ユーカリ品種ひとくち栽培コメント その1
今日から私の育てている
全140種程のユーカリたちについて
ひとくち栽培コメントを書いていきたいと思います。
ただこれはあくまでも、
風通しや日照も悪い我が家のベランダで、
私のブレンド用土でスリット鉢で育てた場合の
私の個人的且つ直観的なコメントです。
他の栽培環境では良好なものもありますので、
あくまでも参考までにお願いします。
■ Eucalyptus globulus ssp. globulus(グロブルス)
水食いで強健だが、暑いのはあまり好きではない。
ただ高温障害の出る程までに弱くはない。
日照が足りないと極端に生育が悪くなる。
例えば、葉の一部だけに日光が当たっていると、
その周囲の葉だけがやたらと大きく立派になる程である。
鉢植え管理でも激しい剪定を必要とする程の
基本的に枯れる気のしないユーカリ。
【樹高:300cm / 鉢:スリット7号】
■ Eucalyptus globulus ssp. bicostata(ビコスタータ)
水食いで強健、私的にはグロブルスでは最も楽で育てやすい。
原種よりも暑さや日照不足に対する適応力が高い模様。
基本、水だけ毎日与えて放置でも全然問題ないが、
放置しすぎるとハダニが発生するのでたまに水をかける。
成長は激しいが原種程の暴力的な印象はない。
基本的に全く枯れる気のしないユーカリ。
【樹高:250cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus globulus ssp. maidenii(マイデニー)
寒い季節や涼しい季節は放置気味だが、
かなり高温多湿に弱いらしく、梅雨時期や夏などは、
少し気にかけて、水分管理に気を付けている。
原種やビコスタータのように適当に管理していて、
一度150cm級を枯らせたので、グロブルスでは最も鬼門。
真夏の日光の激射を浴びると葉先が少しヘタることもある。
夏場はしっかりと頭で考えて水分管理を心掛ける必要がある。
【樹高:120cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus globulus ssp. pseudoglobulus(スードグロブルス)
置き場所が悪いので成長はあまり進んでいないが、
原種とビコスタータの間のような位置づけ。
暑さや空中湿度に対しては原種よりも強く、
ビコスタータ程は安心のできないレベル。
基本強健で放置でも問題ない。
ただししっかりと日光に当てないと成長は遅くなる。
葉色の緑が強く、あまり粉を吹かないのが特徴。
【樹高:100cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus cinerea(シネレア)
一般の御宅で屋外管理すると基本的には生育良好。
我が家では生育こそ良好で強健ではあるが、
置き場所が悪いので、夏場は葉が傷みやすい。
どちらかというと涼しい季節に良く日光に当てると良い感じ。
家では強健が故に辛い環境で育てられて見栄えはイマイチ。
葉を綺麗に保ちたい場合は、程良い日照と風通しの良さが大切。
水は思ったより吸わないなという印象。
今は枯れる気のしないユーカリの一つになっている。
【樹高:120cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus cinerea var. pendula(シネレア・ペンデュラ)
タネが希少なこともあって
少し気にかけているので、見栄えは悪くない。
基本定期的に水を与えるだけの管理で問題ない。
原種同様に過湿、日照不足にも強いので非常に楽な部類。
ただ原種に比べると過保護な管理をしている割には成長が遅い印象。
【樹高:60cm / 鉢:スリット5号ロング】
■ Eucalyptus pulverulenta ssp. pulverulenta(プルベルレンタ)
一般の御宅では生育が良好なことを考えると
我が家ではあまり良い状態とは言えない。
特に我が家の風通しの悪い高温多湿な環境が嫌いな模様。
手をかけて場所を改善すればもっと良くなると思われる。
用土や鉢、日照はそこそこ高いレベルを要求するので、
シネレアのように放置でOKとはまだいかない。
思い通りの樹形に育てるには恐ろしく難易度が高い。
【樹高:100cm / 鉢:スリット5号ロング】
■ Eucalyptus pulverulenta ssp. babyblue(ベイビーブルー)
以前は日照の悪いクーラー室外機の近くに置いており、
年中葉はボロボロで枯死寸前までいったので、
西AZのユーカリ並みの良い場所に移して手をかけたところ、
