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識別しにくいユーカリ(3)~Eucalyptus globulus~

続いて今回はglobulusの亜種間の識別についてです。
始めに、globulusの苗木時点での
確実な識別のポイントはほぼ皆無です。
また、葉や茎の形状にも大きな差はありません。
Gunnii以上に見た目による識別は不可能といえます。

ここで、いきなり結論になってしまいますが、
蕾と実の形状、サイズを比較することで、
ほぼ確実な識別が可能になります。


ただ、かなり大きな樹木になるglobulus
蕾や実ができるまで育てるとなると、
それ相応の大きさにまで育て上げる必要があります。
これは一般のご家庭では非常に困難なことです。

まず、globulusで学術的に認められている亜種は下記の4種です。
---------------------------------------------------------
●Eucalyptus globulus ssp. globulus
●Eucalyptus globulus ssp. bicostata
●Eucalyptus globulus ssp. maidenii
●Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus

---------------------------------------------------------
これとは別に var. compactaという変種が存在しますが、
これはssp. globulusの小型種で、
最終的な樹高がssp. globulusより小さくなるというだけで、
その他はssp. globulusと全く変わらないため今回は割愛します。

この中で敢えて一番外観で差があるとすれば
ssp. maideniiでしょうか。あくまでも"敢えて"ですが。。。

ssp. maideniiは他の品種に比べると、
少し葉の幅が広く、丸みを帯びる傾向があります。
下の写真はssp. globulusですが葉は平均的に細長いです。

fancybox記事134の画像1

そして下の写真がssp. maideniiです。
少し葉が幅広く丸みを帯びているのがわかるでしょうか。

fancybox記事134の画像2

この他にもカーブのある細長い葉が生じることもあります。
ただしこれらはあくまでも傾向であって、
個体差がこれを上回ることもあり得ます。
たくさんglobulusを見てきた人ならば、
自信を持って識別できるかもしれません。

ssp. maidenii以外の3種は見た目が非常に良く似ています。
いくつかの傾向はありますが、
これだけでパッとみて識別することは困難でしょう。

それではまずglobulus各亜種の写真を見てみます。
ssp. globulus
fancybox記事134の画像3

ssp. bicostata
fancybox記事134の画像4

ssp. maidenii
fancybox記事134の画像5

ssp. pseudoglobulus
fancybox記事134の画像6

写真からその差は全くわかりません。
実際に私も全種育てていますが、
見た目の差はほとんどわかりません。

それでは次にglobulus各亜種の特徴を並べてみます。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の緑色が濃くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは弱い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である


ssp. bicostata
1. 4種の中では最も小さめの葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではかなりssp. globulusと良く似ている
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉は比較的幅が狭く細長く育つ傾向が強い


ssp. maidenii
1. 極端に細長い葉と丸みを帯びた葉が生じる傾向が強い
2. 4種の中では最も葉の白色が強くなる傾向が強い
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラはほぼない
4. 極端に細長い葉では葉のカーブが生じることがある


ssp. pseudoglobulus
1. 4種の中ではssp. globulusに次いで大葉に育つ傾向が強い
2. 4種の中ではssp. globulusとほとんど大差がない
3. 茎は四角形もしくはウイング型で表面のザラザラは強い
4. 葉の長さと幅のバランスは平均的である


これを見ていただくと、
本当に決定的な差のないことが良くわかると思います。

次に樹木時点での特徴を並べてみます。
決定的な識別のポイントである蕾と実については、
ここでは省いて、詳しくは後述します。

-樹木時点-
ssp. globulus
1. 4種の中では最も大木に育つ(70m以上)
2. 4種の中では最も小さな葉に育つ傾向が強い
3. タスマニア島に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける


ssp. bicostata
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では圧倒的な大葉に育つ傾向が強い
3. ビクトリア州東部を中心に生息している
4. 樹皮がリボン状に激しく剥ける


ssp. maidenii
1. 50m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ニューサウスウェールズ州南部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある


ssp. pseudoglobulus
1. 45m前後の大木に育つ
2. 4種の中では平均的な葉の大きさで育つ傾向が強い
3. ビクトリア州南東部の沿岸部に生息
4. 樹皮がリボン状に剥けることがたまにある


