【ユーカリ紹介-51】
ユーカリ・キペロカルパ (Eucalyptus cypellocarpa)記念すべき第51回目は、
冷涼地に生息する超パワフルで超大型品種、
何もかもスケールのでかい!
ユーカリ・キペロカルパです。
◎ユーカリ・キペロカルパ
【学名:Eucalyptus cypellocarpa】
【英名:Mountain Grey Gum / Mountain Gum / Monkey Gum】
このcypellocarpaですが、
最初はずっとシペロカルパと呼んでいました。
ところが今回このユーカリ紹介アップの際に
再度良く調べてみた結果、
読み方はキペロカルパとなるようです。
実は最初、良い香りのしそうな
繊細で可愛いユーカリを想像していたのですが、
育ててみると化け物級の成長力を持った、
とてもスケールのでかいユーカリでした!
このcypellocarpaの写真は、実は春に撮ったものですが、
これで去年の秋播きの株なんです!
もちろんのことながら、冬場はそこまで成長せず、
10cm程度の時に、ちょっと大きすぎるかなという
6号鉢に定植したところ、わずか1ヶ月余りで
この大きさに成長したのです!
そして、そこからもどんどん成長を続けるので、
一度夏前にバッサリと激しく剪定したのですが、
それでも、今、既に150cmくらいあります。
恐らく放置していたら
簡単に2mを超えていたことでしょう。
同じ時にタネを播いた株で、
未だに小さなポットに植わったものがありますが、
不思議なことにこの株はまだ20cm程度です。
cypellocarpaはglobulusやpunctata等と同じように、
早めに大きな鉢に植えた方が
根をふんだんに伸ばして、大きく成長するようですね。
cypellocarpaの何よりもの特徴は
緑の鮮やかな、とても大きな葉です。
これは春先の葉なので、まだとても小さく、
今、一番大きな葉は、これの2倍くらいはあります。
調べてみると、それもそのはず。
cypellocarpaは65m以上の大木になるユーカリです。
学術的なルーツとしては
globulusとviminalisの中間に位置するようなので、
大型になるのもうなずけます。
これらのユーカリと大きく異なるのは、
高山出身のユーカリであるという点です。
そのため、海外の栽培ガイドにもありますが、
cool & wet(冷涼で湿潤)な環境を好みます。
新芽は光り輝くほどに激しく光沢があり、
成長してからの葉にも少し光沢のある質感です。
carpaというのはユーカリの学名に良くありますが、
以前から書いているように、実のことです。
cypelloはカップのようなという意味なので、
学名は「カップのような形の実」という意味になります。
生息地は、オーストラリア南西部沿岸部全域の
高山地帯に非常に幅広く生息しています。
cypellocarpaは、日本ではとてもマイナーで、
恐らく市場で見かけることはないでしょうが、
海外では材木用に植林されていたり、
生息域が広大なこともあって、かなりメジャーなユーカリです。
そのため、タネはとても手に入りやすく、
タネから育てる場合も、芽の大きさがとても大きく、
湿潤を好むため、とても育てやすいです。
タネから育てる場合は、
とっとと大きな鉢に定植すると良いと思います。
cypellocarpaの育て方についてですが、
土も鉢もあまり問わない、超強健なユーカリです。
余程管理が悪くない限りは、なかなか枯れることはないでしょう。
気をつけるのは、春~秋の水切れにつきます。
私はこのcypellocarpa、成長が早すぎるので、
夏場は全く日が当たらない場所に置いていました。
そんな場所にも関わらず、
コンスタントに1日1回の水遣りを欲します。
それでも、毎日犬の耳のように垂れていたので、
本来はもっと多量に水を与えても良いかもしれません。
前の記事で、涼しくなると吸水量が激減すると書きましたが、
10月も中盤に差し掛かる今でも、雨が降らない限り、
1日1回の水遣りをしないと水が切れてしまいます。
一般的に表面が乾いたらたっぷり水遣りと言いますが、
それでは、多くのユーカリには、
少し過湿気味になることが多いです。
ところが、このcypellocarpaには
表面が半乾きでたっぷり水遣りをするくらいでないと、
特に暑い時期には対応できないと思います。
後は、病害虫にも強く、下葉にハダニは少し付きますが、
ほおっておいても、深刻な被害にはなりません。
何もかもが豪快で強健なcypellocarpaですが、
一つだけ、弱点があります。
それは高山出身のユーカリなので、
暑さにはあまり強くないというところです。
夏場は葉の色素が抜けて、葉先が枯れ始めるという、
高温障害の症状がかなり顕著に出ることあります。
ただし、暑すぎて枯れてしまうことはありません。
少し夏場は葉が傷むものだという程度です。
暑さに弱いユーカリは、根が蒸れやすいのですが、
cypellocarpaの場合は、吸水量が激しすぎて、
蒸れる程水分を残さないようです。
また、ある程度の耐陰性も備えているようで、
あまり日照の良くない場所でも、コンスタントに成長し、
激しく水を吸っていきます。
これだと、日照の良い場所にマトモに出したら、
手がつけられないほどに成長するかもしれません。
とにかく、ちょっとだけ暑いのは苦手ですが、
その他では、ほとんど死角のない、
globulusやviminalisよりも遥かに強健なユーカリです。
cypellocarpaの耐寒性ですが、
高山生息種としては大したことはなく、
-8℃程度までと言われています。
ただし、日本の暖地での屋外越冬は余裕で、
あまり紅葉や葉痛みをすることもありません。
また冬でも、他のユーカリと比べると
かなり水分を欲するので、
冬場の水切れにも少し注意が必要です。
そして、気になるcypellocarpaの香りですが、
武骨なまでに、純粋なシネオール系です。
globulus/pulverulenta/viminalisなどのように、
柑橘系の香りがしたりすることもなく、
smithii/leucoxylon/camaldulensisなどのように、
少し香水系の良い香りがするわけでもなく、
ただひたすらに純粋なシネオールの香りがスッとします。
似ているのはpolybractea/punctataなどです。
香り自体はそんなに強いものでもありません。
葉を強く指でこすると香るという程度です。
私はあまりにも葉がたくさん採れたので、
ユーカリ茶やユーカリ酒にもしてみましたが、
どれもそこそこ使えて、美味な感じでした。
とても良い香りというわけではありませんが、
シネオール好き?には好まれる香りでしょう。
cypellocarpaには繊細で美しい外観はなく、
何もかもがスケールのでかいユーカリです。
おまけに日本で苗を手に入れる手段はなく、
育てる場合はタネを買う必要があります。
それでも、爆発的な成長力と、
何をしても枯れない安心感があり、
とても力強いユーカリです。
そんなcypellocarpaを、もし育ててみたい人には、
タネの販売所を紹介することもできますし、
タネがたくさん余っているので、
安価でタネを少しお分けすることもできます。
多くの人がユーカリに求める繊細さはありませんが、
何よりもパワフルな「本来のユーカリ」を実家できます。
こんなcypellocarpa、
興味があったら育ててみませんか?
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★
香強さ:★★
成長力:★★★★★
要水分:★★★★★
耐過湿:★★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★
耐病虫:★★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-10-13 14:01 | ユーカリ紹介
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