一気に葉が綺麗になって樹形も良くなってきた。
日照は半日陰程度でも良いので、
涼しく風通しの良い環境が最も大切。
環境さえ良くて少し手をかけてやればまだ楽な部類。
【樹高:60cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus polyanthemos ssp. polyanthemos(ポリアンセモス)
これもかなり強健な部類なので、
可愛そうな程、劣悪な場所に置いていて、
葉の状態はとても綺麗とは言えない。
ただ放置で全然育てられるレベル。
上の方の一部の葉には少し日光が当たるのだが、
その場所の葉は驚く程に立派で美しくなる。
用土の選別さえ間違わなければ、
ある程度の日照環境で放置でも問題ない。
暑さにはとても強いようで、
少し暑くなってからの方が成長が進む。
【樹高:160cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus polyanthemos ssp. vestita(ポリアンセモス・ベスティタ)
こちらは原種とは異なって、ある程度の環境に置いて
ある程度手をかけてあげないと一気に痛む。
また原種に比べると色々と病気にも弱い模様。
相応の場所で少しだけ水分管理に気を使ってあげれば、
特に問題なく、美しい樹形を維持できる。
少し我儘とは言えども他に比べると遥かに楽な部類。
高温障害の症状は出ないが、原種よりは暑さを嫌う。
【樹高:160cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus camphora(カンフォラ)
巷では生育良好で楽なユーカリというイメージだが、
かなり「純粋な暑さ」を嫌うイメージ。
春先の涼しい季節の生育は良好だが、
夏場は葉が汚くなって、成長が進まない。
耐陰性などの前評判はそこそこだったが、
我が家では少しは手をかけてあげないとしんどいレベル。
冬場以外の水遣りは表面が乾いたらの超級水食い。
水分管理はスルーで日照と風通しの工夫が少しだけ必要。
東北で育てている人は非常に生育良好との情報有り。
【樹高:50cm / 鉢:スリット6号】
■ Corymbia maculata(マキュラータ)
成長も早く、一般的なユーカリの管理でOK。
暑さや空中湿度、過湿に対する耐性は高いが、
寒さにはそこまで強くない(-5℃程度)。
クーラー室外機の側でも全然放置でOKだが、
ある程度の日照がないと成長が進まなくなる。
水切れにだけ少し気を付ければ非常に楽なユーカリ。
【樹高:170cm / 鉢:プラスチック6号】
■ Corymbia citriodora(レモンユーカリ)
クーラー室外機の間横でも生育は良好。
暑さや過湿に対する耐性はぴか一。
その代わり毛の生えている葉は冬場に激しく傷む。
日光はとても好きなようで、
これも日光の当たっている葉だけが大きく立派になる。
定期的に水さえ与えていれば完全放置でOKのユーカリ。
【樹高:300cm / 鉢:プラスチック7号】
■ Corymbia peltata(ペルタータ)
小型品種のためか成長は少し控え目。
ある程度の日光さえ確保できればとても楽なユーカリ。
これも日光が当たる場所の葉だけが極端に大きくなる。
レモンユーカリ程ではないが寒さは得意ではない模様。
樹高の割には水切れが激しいので、相当水食いのイメージ。
【樹高:45cm / 鉢:スリット5号ロング】
■ Eucalyptus staigeriana(スタイゲリアナ)
空中湿度や暑さには我が家では全く問題ないレベル。
ただし日照だけは少し大切で、日照が不足すると、
へなちょこな葉ばかりでうどんこ病が発生する。
以前は劣悪な環境に置いていたが、
最近は少しは日光の当たる場所に置いているので、
生育も良く、基本放置でOKなユーカリ。
日照以外では我が家の環境に適応していると言える。
樹高の大きさもあるが、水切れが非常に早いので、
旅行に行かせてくれないユーカリの一つ。
【樹高:200cm / 鉢:スリット6号】
■ Eucalyptus muelleriana(ミューレリアナ)
暑さ、空中湿度、過湿に対して非常に強く、
寒さにも弱くないと弱点の見つからないユーカリ。
日照が良いと成長が激しすぎるので、
クーラー室外機の風をもろに浴びるような
劣悪な場所に置いているにも関わらず、
それでも成長は激しく、全く痛み知らず。
水切れが激しく我が家では間違いなくトップの水食い。
恐らく炎天下で育てるなら、一日何度も水がいるかもしれない。
現在予定はないが、鉢増しの際には、
かなり保水性の高い用土を使うつもりでいる。
【樹高:160cm / 鉢:スリット6号】
