【ユーカリ紹介-66】
ユーカリ・プルイノサ (Eucalyptus pruinosa)続きまして第66回目は
初の北オーストラリアに生息する品種で
亜熱帯のサバンナ地帯に生息しており、
ワックスを塗ったような白銀ハートリーフが眩しい
ユーカリ・プルイノサです。
◎ユーカリ・プルイノサ
【学名:Eucalyptus pruinosa】
【英名:Silver Box / Silverleaf Box】
私は主に東~西まで、
オーストラリア南部のユーカリを中心に育てています。
それは何故かというと、
北オーストラリアのユーカリは
どれもあまり見栄えのパッとしないものが多く、
耐寒性にかなり難のあるものがほとんどだからです。
ユーカリの魅力は様々ですが、
やはり多くの人がユーカリに求めるものは、
美しい銀葉だったり、珍しい花だったり、
有効な精油とその香りだったりすると思います。
北オーストラリアのユーカリは、
花こそ多彩な品種はいくつか存在しますが、
大概は多くの人がユーカリに求める魅力が少なく、
パッと見はあまり在来の樹木と変わらないものが多いです。
また雨量が多く、気温も高めのため、
とても大型になるものが多いのも難点です。
私はユーカリを150種類程育てていますが、
このpruinosaはたった1つだけ
生粋の北オーストラリア、
ノーザンテリトリー(NT)出身のユーカリです。
※gamophyllaも一部ですがNTにも生息しています。
実はこのpruinosaはかなり初期にタネを手に入れたもので、
とても美しいタネの広告画像に魅せられて、
まだ地域も何も考えていない頃に購入しました。
もしかすると今だったら無理に購入せず、
敬遠していた可能性もあります。
でも、今は、結果的に育ててみて
色々な意味でとても良かったと思っています。
そんなに初期に育て始めたのにも関わらず、
何故こんなに紹介が遅れたのかというと、
他のユーカリと環境の異なるNTに生息するpruinosaは
その他のユーカリと非常に異なった性質を持っているため、
今までその性質について良くわからないでいたからです。
pruinosaは北AZには珍しく、
比較的低木のMalleeで、とても銀葉の美しい品種です。
上の写真は青葉にワックスがかかったような感じですが、
pruinosaは成長が進むに従ってどんどん白みを増します。
たまに10m程度のTree(木立型)になることもあるようですが、
大概は4~6m程度までのMallee(灌木型)に育つようです。
また比較的低樹高でもたくさんの花を咲かせるようです。
大きく育ってからのpruinosaの銀葉はとても美しく、
樹木の少ないサバンナでひと際映えるようです。
pruinosaという単語は、
他のユーカリの亜種名などにも使われており、
植物には比較的良く使われていますが、
「ワックスを塗ったような」という意味になります。
我が家で育てているユーカリでは、
他にleucoxylon ssp. pruinosaというのもありますが、
元祖pruinosaなのはこのEucalyptus pruinosaです。
pruinosaの生息しているNTの環境というのは、
南部のエアーズロック近辺などの半砂漠地帯から、
中部の雨季と乾季を合わせもつサバンナ地帯、
北部のワニが生息する完全な熱帯域に分かれています。
このpruinosaは主に中部以北のサバンナから
ワニの生息する熱帯域にかけて幅広く生息していますが、
メインの生息地は比較的北部よりのサバンナ地帯になっています。
サバンナには前述の通り、雨季と乾季が存在しており、
乾季には何カ月もほとんど雨が降らないのに、
雨季にはとても大雨が続いたりして、
結果的な総雨量は日本の各地を大きく上回ります。
そのため、このpruinosaには
多くのユーカリに当てはまるような、
単純に乾燥を好むという性質が当てはまりません。
pruinosaは、率直にどのような性質なのかというと
詳しくは育て方のところで書きますが、
乾燥にも強く、過湿にも強いという
ある種オールマイティな性質を持っています。
ただ一つ在来の植物と大きく異なるのは
他の銀葉ユーカリと同じく、
とても激しい直射日光を必要とするというところです。
それではpruinosaの外観を見ていきたいと思います。
小さな間の葉は、比較的ハートリーフが多いですが、
少し成長が進むと、どちらかというと
シャモジのような葉型になっていきます。
さらに大きく育っていくと、
完全に先細りの卵型の葉へと変わっていきますが、
細い柳葉になることはなく、卵型でもかなり幅があります。
pruinosaを葉の形だけで見ると
