ユーカリの幹が太らない?
最近、「ユーカリの幹が太らない!」
というお問い合わせをいくつかいただいています。
確かに私もたくさんユーカリを育てていますが
支柱をせずに自立するようなユーカリは
本当にわずかしかありません。
この理由はいくつか考えられますが、
まずほとんどのユーカリは
かなりの大型樹木であるということがあります。
特に日本で良く見かけるユーカリは
どれも大きくなるものばかりです。
gunnii(グニー)...25m程度
globulus(グロブルス)...45~70m超
polyanthemos(ポポラス)...20m程度
cinerea(銀丸葉)...20m程度
citriodora(レモン)...50m程度
bridgesiana(アップルボックス)...25m程度
どれも家の2階なんて
簡単に超えてしまうようなサイズですね。
良く聞くのが、2~3mでも
幹が一向に太らないというお話ですが、
これらのユーカリにとって、
2~3mなんてまだまだ子供で、
苗木レベルでしかないということになります。
サクラなどの植樹を思い浮かべていただくとわかりますが、
数メートル程度の苗木はそれはそれはヒョロヒョロで
どれもしっかりと支柱や添え木がされていると思います。
丁度これと全く同じ状態になるのです。
幹を早く太らせるためには
環境やその他様々な要因も絡んでくると思いますが、
樹木は先に背丈を伸ばそうとする性質が強いので、
相応に年月をかけて太らせていくものだとご認識ください。
だって、考えてもみてください。
ユーカリ自体は、20m以上の高い樹高を目指して、
どんどん枝や葉を出して樹高を伸ばそうと頑張っているのに、
わずか2~3mで新芽を摘まれたり、
剪定で樹高を抑えられてしまうので
幹を太らせる余裕なんて中々ないというわけです。
おまけにそれが鉢植えだったり、
いくら地植えでも、根を伸ばせば
すぐに家の基礎や壁、他の植物の根があるような場所では、
なかなか根も満足に伸ばせないので、
もちろん幹を太らせる力も満足に出せないのです。
gunniiは先述した通り25m級のユーカリですが、
良くご近所のお庭に植わっているgunniiは
25mになっているものなんてほとんどないと思います。
恐らく、樹高は2~4m程度で止まり、
幹もとても細くヒョロヒョロしていると思います。
これは上記の要因の通り、小まめな剪定のたまものでもあり、
日本の庭がどうしても狭いという事情によるものでもあります。
試しに広い畑の真ん中にgunniiを地植えした人がいますが、
何も邪魔をするものもなく、ふんだんに根を伸ばすことができ、
日光もガンガン浴びることのできるそんなベストな環境では、
3年程度の短期間で簡単に電信柱を超えたそうです。
もちろんこのような株は幹も早く太ります。
ソースは忘れてしまいましたが
大型樹木の成長の変遷として、
樹高を伸ばす→葉を茂らす→幹を太らす
という大まかな順序があったかと思います。
そのため、大きな樹木であるユーカリは
まず樹高を伸ばすことに必死で
幹を太らすのは後回しになるというわけですね。
5年前に近所で見つけた地植えのgunniiがあります。
その当時このgunniiは良く見かける通りヒョロヒョロで
それはそれは頼りない印象がありました。
そのお宅は植木屋さんの親戚がいるので、
毎シーズン見事に剪定を行っており、
いつ見ても3m程度の樹高に収まっていました。
そして5年が経過して、先日見たそのgunniiは
樹高は5年前と全く同じく3m程度で収まっていましたが、
幹はとても太くなり、とても立派な木になっていました。
このように、根気良く管理を続けていれば
いつかは必ず立派な幹になるものです。
あと、日本ではあまり見かけないレアなユーカリで
最高樹高が2~4m程度という品種がいくつかあります。
このようなユーカリは品種ごとの性質にもよりますが、
比較的早い段階で幹が太り、自立しやすいものが多いです。
我が家でも250cmを超えるcamaldulensisの
株元の直径はわずか1.5cm程しかありませんが、
70cmのalbidaの株元の直径は2.5cm以上、
120cmのcaesia ssp. magnaの株元の直径は4cm以上、
100cmのmacrocarpaの株元の直径も4cm以上あります。
camaldulensisは45m級の大木品種ですから、
250cmでもわずか1/18しか成長していません。
ところが、macrocarpaであれば、3m程度ですから、
既に樹高の1/3は成長しているわけです。
その他では、日本はオーストラリアよりも
かなり湿潤でジメジメしているので、
現地よりも根張りが悪くなる傾向があり、
地植えでも徒長しやすいという話もあります。
このような理由により、
多くのユーカリはちょっと幹が太りにくいのですが、
ぜひ根気よく育てていってみてください。- # by eucalyptus_k | 2013-06-10 18:13 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリの発芽と事前処理
ユーカリはオーストラリアの各所に生息し、
暑いのが好きなものから、寒いのが好きなもの、
湿潤を好むものから、乾燥を好むものまで
本当に多種多様な品種があります。
その中でも特に寒いのが好きな品種で、