ここでもほぼ明確な識別は不可能ですね。
ただ、成長後のサイズや
生息地には大きな差があることがわかります。
-------------------------------------------------------------

それでは最も有力な識別のポイントとなる、
蕾や実についてのデータを見ていきます。
-------------------------------------------------------------
見所は下記の4ポイントです。
こちらに着目して見ていきましょう。
1. 蕾と実の大きさ
2. 蕾と実の表面が白く粉を吹いているかどうか
3. 蕾と枝を結ぶ部分のサイズ

fancybox記事134の画像7
4. 蕾は何個セットで生じるか

ssp. globulus
実の幅は1.4~2.7cm、長さは1~1.5cmと最も大きいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。
fancybox記事134の画像8

fancybox記事134の画像9

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように単独で生じます。

fancybox記事134の画像10

ssp. bicostata
実の幅は1~2cm、長さは0.7~1cmと明らかに小さいです。
また、白く粉を吹いているのも特徴です。
蕾と枝を結ぶ部分はほぼ存在しません。

fancybox記事134の画像11

fancybox記事134の画像12

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。

fancybox記事134の画像13

ssp. maidenii
実の幅は0.6~1cm、長さは0.5~1.1cmと小さく少し縦長です。
また、あまり白く粉を吹いていないことも特徴です。
写真ではわかりにくいですが、
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。

fancybox記事134の画像14

fancybox記事134の画像15

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように7個セットで生じます。

fancybox記事134の画像16

ssp. pseudoglobulus
実の幅は0.9~1.3cm、長さは0.6~0.8cmとかなり小さいです。
また、ほとんど白く粉を吹くことはありません
蕾と枝を結ぶ部分の長さが0.3~0.8cmほどあります。

fancybox記事134の画像17

fancybox記事134の画像18

そして大きな特徴として、
蕾は下の写真のように3個セットで生じます。

fancybox記事134の画像19

総合的にssp. bicostataと被る部分がありますが、
明らかに蕾と実の形状と色が異なっていると思います。
-------------------------------------------------------------

このデータを元にして蕾と実の比較を行えば、
比較的容易に識別ができると思います。
実際、プロもglobulusの識別は必ず蕾と実で行います。

でも、初めに書いたように、
globulusを実がなるまでに大きく育て上げるのは、
日本の一般のご家庭では非常に困難なことです。
もし、globulusをしっかりと品種で管理したいのであれば、
タネの時点から識別されたものを購入して育てるか、
亜種で管理しているところから苗を購入するしかありません。

まあ、苗木時点ではどれも良く似ていますから、
鉢植えで管理する場合には、
あまり気にする必要はないのかもしれませんね。

個人的には香りや精油重視ならssp. globulus
コンパクトで育てやすいならssp. bicostata
外観の美しさ重視ならssp. maideniiをオススメします。

ssp. pseudoglobulusはかなりマイナーなので、
タネを見つけることさえ大変なほどです。
現状タネを手に入れる手段はほとんどありません。

それでは最後にglobulusの名前の由来と、
各亜種の名前の由来で締めくくりたいと思います。

---------------------------------------------------
学名globulusはBall(球)に由来しています。
その実の形状がBallに似ているからです。

Bicostataは二つのうね・脈の意味です。
実に二本の段(脈)があるためです。

Maideniiは本種を発見したMaiden氏に由来しています。

pseudoglobulusglobulusに似ているの意味です。
ssp. globulusに良く似ていますが、
蕾と実が決定的に異なるため、別種であるということです。
---------------------------------------------------

