【ユーカリ紹介-46】
ユーカリ・アクセデンス (Eucalyptus accedens)続きまして第46回目は、
白銀色の大きなスペード型の葉と
エメラルド色や薄紫色の粉を吹いた茎が美しい
ユーカリ・アクセデンスです。
◎ユーカリ・アクセデンス
【学名:Eucalyptus accedens】
【英名:Powder-bark Wandoo】
このaccedensは、当初全くノーマークでした。
というかあまり文献にも出てこず、
とてもマイナーなユーカリであったため、
なかなか目にとまらなかったのです。
ところがある日、無作為に
ユーカリ識別ソフトを見ていたとき、
下の写真が目に留まりました。
なんか蔦やヘデラ、ポトスのようにも見えませんか?
これは面白い!ということで、
速攻でタネを注文することになりました。
私の場合、育てる前に写真などで見て
こんなユーカリかとイメージしていた想像と
実際に育ててみてからの姿が
大きく異なることが多いのですが、
このaccedensは想像と実際の姿が
バッチリ一致していました。
大きなスペード型の粉を吹いた銀葉と
英名の通り、激しく粉を吹いた茎が美しいです。
大きなスペード型の葉は
caesia ssp. magnaの葉とも良く似ています。
大きな違いは深緑で光沢のあるcaesiaの葉に対して、
accedensの葉は銀葉で強く粉を吹いているところです。
また、accedensの粉を吹いた茎は、エメラルド色から
時には薄紫色になり、葉だけでなく、
その自慢の茎もかなりの見どころになります。
最初は、私が知るきっかけになった写真から
かなり低木でブッシュ状になるユーカリかと思っていました。
ところが、実際には25m以上の
比較的大きな樹木になる品種なのです。
樹形も灌木型ではなく、しっかりとした木立型です。
また、見た目こそ少し変わりますが、
英名の通りの粉を吹いた樹皮は大木になってもキープします。
完璧に真っ白な樹皮になるようです。
元々西オーストラリアには
Eucalyptus wandoo(ワンドゥ)という、
比較的大きな樹になり、材木としても使われる
メジャーなユーカリが自生しています。
学名のaccedensには「模した、近しい」といった意味があり、
wandooにそっくりなことからその名が付けられたようです。
wandooは樹皮こそ白くツルツルしており、葉も銀葉ですが、
葉型はもう少し細長く、卵型で、より男前な感じです。
また機会があったら育ててみようかなと考えています。
とても特徴的で美しい葉を持つaccedensですが、
他の多くのユーカリと同じように、
大きく育ってからは柳のような細葉へと変わります。
ただ比較的大きくなる品種なので、
鉢植えであれば、この特徴的な葉を
ずっと楽しむことができると思っています。
accedensの管理方法についてですが、
デリケートで我儘な品種が多い
西オーストラリアのユーカリの中では、
びっくりするほど強健で育てやすいです。
管理方法としては葉の似ているcaesiaにそっくりですが、
私個人的にはcaesiaよりももっと楽だと思っています。
最も気をつけることは、caesiaと同じ、
とても大きな葉を持っているからでしょうか。
夏場の吸水量がかなりのものなので、
盛夏の水切れには十分注意する必要があります。
この記事の写真のaccedensは、
5号のスリット鉢で、樹高はまだ30cmくらいです。
ところが余りにも暑く天気の良い日には、
朝に水を与えても、一日持たないことがあります。
もちろん外泊するときなどは
底面を水につけていかないと枯れてしまいます。
その他では病虫害に対しても強く、
高い空中湿度や少しの過湿にも耐えることができるので、
あまり気にすることなく気軽に管理できます。
accedensは日光についても、
少しの耐陰性を備えているようです。
ある程度の明るささえキープできれば、
直射日光が当たらない場所でも
それなりに健康に育ってくれます。
ただ、もちろん太陽は大好きで
粉を吹いていますから、夏の直射日光も大丈夫です。
終日直射日光に当てて育てていると、
下の写真のようにウサギの団扇の如く大きくなります。
西オーストラリアの多くのユーカリは
タネ播きから育苗の難易度がとても高いです。
時期によっては、プロでも生存率が5割を切る程です。
その中でも、海外では園芸初心者向けの品種として
caesiaやerythrocorysなどが紹介されていますが、
accedensはこれらよりも間違いなく簡単です。
私は生存率がほぼ100%だったのでビックリしています!
少ししかタネを播いていないにも関わらず、
とてもたくさんの苗ができたので、
既に知人などに苗をたくさん配りました。
夏場の水切れにさえ気をつければ、
accedensはとても育てやすく
気軽に管理できる美しいユーカリです。
ただ、吸水が凄いと言っても
用土の排水性は良い方がとても健康に育ちます。
苗の数が多かったので、色々と実験してみましたが、
排水性の良い用土で育てた方が
とても立派で丈夫な株に育つという結果が出ています。
accedensの成長力は
さすが大木になる品種!結構激しいです。
もちろんglobulusやcamaldulensisには敵いませんが、
albidaなど他の西AZのユーカリと比べると群を抜いています。
地植えでも管理しやすい西AZのユーカリの中では、
少し気をつけて地植えを決断した方が良いかもしれません。
accedensの生息地は、decipiensやrudisなどと同じ、
オーストラリア南西の沿岸部です。
この辺りは気候がとても穏やかで温暖なため、
耐寒性がイマイチなユーカリが多いです。
当初は耐寒性がネックかなと思っていたのですが、
育ててみると、ビックリするほど寒さにも強いです。
accedensの耐寒性は、恐らくalbidaと同程度で
葉痛みもほとんどなかったので、
-7℃くらいまでは耐えられるように思います。
葉が厚く、比較的寒風や霜にも強いのですが、
あまり無理をすると、葉が部分的に枯れるかもしれません。
ただ、枯死するようなことはないように思います。
冬場も全く水を吸わない他の西AZのユーカリと比べると
そこそこ水を吸う方で、安心していると水切れします。
ただ、在来の植物と比べると、全然水を吸わない方です。
冬場の過湿には気をつけた方が良いでしょう。
気になるaccedensの香りですが、
花や香水系の香りが多い西AZのユーカリの中では
比較的シネオールの香りが強い方です。
ただ、globulusなどのようにガツンと来る感じではなく、
さほど香り自体が強い方でもないので、
爽やかにスッと香る感じです。
育てていて微かに香る良さはありますが、
香りを楽しむハーブとしては少し弱いかもしれません。
こんな育てやすくて美しいaccedensですが、
非常にマイナーなのが玉にきずです。
ところが今回試験的に
親愛なるこあら師匠の農場にタネを持ちこんだので、
今年はいくつかの在庫をお持ちのことと思います。
今後も定番商品として定着するかはわかりませんので、
育ててみたい方は今がチャンスです!
また、accedensは、西AZのユーカリのタネ播きに
チャレンジしたいと思っている方にも
簡単で始めやすいユーカリだと思っています。
美しい銀葉と魅力的な茎を見ると
とても繊細なイメージがしますが、
実際にはなかなか強健で男前なユーカリです。
小さな小丸葉ではなく、
大きな銀葉に興味のある方には
ぜひとも育ててみて欲しいユーカリです!
------------------------------
<栽培難易度:B>
香良さ:★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★★★
------------------------------
※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2012-07-24 12:40 | ユーカリ紹介
ユーカリ育成ブログです。タネを輸入して150種以上のユーカリを育てています。 By eucalyptus_k
当ブログはリンクフリーです
トラックバックURL : http://www.eucalyptus.jp/tb/211/