もし興味のある品種がありましたら、
ご連絡をいただければアップさせていただきます。
それでは、その2に続きます。- # by eucalyptus_k | 2014-08-22 14:24 | ユーカリ(栽培知識)
Mundulla Yellow(マンダラ・イエロー)
栽培環境がベストではないこともあって、
私はユーカリの病気には常に悩まされています。
病気については常日頃からネット等で調べて
情報収集を怠っていません。
現地ではユーカリの病気として深刻なのが、
サビ病(Rust)と斑点病(leaf spot)です。
我が家でも斑点病は日常茶飯事で、
サビ病についても、
いくつかの品種でその被害が見られます。
これらの病気は面倒ではありますが、
そこまで甚大な被害をもたらすこともなく、
葉が痛みこそすれ、枯死に至ることは稀です。
時折、あまりに行きすぎた場合には、
殺菌剤である程度防除することもできます。
ところが以前から悩まされている、
ユーカリがクロロシス(色素欠乏)様となって、
手の施しようがなく枯れるという症状があります。
これは高pHが原因の鉄分欠乏症である可能性や
高温障害による色素欠乏様の被害である可能性もあり、
一部の軽度なものでは、風通しを改善したり、
酸度未調整のピートモスを施したり、
鉄分系の肥料を施肥したり、
総合的に高pHを避けるような工夫をすることで
ある程度の改善が見られています。
ところが何をやっても一向に改善が見られず、
ただただ、葉の色素がなくなって、
枯死まっしぐらという困ったケースもあります。
ちなみにこの記事に掲載している2枚の写真の
クロロシス様の症状を発症している2株ですが、
既にこの世にはありません。
原因が栄養素の不足であるとしても、
何かこのような事例はないものかと、
最近海外の文献を読み漁っていました。
するとユーカリを初めとして、
アカシアなどが被害に合う
Mandulla Yellowという症状に行き当たりました。
このMandulla Yellowは我が家の症状と全く同じく、
新芽を中心に色素欠乏の症状が現れ、
最終的には樹木全体に拡がって、
葉枯れが起きるというものです。
発症して何年か後には大きな樹木でさえも、
枯死に至る可能性があるという深刻な症状です。
このMandulla Yellowは、
オーストラリア固有の植物に
深刻な被害を及す問題として、
現地の研究機関が調査を行っているようですが、
現在のところ、ハッキリとした要因は
わかっていないようです。
現在、その要因として
候補に挙がっているのが下記の三点です。
------------------------------------------------------
1. 土壌の高pHが原因の鉄分やマンガンの欠乏及び
土壌に蓄積した炭酸や重炭酸塩による障害。
2. ファイトプラズマという植物の細胞内に寄生する
ウイルス並みに小さな細菌の一種による障害
3. 除草剤の残留成分による障害
------------------------------------------------------
現在、どの要因についても、
研究者によって意見は異なり、
各要因を裏付ける情報や、
否定する情報などがたくさんあります。
まず1の要因については、
いくつかの発症株と健康株の比較で、
発症株の植わっている土壌は、
明らかにpHが高く(7.8以上)、
鉄分等の微量要素の含有量が低かったそうです。
また、pHを下げることや、
鉄分やマンガンなどの要素を補給することで、
一定の改善が見られたという情報もあります。
ところが2や3の要因を提唱する研究者によると、
pHが高くなくても発症するケースや、
pHが高くても全く発症しないケースがあり、
1の要因は確かだとは言えないとのことです。
確実に言える情報としては、
この症状にかかった株と同じ場所に別のユーカリを植えると、
その株もかなりの確率でMandulla Yellowを発症するようなので、
土壌が関わっていることだけは間違いなさそうです。
主にはオーストラリア本土での症状ですが、
最近は世界各国の栽培者から
同様の症状を発症しているという
報告が相次いでいるようです。
現在はこれ以上の情報は
明らかになっていないようですが、
今後も研究や調査は進んでいくようなので、
私もこの情報を適宜チェックしたいと思っています。
とにかく難儀なMandulla Yellowですが、
これも海外の植物を育てる醍醐味といえますね。- # by eucalyptus_k | 2014-08-15 16:58 | ユーカリ(栽培知識)
樹高の伸びと下葉がなくなる問題
梅雨も終わりに差し掛かり、