# by eucalyptus_k | 2011-02-22 01:20 | ユーカリ(品種知識)
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識別しにくいユーカリ(2)~Eucalyptus gunnii~

第一回の~はじめに~を何気なく書いて、
そこからすぐに「止めようか?」という壁にぶち当たりました。
何故かというと、このgunniiの識別は、
おそらく全ユーカリ中で最も困難になると思われたからです。

今回は当ブログを書いている中で
最も時間と労力を費やしました。
読んだ資料は10点を超え(全て英語です。。。)、
問い合わせた現地の栽培者や研究者は5名以上。
それでも確固たる結論は出ていませんが、
とりあえず今の時点で分かったことを書いていきます。

今後も引き続き、研究は続けていきます。
そして分かったことは必ずこちらに書いていきたいと思います。

まず、gunniiで学術的に認められている亜種は下記の3種です。
---------------------------------------------
Eucalyptus gunnii ssp. gunnii
Eucalyptus gunnii ssp. archeri
Eucalyptus gunnii ssp. divaricata
---------------------------------------------
この中のssp. divaricataですが、
これは英語のDivaricate(分岐する)から来ており、
ssp. gunniiから分岐して
新しく分類された品種という意味です。

ここで一つとても厄介なことがあります。
学説によってはこのssp. divaricata
ssp. gunniiと完全に同種とみなすこともあるのです。

まあそれだけ良く似ているということで、
資料や情報も格段に少なくなってしまいます。
もちろん、今回はssp. divaricata
完全に別種として考えていきます。

このssp. divaricataは絶滅危惧種に指定されており、
恐ろしく狭い、超限られた地域にのみ自生しています。
もし、興味があったらGoogle Mapで調べてみてください。

タスマニア島のMienaという町付近に
Shannon Lagoonという周囲7km程度の小さな湖があります。
ssp. divaricataはこの湖の周囲にのみ
わずかな数だけ自生しています。

周囲7kmというと富士五湖の中で
最小の精進湖と同じくらいの湖です。
ということはssp. divaricataは、例えばヒノキに例えるならば、
精進湖の周囲にのみわずかに生息しているヒノキのみを
別種として認定しているのに等しいということになります。

通常であれば、このような限定された品種を
私がタネを入手して育てたり、
苗をホームセンター等で購入することなどあり得ないことです。

でも、そこらへんのホームセンターで売っているんです!
タネも現地の種屋であればどこでも扱っています。
アメリカやヨーロッパでgunniiといえば、
十中八九はこのssp. divaricataのことです。

なぜここまで、このssp. divaricata
メジャーになったのでしょうか?
それは、フラワーアレンジなどに向く品種だと目をつけた
ヨーロッパの栽培者が現地でタネを手に入れて持ち帰ったそうです。
そして、その美しい外観と強健でコンパクトに育つ性質が人気で、
またたく間に世界中でgunniiの園芸品種として広まったようです。

こんなに簡単に広がる品種が何故絶滅の危機にあるのか?
それはこの強健なssp. divaricataには、
水切れにだけは非常に弱いという弱点があるためです。
1990年頃から生息地の雨量が減少し、干ばつが続いた結果、
多くのssp. divaricataが枯死してその数を減らしました。

まずはssp. divaricataに関する
これらの情報を押さえた上で識別へと進みたいと思います。

gunniiの識別は単純に3種を比較することは不可能です。
まずは第一段階の比較として、
ssp. divaricataか?それ以外の2種か?という識別を行います。

早速ssp. divaricataの写真を見ていきましょう。
fancybox記事133の画像1

fancybox記事133の画像2

fancybox記事133の画像3

以下の写真は私のところで育てているものです。
まずは比較的幼い苗の写真です。

fancybox記事133の画像4

そして次はかなり調子良く成長した苗です。

fancybox記事133の画像5

遺伝子的にはgunniiUrnigeraの間に位置するようなので、
葉がかなり綺麗な白銀水色をしていて、
色だけで見るとCinerea(銀丸葉ユーカリ)のようです。

