【ユーカリ紹介-52】
ユーカリ・ディシペンス (Eucalyptus decipiens ssp. decipiens)続きまして第52回目は
ハートリーフ三兄弟の中で
葉の付き方が丸葉ユーカリっぽくて、
ハートリーフの鮮やかな緑色が美しい
ユーカリ・ディシペンスです。
◎ユーカリ・ディシペンス
【学名:Eucalyptus decipiens ssp. decipiens】
【英名:Red Heart Gum / Moit】
ハートリーフユーカリと呼ばれるユーカリは数多く存在しますが、
私が本当にハートリーフの葉形だと思う3種を
勝手にハートリーフ三兄弟と呼ぶことにしています。
----ハートリーフ三兄弟----------------------------------
●Eucalyptus orbifolia(オービフォリア)
●Eucalyptus websteriana(ウェブステリアナ)
●Eucalyptus decipiens(ディシペンス)
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この3種の中では唯一、葉柄が短いもしくはほとんど存在せず、
丸葉ユーカリチックな葉の付き方をしており、
ハートリーフの緑色が鮮やかなのがdecipiensです。
ところが、実際、この3種は非常に良く似ていて、
素人が識別するためには、大きく育てて、
花が咲いてからの蕾や実の形状、
樹皮や樹形で判断するしかないほどです。
敢えてdecipiensの特徴を挙げるのであれば、
先述の通り、葉柄がとても短いために、
銀丸葉ユーカリなどのような葉の付き方をしており、
(幹に対して垂直に近い角度で付いている)
葉は少し丸みのあるハート形、もしくは
丸みのあるダイヤ型(幼苗時のみ)をしており、
葉の葉脈はあまり目立たずに、
最も左右対称に葉がつきやすいというところでしょうか。
写真を見ていただくとわかりますが、
葉が茎と平行になりやすいその他の2種に比べると、
葉が丸葉ユーカリのように茎と垂直になっています。
また、少し白みの強い他の2種に比べると、
葉の緑色が強く、鮮やかな緑色が美しくなっています。
さらにこのdecipiensには、原種とは別に
2種類の非常に良く似た亜種が存在します。
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●Eucalyptus dicipiens ssp. decipiens
●Eucalyptus dicipiens ssp. chalara
●Eucalyptus dicipiens ssp. adesmophloia
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これら亜種間の違いはパッと見はプロでも
全く見分けがつかないほどに良く似ています。
最も大きな違いは、成長してからの樹皮です。
その他では、実の形状なども若干異なります。
また、生息地が大きく異なるために、
実際に育ててみると、それぞれの性質の違いが良くわかります。
亜種については、後日紹介させていただきますので、
今回はssp. decipiens(原種)についてご紹介します。
まず、その大きな違いとなるポイントの樹皮です。
ssp. decipiensは亜種と比べて、
最もゴツゴツした樹皮をしているのが特徴です。
次に違いのポイントとなる実です。
たくさんの実が集合体となっており、
悪者の持っているトゲ付き鉄球のような形をしています。
この実はとても面白い形をしているため、
花材としても人気があるようです。
また、最も温暖な地域に生息しており、
砂地土壌を好むため、亜種の中では最も排水性が重要、
最も寒さに弱く、デリケートな性質を持っています。
ssp. decipeinsのその他の特徴としては、
他の2つの亜種と比べると、緑色が鮮やかな中でも、
最も葉や、特に新芽の白みが強くなる傾向があります。
また、幼苗期にはハートリーフではなく、
丸みのあるダイヤ型の葉が出ることもあるdecipiensの中では、
最初から比較的しっかりとしたハート型の葉が出やすいです。
decipiensはとてもレアなユーカリです。
どうやら、品種の特定がなされたのが、かなり近年のようで、
あまりにも古いユーカリ関連の書籍には、
そのdecipiensという名が見られないこともあります。
decipiensという学名には、
騙す、思い違いをさせる、欺くという意味があります。
これは、近年に特定された品種であることと、
decipiensに良く似たその他の品種がたくさん存在することから、
とても見間違いやすいという意味で付けられたようです。
非常に不本意な学名で少し可愛そうですね。。。
decipiensの一番の魅力は、
やはりその可愛らしいハートリーフでしょう。
ハートリーフ三兄弟の中では、ハートの周囲に丸みがあり、
最も可愛らしいハート形をしていることが多いです。
また、三兄弟の中で、最も激しく脇芽を出し、
横に広がったり、葉の隙間を詰めていく性質があるので、
とても美しい樹形へと仕立てやすいユーカリです。