大阪では軽く30℃を超える日がやってきました。
晴れの日には高温乾燥が好きな
西AZのユーカリを中心に
やっと面倒な梅雨が明けたかとばかりに
新芽の展開を進め始めています。
一部の湿地帯生息種で且つ高温が好きな品種以外は
基本的にユーカリは梅雨時期が苦手で、
多くの品種では葉が傷んだり、
冬の間の傷んだ葉を散らせたりします。
春に次いでこれから
ますます成長を進めていくわけですが、
30m~80mになるような大型品種の場合、
鉢植えでも放置すれば、
ほんの数年で数mになるものがあります。
我が家のベランダでも、
camaldulensis...3m
globulus ssp. globulus...3m
citriodora...3m
risdonii...3m
melliodora...3m
leucoxylon ssp. pruinosa...2.5m
viminalis ssp. viminalis...2.5m
globulus ssp. bicostata...2.5m
coolabah...2.5m
sideroxylon...2m
staigeriana...2m
smithii...2m
rudis...2m
cypellocarpa...2m
morrisbyi...2m
robusta...2m
subcrenulata...2m
maculata...1.7m
bridgesiana...1.8m
と軒並み2mオーバーのオンパレードで、
ほとんどが1.5mオーバー、
1m以内のものは数える程しかないという状況です。
ちょうどこちらの写真に写っている
物干し用の竿が2m弱くらいの高さになります。
先年、足場板で土台を組んで、
全体的な日照を向上させたのが良かったようです。
また毎年猛威を振るっていた、
うどんこ病やハダニの被害も
今年はほぼ皆無という状況で、
これも激しい成長に拍車をかけているようです。
さらに一部の2mオーバー級では、
末葉に変わるものまで出だしています。
末葉に変わりだしたsmithii
鉢は全てが6号スリット鉢で、
一部のものでは5号のものまであります。
通常であれば、鉢のサイズだけで見ると、
完全に根詰まり状態のはずなのですが、
スリット鉢の効果でしょうか。
もちろんそれなりに根はパンパンですが、
根詰まりで急を要するような株はありません。
ただこの大きさになってくると、
下葉はどんどんと落ちていき、
特に2.5~3m級のものでは、
上部1/3程度にしか葉がありません。
物干し竿から下はほとんど葉がないものが多い
ただどれも健康状態自体は悪くはなく、
3mというと完全に天井に頭を打つのですが、
頭を打って削られた頂点の成長はストップして、
その少し下くらいから脇芽を盛んに出しています。
天井に擦られて横から芽を出したcamaldulensis
私は鉢植え管理の宿命と割り切って、
あまり下葉の減少を気にしていませんが、
これは多くのユーカリを美しく育てたい方には、
大きな問題になっているようです。
これの打開策はプロでも悩むところと聞き及びますし、
私にも今のところ、良い案は浮かんでいません。
安全策を取るのであれば、
ある程度葉を残して、切ることですが、
そもそもかなり上部にしか葉がないわけなので、
所詮、妥協策でしかなく、年々下葉は減り続けます。
また上をいくら切り続けても、
下の方はどんどん木化が進んでいき、
下から枝が出るという成果には全く貢献できません。
ただ比較的風通しの良い場所にある、
melliodoraでは、半分以上も葉が残っていたりするので、
下部の風通しの改善などは若干効果があるかもしれません。
melliodoraの幹の下の方
それでも最終的には、限界を迎えて、
一か八かで、かなり下の葉のない部分で
バッサリ切ってしまうのもありなのでしょうが、
その方法で生き残るかどうかは本当に博打感覚です。
実は私はその方法を実行して、
今まで一度も枯らせたことはありませんが、
やはり相応の覚悟が必要になりますし、
時期を間違えるとダメになってしまうこともあります。
やはり先日の記事で書いたように、
「ユーカリは樹木である」という事実がある限り、
ある程度は仕方のないことなのかもしれません。
下の方の幹に傷を付けて、
そこから新芽を出させるという高等テクもありますが、
私は一度もうまくいったことはありません。
上の方の新芽部分をしつこく傷つけていると、
株元から芽が出るという実例もあるのですが、
これも本当にその株次第で絶対というわけではありません。
結局、全く解決策の提示ができないのですが、
もしユーカリが好きなら、
そんなユーカリの姿も受け入れて
楽しく育ててみるのはどうでしょうか?
