【ユーカリ紹介-33】
ユーカリ・ムーンラグーン (Eucalyptus 'Moon Lagoon')続きまして第33回目は、
庭木や垣根に適した品種で
ユーカリには珍しい小さな葉と
美しいコバルトブルーの葉色が魅力の
ハイブリッド品種、ユーカリ・ムーンラグーンです。
◎ユーカリ・ムーンラグーン
【学名:Eucalyptus latens 'Moon Lagoon'】
【英名:Fine-leaved Mallee】
このMoon Lagoonはユーカリらしからぬ外観で、
その美しい葉や可愛らしい樹形から、
誰もが魅力を感じるであろうユーカリです。
名前のMoon Lagoonとは、
英語で月の入江という意味で、
なかなかロマンチックな響きです。
実は、このMoon Lagoonは、
Eucalyptus latensというユーカリと、
お馴染みのEucalyptus kruseanaの、
ハイブリッド(交雑種)なのです。
育ててみて感じるその性質や外観は、
latensのものを大きく引き継いでいます。
latensをベースにして
kruseanaの要素を付け加えたという感じです。
一般的にはEucalyptus Moon Lagoonと言われますが、
通常であればEucalyptusという属名の後には
cinerea/gunniiなどのラテン語の種小名が続きます。
実際Moon Lagoonというのは園芸品種名で
var.に続く名称に近くなっています。
正式にはあくまでもlatensの園芸品種なので
Eucalyptus latens 'Moon Lagoon'
というのが正しい表記です。
他でいえば、
Eucalyptus gunnii 'Silver Drop'や
Eucalyptus pulverulenta 'Baby Blue'
などと同じような表記になるわけです。
とにかく、白銀色の美しい
可愛らしい小さな葉が魅力です。
写真では分かりにくいですが
葉の表面はコバルトブルーが美しく
艶消しでザラザラのkruseanaそのものです。
また、やたらと脇芽が出やすい性質で
どんどんと樹形にボリュームが付いていきます。
園芸用にユーカリを育てるならば、
必ず候補に挙げてほしいほどに
園芸品種として大成功といえるユーカリです。
樹木としては、
大きくても4m以内の茂み状に育ち、
どちらかというと横に広がるタイプです。
基本的にはこの美しい小葉を保ちますが、
あまり大きく育ててしまうと、
先祖返りして、albidaの末葉のような、
濃い緑色で光沢のある細葉になってしまいます。
あまり大きく高く育てるのではなく、
小まめな剪定や摘芯を繰り返して、
美しくボリュームのある樹形へと仕立てたいものです。
こんなにも美しく魅力的なMoon Lagoonは、
アメリカやオーストラリアの花屋などでは
フラワーアレンジの定番品種のようです。
ところが日本ではあまり知名度もなく、
売られているのはほぼ見かけません。
もし今後、日本でユーカリを流行らせたいならば、
このMoon Lagoonは起爆剤になってくれそうです。
樹高があまり高くならない品種ですから、
皆さんの身長以下の樹高でも
容易に開花が見込めると思います。
花自体は小さな白い定番のユーカリの花ですが、
この美しい樹形に花が咲き乱れれば、
本当に名前のMoon Lagoonそのものといえますね♪
ではこのMoon Lagoonは育てやすいのか?というと
これは少し微妙でなんとも言えません。
難しい人には難しいでしょうし、
合う人には育てやすいユーカリです。。。
うまく説明できませんが、
私のようにユーカリを多く育てている者にとって、
少し異色な存在のユーカリなんです。
ユーカリといえば以前からお話しているように、
かなり乾燥を好み、日光が大好きで、
肥料はあまり効かないという特徴があります。
また、多くの品種は弱酸性の用土を好みます。
ところがこのMoon Lagoonは、
乾燥は他のユーカリと同じように好みますが、
弱アルカリ性の用土を好み、肥料も大好き、
日光はそこそこで水大好きという
ユーカリにはあまりないような特徴を持っています。
ある種、日本在来の乾燥を好むといわれる、
特に収穫物のあるような植物と
同じように育てていただければ良いと思います。
そのためMoon Lagoonは、
あまりユーカリを育てたことのない人の方が、
寧ろ育てやすいユーカリなのかもしれません。
逆に私のようなユーカリ栽培者には
少し厄介なこともあるユーカリなんです。
通常ユーカリを育てていると
肥料も水も余り与えずに
ガンガンの日光に当てていれば良く育ちます。
普段はこんな感じで余り手をかけません。
ところがこのようにMoon Lagoonを、
他のユーカリと同じように育てていると、
水切れが多発して枯れを出したり、
pHの不適合や肥料不足で生育不良になったりします。
また、余りに激しい日光を当てすぎると
生育がストップしたり葉焼けしたりするので、
真夏はバラなどのように少し遮光するか、
半日陰などで育てた方が生育状況が良くなります。
※決して日陰好きというわけではありません。
家のベランダではどうかというと、
真夏などはかなりベストな環境のようで、
葉も美しく、かなり見事に成長してくれます。
逆にmacrocarpaなどが爆発的に成長する
私の実家の庭では、暑すぎ、水少なすぎで、
かなり生育不良でヘロヘロになっています。
とにかく、水切れに気をつけてください!