次にssp. divaricataの特徴です。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
1. 葉や茎は非常に強く粉を吹き、白銀水色になる
2. 葉が楕円よりもかなり丸くなる傾向が強い
3. 大きく育っても葉は比較的小さ目の傾向が強い
4. 茎のザラザラは成長後、早い段階で消えてなくなる。
5. 茎は四角型と丸型が等しく発生する
6. 葉先が尖らずに丸くなる傾向が強い
7. 対に付いた葉同士の茎との接点は重なりやすい
8. 非常に脇芽が出やすく、こんもり育つ


正直、非常に曖昧ではありますが、
これが苗時点での特に大きな識別のポイントです。
とにかくgunniiをたくさん見てください。
そうすれば、何とか識別が可能になると思います。
一番大きなポイントは1と2です。

-樹木時点-
1. 蕾・実は非常に白色が強くなる
fancybox記事133の画像6
2. 実の形はツボ型になる
3. 12m~15m程度の低木に育つ
4. 大きく成長してからの葉は白色が強い
5. 木立ち(Tree)型に育つ

fancybox記事133の画像7

-その他
1. 香りはシネオールを含まず、柑橘系が強い
2. 耐寒性は非常に強い(-18℃以上)
3. 水切れに弱い
4. Shannon Lagoon周辺の限られた地域にのみ生息


他の2種はここまで白い蕾をしていません。
これは大きな識別のポイントですね。
ちなみにssp. gunniiはもっと大きな木へと育ち、
ssp. archeriは灌木型(Mallee)に育ちます。
-------------------------------------------------------------

次に第二段階の比較として、
ssp. gunniiか?ssp. archeriか?という識別を行います。
結論ですが、この識別は葉や茎などからはほぼ不可能です。。。

まずはssp. gunniiの写真を見ていきましょう。
fancybox記事133の画像8

fancybox記事133の画像9

fancybox記事133の画像10

成長するごとに葉は白くなっていきます。
ssp. divaricataに比べると葉は大きく楕円形をしています。

次は私のところで育てている苗です。
少し寒さで痛んで赤くなっています。

fancybox記事133の画像11

fancybox記事133の画像12

ssp. gunniiの特徴です。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
1. 葉は新芽・下葉ともに白く粉を吹いたように成長する
2. 茎も比較的白く育つ傾向が強い
3. 茎のザラザラは成長後、早い段階で消えてなくなる。
4. 茎は四角型の場合もあるが、丸型になる傾向が強い
5. 葉先が尖らずに丸くなる傾向が強い
6. 対に付いた葉同士の茎との接点は重なりやすい


-樹木時点-
1. 蕾は少しだけ白くなる
fancybox記事133の画像13
2. 実は白く粉を吹いたようになる
3. 実の形はツボ形になる
fancybox記事133の画像14
4. 25m以上の大木に成長し、3種の中では最も大きくなる
5. 大きく成長してからの葉は白色が強い
6. 木立ち(Tree)型に育つ

fancybox記事133の画像15

-その他-
1. 香りはシネオールを微量に含み、ミント系が強い
2. 3種の中で耐寒性は最も弱く、葉が傷みやすい(-15℃)
3. 水切れに弱い
4. タスマニア島広域の湿地帯や湖・川の付近に生息

-------------------------------------------------------------

次にssp. archeriの写真を見ていきましょう。
fancybox記事133の画像16

fancybox記事133の画像17

fancybox記事133の画像18

次は私のところで育てている苗です。
少し寒さで痛んで赤くなっています。

fancybox記事133の画像19

ssp. archeriの特徴です。
-------------------------------------------------------------
-苗時点-
1. 葉は新芽が非常に白色が強く、下葉は緑色が強くなる
2. 茎は比較的緑色もしくは赤色に育つ傾向が強い
3. 茎のザラザラは成長後も長く残る
4. 茎は丸型の場合もあるが、四角型になる傾向が強い
5. 葉先が丸くならずに尖る傾向が強い
6. 対に付いた葉同士の茎との接点が重なりにくい


