません。
敢えて一つポイントとして挙げるのであれば、
特に日光が好きな品種であるということです。
日照の良い場所と悪い場所で、
それぞれpolybracteaを育ててみると、
葉色から葉の硬さ、成長力、強健さ全てにおいて、
とても大きく差の出るユーカリであることがわかります。
前述したように、ふんだんに直射日光を浴びた株は、
葉色が白みの強いブルーグレイとなり、
とてもしっかりとした硬い葉へと成長します。
もちろんこのような株は、成長も激しく、病気知らずです。
ところが、我が家のように、
日照がイマイチな場所で育てると、
葉は深い青緑色でダークブルーといったような葉色となり、
葉の硬さも、いつまで経っても柔らかいままです。
また成長もかなり遅くなります。
精油の成分に起因しているのかはわかりませんが、
それでも、ハダニやその他害虫の
被害が出ることはほとんどありません。
ところが、そのような貧弱な葉には、
我が家のユーカリの中でもトップクラスに酷い
うどんこ病の症状が毎年多発します。
最近は我が家の全てのユーカリの樹高が
メートル級になってきたこともあって、
うどんこ病被害は年々減少しているのですが、
polybracteaには依然として、悲惨なほどの被害が出ます。
polybracteaのメインの成長時期は、
viridisやpolyanthemosなどと同じように、
春と秋の比較的暖かくなってからの季節ですが、
夏場の暑さや直射日光にも耐えることができ、
高温障害などの症状が出ることもありません。
ところが、比較的乾燥を好む性質を持っている癖に、
水切れにはあまり強くないというところがあります。
夏場や春と秋のメインの成長時期には、
水遣りをちょっと忘れていると、いきなり水切れになります。
葉が細いために、葉に枯れが出るのも早いので、
水遣りには少し注意が必要になってきます。
私もうっかりして、過去に何度も水切れを出し、
今は何とか全てが復活していますが、
ほとんどの葉が枯れてしまったこともあります。
とにかくふんだんに日光にさえ当てていれば、
とても育てやすく、勝手にたくさん脇芽を出して、
こんもりと育ってくれるユーカリです。
気になるpolybracteaの耐寒性ですが、
東AZのユーカリの中では、あまり強くない方で、
-7℃程度までといわれています。
ただし大阪の冬くらいでは問題ありません。
特に大きく紅葉することもなく、
大きな葉痛みが起こることは稀です。
ただし、葉が細く、小さな間は少し柔らかいので、
幼い苗が急な霜や寒波を食らうと、
ヘロヘロになってヘタることもあります。
また、用土凍結にも弱く、
用土が凍結した際に少し危なくなった経験があります。
ただし、どれも25cm以下の小さな苗の話で、
我が家の80cmを超えたpolybracteaであれば、
-5℃近くまで下がっても、特に大きなダメージはありません。
冬場はほとんど水を吸わなくなりますので、
西AZのユーカリ並みに乾燥気味に管理することで、
耐寒性も上がり、頻繁な用土凍結も防げることと思います。
さて、ユーカリ精油の王者的存在の
精油を産出できるpolybracteaの香りですが、
武骨なまでにシネオール一辺倒の香りです。
例えば、シネオール含有量の多いユーカリといえば、
他にviminalisやglobulus、smithiiなどが挙げられますが、
これらのユーカリは、シネオール分を豊富に含むとともに、
香水系や柑橘系の香りがする成分も同時に含んでいるため、
スーッとしながらも、とても爽やかな香りがします。
ところがpolybracteaは、
90%以上のシネオール純度を誇るCT1の精油からもわかるように、
非常にシネオールの含有量が高いユーカリです。
他には、CT2精油の目玉となっている、
クリプトンという希少な成分なども含まれていますが、
polybracteaに含まれている成分は
そのほとんどがシネオールなのです。
そのため、polybracteaの香りは、
アロマ用のハーブというよりは、
明らかに薬用といったような香りがします。
スッとして爽快ではありますが、
恐らくかなり生臭く感じると思います。
残念ながら、香りを楽しむハーブとしては
少し無理がありますが、その効能から、
様々なことに利用できると思います。
毎年、我が家のpolybracteaは
酷いうどんこ病の症状に悩まされていますが、
それでもさほど成長には影響がないようで、
強健で安心して育てられています。
そのため、日照等がイマイチの場所に置いてあり、
葉色がとても濃い緑色になっています。
次年度は余裕があれば、もっと良い場所に移して、
そのブルーグレーの葉色を楽しみたいと思っています。
糸葉ユーカリが好きで、
さらに少し銀葉寄りの葉色が好きなら、
薬用効果も高いpolybracteaはオススメです。
日本ではとてもマイナーなpolybracteaですが、
確か親愛なるこあら師匠の農場に
いくつか在庫があるのではないかと思います。
豊富な日光さえ確保できるのであれば、
とても強健となり、育てやすく
容易に美しい葉が楽しめるはずです。
CT1/CT2の精油が好きな人も
その元となるpolybracteaを
ぜひ一度育ててみてはいかがでしょうか。
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<栽培難易度:B>
香良さ:★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-12-26 13:38 | ユーカリ紹介
ユーカリ育成ブログです。タネを輸入して150種以上のユーカリを育てています。 By eucalyptus_k
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