ただし、あくまでも乾燥を好む植物なので
常に用土が湿っているなどは避けてください。
また風通しを良くしてください。
雨が降り続いて用土は湿り気味、
ようやく雨がやみ、晴れの日が来て、
朝にはまだ用土が湿っていたので水遣りを控えたら、
夕方には水切れして枯れが出ていた、
ということを良くやってしまいます。
そんな感じで突然水切れがやってきます。
また、葉が小さいため、水切れしても、
葉が枯れてくるまで気づかないことが多いです。
水切れにさえ気をつければ、
あとは、たまに苦土石灰を施したり、
成長期に置肥や液肥を与えていれば、
Moon Lagoonはきっとこの美しい樹形を
ふんだんに披露してくれるはずです。
こうやって見てみると、kruseanaの性質は
見た目以外ではほとんど引き継いでいないようです。
Moon Lagoonは病害虫の影響を比較的受けにくい方で、
過湿耐性はlehmanniiやcrucisなどと同程度かそれ以上です。
ただし、風通しが悪いとうどんこ病になることがあります。
成長力についてはどちらかというと遅い方です。
ただそれは一般的なユーカリの成長速度と比べた場合で、
一般的な植物のレベルでは平均的な成長力です。
成長期に肥料を多く与えたり、
湿度や温度、日照などの環境が合った場合には
なかなかの速度で成長することもあります。
また、環境が全く合わないと
まるっきり成長をストップします。
Moon Lagoonの成長速度は、
栽培環境の適合バロメータになると思います。
暑い真夏でも環境さえ合えば、
コンスタントに成長を続けますが、
少し涼しい春や秋に大きく成長します。
耐寒性については暖地では全く問題ないレベルで、
-7℃程度までは頑張るようです。
ただし、葉が小さいので
寒風には弱く、寒風吹きさらしだと
葉の多くに枯れが出てしまいます。
ただしっかりと育った株の場合は、
春になれば枯れた葉を落とし、
新しい芽をたくさん吹くことと思います。
葉を綺麗なまま保ちたい人は
寒風を避けて、軒下などで越冬すると良いでしょう。
気になるMoon Lagoonの香りですが、
kruseanaとほとんど同じ香りで、
シネオールの香りをベースに爽やかな柑橘系の香りがします。
とても爽やかで良い香りです。
kruseanaほどは強く香りませんが、
香りを楽しむユーカリとしての利用も可能です。
とにかく、いっぺん育ててみてください!
合うか合わないかは皆さんの育て方と、
皆さんのお宅の環境次第ですw
ただ、特に難しいユーカリではありませんし、
酷い水切れでもしない限り、
いきなり枯れるようなこともないと思います。
とにかく、ユーカリとして以前に
植物としてかなり美しいです!
育ててみたい方には何と!
このユーカリを主力として栽培している
素晴らしい農場をご紹介できますので、
是非声をかけてくださいね。
月の入江にぜひ魅せられてくださいね★
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<栽培難易度:B+>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★★(環境次第)
要水分:★★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★
耐寒性:★★★
耐暑性:★★★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい- # by eucalyptus_k | 2011-07-21 19:34 | ユーカリ紹介
ユーカリ育成ブログです。タネを輸入して150種以上のユーカリを育てています。 By eucalyptus_k
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