ユーカリ・ブラックテールはユーカリじゃない!?
最近巷で良く販売されている
販売名「ユーカリ・ブラックテール」という品種があります。
冬場に葉が黒葉になるということで、
学名:Eucalyptus ●● 'BLACK TAIL'といったように
まるでユーカリの変わった園芸品種のように紹介されています。
また黒葉ユーカリという名前で紹介されることもあります。
結論としまして、
このユーカリ・ブラックテールは
ユーカリではありません。
現在、学術的にユーカリとして認められているものは、
Tribe(族・連)がEucalypteaeに属するものになります。
厳密にはEucalypteaeには7属あるのですが、
大きく見ると下記の3属がユーカリということになります。
■ Eucalyptus(ユーカリ属)...多くのユーカリ
■ Corymbia(コリンビア属)...レモンユーカリなど
■ Angophora(アンゴフォラ属)...AZ北部のユーカリ
ユーカリ・ブラックテールと呼ばれる種は
厳密にはAgonis(アゴニス属)に属する植物になります。
Agonisはユーカリと同じフトモモ科に属しますが、
Tribe(族・連)はLeptospermeaeに属しています。
Agonisは日本の植物名で言うと
クンゼアやギョリュウバイと同族の植物になります。
この辺りを全てユーカリとしてしまうと、
ブラシノキもメラレウカもグアバもユーカリということになりますので、
やはりブラックテールはユーカリではないということになります。
このように市場の販売名は非常にいい加減です
再度申し上げますが
ブラックテールはユーカリではありません。
でもユーカリに近い種類ではあります。
私はAgonisについて詳しくはありませんが、
一応、現地のタネ情報を調べておきました。
もしブラックテールをお育てになりたい方は、
Agonis flexuosaをお探しください。
特に葉が黒くなるAfterdarkなる園芸品種もあるようです- # by eucalyptus_k | 2017-04-12 03:43 | ユーカリ(品種知識)
Eucalyptus glaucescensの読み方
先日、当ブログにお問い合わせをいただき、
「グラウケッセンス」と書かれたユーカリが
何かを教えて欲しいという内容でした。
お写真を拝見してすぐに
glaucescens(グラウスセンス)だと分かりました。
このユーカリは日本で登場したときに
「グラウスセンス」名で売られていたので、
私もそのまま当ブログではこの名称で掲載していますが、
少し気になったので、海外の文献を調べてみました。
学名はラテン語の「glaucescens」という単語が元で、
白くワックスを塗ったようなという意味になります。
ラテン語では主にCの音はカ行の音になりますので、
「グラウケッセンス」「グラウケスケンス」
と読む方が正しい可能性が出てきました。
現状では「グラウスセンス」という名前が
最も通っており、良く知られているので、
当ブログでは引き続きこの名称で掲載を続けますが、
正しい読み方が他にある可能性がある
ということを踏まえていきたいと思います。
他にも学名の読み方が
わかりにくいものがたくさんあります。
正直これはかなり厄介です。
勉強あるのみ...ですね。- # by eucalyptus_k | 2016-04-07 17:42 | ユーカリ(品種知識)
ユーカリの名前について
ユーカリに限らずですが、
学名・英名・和名・商品名など様々な呼び名があります。
特にユーカリの場合、
日本にはほとんど存在しない品種が多いので、
英名がそのまま和名になっているものや、
和名がそもそも存在しないものもあります。
例えば、Eucalyptus cinereaの場合、
[学名] cinerea
[英名] Silver Doller Gum / Argyle Apple / Mealy Stringybark
[和名] ギンマルバユーカリ
[商品名] シルバーダラーユーカリ etc.
といった感じになります
英名はともかくとして、和名は非常に曖昧です。
そのため、本ブログではあまり使用しないか、
「銀丸葉ユーカリことcinerea」と言ったりしています。
試しに近くのホームセンターや園芸店で
「銀丸葉ユーカリ」と注文してみてください。
恐らく十中八九、gunniiやpulverulentaが届くでしょう。
このようにユーカリの場合、
和名なんてあってないようなものです。
一部、レモンユーカリとユーカリノキだけは、
比較的日本に根付いた和名と言えます。
色々な名前が交錯すると
私でもややこしいと思う程なので、
基本当ブログでは学名を使用するようにしています。
また学名の読み方には、極力cinerea/macrocarpa等の
アルファベット表記を使用するようにしています。
この学名というのは、
ラテン語やギリシャ語を元に付けられています。
そのため、macrocarpaを
マクロカーパと読むのは間違いで、
正しくはマクロカルパという読みになります。
ただその販売者が、
これはマクロカーパという商品名なんだ!
と言い張った場合にはそれで通ってしまうので、
あくまでも正式な学名の読みが
マクロカルパということしか言えないのです。
他にはcypellocarpaというユーカリがあります。
このユーカリは当初様々な読みが交錯していました。
私も最初はシペロカルパだと思っていましたが、
サイペロカルパではないか?と言われたこともあります。
それで調べてみた結果、
ギリシャ語のカップという意味の
キペロという単語が語源になっているので、
正しくはキペロカルパということがわかりました。
他にも正しいとわかっているものでは、
[albopurpurea]
アルボパープレア ×
アルボプルプレア○
[nitens]
ナイテンス ×
ニテンス ○
などがあります。
人名や地名が元になっている品種があります。
これは一体何語で読むのが正しいのか、
正直全くわかりません。
[archeri] アーチェリー氏発見
アーチェリ? アルチェリ?
[woodwardii] ウッドワード氏発見
ウッドワルディー? ウッドワーディー?