何か良い方法がある場合、教えていただければ、
株数はありますので、色々と実験も可能です。
それでも、綺麗な樹形でなければ嫌だ!という方は、
とにかく低樹高の内から小まめな摘芯や剪定を心がけるか、
そもそも低樹高で収まる品種や脇芽を吹きやすい品種を
選択して育てるのが良いと思います。
我が家でも、脇芽の吹きやすいcrenulataや、
albida/moon lagoonなどでは、
100~180cm程度になっても、
割と綺麗な樹形を保つことができています。
crenulata(樹高150cm)
albida(樹高100cm)
moon lagoon(樹高130cm)
大型樹木を鉢植えで美しく育てる。
これは趣味の栽培者の永遠の課題ですね。- # by eucalyptus_k | 2014-07-02 16:25 | ユーカリ(栽培知識)
ユーカリという樹木
最近お問い合わせが多くなってきたので、
ユーカリという樹木について、
簡単に書いてみたいと思います。
恐らく多くの方が育てているのは、
ラベンダーやミントなどのハーブ類、
屋内の観葉植物などがメインで、
ユーカリもその一環として
育てようと思われることが多いようです。
ただここで忘れてはいけないことは、
ユーカリは樹木であるということです。
最も低木なものでも2m~4m。
ただしこのクラスはマイナーな品種が多いので、
多くの方が良く育てているユーカリのほとんどは、
15~25mクラスの品種になります。
これは多くの草木や観葉植物とは完全に異なり、
小さくてもヤマボウシやハナミズキやツバキ、
ありふれたものでは、サクラやケヤキを
鉢植えで育てるイメージになります。
もう一つ、ユーカリは完全な陽樹のため、
室内で通常の観葉植物の鉢植えとして
育てることは残念ながらできません。
ユーカリを育て始めてから、
まずびっくりしてお問い合わせがあるのが、
冬を超えてから、葉が変色して散り始めたり、
葉に軽く班が出たり、葉の一部に枯れが出たり、
下葉がなくなりだしたりという症状についてです。
結論として、これはある種、生理現象です。
※越冬後の株、下の方の紫の葉の多くは春に散る
ここで比較の対象になる植物として、
まず花草やハーブ等があります。
これらの植物は苦手な季節(多くは冬か夏)を除いて、
全体的に綺麗な葉が茂っているイメージです。
なぜユーカリは当たり前のように
これらの植物のようにならないのかというと、
花草やハーブなどの樹高を考えてみてください。
恐らくその美しいハーブなどは、60cm~100cm程度の樹高で
一般的な最高樹高にほぼ到達していると思います。
ところがユーカリの最高樹高は、
10m~25mなわけですから、2m近くの樹高があったとしても、
ハーブ等に例えるならば、ほんの10cmの小苗になるわけです。
樹木であるユーカリは、最高樹高を目指して、
葉を増やすことよりも、背丈を伸ばすことを頑張ります。
樹高が伸びれば、下葉を落とし、その幹は木化して、
さらに土台をしっかりとさせて、また樹高を伸ばそうとします。
地植えの場合は問題ありませんが、
鉢植えの場合、ここで根張りのスペースにも限界が生じるので、
ある種、下葉がなくなって貧相になるというのは、
何らおかしなことではないわけです。
※放置すれば樹高ばかり伸びるのは自然
良く、ホームセンターなどで、
花草売場の奥に苗木コーナーがあると思いますが、
ここに並んでいる苗木たちは、どれもそのように下葉がなく、
少し貧相な苗木という形状になっていると思います。
もちろんここで、剪定のハイテクニックを駆使して、
低樹高で葉を茂らせるということも可能でしょうが、
それはある種、美しい盆栽を作るのにも似ていて、
プロでも日々苦心している部分ですから、
なかなか素人にはうまくはいきません。
例えば、広い庭に地植えをして、
そのユーカリの最高樹高近くにまで育てれば、
ある種、それらのハーブ草木などのように、
いつみても葉の茂った立派な樹木になるでしょう。
次に室内にあるシェフレラやベンジャミンなどの