camphoraにとても良く似ています。
日照が不足していると、
薄い緑色やくすんだ緑色の葉になり、
この葉色だと一見camphoraと区別がつきませんが、
良く日光に当てたpruinosaの葉はcamphoraの葉よりも
遥かに白みが増して、ブルーグレイに近くなります。
pruinosaはとても日照にうるさいユーカリです。
西AZのユーカリのように、日光が足りないと、
極端に生育が悪くなるということはありませんが、
その葉色と質感には大きな差が生じます。
まず良く日光に当てた葉は、白みが強くなり、
どちらかというとブルーグレイに近い葉色になっていきます。
また葉も硬くしっかりとしたものになります。
下の写真は上の写真と同様に、
比較的良く日光に当てて育てた葉です。
色はブルーグレイで質感もしっかりとしています。
そして下の写真が、少し日光の足りていない葉色です。
この場合は薄い緑色になっていますが、
さらに日照不足が重なると、ヨレヨレの
くすんだ深緑色の葉になってしまうこともあります。
とてもわかりやすい写真があります。
下の写真を見てください。
我が家ではユーカリの生育状況に合わせて、
置き場所をローテーションすることがありますが、
このpruinosaはイマイチ性質が掴めなかったこともあり、
それはそれは激しくローテーションされていました。
写真は見たままで、下の方の白く大きな葉が
とても日照の良い場所に置いていた時の葉で、
上の方のヨレヨレの緑色の葉が、
その後、日照の良くない場所に移動してからの葉です。
何年も育てて、やっとその性質も掴めてきたので、
現在はかなり日照の良い場所を定位置としています。
そのため、現在はこのような貧弱な葉は皆無で、
とても美しい葉色で立派に育ってくれています。
またその写真も近々アップしたいと思います。
次にその茎を見てみましょう。
この場合は少し日照不足で緑色が強く、
先の方の茎なので、ちょっと突起が多めですが、
基本的にはあまり突起がなくツルっとしており、
日照が良いと茎も同様に少し粉を吹くことがあります。
さて、長年研究を重ねてきた
pruinosaの育て方についてですが、
ポイントは率直に日光と高温と水です。
まず、フルタイム直射日光が推奨で、
難しい場合でも半日は直射日光が当たった方が良いでしょう。
日光が足らないと、上記のような貧弱な葉になり、
後述しますが、冬が明けた時に酷く葉が散ってしまいます。
とにかく、直射日光の良く当たる
暑い暑い場所で育てことさえできれば、
夏場はgunniiなどよりも遥かに楽なユーカリになります。
そして多くのユーカリで問題になる水分管理ですが、
これがとても面白い性質を持っています。
pruinosaは雨季と乾季の両方に対応しているため、
水切れにはかなり強いところがあります。
これは東AZの中ではかなり水切れに強い、
neglectaと同等の高いレベルで、
西AZのpleurocarpaなどよりも遥かに粘り、
環境によってはalbidaと同じくらいまで耐えられます。
ところが水を与えてみれば、それはそれは水食いです。
夏場の吸水量はcinereaやgunniiを遥かに上回り、
robustaやrudisに余裕で匹敵するレベルです。
これはどのくらいかというと、
非常に日照と風通しの良い場所であれば、
夏場は一日に2回水を与えてもOKというレベルです。
要するに雨季と乾季に耐えられる性質から、
水切れに強いくせに、水食いという変な特徴を持っています。
では結論として、水を与えまくった方がいいのか?
それとも乾燥気味が良いのか?それともバランスが重要か?
どれが最も良いか悩むところですが、
長年の研究の結果から、水をたくさん与えた方が、
元気に激しい成長力を発揮して育ってくれることがわかりました。
逆に考えれば、乾燥気味に管理すれば、
ある程度成長を抑えることができ、
そうすることでより脇芽が出やすいようにも思っています。
恐らく、水が豊富であれば樹高を伸ばしてTree型となり、
水が少ない場合には脇芽を出して
Mallee型になる傾向があるように思います。
成長自体は比較的激しい方ですが、
多くの東AZのユーカリのように手に余るほどではないので、
できることなら大きく育てたいところですね。
あと何故かこのpruinosaは病虫害にとても強いです。
軽いハダニの被害は出ることもありますが、
何故か貧弱な葉でも、うどんこ病の被害が出たことはありません。
精油はかなり少ない方なのですが、ちょっと不思議です。
さて、北AZのユーカリの多くが抱える問題の
耐寒性についてですが、pruinosaはどうでしょうか。
寒さに強いのか?弱いのか?