高山や純高山に生息しているような品種には、
上手く発芽をさせるために、
コールドトリートメント(冷却処理)を
必要とする品種がいくつかあります。
この処理は、収穫仕立てのタネでもない限り、
大概は冷蔵庫などの中で長期保管されていますから、
全く行わなくても発芽ゼロということは滅多にありません。
私も数株程度確保できればいいので、
この処理をしっかりと行うようなことは滅多にありませんが、
商用などで、より多くを発芽させるためには、
この処理を工夫する必要がありそうです。
先年の秋口に下記のタネを播きました。
Eucalyptus kybeanensis
Eucalyptus glaucescens(Mallee)
glaucescensについては、
以前から育ててはいますが、
珍しいMallee(灌木)タイプのものが
新たに手に入ったので新しく播きました。
これらの品種は、比較的長い
コールドトリートメントを必要とする品種です。
どちらももちろん購入した時点で
収穫仕立てではないでしょうから、
そのまま何もせずに播きました。
私は5.5cmの小さなポリポットに
少しタネを播くくらいですが、
それでも発芽率の良いものであれば、
数えられないほど発芽することがあります。
上記の品種の結果としては、
kybeanensisがわずか3株、
glaucescensが4株という結果でした。
これは信じられないくらい悪い率です。
どちらも寒さにはとても強い品種なので、
そのまま屋外放置で育てながら、
冬を超えて、最近暖かくなってきてから、
そのポットの状態を見てみました。
すると!
信じられないくらいたくさん発芽しています!
恐らく、冬季屋外放置(水は切らしません)で
天然のコールドトリートメントが成立したのでしょう。
趣味で育てているような人は、
少し冷蔵庫でそのままタネを保管してから播けば、
発芽率は悪くとも、それなりに発芽するものです。
冷蔵庫でそのまま保管するという方法は
簡易コールドトリートメント
とでも言ったところでしょうか。
ところが実際の正式なコールドトリートメントは、
タネにしっかりと吸水を行いながら、
指定期間冷蔵保存するというのが正しいのです。
一例として、公開されているやり方としては、
湿らせた不織布などにタネを包み、
容器に入れて、冷蔵庫などで指定期間保管します。
不織布が乾いたら適宜湿らせていきます。
下記は一般的にトリートメントが必要とされている品種です。
確かにcoccofera/pauciflora/nitens/delegatensisなどでは、
冬を超えてから大量に発芽したということが何度もありました。
※期間は必要とされているトリートメントの期間です。
※☆のついている品種ではトリートメントの重要度は低いです。
※あくまでも一例で他にもあります。
Eucalyptus serraensis ... 6週間
Eucalyptus aggregata ... 4週間☆
Eucalyptus coccifera ... 6週間
Eucalyptus crenulata ... 6週間☆
Eucalyptus cypellocarpa ... 1週間程度☆
Eucalyptus dalrympleana ... 4週間☆
Eucalyptus delegatensis ... 8週間から冬季中
Eucalyptus glaucescens ... 6週間
Eucalyptus globulus ... 3週間☆
Eucalyptus gregsoniana ... 4週間
Eucalyptus johnstonii ... 4週間
Eucalyptus kybeanensis ... 4週間
Eucalyptus melliodora ... 3週間☆
Eucalyptus moorei ... 5週間☆
Eucalyptus nitens ... 4週間
Eucalyptus obliqua ... 4週間
Eucalyptus ovata ... 6週間
Eucalyptus pauciflora(亜種含む) ... 6週間以上
Eucalyptus perriniana ... 4週間
Eucalyptus pulverulenta ... 4週間☆
Eucalyptus radiata ... 2週間程度☆
Eucalyptus regnans ... 4週間
Eucalyptus rodwayi ... 4週間☆
Eucalyptus rubida ... 4週間☆
Eucalyptus subcrenulata ... 4週間
Eucalyptus tenuiramis ... 4週間
Eucalyptus vernicosa ... 6週間
多くの苗がちゃんと必要な人は、
コールドトリートメントを
しっかりと行った方が良さそうですが、
気長に育てている趣味レベルの人は、
秋口にタネを播いて、水を切らさないように
そのまま越冬すれば春にはたくさん発芽しているでしょう。
この真性のコールドトリートメントですが、
保管状態や場所が悪いと、
そのままタネが腐ってしまうこともあるので、
少し気をつけてくださいね。- # by eucalyptus_k | 2013-03-26 12:21 | ユーカリ(栽培知識)
今年の冬季管理からわかったこと
初めに!