[kybeanensis] カイビーン付近に生息
キベアネンシス? カイビーネンシス?
[lane-poolei] レーンプール氏発見
ラネプーレイ? レーンプーレイ?
こんな感じで困惑しますので、とにかく
アルファベット表記をするようにしています。
学名の語源を調べる資料自体はあるので、
一度時間があったら、
再編集してみようかなとも考えています。
ぶっちゃけ私自身も日本語読みは
間違っているものがたくさんあると思います。。。
ピックアップしてみるだけで、
[urnigera]
アーニゲラ×
恐らくウルニゲラ
[urna]
アーナ
恐らくウルナ
[orbifolia]
オービフォリア×
恐らくオルビフォリア
[campaspe]
カンパスプ×
恐らくカンパスペ
[cladocalyx]
クレイドカリックス×
恐らくクラドカリックス
[sturgissiana]
スタージシアナ×
恐らくストゥルジシアナ
などなど...トホホ...- # by eucalyptus_k | 2015-08-06 19:04 | ユーカリ(品種知識)
テトラゴナ(tetragona)2種の果実
我が家のベランダと実家には
かつてtetragonaと呼ばれていた
ユーカリが2種類あります。
一つ目はtetragona silverこと
Eucalyptus pleurocarpa、
二つ目はtetragona greenこと
Eucalyptus extricaです。
今日は実家の結実した
tetragona2種の果実を比較してみます。
まずはsilverのpleurocarpaです。
silverの名の通り実は白銀色で、
pleurocarpaの学名の通り、
実には4つの角があります。
実の先端が×字に割れてきたら
タネの収穫時になります。
うまくいけば来春くらいになるでしょうか。
次にgreenのextricaです。
greenの名の通り実は全く粉を吹かずに緑色で
形状は角がなく丸い壺のような形状です。
鉢植えでは果実をたくさん残すと
そこにエネルギーが集中するためなのか
樹勢が弱っていくようなので、
実家では実を取り除いています。
pleurocarpaについては、
結実を確認していたので
頼んで残してもらっていました。
extricaの実は
まさか結実するとは思っていなかったので、
事前に全て取り除かれていたはずでしたが、
偶然にも一つだけ残っていました。
元々この2種はtetragonaという
1つのユーカリとして認識されていました。
近年、この果実の色と形状の違いにより、
学術的に異なる2種へと分けられることになりました。
他ではその葉色や茎の色なども
それぞれの種の特徴を表しています。
pleurocarpaでは葉先が丸くなるのに対して、
extricaでは葉先が尖るというのも特徴の一つです。
タネを播いて、発芽仕立ての苗を見ると、
全く区別がつかない程に良く似ていますが、
こうしてある程度の大きさにまで育てると、
その違いは歴然としていることがわかります。
どちらも開花が非常に早く、
とても魅力的なユーカリです!- # by eucalyptus_k | 2014-11-27 16:54 | ユーカリ(品種知識)
シネレア(cinerea)とアーニゲラ(urnigera)
最近、オススメのユーカリに関する
お問い合わせが増えてきています。
やはり銀丸葉のユーカリというのは
根強い人気があります。
もちろんオススメの代表格として、
そのままの名を持つ、銀丸葉ユーカリcinereaは、
メジャーではあっても一押しのユーカリです。
そしてそのcinereaに良く似た、
美しい銀丸葉ユーカリに
urnigeraというユーカリがあります。
この2種の違いに関する説明は
文章ではなかなか難しいところがあります。
百聞は一見にしかずということで、
ちょっと写真で見比べてみたいと思います。
まずは元祖銀丸葉のcinereaです。
想像通りに銀葉が美しいです。
全体的に粉を吹いたような外観と、
新芽は少しエメラルド色に近いような色になります。
古い下葉も粘り強く粉を吹いていて、
全体的には緑色が強いような感じです。
次にurnigeraです。
楕円の葉が多いですが、
大きな真丸葉もたくさん生じてきます。
色的にはcinereaよりも青みが強く、
水色に近いような色になることが多いです。
古い下葉は粉が薄くなっていくものもありますが、
やはり青色が強く、青緑色のような感じです。
総合的に見ると、urnigeraは、
色や葉の質感(若干ザラザラ)などで、
gunniiの特徴に近くなっているように思います。
gunniiの亜種に、白みが強く、
葉の丸みが出やすいものがありますが、
個体差によっては、このgunniiの亜種と、
urnigeraの識別が難しくなることもあります。
大きく育ってからの話ですが、
どちらも白銀の槍型葉になるところは同じです。
ただcinereaは20m弱くらいにまで育ち、
樹皮は赤茶色の毛羽立った質感になりますが、
urnigeraは、15m以下くらいの樹高で、
樹皮は激しく剥けて、白みの強いものになります。
またTree(木立型)の性質が強いcinereaに対して、
urnigeraはMallee(灌木型)の性質も強く、
urnigeraの方が脇芽をたくさん出すことが多いです。
育て方については、cinereaの方が湿潤を好み、
urnigeraの方が乾燥を好み、日照が重要となります。
日照の良い場所で育てる場合には、
どちらも比較的楽に育てられると思います。
どちらも非常に銀葉の美しい、
オススメのユーカリです!
urnigeraはレア度が高いユーカリですが、
今なら購入できる農場があります。
最後に番外編としてmacrocarpaです。
丸葉ではありませんが、
これも際立って銀葉が美しいユーカリです!- # by eucalyptus_k | 2014-05-19 16:50 | ユーカリ(品種知識)