【ユーカリ紹介-49】
ユーカリ・エクストリカ (Eucalyptus extrica)続きまして第49回目は、
先日紹介したpleurocarpaの亜種で
テトラゴナ・グリーンこと
ユーカリ・エクストリカです。
◎ユーカリ・エクストリカ
【学名:Eucalyptus extrica】
【英名:Eastern Tallerack】
以前はpleurocarpaと同種で
Eucalyptus tetragonaという学名でしたが、
近年、その異なる特徴が発見されたために、
Eucalyptus extricaという学名に分割されています。
新しい学名が付けられた今日でも
tetragonaという名称は未だに根強く残っており、
緑色の強いextricaはテトラゴナ・グリーンとも呼ばれます。
日本でも切枝としてメジャーなpleurocarpaとは異なり、
知る人ぞ知る、とてもマイナーなユーカリです。
あまりにもマイナーなため、
日本の切枝に混ざっていることは恐らくあり得ないでしょう。
現在、このextricaのタネを販売しているタネ屋は
オーストラリアにただ一つしか見つかっていません。
やはり、extricaの何よりもの魅力は、
エメラルドグリーンの葉と茎でしょう。
pleurocarpaには及びませんが、
それでも他のユーカリと比べると、
白銀色はとても素晴らしく美しいです。
実は、このextricaもpleurocarpaと同様に、
発芽してからしばらくの間は、
緑色の葉をしており、たくさん毛が生えています。
上の写真の株とその他の写真の株は
全く同じ株になります。
最初育て始めたときには、
別のユーカリ?とさえ思ってしまいます。
この時点でextricaとpleurocarpaを
見分けることはほぼ不可能です。
そのまま成長していき、50cmを超えるくらいから、
急に全ての毛が抜けていき、毛のない葉が生え出します。
葉や茎の白銀色もそのあたりから強くなり出します。
そして、どんどん成長していくに従って、
葉や茎の白みはどんどん増していきます。
extricaとpleurocarpaの違いは
グリーン/シルバーの通りまずその色です。
確かにextricaの方が葉色がエメラルドグリーンになり、
pleurocarpaの方が葉色が白くなる傾向にあります。
ところが実際は、葉色にはあまり差がなく、
個体差で十分に入れ替わってしまいます。
ところが茎の色にだけははっきりとした違いがあります。
グリーン/シルバーという違いは、葉色ではなく、
その茎の色の違いから来ているようです。
少し写真ではわかりにくいところがありますが、
extricaの方が明らかに緑色が強くなっています。
また、茎の形状が、
強いウイング型をしているpleurocarpaに比べて、
extricaはそこまで激しいウイング型ではなく、
通常の四角形に近くなる傾向が強いです。
他には、extricaの方が葉先が尖り、葉が長細くなり、
脇芽をたくさん出して、横に広がる性質が強いです。
一方のpleurocarpaは、葉が丸みを帯びており、
比較的真っ直ぐに上に伸びる性質が強いです。
下の写真でもわかるように、
すでにたくさんの脇芽を出しています。
それでも、葉の形状や樹形、茎の色だけでは、
なかなか素人目には見分けがつかないこともあります。
亜種として分けられる要因にもなった決定的な違いは、
その蕾・実の形状と色です。
角があり、四角形のpleurocarpaの実と比べると、
extricaの実はほとんど角が存在せず、
全くもしくは少ししか粉を吹いていません。
この実こそが決定的な識別のポイントですが、
何株もextricaとpleurocarpaを育てていると、
最終的には、パッと見でわかるようになります。
ちなみにextricaという学名には
抜け出たという意味があり、tetragonaから抜け出した、
特殊な特徴をもったユーカリということになります。
その生息地は、オーストラリア南西部の沿岸地域、
エスペランス東のオーストラリアでも有名な
美しい海岸が広がっている地域です。
extricaは、pleurocarpaの生息地よりも、
さらに東部の狭い範囲の地域に生息しているため、
Eastern Tallerackと呼ばれています。
この辺りは、たくさんの珍しいユーカリが生息する地域で、
沿岸部出身なので、どれも耐塩性がかなり強いようです。
そのため、extricaは、海の傍であっても、
容易に栽培することが可能なようです。
extricaは低木のMallee(灌木型)です。
最高樹高はpleurocarpaよりもさらに低く4m程度で、
より横に広がりやすい性質を持っているようです。
そのため、サイズ的には鉢植えでも管理しやすく、
何よりも数十センチの樹高で開花が見込めます。
以前の記事でも紹介しましたが、
我が家での開花第一号はこのextricaでした。
開花した株は、わずか樹高50cm弱と低いながらも、
とても美しく、繊細で小さな花を咲かせてくれました。
下の写真は最も満開の時の写真です。
こんな魅力満点のextricaですが、
栽培に関しては少し我儘なところがあります。
まず、他の西AZのユーカリの例にもれず、
直射日光に良く当てて、乾燥力の強い用土で、
乾燥気味に育てることが大切です。
水分管理にはかなりうるさいようで、
好む環境が作れていないと、
全くと言っていいほど成長してくれません。
extricaはpleurocarpaよりも
さらに少しだけデリケートな面を持っています。
私は当初、水分管理がうまくできずに、
一年で5cmしか成長しなかったことがあります。
あまりにも成長が緩慢だったので、
マイペースというあだ名を付けていたほどです。