観葉植物も比較の対象となる一つです。
良く言われるのが、室内の観葉植物は、
いつまでも綺麗な葉でいるのに、
ユーカリはどんどん葉が散ってしまうということです。
実は極論として、室内で植物を育てるというのは、
植物にとって非常に辛い状態にあります。
そのため、春などにはある程度成長が進みますが、
通年では、あまり大きく成長していないのです。
また室内にあるため、風雨や日光にも晒されませんし、
一部の害虫被害にも遭いにくいので、
葉が動かない=長期間葉が綺麗ということになります。
ユーカリは激しい直射日光を必要とし、
屋外でのみ育てることのできる植物です。
成長や新陳代謝の速度は、
室内の観葉植物の比ではありません。
先述した樹高を伸ばす性質に加えて、
必要のない枝葉や古い枝葉を
非常に早いサイクルで入れ替えていきます。
※湿気のこもる場所の葉は株を守るために傷んで散るがこれも生理現象
我が家の環境植物を例に取ってみると、
一年以上も前の葉がまだ残っていて、
比較的色も質感も綺麗なものが多々あります。
ところが屋外で激しい日光を浴びて、
より自然に近いサイクルで育つユーカリには、
一年前の葉などほとんど残っていません。
例え残っていたとしても、風雨にさらされて、
かなり汚くなっているか、
一部は枯れているものがほとんどです。
広いお庭をお持ちの方は大きな庭木を
お庭のない方は神社の森の樹木を
近くで良く観察してみてください。
葉の古い部分は枯れてボロボロになっていたり、
風通しの悪い部分は病気にかかって、
カビが生えていたり、萎縮している葉があったり、
所々が激しく虫に食われていたりすると思います。
それでもその樹木は枯れる気がしないくらい元気で、
春には青々とした新芽を吹きながら、
何十年もそこで変わりなく生きています。
ユーカリは現地オーストラリアでは、
野生動物くらいしかいない壮大な大平原や
大森林などの自然の厳しい場所に生息しています。
そのような場所出身で大型樹木のユーカリは、
屋外で普通に育てていれば、
上記の神社の木のような状態になります。
間違っても放置するだけで、ハーブ草木や花草、
観葉植物などと同じようにはいきません。
もちろんそこで人間の手が入るわけです。
汚く枯れた葉は人間の手で切って取り除き、
病気にかかった葉には薬剤を散布して対処し、
虫にも殺虫剤や手で取るなどの対処を行います。
この人間の手が増えれば増える程、
見栄えの良い植物になっていきます。
ただそれでも、人間が育てやすいように
品種改良された多くの花草などのようには
なかなかうまくはいかないものです。
最後に良くこんな状況を見ることがあります。
ある日、とても綺麗なお店の前で、
美しいグニーユーカリの鉢植えを見かけました。
ところが数か月後にそこを通って見てみると、
下葉はほとんどなくなり、上の方に葉が付いているだけで、
樹高もかなり大きくなって、美しい鉢とのバランスは最悪です。
そして一年も経つ頃、そこを通ってみると、
もうその鉢植えの姿はなくなっていました。
恐らくエクステリアとしては不格好となり、
破棄されたか、どこかにやられてしまったのでしょう。
少し哀しいお話かもしれませんが、
これがユーカリの自然の状態であると言えるのです。- # by eucalyptus_k | 2014-06-19 16:46 | ユーカリ(栽培知識)
レモンユーカリの葉の変化と耐寒性
先日、同居人の実家に帰省しました。
実はこちらのお庭にも勝手にユーカリを持ちこんでいます
こちらの両親は二人とも仕事でとても忙しいので、
最も育てやすく手のかからないユーカリを選択しました。
globulus ssp. globulus、globulus ssp. maidenii
perriniana(ツキヌキユーカリ)が1本ずつと
Corymbia citriodora(レモンユーカリ)が2本あります。
どれも持ち込んだ時には、20cm程度の小苗で
レモンユーカリに至っては、
わずか5cmくらいだったと記憶しています。