三兄弟は全て西オーストラリア出身のユーカリですが、
ssp. decipiensはパース近郊~南部の沿岸部に生息しています。
この地域はとても温暖且つ比較的湿潤で、
冬も0℃以下になることは滅多にありません。
そのため、かなり我儘でデリケートな性質を持ちます。
耐寒性としては、かなり弱く、
大阪などの暖地でも、幼苗の間は、
簡易温室を使用するなどして、防寒対策をした方が無難です。
最終的に、ある程度の大きさに成長した株でも、
-3℃程度、頑張っても-5℃が限界というレベルです。
寒風や霜を浴びると、葉が赤く変色して傷みます。
decipiensの成長は三兄弟の中では最も激しいですが、
それでもユーカリ中では、かなり遅い部類になります。
プロでも1m近くまで育てるには数年を要するようです。
どちらかというと温度の高い季節をメインに成長します。
decipiensは三兄弟の中では最も水を欲するユーカリですが、
その中でも屈指の水分管理への我儘さを持っています。
特にその中でもssp. decipiensは最も我儘です。
夏場はとにかく、トップクラスの排水性を与えて、
即日で土を全乾きさせるような環境が重要です。
また、そのために、敢えて少し小さなサイズの鉢で
育てることが成功へのポイントになってきます。
植え替え直後でもなく、しっかりと日光に当てているにも関わらず、
葉がパラパラと散ることがあったら十中八九は過湿が原因です。
一般的な観葉植物などとは比べ物にならない程に
(早く乾くという意味での)超乾燥気味に
管理することが望ましいでしょう。
ここまで排水性にうるさいくせに、
三兄弟の中では最も水切れ耐性が弱く、
下手をすると夏場に水切れを出すこともあります。
このあたりの性質により、とてもマメな管理を求められます。
また、環境が合わなかったり、管理方法が悪いと、
すぐに葉が散ってしまい、不格好になります。
decipiensは、わずかに耐陰性を備えてはいるようですが、
日照不足だと、激しく病気に悩まされることになります。
うどんこ病被害の最も激しいユーカリの一つですし、
風通しが悪いと、褐斑病の症状が出ることもあります。
とにかく、半日以上の直射日光が必須になります。
また、あまり肥沃ではない土壌を好むことも大きな特徴です。
肥料、特にリン酸などの肥料当たりが発生することも多いので、
あまり肥料は与えずに、多肥は避けた方が無難です。
冬になると月に1、2回の水遣りで済む程に
ほとんど水を吸わなくなります。
ただ油断しているといきなり水切れを起こすこともあるので、
面倒ですが、冬もマメな観察を怠らないようにしましょう。
こんなに我儘で手のかかるdecipiensって、、、と
尻ごみされる方もいるかもしれませんが、
少し管理方法が特殊であるというだけで、
一旦育て方をマスターしてしまうと、
あまり難しいユーカリだとは思わなくなります。
根本的に水分管理が難しいmacrocarpaや、
三兄弟の中では、梅雨時期などに
いつも調子を崩すorbifoliaなどと比べれば、
慣れてしまうことで、かなり楽に育てられます。
気になるdecipiensの香りですが、
三兄弟の中では最も良い香りで、香りも強いです。
柑橘系の香りが最も強く、その中にアロマティックな香りが混ざり、
最後に微かにシネオールの香りがするといった感じです。
この香りは誰もが大好きになれるとても良い香りです。
香りとしてはuncinataにも良く似ています。
香りは葉を指で軽くこすると良く香ります。
ただし放っておいて香ってくるようなことはありません。
三兄弟の中ではwebsterianaと良く似ている ssp. decipiens。
でも、文章ではうまく説明できないのですが、
全体的な外観や色合いは明らかに異なります。
あなたはどのハートリーフがお好みですか?
外観は皆さんのお好み次第でしょうが、
どちらかというと放置も可で、
水遣りを忘れるような人にはwebsteriana。
マメに世話をしてあげたい人にはdecipiensでしょうか。
個人的には最も可愛いハートリーフだと思っています。
decipiensの中では、最も我儘だけど、
外観は最も白みが強く美しいssp. decipiens。
背丈がほとんど伸びないので、
コンパクトな鉢植えにもとても最適です!
育ててみたい方には、
親愛なるこあら師匠の農場をご紹介します。
このdecipiensは主力商品となっています。
一度育て方に慣れてさえしまえば、
そんなに厄介なユーカリではありません。
是非、一度育ててみてください!
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<栽培難易度:D>
香良さ:★★★★★
香強さ:★★★
成長力:★
要水分:★★
耐過湿:★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-10-17 14:31 | ユーカリ紹介
ユーカリ育成ブログです。タネを輸入して150種以上のユーカリを育てています。 By eucalyptus_k
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