ところが、ひとたび好む環境を構築できれば、
成長力はalbidaなどよりも遥かに激しくなります。
またひとたび成長力に火がつくと、
夏季の吸水量は半端なくなります。
夏季限定でgunniiなどの吸水量は顔負けになります。
また、激しく粉を吹いているので、
macrocarpaなどと同様に、激しい西日を浴びても
全く葉焼けするようなこともありません。
とにかく、乾燥力の強い用土で、
終日直射日光に当てることが、栽培のポイントです。
真夏は成長が控え目になる植物が多い中、
extricaは真夏でも激しく成長します。
注意するところは、先述した激しい吸水量です。
水が切れると、結構早い段階で葉先に枯れが出ます。
吸水量が激しく、水切れにも弱いくせに、
水分管理にうるさく、過湿を嫌うというのが、
このextrica栽培の最も難しいポイントです。
このextricaを上手く育てるポイントとしては、
育苗初期には少し小さめの鉢で育て、
成長力に火が付いたら、一気に大きな鉢に植え替えるというのが
個人的には良いように思っています。
何はともあれ、早く乾く土で頻繁に乾いて水を与えるという、
栽培では最も手のかかるサイクルを好むユーカリの代表格です。
また、もう一つの成長のポイントとしては、
高い気温のようです。
親愛なるこあら師匠の農場でも、
夏季に40℃を超えるようなビニルハウス内で
ひと際元気に育っていると伺っています。
他のユーカリと比べると少し我儘なextricaですが、
私は西AZのユーカリの入門編に最適だと思っています。
育て方がハッキリしていてわかりやすく、
西AZのユーカリの特徴を掴むのに最適だからです。
また、育苗難易度も立ち枯れしにくく、
西AZのユーカリの中では簡単な部類になります。
ただし、pleurocarpaに比べると、空中湿度に敏感で、
湿度の高い梅雨時期などには、葉に枯れが出たり、
褐班ができることが多くなっています。
毎年、我が家のextricaは、全ての株が、
梅雨時期に何らかしかの葉痛みが発生します。
そのため、pleurocarpaよりも風通しを重視し、
空中湿度をあまり上げないようにする工夫が
必要になってくるかと思います。
気になるextricaの耐寒性ですが、
実はこの耐寒性がextricaのネックになります。
そこそこの樹高にまで育ち、
毛がなくなり、硬い葉に育ったextricaは
-5℃程度までは問題なく耐えられます。
ところが毛の生えている間の小さな株は
0℃以上で管理することが推奨となります。
また霜にもとても弱く、激しく葉痛みを起こします。
60cmを超えるような株であれば、
関西や関東の暖地では容易に野外越冬が可能ですが、
小さな間は無加温の簡易温室内で越冬する方が無難です。
無加温であっても、簡易温室内で寒風を防げるならば、
-5℃の環境で、発芽したての苗の越冬実績があります。
この耐寒性の弱さは、extricaの生息地が
ほとんど0℃を下回ることのない地域であることに起因しています。
extricaはとにかく、あまり寒さには強くないユーカリなので、
どうしても葉痛みを避けたい場合には、
寒い夜には簡易温室内に退避すると良いでしょう。
一つ注意するポイントですが、
冬になれば、確かに吸水量は激減しますが、
毛の生えているユーカリは、余り寒い冬を知らないためか、
冬になっても、他のユーカリと比べると水を欲する傾向があります。
とはいえ、1週間に一回程度のペースですが、
安心していると水切れを起こすので少し注意してください。
pleurocarpaと比べると若干乾燥を好むようです。
次に気になるextricaの香りですが、
残念なことに、pleurocarpaと全く同じ香りで、
万人受けする良い香りとは言えません。
現地では、レモンの香りと言う人もいるようですが、
レモンと言うよりは、レモンの皮を砕いたときの生臭い香りに、
シネオールが加わったような、少し渋い香りです。
また、ユーデスモールという漢方成分も含まれているため、
少しスパイシーな薬草っぽい香りにも感じます。
香り自体は決して弱い方ではなく、
指で葉を軽く撫でると香るほどですが、
香りを楽しむユーカリとしては少しキツイかもしれません。
薬草系の香りが好きなマニアの方には
もしかすると喜ばれる香りかもしれません。
香りはともかくとして、
シルバーのpleurocarpaに対して、
エメラルドグリーンの美しいextricaも
明らかに見るものを魅了することのできるユーカリです。
また西AZのユーカリのスタンダードとしても最適で、
ユーカリファンの人にはぜひ一株育ててほしい品種です。
とはいえ、pleurocarpa以上にマイナーで、
タネを手に入れることさえ困難なユーカリです。
ところが、、、このextricaも!
親愛なるこあら師匠の農場では主力商品です。
この美しいextricaを育ててみたい方には
素晴らしい農場を紹介します!
extricaとpleurocarpaを一緒に育てて、
その違いを見比べてみるのも一興ですよ!
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<栽培難易度:C>
香良さ:★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★
耐過湿:★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-08-31 09:26 | ユーカリ紹介
ユーカリ育成ブログです。タネを輸入して150種以上のユーカリを育てています。 By eucalyptus_k
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