-樹木時点-
1. 蕾と実が白くなることはない
fancybox記事133の画像20
2. 実の形はカップ形になる
fancybox記事133の画像21
3. 10m以内の低木に育つ
4. 大きく成長してからの葉は緑色が強い
5. 灌木(Mallee)状に育つ

fancybox記事133の画像22

-その他-
1. 香りはシネオールが強く、わずかにミント系が香る
2. 耐寒性は非常に強い(-18℃以上)
3. 3種の中では最も水切れに強い
4. タスマニア島の標高1100m以上の高山に生息

-------------------------------------------------------------

いかがですか?
ハッキリいって写真では区別がつかないと思います。
苗時点では個体差が特徴を上回るため、
見た目による識別はほぼ不可能といえます。

苗を何本も見てきている現地の栽培者からも、
「苗時点では全く同じ」という回答をもらいました。

一番の識別のポイントは、
樹高、木立ちか灌木か、蕾・実の色とその形状の3つです。
ところが実際は現地の栽培者でも、
外観からの識別はほとんど行わず、
しっかりとタネから管理しているようです。。。

とにかく、苗時点でのssp. gunniissp. archeri
確実な識別方法は、今の時点では私にもわかりません。

そこでタネのルーツから考える識別です。

こんなに外観が似ているにも関わらず、
ssp. archeri「Eucalyptus Archeri」
完全に別種扱いされるほど、
gunniiから切り離されて分類されています。

よってssp. archeriのタネが
Eucalyptus gunniiとして販売されていることは
ほとんどあり得ないと考えられます。

逆にssp. gunniissp. divaricata
Eucalyptus gunniiとして
ごっちゃになっていることが多いでしょう。
寧ろヨーロッパやアメリカからgunniiのタネを買うと、
かなり高い確率でssp. divaricataのタネが来ることでしょう。

よほどマニアックでもない日本の栽培者は、
ほとんどがEucalyptus gunniiでタネを仕入れているはずですから、
ssp. archeriのタネが紛れ込む可能性は非常に低いことになります。
よって、日本で販売されているgunniiについては、
ssp. gunniiか?ssp. divaricataか?の
第一段階の識別でほぼ間に合うと考えられます。

最後に私の家にもあるvar. silverdropという園芸品種ですが、
上記全ての判別を行った結果、
ssp. gunniiでほぼ間違いないと思います。

var. silverdropという名のタネは
ヨーロッパでのみ販売されているものです。
ssp. divaricataが主流のヨーロッパでは
gunniiは完全な丸葉というのが当たり前。

逆に葉が楕円のssp. gunnii
SilverDrop(銀の雫)と特徴づけて呼んでいる。
あくまでも推測ですが、このように考えられますね。

ここまで長文を読んでいただいて
本当にありがとうございました。

一番最後は我が家自慢の
silverdropの写真で締めくくらせていただきます。

fancybox記事133の画像23

fancybox記事133の画像24

私の適職??
どんな適職診断でやっても
もちろん"学者"ですw

こんなにgunniiばっかり見ていたら、
凄くgunniiが好きになっちゃったなぁ♪

# by eucalyptus_k | 2011-02-09 05:43 | ユーカリ(品種知識)
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識別しにくいユーカリ(1)~はじめに~