これもはっきりとわかるまで3年を要しました。
結論として、寒さにはあまり強くないユーカリです。
データでは-3℃程度と言われていますが、
鉢植えの場合は、適切に管理しても、
-5℃程度が限界かなと思っています。
pruinosaを育て始めてから、冬の管理については
簡易温室で管理したり、寒風吹きさらしの場所に置いたり、
本当に色々と試してみました。
冬になるとpruinosaは激しく紅葉して、
濃い紫色の葉色へと変化します。
ところが、寒風吹きさらしの場所に置いて毎日観察しても、
あまり葉が傷んだり、枯れが出るという症状は見られませんでした。
これはもしかするとかなり耐寒性が強いのではと
期待して観察を続けていたのですが、
冬が明けてそろそろ春が近づいてくる頃になって、
急に紅葉した葉が激しく傷んで枯れ出してきたのです。
特に日照の足りなかった貧弱な葉については、
全て枯れてパラパラと散ってしまいました。
一度それで、早春を迎える頃に
ほとんどの葉がなくなってしまい、
これはちょっとヤバいと焦ったこともありました。
冬場の見た目ではわからなかったのですが、
実際は寒さでかなり傷んでいたのかもしれません。
結局、そのまま夏前には完全復活を遂げたので、
もしかすると、落葉樹的な性質があるのかもしれませんが、
無理に葉を傷めることもないと思うので、
冬場は少し寒さが控え目な場所で管理するか、
自信のない人は、簡易温室などを使用した方が良いかもしれません。
冬場の過湿にはとても強いので、
冬季室内管理も不可能ではないユーカリになります。
ちなみに暖かいところの植物は、
冬になっても吸水減少のスイッチが入らないものがありますが、
pruinosaもその例に漏れず、冬場も結構水を吸うので、
いくら乾燥に強いとは言っても、水切れには少し注意が必要です。
pruinosaの香りについてですが、
これは本当にユーカリなの?と思うほどに香りません。
香り自体は少しシネオールを含んだ、
ハーバルな青草の香りがするのですが、
少し鼻が詰まっていたりすると、
全く香りを認識することができないほどです。
葉を千切って指でぐちゃぐちゃに潰して
さらに少し絞って、初めてユーカリの香りを認識できます。
残念ながら香りを楽しむハーブとしての利用は難しいでしょう。
pruinosaは実際に初めて育てるNTのユーカリですが、
本当にその性質の違いには驚かされました。
本当にユーカリは多種多様ですね!
NTのユーカリのタネはあまり取引されることがなく、
ただでさえマイナーなところ、
そこからさらにマニアックなpruinosaですから、
日本で見つけることはほぼ100%不可能でしょう。
それでも育ててみたい方には
何カ所かタネの販売所を見つけていますので、
希望があればぜひご一報ください。
タネ播きからの初期の育苗はとても楽で、
かなり初心者向けと言えます。
私は何と冬季の室内でタネを播き、
そのまま室内で初期育苗を行いましたが、
それでもほとんど立ち枯れすることもなかったので、
相当育てやすいユーカリであると思います。
また、大きく育ってからも
前述の通り、日光さえ押さえることができれば、
用土も管理もかなりオールマイティーに対応してくれます。
私がpruinosaを育て始めた頃は、
まだまだ駆け出しの頃だったので、
育苗の用土も水分管理も何もかもめちゃくちゃで、
多くのユーカリ苗を立ち枯れさせたり、
酷く枯らせてしまったりしましたが、
pruinosaはそんな中を平然と生き延びているので、
とても頼もしく、安心して育てられると思います。
育てれば育てる程、銀葉が美しくなるようなので、
これからもとても楽しみですね。
超マイナーで美しいpruinosa!
興味があったら、
タネ播きからチャレンジしてみませんか。
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<栽培難易度:A+>
香良さ:★★
香強さ:★
成長力:★★★
要水分:★★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2013-08-05 17:38 | ユーカリ紹介
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