お庭は南向きで非常に日照が良いので、
既に全ての株の樹高は私の背を軽く超えています。
これでも何度も剪定を行っているとのことですが、
まだ1年半ほどしか経っていません。
我が家よりも大きな鉢へと
鉢増ししてもらっていることもありますが、
非常に素晴らしい成長力を発揮しています。
ここで面白い写真が撮れたのでご紹介したいと思います。
レモンユーカリは最初、葉に激しく毛が生えていますが、
ある程度成長を進めると、その毛がなくなり、
ツルっとした光沢のある葉へと変化します。
何が基準になっているのかは不明ですが、
我が家のレモンユーカリは、既に樹高が3m近くありますが、
まだ全ての葉にはふさふさに毛が生えています。
これは葉に毛の生えたユーカリ全てに言えることですが、
毛がなくなると大幅に耐寒性が増すようです。
この毛がなくなることによる耐寒性の増加は、
他の毛の生えたユーカリである、
pleurocarpaやerythrocorysでも実証済みです。
特にerythrocorysは初期の耐寒性が弱く、
越冬後には、さほど寒くはならない我が家の株でも、
毎年瀕死に近くなるほどまでボロボロになっていましたが、
毛のなくなった今年は、例年より寒い冬であるにも関わらず、
大した葉の痛みは起こっていません。
また、レモンユーカリは、ユーカリの中では
トップクラスに香りの強いユーカリで、
毛の生えた葉を軽く指で撫でるだけでも
強く香りが指に残るほどです。
ところが毛がなくなると同時に、この香りは非常に弱くなり、
もう軽く指で撫でた程度では香らなくなります。
こちらの庭には2本のレモンユーカリがありますが、
そのうちの1本は既に、ほぼ全ての葉の毛がなくなっています。
この家は、少し高地にある住宅地なので、
我が家のベランダよりも遥かに寒くなり、
先日の大雪でもかなり積もったと聞いています。
レモンユーカリは日本での購入時の説明では、
一般的に耐寒性が3℃程度で
冬は室内に取りこんでくださいと言われます。
下の写真はその大雪を乗り越えたばかりの
葉の毛がほぼなくなった方の株です。
葉は青々としており、
ほとんど葉の傷みのないことがわかります。
面白いのはもう1本の方の株です。
こちらの株では、毛の生えた葉が半分あり、
もう半分の葉の毛がなくなっているという状態です。
上の方の葉は毛が既になくなった葉で、
下の方の紫の葉がまだ毛のある葉になります。
さらに近くで見てみると、傷みの差が良く分かります。
こちらがまだ毛のある方の葉で
全体が紫色になって、かなり傷んでいます。
酷いものではここまでボロボロになっています。
ところが既に毛のない葉では
とても傷みが少ないです。
軽く変色している程度で全く心配のない状態です!
こちらのお庭では、最低気温は-5℃以下になり、
霜どころか積雪まで経験しているわけですが、
耐寒性に難ありといわれるレモンユーカリでも
葉の毛がなくなった後は、ここまで問題なく
冬を越せるようになるということがわかります。
私の経験では、初期の毛のある葉でも、
吸水量を調整することで、葉はボロボロになっても、
-5℃くらいまでは耐えることができます。
この写真を見る限りでは、毛がなくなった後は、
-8℃くらいまでは全く問題ないように思います。
また越冬が完了した後には、
我が家のerythrocorysも紹介したいと思います。
最後に耐寒性最強クラスのperrinianaです。
さすがに葉の痛みは全く見られず、
寧ろ最もperrinianaが美しく映える季節と言えます。
このperrinianaは単にperrinianaとして
購入したタネから育ったものですが、
薄紫に変色する小さな可愛い葉が特徴である
Tasmanian Formのperrinianaであることがわかりました。
春の到来はもうすぐそこまで来ています。
また、皆さんの越冬後のユーカリ状況など、
お時間のあるときに教えていただけると嬉しいです- # by eucalyptus_k | 2014-02-24 12:21 | ユーカリ(栽培知識)