ユーカリの品種識別は困難を極めます。
日本での情報が少なすぎることが一番大きな要因です。

品種間の識別であれば、
私のところではオーストラリアの学術資料を活用することで、
何とか詳しい識別ができるようになってきました。

ところが各品種には亜種・変種というものが存在します。
ユーカリの学名の後にssp.で続くのが亜種名、
var.で続くものが変種や園芸品種名です。

この亜種・変種レベルになってくると
その詳しい識別はかなり難しくなってきます。

多くの品種の場合、亜種間での特徴より
株の個体差がそれを上回ることが多いため、
100%断定できるような識別はほぼ不可能といえます。

日本では決して流通量が多くないユーカリだからこそ、
葉形や茎の形状といった見た目の特徴ではなく、
タネの入手経路等のルーツを想定した識別も
かなり有効な識別手段になってきます。

実際、日本からのタネの入手経路はかなり限られています。
例えばAという品種のタネは△と□でしか入手できないので、
△のタネの出所と□のタネの出所を詳しく調べることで
日本に流通しているA品種の詳細を知ることができるのです。

ところがよく見かけたり、よく流通している品種ほど、
亜種や変種が多く存在する傾向があり、少々厄介でもあります。

日本ではかなりメジャーなユーカリに下記の4種があります。
Eucalyptus gunnii
Eucalyptus globulus
Eucalyptus leucoxylon
Eucalyptus camaldulensis

4種ともホームセンター等で販売されていたり、
公園などでも見かけることのできる品種です。

これら4種には多くの亜種・変種が存在します。
特にcamaldulensisに至っては、
オーストラリアの各所に生息しており、
その生息地によって、種類が分けられているほどです。

今回は全4回でgunnii/globulus/leucoxylonの3種について、
その識別に関する考察を行ってみたいと思います。

camaldulensisについては、
現在識別を行うための各株を栽培するスペースや
その他の余裕がありません。
いつか可能になったときには必ず行うつもりでいます。
何卒ご理解をお願いします。

その他ではradiata/camphora/decipiensなどでも
いくつかの亜種が存在しています。
これらもいずれ必ず挑戦していくつもりでいます。

# by eucalyptus_k | 2011-02-05 18:55 | ユーカリ(品種知識)
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育てていてわかった!巷のユーカリ情報の真偽

そろそろ冬も本格的になり、
大阪でも5℃を切る寒さになってきました。

寒さに弱いと思われる品種や幼苗などは、
寒風を避けるためにホームセンターで販売されている
安価の簡易温室に入れるようにしています。

とはいえ、家のベランダは
風を通さない分厚い石壁で覆われていますから、
外気温よりプラス3℃くらいの暖かい状態になっています。
夏には日照不足を招くこの石壁も、
冬季には寒風を防ぐというありがたい役割を果たしてくれます。

冬季はユーカリの生育にストップがかかったり、
非常にスローになったりしていますので、
どうしても栽培レポート系のネタは少なくなってしまいます。

日本にはたくさんのユーカリに関する情報があふれています。
今日はその情報にズバッと鉈を入れてみたいと思います。

「ユーカリの香りは花粉症に効く」
日本で販売されているユーカリの多くはgunniiですが、
そのgunniiの説明やキャッチコピーでも良く見かけます。
花粉症に効く成分といえるのは、
厳密にはシネオールやカンファー、ピペリトンといった成分ですが、
gunniiは精油量が少なく、
これらの成分もほとんど含まれていません。
gunniiが花粉症に効くというのは明らかな過大広告ですね。
成分分析と実際に試してみた実績として有効だなと思うものは、
globulus/dives/cinerea/cordata/goniocalyx
などでしょうか。

「アップルボックスはりんごの香りがする」
「りんごを切ったような葉型なので
          アップルボックスという」

上記は全て誰かが勝手に勘違いした内容です。
bridgesiana/aromaphloia/goniocalyx
などがアップルと言われますが、
これは全て樹皮がりんごの木のようであるからです。
ユーカリの名称は樹皮、木質、花、実に起因するのがほとんどです。
アップルボックスはりんごの香りはしません!
もろシネオール系の樟脳の香りがします。
敢えてりんごの香りに近いと言ってもよいユーカリは、
grandis/glaucescensなどが考えられますね。