非常に遅くなってしまいましたが、、、
あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いいたします!
今年はブログの機能追加と
それに関するトラブル云々に加えて、
年末年始のバタバタで、
記事の更新もままなりませんでした><;
季節は厳冬期に差し掛かろうというところですが、
今年は未だに温室を出してさえいません。
寒さに弱いユーカリを軒下に移動させたり、
後ろに下げるといったようなことも全く行っていません。
camaldulensis/robusta/melanophloia/rudisや
レモンユーカリといったような、
そこまで寒さに強くないユーカリは
既に真っ赤に紅葉しています。
ところが、
decipiens/kruseana/pleurocarpa/extrica
などの若干耐寒性に難ありの西AZのユーカリや、
耐寒性が未知数の新参のユーカリについては、
特に大きな葉痛みや、紅葉も起こっていません。
我が家で最も耐寒性に難のあるerythrocorysも、
成長が進んで、葉の毛がなくなり、
光沢のある葉へと変わったからでしょうか。
今のところ目立った痛みは出ていません。
このままいけそうな気もしているので、
今年は、まだしばらく、
温室や移動なしで行きたいと思っています。
今年の管理で、例年と大きく違うところは、ただ一つ!
ほぼ全ての株で、鉢の上からは全く水を与えていないことです。
寒さに強く、冬季の吸水もそこそこあるような、
globulus/risdoniiなどはその限りではありませんが、
特にmacrocarpaなどのユーカリでは、3~14日に1回程度、
ほんの数秒、鉢底のスリットから軽く水をかける程度です。
特に冬季の吸水が少ないユーカリにwoodwardiiがあります。
我が家のwoodwardiiは35cmくらいの樹高で、
スリットの5号鉢に植わっています。
これももちろん、鉢底のスリットからの吸水のみです。
試しに、用土全てがカラカラの状態のときに、
鉢底のスリットから5秒程度水をかけて、
そこから、鉢底のスリットから見える土が、
何日で乾くのかを実験してみました。
結果は、余裕で半月以上かかりました。
わずか5秒、鉢底から水をかけただけですから、
用土の表面は最初から最後までカラカラです。
60cmで6号鉢のkruseanaでも実験しましたが、
余裕で半月くらいは湿ったままでした。
これは、鉢底から見えるスリット付近の土だけの話ですから、
恐らく完全に水が切れて、枯れが出るまでには、
まだ何日も余裕があるものだと思います。
これらのユーカリが、
冬季はどれほど水を吸わないのかがわかります。
先年までの冬季管理では、最低でも半月に1度くらい、
鉢の表面からたっぷりと水を与えていました。
これでは正直少ないかなと思っていたのですが、
とんでもない話で、寧ろ多すぎたようですね。
今年、一切温室を使用していなくても、
ほとんど全てのユーカリに痛みがないのは、
この吸水量の調整の恩恵なのかもしれません。
吸水を減らし、乾燥気味に管理することで、
大幅に耐寒性を上げることができる。
この言葉の意味をようやく体感できた気がします。
一方で、冬季にこれらのユーカリを
常時、雨の当たる場所で管理するというのは
ちょっと難しいことなのかもしれません。。。- # by eucalyptus_k | 2013-01-05 19:38 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリのpHと鉄分欠乏症について
今朝何気なく、現地の栽培ガイドを見ていたところ、
ユーカリは比較的pHに敏感なところがあり、
それを起因とした鉄分欠乏症になりやすいという情報がありました。
これは品種により様々で、