「レモンユーカリの耐寒性は5℃~10℃以上必要」
最近色々試してみましたが、
25cm以上の苗で鉢植えであっても、
アロエ程度(0℃以上)の管理で十分野外越冬できますね。
ただし葉は少し赤くなって痛んだりすることはあります。
耐寒性については環境もあるので一概には言えませんが、
下記のことに気をつければ耐寒性0℃でいけるように思います。
●秋の比較的暖かい間から徐々に寒さに慣らせていくこと
●夜間の水遣りは避け、用土の凍結を防止すること
●寒い風が吹き抜けるような場所は避け、軒下管理推奨

意外に寒くてもちゃんと水はそこそこ必要なんですよね。。。

「ユーカリは水切れに強い」
こあら師匠もおっしゃっていますが、
逆に水切れに強い品種は非常に少ないです。
降雨量が日本の1/6程度の環境の植物だからそう思うのでしょうね。
現地では根を深く伸ばし、豊富な地下水を激しく吸い上げています。
よって寧ろ水は大好きな品種が多いですね。
ところが「乾燥を好む」というのは大正解です。
毎日土がカラカラに乾いて、毎日欠かさず水遣りをする。
そんな用土や環境が大好きということです。
逆に土が長期間湿っているという環境は大嫌いです。

「ユーカリには肥料が効きにくい」
これは厳密には正しい部分がかなりあると思います。
日本で売られている肥料はほとんどがリン酸の多いものです。
ところがユーカリはこのリン酸をほとんど必要としません。
これはオーストラリアの土壌には
ほとんどリン酸が含まれていないことに
起因するのではないでしょうか。
逆にカリ肥料を比較的必要とするようですね。
窒素については一般的な草木と同じレベル必要とします。
特に砂漠地帯や西AZ出身の品種については、
日本の肥料を与えすぎるとリン酸に当たることがあるようです。

「ユーカリはアルカリ性の用土を好む」
これはたまに育て方などで見かけることがありますが、
95%以上のユーカリが好む用土は弱酸性~酸性の用土です。
一般的に日本で販売されている用土なら、
pHの調整は特に必要ありません。
ところが中には一部アルカリ性を好む品種もあります。
家ではMoon Lagoonなどがそうですね。
他ではアルカリ耐性のある品種もいくつか存在しますが、
アルカリ性を好むというわけではありません。

「ユーカリは根から他の植物を枯らす物質を出す」
これはよく言われていますが、
科学的にそのような事実は一切ありません。
ただユーカリは非常に根張り能力が高く吸水能力も非常に高いです。
また、用土の養分を急速に消費し、
用土を酸性にする力が非常に強いです。
一般的に寄せ植えするような花の咲く植物は、
比較的アルカリ性を好み、根張りや吸水もデリケートです。
そのため、ユーカリと一緒に寄せ植えすると
全てにおいて負けてしまって元気を失うことがあります。
ユーカリは寄せ植えにはあまり向かない植物といえます。

他にも疑問に思うような情報があれば、
私のわかる範囲で鉈を入れていきます。
お気軽にお問い合わせくださいね。

# by eucalyptus_k | 2010-12-11 22:59 | ユーカリ(品種知識)
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少し遅めのEucalyptus cephalocarpaとの出会い

今年は本当にたくさんのタネを輸入しては
それはそれは色々と播いたものです。

そんな中でどうしても出会えなかった品種がありました。
それはEucalyptus cephalocarpaです。
内容はcinereaの近似種で銀丸葉が魅力の品種です。

ところがこのユーカリ、現地でも相当マニアックなユーカリで、
昨年からずっと探し求めていたにも関わらず、
まともなタネにちゃんと出会えたのは何と昨日です!

実は現地の大手の種屋でいくつか名前を見ることはできます。
ところがほとんどの種屋では
長期に渡り品切れで入荷の目処はありません。
現在、唯一、売っている
Nindethana Seed
のタネは一切発芽しません。
(この件でNindethanaとは少し揉めています。。。)

今までcephalocarpa名で入手したタネは5件あります。
そして、その結果は下記の通りです。。。
1. Nindethana Seed...一切発芽せず(先方はタネの不備を承認済)
2. オーストラリアの種屋A...一切発芽せず
3. B&T World Seeds...一切発芽せず
(恐らく1,2あたりからの仕入れと推測)
4. フランスの種屋F...一切発芽せず
(恐らく1,2あたりからの仕入れと推測
5. オーストラリアの種屋K...別種が発芽


最後の5の種屋ですが、こちらとはかなり深い信頼関係にあります。
そのため、入手できたときには「こんどこそ!」と喜びました。
そしていざ!タネを播いてみると無事に発芽したのです。

ここで発芽した苗はしっかりと育てて、
Osakano_Jieさんを始めとする数名の方に
Eucalyptus cephalocarpaとして差し上げました。
以前にも掲載していた下の写真の品種です。

fancybox記事116の画像1

ところが最近、この品種は
cephalocarpa
ではないことがわかりました。
現在の樹高では明確な判別は不可能でしたが、
やっとのことで下記の品種に識別できました。
-----------------------------
 Eucalyptus fasciculosa
-----------------------------


ここでかなり落ち込んでほとんど諦めモードだったのですが、
1ヶ月程前から、またタネを探し始めたのです。

今まではSeed Supplier(種屋)を中心に探していました。
ところがこれではもう頭打ちだったため、
今度は直接農場やSeedbankを中心に当たることにしました。

そこでいくつかタネを持っている農場を見つけました。
ところが個人でやっているような小さなところなので、
とてもじゃないけど海外に販売などできないと断られていました。
それでもめげずに数十件ほど当たっていたところ、
今回、非常に乗り気で親切なSeedbankに出会いました。

West Gippsland Seedbankという
小さなビクトリアのSeedbankです。

fancybox記事116の画像2

こちらの方とユーカリについて非常に熱く語らいました。
そして、何とPaypalによる支払いで、
cephalocarpaのタネを売ってもらえることになりました。

現地でも非常にマニアックなタネですし、
公的なSeedbankでは、
10gが200ドルもするような事例もありました。
かなり高額になるだろうと覚悟をしていましたが、
何と、10gを6ドル、送料3ドルの合計9ドルでの販売でした。
また、どうしても日本で育ててほしいユーカリがあるんだと、
Eucalyptus crenulataのタネ5gをタダで付けてもくれました。

fancybox記事116の画像3

先方はこんな小さなSeedbankに日本から注文があったこと、
日本にこんなに熱いユーカリ話ができるやつがいたこと、
そして超マニアックなユーカリの注文があったことを非常に驚き、
職員みんなで非常にエキサイトしていると言っていました。
もちろん、日本どころか海外からの注文も初めてだったようです。
何かあったらいつでも言ってこいよと暖かい言葉を頂きました。

そのタネが今日届き、私は早速そのタネを播きました。

fancybox記事116の画像4

fancybox記事116の画像5

心から求めれば、必ず素晴らしい縁を引き寄せる。
その縁に感謝し、大切にすることで良い輪が生まれ加速する。


思えば、園芸初心者で、ユーカリのことなんか何も知らなかった私。
それは遥か昔のことではなく、わずか1~2年前のことです。
そして3年前の私は植物にさえも一切興味がなく、
道端の花さえも目にとめることができないような人間でした。

そこから、たくさんの人々との貴重な出会いがありました。
ユーカリに関しては、短いけど、
本当に内容の濃い数年だなあと振り返りました。

これからも、好きなことで良い輪が広がっていくと良いな。
そう心から思えた、少し遅めのcephalocarpaとの出会いでした。

# by eucalyptus_k | 2010-11-05 01:25 | ユーカリ(品種知識)
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