中にはアルカリ寄りのpHを好むユーカリも存在しますが、
細かく分析するのは厄介なので、
基本的には下記のpHで統一して栽培するのがベターだそうです。
弱酸性:pH 5.5 - 6.4
これはアルカリ寄りを好むユーカリであっても、
酸性寄りのpH耐性を必ず持っており、
酸性寄りの用土で育てたとしても、
特に大きな障害は出ないためだそうです。
このpHであれば、通常の日本で有り触れた用土で
特に操作は不要ということになりますね。
我が家では今は一律全てのユーカリのpHが
少し高めになっている可能性があります。
その中で激しく鉄分欠乏症になっている品種も多数あり、
今後は良い意味で、あまり過保護になりすぎず、
触り過ぎないように心がけていこうと思っています。
今のところアルカリ寄りのpHを好むと
わかっている品種はMoon Lagoonのみ。
ある程度アルカリでも育つものとしては、
rudisやerythrocorysなどがわかっていますが、
これらも別に通常の用土で問題なく育てられます。
また、化成肥料の与えすぎでも
pHが上がってしまうことがあるので、
無用な多肥にも気をつけてみてください。
次年度は鉄分欠乏症の品種については
決して調子は悪くないので、一度全てに植え替えを行い、
用土をリセットしたいと考えています。
肥料もpHも自然が一番ですね。。。
●鉄分欠乏症の症状例- # by eucalyptus_k | 2012-11-28 10:38 | ユーカリ(栽培知識)
ポット苗での長期間管理について
普通のお宅でユーカリを数苗買って
育てている人にはあまり縁のないお話ですが、
私のようにタネを播いて多数育てていると、
置き場所の問題から、多数余剰苗が発生し、
いつまでもポットのままで管理するということがあります。
そのような場合に、
最近危険なポイントを発見しました。
ポットというと、
一般的なポリポットを思い浮かべると思います。
我が家でもコストの面で優秀なので、
長らく、通常のポリポットを長らく使用していました。
ところが、このポリポットで育てていると、
もちろんのことながら根のサークリングが起きます。
大抵の場合は、根がサークリングして、
ポットの底に溜ることになります。
すると、根のある底部分の用土は良く乾くのに、
根のない中部から上部の用土が
いつまでも湿っているという状態になります。
この場合、根のある部分の用土は乾燥しているため、
株には水切れの症状が出るのですが、
用土の上部の大半はまだ湿っています。
この状態で長らく育てていると、
用土が乾きにくく、雨の多い季節になると、
用土の部分過湿で根腐れが起きます。
これで我が家の、ポリポットで放置して
40cmを超えるような苗はほぼ全滅しました。
底面吸水という抜け道もありますが、
素人では施設も設備もありませんし、何よりも面倒です。
そこで、優秀なのがスリットポットです!
鉢ではなく、あくまでもポットです。
スリットポットを使用すると根のサークリングがなく、
根が底部だけでなく、ポットの中部~上部にも
ふんだんに行きわたるため、
根の部分過湿を防止することができます。
コスト的には少し痛いところですが、
今後、全てのポット苗に
スリットポットを使用することにしています。
その場合、60cm程度になっても、
傷むことなく、蕾を付けるような
ポット苗も出てきている次第です。
本当はしっかりと鉢に植え付けたいのですが、
どうしても場所がないための苦肉の策です。。。
普通はポット苗で放置ということは、あまりないかと思いますが、
タネから多数の苗を育てている人はぜひ参考にしてください。
ちなみに、環境が良く、高温乾燥を確立できるような、
プロの栽培現場には、あまり関係がないかもしれません。- # by eucalyptus_k | 2012-11-22 12:48 | ユーカリ(栽培知識)